5月2日(水)

★八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ  正子
八十八夜と言えば童謡「茶摘み」を思い起こします。この頃は柔らかな日差しと眼にも優しい若葉がそよぎ爽やかな風を心地よく感じられる季節です。また雀たちは日脚の伸びた明るいポプラに何時までもその喜びに囀っていたのでしょう。若葉と囀り、明るさに満ち溢れた夏の近づく音を感じます。また、「鳴きあそぶ」に可愛い雀に対して作者の優しい眼差しをも思われます。 (佃 康水)

○今日の俳句
筍を茹でつつ糠を噴き零す/佃 康水
筍を茹でるとき油断すると灰汁を抜き、柔らかくするために加えた糠が吹きこぼれる。鍋や釜の縁に吹きこぼれた糠がこびりつくこともある。しかし、こういう事に季節の暮らしがある。(高橋正子)

○八十八夜

★磧湯(かわらゆ)の八十八夜星くらし/水原秋桜子
★きらきらと八十八夜の雨墓に/石田波郷
★逢ひにゆく八十八夜の雨の坂/藤田湘子
★旅にて今日八十八夜と言はれけり/及川 貞
★八十八夜都にこころやすからず/鈴木六林男

 八十八夜(はちじゅうはちや)は、雑節のひとつで、立春を起算日(第1日目)として88日目、つまり、立春の87日後の日である。21世紀初頭の現在は平年なら5月2日、閏年なら5月1日である。数十年以上のスパンでは、立春の変動により5月3日の年もある。
 あと3日ほどで立夏だが、「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の泣き霜」などといわれるように、遅霜が発生する時期である。一般に霜は八十八夜ごろまでといわれているが、「九十九夜の泣き霜」という言葉もあり、5月半ばごろまで泣いても泣ききれない程の大きな遅霜の被害が発生する地方もある。そのため、農家に対して特に注意を喚起するためにこの雑節が作られた。八十八夜は日本独自の雑節である。
 この日に摘んだ茶は上等なものとされ、この日にお茶を飲むと長生きするともいわれている。茶の産地である埼玉県入間市狭山市・静岡県・京都府宇治市では、新茶のサービス以外に手もみ茶の実演や茶摘みの実演など、一般の人々も参加するイベントが行われる。
 「♪夏も近づく八十八夜…」と茶摘みの様子が文部省唱歌『茶摘み』に歌われている。
昭和7年(1932年)『新訂尋常小学唱歌 第三学年用』

茶摘/文部省唱歌
一、
  夏も近づく八十八夜、
  野にも山にも若葉が茂る。
  「あれに見えるは
  茶摘ぢやないか。
  あかねだすきに菅の笠。」
二、
  日和つづきの今日此の頃を、
  心のどかに摘みつつ歌ふ。
  「摘めよ、摘め摘め、
  摘まねばならぬ、
  摘まにや日本の茶にならぬ。」

○花蘇芳(はなずおう)

[花蘇芳/横浜日吉本町]

★いとしめば紅よどむ蘇芳かな/松根東洋城
★風の日や煤ふりおとす花蘇芳/滝井孝作
★花よりも蘇芳に降りて濃ゆき雨/後藤比奈夫
★街中の水に空ある花すおう/和知喜八
★花すおういつも縁側より見えて/高橋正子

 ハナズオウ(花蘇芳、Cercis chinensis)は中国原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の落葉低木で、春に咲く花が美しいためよく栽培される。高さは2-3mになり、葉はハート形でつやがあり、葉柄の両端は少し膨らむ。早春に枝に花芽を多数つけ、3-4月頃葉に先立って開花する。花には花柄がなく、枝から直接に花がついている。花は紅色から赤紫(白花品種もある)で長さ1cmほどの蝶形花。開花後、長さ数cmの豆果をつけ、秋から冬に黒褐色に熟す。和名紫荊はその花の紅紫色が、あたかもスオウ染め汁の色に似ているからである。
 花蘇芳の紅紫色は古典的。よい色である。ハート型の葉も魅力。空の青色に似合う。生家には土塀のそばに一本の蘇芳が咲いた。子どもの目にはその花は少し暗く思えたが、つやつやとした絹地のように映った。
 ハナズオウ属は北半球温帯に数種が分布する。地中海付近原産のセイヨウハナズオウ (C. siliquastrum) は落葉高木で高さ10mほどになり、イスカリオテのユダがこの木で首を吊ったという伝説からユダの木とも呼ばれる。このほかアメリカハナズオウ (C. canadensis) などが栽培される。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)

