9月22日(火)

★パイプ椅子天の川へと向け置かれ  正子
この季節、中秋のお月見の会場でしょうか。パイプいすがきれいに並べられた所へ地域の人たちが集まってきて談笑しながら夜風に吹かれている景が目に浮かびます。微笑ましくも愉しいひとときです。(河野啓一)

○今日の俳句
秋色の四万十川に棹さして/河野啓一
流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)

○曼珠沙華

[曼珠沙華/東京白金台・国立自然教育園]  [曼珠沙華/横浜・四季の森公園]

★曼珠沙花あつけらかんと道の端 漱石
★木曾を出て伊吹日和や曼珠沙華 碧梧桐
★駆けり来し大烏蝶曼珠沙華 虚子
★彼岸花薙がば今もや胸すかむ 亞浪
★悔いるこころの曼珠沙華燃ゆる 山頭火
★曼珠沙華無月の客に踏れけり 普羅
★崖なりに路まがるなり曼珠沙華 石鼎
★葬人の歯あらはに哭くや曼珠沙華 蛇笏
★曼珠沙華五六本大河曲りけり 喜舟
★投網首に掛けて人来る彼岸花 汀女
★曼珠沙華茎見えそろふ盛りかな 蛇笏
★曼珠沙華傾き合ひてうつろへり 泊雲
★むらがりていよいよ寂しひがんばな 草城
★考へても疲るるばかり曼珠沙華/星野立子
★曼珠沙華今朝咲きぬ今日何をせむ/林翔
★青空に声かけて咲く曼珠沙華/鷹羽狩行
★水に水ぶつかり勢ふ曼珠沙華/能村研三

 曼珠沙華は、稲が熟れるころになると、突然に咲く。花が咲くころは、葉も茎もないから、ある日赤い蝋燭の炎のような蕾がついて、蕾があるな、と思うともう開くのである。稲田の縁や小川のほとりに数本のこともあれば、群れて咲くこともある。彼岸のころ咲くからだろう、学名がヒガンバナである。やっと気候がよくなって旅をすれば、車窓から真っ赤な曼珠沙華が稲田を彩って咲いているのをよく見かける。日本の秋には欠かせない花だ。曼珠沙華には毒があるから、さわったらよく手を洗うように言われた。摘んで帰っても、家に活けてはだめと言われた。
 毒があると知りながらも、こどもたちは曼珠沙華を折って、茎を2センチほど、茎の表皮を残してに繋がるように折り、首飾りを作った。つくったけれど、首にかけたことはない。野原の草で遊んだころだ。

★旅すれば棚田棚田の曼珠沙華/高橋正子
★曼珠沙華日暮れの空の青きまま/〃
★起きぬけの目にりんりんと曼珠沙華/〃

 日本には北海道から琉球列島まで見られるが、自生ではなく、中国から帰化したものと考えられる。人里に生育するもので、田畑の周辺や堤防、墓地などに見られることが多い。特に田畑の縁に沿って列をなすときには花時に見事な景観をなす。また、日本に存在するヒガンバナは全て遺伝的に同一であり、三倍体である。故に、種子で増えることができない。中国から伝わった1株の球根から日本各地に株分けの形で広まったと考えられる。学名のLycoris(リコリス)とはギリシャ神話の女神、海の精:ネレイドの一人、Lycoriasの名前からとられたもの。

◇生活する花たち「女郎花・葛の花・萩」(四季の森公園)

今日の秀句/9月20日~30日

[9月30日]

★月光の夜のコーラスに妻出かけ/河野啓一
月の光に照らされた夜妻はコーラスに出かけた。妻たちのコーラスの澄んだ歌声を月夜に思い重ねて、作者もまた、月光の夜をひとり楽しんでいる。(高橋正子)
 
★乗る船の真向こう大き今日の月/佃 康水
乗船する船の真向こうに大きな月が昇った。海に昇る月であろうが、大きな今宵の月に純粋に感嘆する作者
が思えて、感嘆を分けてもらった。(高橋正子)

[9月29日]

★笊にとり濯ぐ零余子やおとこ飯/桑本栄太郎
笊にとり集めた零余子は零余子飯となる。ざっと洗って炊かれた素朴な零余子飯は、たしかに「おとこ飯」と言えよう。(高橋正子)

[9月28日]

※該当句無し

[9月27日]

★車椅子今宵門辺の良夜かな/河野啓一
「門辺の良夜」がいい。車椅子で門辺まで月を見に出ると、明るい大きな月が昇ったところ。車椅子ながらも門辺の良夜を楽しんだ。(高橋正子)

[9月26日]

★秋晴れの空を仰いで父想う/迫田和代
秋晴れの澄み渡った空の偽りのない力強さ、大きさが父を思わせたのだろう。娘にとっての父の在り様は秋晴れの空のようなものだ。(高橋正子)

