10月2日(火)

★刈り進む稲田の真っ赤なコンバイン  正子
今、当に稲刈りの真っ最中です。黄金に熟れた豊かな稲田を真っ赤なコンバインが爽やかな音を響かせて刈り進んでいる。コンストラストが鮮明でコンバインの勢いと刈り進んでゆく人の収穫の歓びも合わせ見えて参ります。(佃 康水)

○今日の俳句
満月や瀬戸の潮騒高まりぬ/佃 康水
月に左右される潮の干満。満月が昇ると、おだやかな瀬戸もざわざわと潮騒が高まる。潮騒の高まりに、ますます輝く満月となって、臨場感のある句となった。(高橋正子)

●爽やかな秋晴れ。
ネット短信No.355を発信。
https://blog.goo.ne.jp/kakan107

「俳句四季10月号・花冠創立35周年」の同人各位の感想をまとめ、「ブログ版俳句雑誌花冠」に載せる。
https://blog.goo.ne.jp/kakan12

昨日、『朝吹秀和句集』(現代俳句文庫84-ふらんす堂/2018.9.25発行)が贈られた。初めて写真を拝見。読みたい本があったが、それは後回しに。

第一句集『青きサーベル』第二句集『光の槍』は贈っていただいた。第三句集『夏の鏃』は読んでいない気がする。句集の中の感銘句はあとで挙げるとして、朝吹さんは、磯貝碧諦館の「握手」の編集長を終刊までされていて、草田男ー碧諦館と連なる師系におられる。このことは、句集の中のエッセイ「論考・草田男精神の継承を目指して」でより明らかにされている。

そのことで、はたと思った。朝吹さんの句を師系に置かないで読んだ場合と、師系列の中で読むのでは、まるで、理解が違う、ということを思った。「師系おそるべし」。朝吹さんの句は、草田男から碧諦館を経て詠まれているのだと気づいた。

自分の句に関しても、複雑だが、師系列のなかで理解してほしいと願うし、それに嵌めないでとも願う。

○貴船菊

[貴船菊/横浜日吉本町]           [貴船菊/イギリス・コッツウォルズ]

★観音の影のさまなる貴船菊/阿部みどり女
 コッズウォルズ
★小さき村貴舟菊をどの家も/高橋正子

 秀明菊は貴船菊ともいう。俳句では貴船菊が多い。多く観られる京都洛北の貴船に由来する。ピンクの花弁は実は額片で中央の黄色は雄蕊、地下茎で増える。
 シュウメイギク(秋明菊、学名:Anemone hupehensis var. japonica)とは、キンポウゲ科の植物の一種。別名、キブネギク(貴船菊)。名前にキクが付くが、キクの仲間ではなくアネモネの仲間である。中国から古い時代に入ってきた帰化植物である。文献上では「花壇綱目」に「秋明菊」の名前で記載が成れていて、日本に定着していたことが窺える。中国では明代末の「本草綱目」には記載はなく「三才図会」に「秋牡丹」の名前で記載されるようになる。「秋牡丹」の呼称は貝原益軒も「大和本草」で使用している。以後日本の園芸書には「秋明菊」「秋牡丹」で紹介されることが多くなり、「しめ菊」「紫衣菊」「加賀菊」「越前菊」「貴船菊」「唐菊」「高麗菊」「秋芍薬」などの多様な別名で呼ばれることになった。花色は赤紫色であるが、近年、他種との交配品種が市販されるようになり、弁数が少ない品種や白色の品種が多く栽培されて名称の混乱が見られる。多年草で開花期は秋、高く伸びた花茎の上に大柄な花をつける。花は多数の赤紫色の花弁状の萼片が目立ち、本物の花弁はない。

◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

自由な投句箱/10月1日~10日


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今日の秀句/10月1日~10日


10月10日(1句)

★積上げし本を取り出す秋の夜/廣田洋一
秋冷のいたる夜。夜のわびしさも手伝って、積み上げたままになっている本の一冊を取り出す。一度は読んだ本かもしれないし、新刊書かもしれないが、読書の楽しみが増える秋の夜である。(高橋正子)

10月9日(1句)

★鼻歌で自転車がゆく秋晴れを/多田有花
秋晴れに誰もが爽やかな気持ちになる。自転車に乗れば、つい鼻歌が出る。鼻歌の自転車が傍を通り過ぎ、その人の楽しさに触れるのもいいものだ。(高橋正子)

10月8日(1句)

★団栗を踏みたる響き九十九折/小口泰與
団栗を踏んだ時の「響き」。踏んだことのある者にしか伝わらない感触と音の響き。一瞬の小さい音の響きに九十九折の山道に楽しさが添えられた。(高橋正子)