自由な投句箱/5月1日~10日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月1日~10日


5月10日(句)
作業中

5月9日(1句)

★風薫る銀杏並木の長き道/小口泰與
銀杏並木が続く長い道。並木を通り抜ける薫る風に、蘇るような快さを覚えたことであろう。(高橋正子)

5月8日(1句)

★向日葵のつぼみ早くも空の丈/桑本栄太郎
少し前植えたと思った向日葵がどんどん生長して、つぼみが付き、はやも空の中にゆらぐような丈になった。初夏、植物が勢いをもって生長する若々しい季節だ。(高橋正子)

5月7日(2句)

★麦秋や次次産まる羊の子/小口泰與
麦秋という牧歌的な季節。愛くるしい羊の子がつぎつぎと生まれ、さらに楽しい季節となった。(高橋正子)

★夏料理竹のそよぐを眺めつつ/廣田洋一
目に涼しげな夏料理。そよぐ竹が目に映れば、なおさら涼しく、おいしくいただける。夏料理と竹の取り合わせが自然でいい。(高橋正子)

5月6日(2句)

★緑さす薄粥軽く頂きぬ/廣田洋一
「緑さす薄粥」はきよらかで美しい。「軽くいただきぬ」には、病気の快復期でおられるのか、そのようなほっとした明るさがある。もしそうなら、くれぐれもお大事に。(高橋正子)

★猪の去りゆく背あり若葉中/多田有花
猪が去りゆくところを見た。若葉の中にどっしりとしたこげ茶の猪の背が見える。若葉の色と好対照。野生の動物に出会ったときの、驚きながらも親しみが湧く瞬間。(高橋正子)

5月5日(2句)

★夏来る楓の天蓋わが頭上/多田有花
楓の新緑が天蓋となって頭上を覆う。爽やかな楓の天蓋に「夏来る」を実感することだ。(高橋正子)

★工場に立てる大樹の花は葉に/川名ますみ
工場の敷地に大樹がある。殺風景な工場もその大樹は桜。満開となったときは、そこを通る人をどれだけ感嘆させたことか。今は葉桜となって、静かで大きな木陰を作っている。(高橋正子)

5月4日(1句)

★おさな等を蝶がつれ去る丘の上/小口泰與
丘の上で蝶を見つけた幼子たち。蝶を追いかけてどこかへいってしまった。「蝶がつれ去る」に面白さがある。蝶が「ハーメルンの笛吹き」でなくてよかった。(高橋正子)

5月3日(1句)

★憲法記念日の若き警官白シャツに/桑本栄太郎
憲法記念日と白シャツと二つ季語があるが、主となる季語は白シャツ。憲法は私が生まれた年の5月3日に施行され、大事なものと思ってきた。ここに来て、改憲論争で、賑やかではあるが、少し影が薄い感じを抱いている。憲法記念日の若い警官が、街頭で、デモか、交通整理かをしているのだろう。白シャツが眩しく、きびきびとして頼もしい。(高橋正子)

5月2日(2句)

★山藤や浅間の威容揺るがざる/小口泰與
山藤がやさしい紫色の花房を垂れているが、浅間山の威容は、まったく変わらない。いつも目にする浅間山の威容は、また、日々の安心感ともなっている。(高橋正子)

★竹林の天にきらめく夏日かな/桑本栄太郎
「天にきらめく」にはっとさせられた。竹林のそよぎには、その季節季節の趣がある。夏日には、「天にきらめく」のだ。(高橋正子)

5月1日(1句)

★せせらぎの水底光る五月かな/桑本栄太郎
五月のきよらかな明るさは、せせらぎの水を透明にして、水底まで光を届かせる。すがすがしい五月がせせらぎにもある。(高橋正子)