★産着干す新居の庭へ小鳥来る/佃 康水
「新居の庭」、「産着干す」、「小鳥来る」と幸せなものが重なった。幸せな小さな家庭がさらりと詠まれて好感が持てる。(高橋正子)

[9月25日]

★秋冷や嫗達者と文来る/河野啓一
秋も本格的になる。きりっと引き締まる気持ちになる秋冷のころだが、風邪も引きやすくなる。嫗が達者であると便りが来て、めでたい。(高橋正子)

[9月24日]

★秋分やバスに供花持つ家族連れ/高橋秀之
秋分の日のバスに乗ると供花を持つ家族連れに出会った。家族揃って墓参りをする人の温かさが「供花」を通して伝わる。(高橋正子)

[9月23日]

★あたたかな色して畔の曼珠沙華/河野啓一
畔の曼珠沙華を「あたたかな色」と見る、穏やかな心優しさがいい。(高橋正子)

★澄む秋の空より蝶の舞い降りる/多田有花
空も澄むなら、それ以上に澄んだ色の蝶が舞い降りた感動。(高橋正子)

[9月22日]

<奥祖谷かずら橋>
★秋嶺を下りかずら橋を渡る/多田有花
事実を飾らずに散文的に表現した句だ。秋嶺も、かずら橋も奥祖谷そのもの。(高橋正子)

[9月21日]

★真直ぐな魁夷の「道」や天高し/小口泰與
魁夷は、東山魁夷。魁夷が描いた「道」は真直ぐで天高しである。(高橋正子)

★参道に群れてほぐれて蜻蛉飛ぶ/河野啓一
お参りの道すがら、蜻蛉が群れたり、またほぐれたりして飛ぶ。寺社へのお参りが楽しくなる。(高橋正子)

[9月20日]
※該当作なし

9月20日〜30日


9月30日(4名)

●小口泰與
前山へ昇る朝日や露の玉★★★
新そばや碓氷峠の空深し★★★★
止めどなくピーナツ食むや三国志★★★

●河野啓一
いわし雲朝空埋めて耀ける★★★
月光の夜のコーラスに妻出かけ★★★★
月の光に照らされた夜妻はコーラスに出かけた。妻たちのコーラスの澄んだ歌声を月夜に思い重ねて、作者もまた、月光の夜をひとり楽しんでいる。(高橋正子)

居待月窓のひかりのやわらかき★★★

●佃 康水
土手草と共に刈られし曼珠沙華★★★
青空へ粒ふくよかな銀杏の実★★★
 
乗る船の真向こう大き今日の月★★★★
乗船する船の真向こうに大きな月が昇った。海に昇る月であろうが、大きな今宵の月に純粋に感嘆する作者
が思えて、感嘆を分けてもらった。(高橋正子)

●桑本栄太郎
さるすべり終(つい)の色見せ京町家★★★
孤高とはかくも寂しき夜半の月★★★
一枚を羽織りさがすや居待月★★★★

9月29日(3名)

●小口泰與
糠雨の竹伐る響き包みける★★★
手を入れて水の痛さや女郎花★★★
奥利根の宿の持て成し新豆腐★★★★

●河野啓一
遍路道豊かに舞える秋の蝶★★★★
秋澄める雲ひとつなき蒼さかな★★★
立待の月のしずくや芒原★★★

●桑本栄太郎
笊にとり濯ぐ零余子やおとこ飯★★★★
笊にとり集めた零余子は零余子飯となる。ざっと洗って炊かれた素朴な零余子飯は、たしかに「おとこ飯」と言えよう。(高橋正子)

群雲を掻き分け早し月今宵★★★
十六夜の無月となりし夜半かな★★★

9月28日(2名)

●小口泰與
白粉花(オシロイ)の休耕田を艶めかせ★★★
山風の畷おちこち暁の虫★★★★
山にまだ日の残りけり白芙蓉★★★

●桑本栄太郎
実水木の緋色隠れる葉蔭かな★★★
友よりの土の色せる零余子届(つ)く★★★★
さみどりの虚実あはれや萩は実に★★★

9月27日(3名)

●小口泰與
雨上がり墓のおちこちあぶれ蚊ぞ★★★
碧落を一朶の雲や小鳥来る★★★★
稲穂波蛇行豊かな魚野川★★★

●河野啓一
車椅子今宵門辺の良夜かな★★★★
「門辺の良夜」がいい。車椅子で門辺まで月を見に出ると、明るい大きな月が昇ったところ。車椅子ながらも門辺の良夜を楽しんだ。(高橋正子)

葉隠れに光るまあるい秋の月★★★
中秋の味覚丹波の栗ご飯★★★

●高橋秀之
中秋の月を探して大空を★★★★
寝る前に我が家の窓から月を見る★★★
実家からもらった柿はまだ固し★★★

9月26日(4名)