10月7日(1句)

★利根川の岩に挟まる胡桃かな/小口泰與
利根川は群馬県と新潟県にまたがる大水上山の源流から山国を流れて千葉の銚子から太平洋に注ぐ。
途中、胡桃の木がせり出すところも通るだろう。落ちた胡桃か、流れてきた胡桃か、岩に挟まっている。胡桃に利根川の秋の深まりを思う。(高橋正子)

10月6日(1句)

★巡業の相撲部屋あり柿たわわ/小口泰與
相撲の地方巡業では、横綱はじめ、力士に親しみをもって触れ合うよさがある。「柿たわわ」が秋の地方巡業らしさを思わせている。(高橋正子)

10月5日(1句)

★しろがねの風のきらめく芒原/廣田洋一
「しろがねの風」に詩情がある。芒原が風に吹かれ、芒の穂波がさざ波のように輝いてる景色が思い浮かぶ。(高橋正子)

10月4日(1句)

★ついと前ついと前へと赤とんぼ/桑本栄太郎
赤とんぼの飛び方は、まさにこの句の通り。それによって、秋の透明な空気感がよく出ている。(高橋正子)

10月3日

※該当句無し

10月2日(2句)

★嵐去る頂の萩に蝶の来て/多田有花
嵐が去ったあと、頂は萩が咲き、蝶が舞う。嵐とは打って変わって可憐な光景が見られる。この季節萩に蝶がひらひらしているのを林縁などでもよく見かける。(高橋正子)

★色鳥の色付く枝を選びけり/桑本栄太郎
いろんな鳥がやってきて、それだけでも華やぐのに、色付く枝を選んで止まる。見ていると楽しくなる。(高橋正子)

10月1日(2句)

★雨の午後秋冷ここに始まるか/多田有花
秋冷というのは、いったいどこから始まるか。小さな哲学的な思いだが、雨の午後の今から始まるのだと、感じた。(高橋正子)

★十月と聞けば木魂す山の風/桑本栄太郎
十月になれば、秋も闌けて、風の音が侘しくなる。木魂すれば、風の音は、秋風の淋しさをまとう。(高橋正子)

10月1日~10日


10月10日(4名)

小口泰與
糸鳴りの竿やかがよう秋の川★★★★
限りなく現れ出づや稲雀★★★
叫喚の空中浮揚稲雀★★★

廣田洋一
積上げし本を取り出す秋の夜★★★★
秋冷のいたる夜。夜のわびしさも手伝って、積み上げたままになっている本の一冊を取り出す。一度は読んだ本かもしれないし、新刊書かもしれないが、読書の楽しみが増える秋の夜である。(高橋正子)

書を伏せて一眠りせし夜長かな★★★
長き夜を中断したる厠かな★★★

多田有花
播州の祭終われば晩秋に★★★
がさごそと音してだっと猪駆ける★★★
澄む秋の海の彼方の橋見ゆる★★★★

桑本栄太郎
どこまでも稲穂黄金や田道行く★★★
白粉の花の実となる日差しかな★★★★
爽やかに入日茜や野辺の風★★★

10月9日(4名)

小口泰與
百頭を越ゆる秋蝶乱舞せり★★★
秋の田や羽音激しき群雀★★★
橅の根に出づや面妖茸かな★★★

多田有花
風荒れて桜紅葉のかつ散りぬ★★★
法螺貝の音響きけり秋山路★★★
鼻歌で自転車がゆく秋晴れを★★★★
秋晴れに誰もが爽やかな気持ちになる。自転車に乗れば、つい鼻歌が出る。鼻歌の自転車が傍を通り過ぎ、その人の楽しさに触れるのもいいものだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
歩みゆく裾裳濡れをり寒露の日★★★
おもかげの母を追いたり金木犀★★★
穴あきの彩の錦や柿紅葉★★★

廣田洋一
ハロウィンの南瓜飾れる屋根の上★★★
赤き実をついばむ鳥や秋の空★★★

バスを待つ背中に休む赤蜻蛉(原句)
バスを待つ背に来て休む赤蜻蛉★★★★(正子添削)
原句には、間違いはありませんが、赤蜻蛉をより生き生きと感じさせるように添削しました。

10月8日(4名)

小口泰與
色変へぬ松や静寂の無言館★★★
椿の実名前彫られて売られけり★★★
団栗を踏みたる響き九十九折★★★★
団栗を踏んだ時の「響き」。踏んだことのある者にしか伝わらない感触と音の響き。一瞬の小さい音の響きに九十九折の山道に楽しさが添えられた。(高橋正子)

