10月22日(火)

★足先がふっと蹴りたる青どんぐり   正子
山路や雑木林を歩いていると柏や櫟などから椀状の殻斗に包まれた青どんぐりが落ちてきた。その青どんぐりを偶然蹴った作者の驚きと楽しさが秋の青空に響いている素敵な景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
山風に南へ藁塚の倒れけり/小口泰與
風によって南へ倒れるということは、もう、北風が吹き始めたのだろうか。刈田に立つ藁塚の倒れた様におかしみもあるが、寂しさもある。(高橋正子)

○野葡萄

[野葡萄/北鎌倉・東慶寺]

★野葡萄の色に遠野の物語 佐藤みほ
★野葡萄の瑠璃の惜別牧を閉づ 村上光子
★野葡萄や岩の迫り出す漁師町 仲尾弥栄子
★野葡萄の葉擦れの音も冬に入る 清水伊代乃
★野葡萄や滝を見にゆく道々に 阿部ひろし
★蒼穹に野葡萄が実をかかげたり 山村修
★野葡萄の色付き初めし城址かな 内田和子
★野ぶだうや湖畔の杜の写生会 大島英昭
★野葡萄の熟れ豊頬の石地蔵 中山純子
★野葡萄や四囲の山稜雲生みて 大竹淑子
★野葡萄の同じ瑠璃色ひとつも無し 栗田れい子
★野ぶだうの透明をただ呟きて 井上信子
★野葡萄をふふみて森の人となる 石田きよし
★野葡萄や何処に立つも水の音 飯田角子
★野葡萄の聯はそのままそのままに 瀬川公馨

 ノブドウ(野葡萄、Ampelopsis glandulosa var. heterophylla)はブドウ科ノブドウ属に属するつる性落葉低木。日本全国のほか東アジア一帯に分布し、アメリカにも帰化している。やぶに多く見られ、都市でも空地などに見られる。
 葉はブドウやヤマブドウに似ることもあるが、別属であり、特に果実は葉と交互につくなどブドウ類とは異なる。 果実は、熟すと光沢のある青や紫などに色づくが、食味は不味い。園芸植物として栽培されることがある。
 ノブドウ属(Ampelopsis)の植物はアジア・アメリカに20種ほどある。ウドカズラ(A. leeoides または A. cantoniensis)日本に自生し、葉はウドに似た2回羽状複葉で、実は赤く熟する。カガミグサ(白斂:ビャクレン、A. japonica)中国原産。漢方薬に使われる。

◇生活する花たち「犬蓼・金木犀・白曼珠沙華」(横浜四季の森公園)

10月22日

●小口泰與
朝寒の雨粒いよよ白きかな★★★★
朝はうすら寒くなった。雨が降れば、雨粒に白ささえ見える。辺りに「白さ」を感じるは秋なのだ。(高橋正子)

鳶を追う阿修羅の鴉秋の暮★★★
白波を起こす風道秋の湖★★★

●迫田和代
今日もまた広い空あり菊日和★★★★
「今日もまた」とあるから、日和続きの今日この頃である。菊の花の香る菊日和は、なんとも晴れ晴れとするよい天気だ。(高橋正子)

春竹の林の穴から朝日射し★★★
実を落としだけど青々銀杏の葉★★★

●河野啓一
柿の葉のきらきら光る朝の風★★★★
柿熟れて葉のきらきらと朝の風(正子添削)
もとの句は季語がないので添削した。柿が熟れるころは晴天続きで、ひんやりとした朝の風に柿の葉もきらきらと光って、心楽しい朝である。(高橋正子)

台風の進路気になる昨日今日★★★
秋冷の気を切りさいてバイク行く★★★

●多田有花
秋晴れや信号は全て青で過ぎ★★★
澄む水をたたえし寺の手水鉢★★★
石蕗の花黄色き蝶の来てとまる★★★

●桑本栄太郎
杓子菜の穫られ菜屑の乱れけり★★★
コスモスの風の狼藉絶え間なし★★★

蘆刈の空開かれて明らかに★★★★
背丈が人の丈以上もある蘆が刈られると、そこだけすっぽりと空が開かれたようになる。明らかに空がある。蘆を刈り取ったあとの空が新鮮で、さっぱりとしている。(高橋正子)

●小西 宏
アカゲラのせせらぎに来て枝の揺れ★★★★
アカゲラもせせらぎに来ることがあるようだ。せせらぎへと伸びた枝に止まったのだろう。アカゲラがいて、枝が揺れている。間近にアカゲラの動きを見るのは楽しいことだ。(高橋正子)

脚弾む道に団栗うかと踏む★★★
黄落の白樺染める夕日影★★★

●古田敬二
秋祭り果て山影に月上る★★★
秋冷の入り来る列車止まるたび★★★
朝の陽に落ちしばかりの栗光る★★★