●小口泰與
葛の花生まれし子馬起ちにける★★★★
流の岩の飛沫や沢桔梗★★★
虫の音や肌に染み入る暁の風★★★

●迫田和代
秋晴れの空を仰いで父想う★★★★
秋晴れの澄み渡った空の偽りのない力強さ、大きさが父を思わせたのだろう。娘にとっての父の在り様は秋晴れの空のようなものだ。(高橋正子)

歌人読む里山に揺れる吾亦紅★★★
爽やかな朝風に揺れるコスモスや★★★

●佃 康水
産着干す新居の庭へ小鳥来る★★★★
「新居の庭」、「産着干す」、「小鳥来る」と幸せなものが重なった。幸せな小さな家庭がさらりと詠まれて好感が持てる。(高橋正子)

種茄子やぽつんと一つ太るまま★★★
コスモスの坂に応援ごっこかな★★★

●桑本栄太郎
はらり落つ桂黄葉や朝の雨★★★★
推敲に倦むや窓見る秋霖雨(あきついり)★★★
ひと雨にもみずり来たる日暮れかな★★★

9月25日(3名)

●小口泰與
良平の着物の女花カンナ★★★
玲瓏の声の届きしおみなえし★★★★
桔梗や雨に濡れたる無人駅★★★

●河野啓一
秋冷や嫗達者と文来る★★★★
秋も本格的になる。きりっと引き締まる気持ちになる秋冷のころだが、風邪も引きやすくなる。嫗が達者であると便りが来て、めでたい。(高橋正子)

秋雨の止めば鴉は森の上★★★
谷筋に沿いて楓のうす紅葉★★★

9月24日(3名)

●小口泰與
長き夜や大史公書の置かれける★★★
秋雲や忠治歩きし山の道★★★★
早稲の香や暁の鴉のかまびすし★★★

●河野啓一
秋野を行けばしとどに濡れし草の花★★★★
松茸はカナダ産かな茸めし★★★
嬉しさよ林檎の季節巡りきて★★★

●高橋秀之
実家へと立ち寄り大きな栗を食う★★★
栗茹でる母は実家の台所★★★

秋分やバスに供花持つ家族連れ★★★★
秋分の日のバスに乗ると供花を持つ家族連れに出会った。家族揃って墓参りをする人の温かさが「供花」を通して伝わる。(高橋正子)

9月23日(4名)

●小口泰與
日のゆがむ入日の中の稲穂かな★★★
白粉花(オシロイ)や堂の畳に松の影★★★★
買ってきし小犬の匂い秋うらら★★★

●桑本栄太郎
高塀の天の高きや建仁寺★★★★
せせらぎの水澄み光る高瀬川★★★
つり人のみな魚籠(びく)の下り秋の川★★★

●河野啓一
あたたかな色して畔の曼珠沙華★★★★
畔の曼珠沙華を「あたたかな色」と見る、穏やかな心優しさがいい。(高橋正子)

彼岸花田の灯りかなほのぼのと★★★
蕎麦の花いかるがの夢はるかなる★★★

●多田有花
澄む秋の空より蝶の舞い降りる★★★★
空も澄むなら、それ以上に澄んだ色の蝶が舞い降りた感動。(高橋正子)

鳥取より最後の梨を売りに来る★★★
快晴の萩咲く道を登りけり★★★

9月22日(1名)

●小口泰與
稲の穂の茎に一列雨しずく★★★
田の中の無数の騒ぎ虫も居や★★★
飛蝗跳び影も跳びたる畷かな★★★★

●多田有花
<奥祖谷かずら橋>
秋嶺を下りかずら橋を渡る★★★★
事実を飾らずに散文的に表現した句だ。秋嶺も、かずら橋も奥祖谷そのもの。(高橋正子)

秋澄むや豆仏像をケータイに★★★
バス停の脇に咲き初め彼岸花★★★

9月21日(2名)

●小口泰與
枝毎の弓なり違う富有柿★★★
稲の香も畷にぎわすかと思う★★★

真直ぐな魁夷の「道」や天高し★★★★
魁夷は、東山魁夷。魁夷が描いた「道」は真直ぐで天高しである。(高橋正子)

●河野啓一
秋晴れや天平の夢法隆寺★★★
参道に群れてほぐれて蜻蛉飛ぶ★★★★
お参りの道すがら、蜻蛉が群れたり、またほぐれたりして飛ぶ。寺社へのお参りが楽しくなる。(高橋正子)

斑鳩や柿の実遠く眺められ★★★

9月20日(1名)

●小口泰與
秋の雲友の見舞いに参るのみ★★★
忽然と逝きし墓前や水懸草★★★★
線香の煙り消えけり思草★★★