5月1日~10日


5月10日(4名)

小口泰與
上越を越ゆる杣道緑雨かな★★★★
夕暮の空かたむけて夏燕★★★
毛の国の馬も駆け出す白雨かな★★★

多田有花
棈の若葉広がる高さかな★★★
風ときに強く吹くなり桜の実★★★★
はつ夏の頂にいる頬白と★★★

廣田洋一
古き友交わる如し古茶新茶★★★★
古茶を汲む年寄りめきし所作なりき★★★
古茶の山さつと焙りて茶粥かな★★★

桑本栄太郎
葉桜やグランド一杯部活の子★★★★
坂道の木下闇とはなりにけり★★★
若楓かさね雨降るトンネルに★★★

5月9日(2名)

小口泰與
湯に浸かり嗚呼と言いけり柿若葉★★★
利根川の川面明るき青嵐★★★
風の香や銀杏並木の長き道(原句)
風薫る銀杏並木の長き道★★★★(正子添削)
銀杏並木が続く長い道。並木を通り抜ける薫る風に、蘇るような快さを覚えたことであろう。(高橋正子)

桑本栄太郎
医科大の病棟高く蔦茂る★★★
草茂る天井川の蛇行かな★★★★
枝の影揺れてざわめく若葉寒む★★★

5月8日(3名)

小口泰與
雲の峰二脚の画架のベランダに★★★
置鉤にかかる魚や夏の月★★★★
蟻の如モデルに集うカメラマン★★★

廣田洋一
噴水や地球儀廻す遊園地★★★
噴水やしずく光らせ図書館前★★★★
噴水や三つ動かすディレクター★★★

桑本栄太郎
夏めくや嶺の端確と何処までも★★★
向日葵のつぼみ早くも空の丈★★★★
少し前植えたと思った向日葵がどんどん生長して、つぼみが付き、はやも空の中にゆらぐような丈になった。初夏、植物が勢いをもって生長する若々しい季節だ。(高橋正子)

伝え継ぐアンネの薔薇を学校に★★★★

5月7日(3名)

小口泰與
雨後の庭木木清しきや今朝の夏★★★
大木へ魚眼レンズや夏きざす★★★
麦秋や次次産まる羊の子★★★★
麦秋という牧歌的な季節。愛くるしい羊の子がつぎつぎと生まれ、さらに楽しい季節となった。(高橋正子)

桑本栄太郎
草叢のかつて畑や著我の雨★★★
姫女苑の風の色香に迷いおり★★★
ベランダの茉莉花匂う雨ひと日★★★★

廣田洋一
氷に合わせ色付けしたるや夏料理★★★
夏料理竹のそよぐを眺めつつ★★★★
目に涼しげな夏料理。そよぐ竹が目に映れば、なおさら涼しく、おいしくいただける。夏料理と竹の取り合わせが自然でいい。(高橋正子)

夏料理イタリーワイン添えたりし★★★

5月6日(4名)

小口泰與
雨粒を抱き咲き初む牡丹かな★★★★
あけぼのに洗車終るや柿若葉★★★
初夏の赤城大沼雲浮かべ★★★

廣田洋一
新緑に命救わる日なりけり★★★
緑さす薄粥軽く頂きぬ★★★★
「緑さす薄粥」は、きよらかで美しい。「軽くいただきぬ」には、病気の快復期でおられるのか、そのようなほっとした明るさがある。もしそうなら、くれぐれもお大事に。(高橋正子)

新緑の柔らかき風そよぎけり★★★

多田有花
大輪のピンクの薔薇をきる男★★★
境内に夏鶯の絶え間なく★★★
猪の去りゆく背あり若葉中★★★★
猪が去りゆくところを見た。若葉の中にどっしりとしたこげ茶の猪の背が見える。若葉の色を好対照。野生の動物に出会った、驚きながらも親しみが湧く瞬間。(高橋正子)

桑本栄太郎
あめんぼの時折走る川面かな★★★
花槐房の高きが夕暮れに★★★★
青蔦の廃屋崩れ占めにけり★★★

5月5日(4名)

小口泰與
雨後の朝雄雄しき独活を丘に見し★★★★
一陣の風や折しも雉鋭声★★★
雨ほっと折りから蝶の飛び立ちぬ★★★

多田有花
春送る風は海より強く吹く★★★
夏来る楓の天蓋わが頭上★★★★
楓の新緑が天蓋となって頭上を覆う。爽やかな楓の天蓋に「夏来る」を実感することだ。(高橋正子

葉桜となりし大樹を見上げけり★★★

桑本栄太郎
薔薇園のまぬがれ難き色香かな★★★
草叢のかつて畑あり著我の花★★★
アカシヤの花房高きバス通り★★★★

川名ますみ
クローバー咲いて濠辺の高くなり★★★
風光るおりんの響き止まるとき★★★
工場に立てる大樹の花は葉に★★★★
工場の敷地に大樹がある。殺風景な工場もその大樹は桜。満開となったときは、そこを通る人をどれだけ感嘆させたことか。今は葉桜となって、静かで大きな木陰を作っている。(高橋正子)

5月4日(2名)

小口泰與
おさな等を蝶がつれ去る丘の上★★★★
丘の上で蝶を見つけた幼子たち。蝶を追いかけてどこかへいってしまった。「蝶がつれ去る」に面白さがある。蝶が「ハーメルンの笛吹き」でなくてよかった。(高橋正子)

うぐいすの声を収めし森の風★★★
病院のおちこち人や白躑躅★★★

桑本栄太郎
命名はプリンセスとや薔薇の花★★★
そら豆の莢の背伸びや青空に★★★★
花うばらするりと猫の垣根ゆく★★★

5月3日(3名)

小口泰與
誰となく笑まう雛菊おちこちに★★★
石仏の笑まいし空や蝶の春★★★
雨後の朝鳥語さかんや麦青む★★★★

多田有花
忙しく出入りつがいのつばくらめ★★★★
雨もまたよしゴールデンウィーク中日★★★
午後の風心地よく吹く夏隣★★★

桑本栄太郎
さらさらと枝の葉擦れや新樹冷ゆ★★★
憲法記念日の若き警官白シャツに★★★★
憲法記念日と白シャツと二つ季語があるが、主となる季語は白シャツ。憲法は私が生まれた年の5月3日に施行され、大事なものと思ってきた。ここに来て、改憲論争で、賑やかではあるが、少し影が薄い感じを抱いている。憲法記念日の若い警官が、街頭で、デモか、交通整理かをしているのだろう。白シャツが眩しく、きびきびとして頼もしい。(高橋正子)

みどり濃き窓の若葉となりにけり★★★

5月2日(2名)

小口泰與
山藤や浅間の威容揺るがざる★★★★
山藤がやさしい紫色の花房を垂れているが、浅間山の威容は、まったく変わらない。いつも目にする浅間山の威容は、また、日々の安心感ともなっている。(高橋正子)

居住まいを崩し吾子抱く春炬燵★★★
耕すや犬の足跡えくぼなす★★★

桑本栄太郎
からし菜の中州占めをり桂川★★★
麦秋のもんぺ姿や河川畑★★★

竹林の天にきらめく夏日かな★★★★
「天にきらめく」にはっとさせられた。竹林のそよぎには、その季節季節の趣がある。夏日には、「天にきらめく」のだ。(高橋正子)

5月1日(3名)

小口泰與
かげろうを手捕らんと追う園児かな★★★
木刀の気合一撃柳かな★★★
井の中の鯉や落花へ口を開ぐ★★★★

廣田洋一
五月来る旅行鞄を新たにす★★★
老いてなお心浮き立つ五月かな★★★★
小屋の中空を見上げるたか五月★★★

桑本栄太郎
せせらぎの水底光る五月かな★★★★
五月のきよらかな明るさは、せせらぎの水を透明にして、水底まで光を届かせる。すがすがしい五月がせせらぎにもある。(高橋正子)

吹き抜ける風のホームや聖五月★★★
こんもりと古墳の森の若葉光★★★