廣田洋一
夕映えや熟れたる柿の垂れ下がり★★★
柿の実やついばむ鳥に順番有り★★★
柿博打祖母には勝てぬ日の有りて★★★

多田有花
議事堂のうしろへ秋陽傾きぬ★★★
点心の店に並びし秋の夕★★★
秋の夜の地階の珈琲専門店★★★

桑本栄太郎
秋晴やぽつんと浮かぶ放れ雲★★★

わが影の長く尾をひく秋の暮(原句)
この句の場合、「わが影(人の影)が」「尾をひく」に違和感がありますので、添削しました。
わが影の長くひきたり秋の暮★★★(正子添削)

鴨川の畔にカップルうろこ雲★★★

10月7日(3名)

小口泰與
利根川の岩に挟まる胡桃かな★★★★
利根川は群馬県と新潟県にまたがる大水上山の源流から山国を流れて千葉の銚子から太平洋に注ぐ。
途中、胡桃の木がせり出すところも通るだろう。落ちた胡桃か、流れてきた胡桃か、岩に挟まっている。胡桃に利根川の秋の深まりを思う。(高橋正子)

揺れ動く風の吊橋谷紅葉★★★
秋桜子名付けし渓の照葉かな★★★

廣田洋一
鰯食ぶ食後のお茶に骨せんべい(原句)
鰯食ぶ食後のお茶の骨せんべい★★★(正子添削)
丸き目の青きを選び鰯買ふ★★★★
鯛の味出るまで洗ふ鰯かな★★★

桑本栄太郎
錦木の早やも緋色や紅葉初む★★★
壁打ちの音遠くまで秋気澄む★★★
午後五時のたそがれ時や秋ともし★★★

10月6日(4名)

小口泰與
柿たわわ地方巡業相撲部屋(原句)
巡業の相撲部屋あり柿たわわ★★★★(正子添削)
相撲の地方巡業では、横綱はじめ、力士に親しみをもって触れ合うよさがある。「柿たわわ」が秋の地方巡業らしさを思わせている。(高橋正子)

豆柿や噴煙の先鯉育つ★★★
笑栗や戌の日の岩田帯★★★

廣田洋一
老人の若さを自慢体育祭★★★
ブラスバンドの曲に始まる体育祭★★★★
自治会のエール交換体育祭★★★

多田有花
<靖国神社三句>
特攻隊の撮影秋の靖国に★★★
零戦の前輪に迫る秋日影★★★★
身に入むや弾痕残る砲身に★★★

桑本栄太郎
風吹けば眉に白髪に露しぐれ★★★
勝虫や風に前進あるばかり★★★★
メロデイー長き音色や草ひばり★★★

10月5日(3名)

小口泰與
花野道急に駆け出す小犬かな★★★
初紅葉湖かがようて鳥の声★★★★
夕映えの浅間や佐久の秋桜★★★

廣田洋一
しろがねの風のきらめく芒原★★★★
「しろがねの風」に詩情がある。芒原が風に吹かれ、芒の穂波がさざ波のように輝いてる景色が思い浮かぶ。(高橋正子)

荒畑に銀の縁取り花芒★★★
線路際休む間もなし花芒★★★

桑本栄太郎
壁打ちのテニスコートや秋気澄む★★★
夕闇の迫る家路や金木犀★★★★
山里の入日茜や添水鳴る★★★

10月4日(4名)

小口泰與
偕老の秋蝶めずる自然園★★★
秋の川玲瓏たるや本支流★★★★
山風に抗す老体秋の雷★★★

廣田洋一
旅の予定打ち合わせつつ温め酒★★★★
旧友と思ひ出話温め酒★★★
友焼きし猪口に注ぎたり温め酒★★★

多田有花
初冠雪終えたる富士を車窓より★★★
「初冠雪を終える」に違和感を感じまして、「初冠雪」を調べました。気象庁が初冠雪を定義したなかに、「初冠雪を迎える」という語句があります。これを使ったらいかがでしょうか。

初冠雪を迎えし富士を車窓より(正子添削)

駅を出て駅を振り向く秋の昼★★★

秋水が巡る公園に憩う(原句)
「憩う」によって、「秋水の巡る公園」のイメージの広がりが遮断されています。和田倉噴水公園と思いますが、下五があと一押しです。
秋水が巡る公園空映し(添削例)

桑本栄太郎
坂道を下り散歩や萩は実に★★★
夕されば嶺の茜やうろこ雲★★★
ついと前ついと前へと赤とんぼ★★★★
赤とんぼの飛び方は、まさにこの句の通り。それによって、秋の透明な空気感がよく出ている。(高橋正子)

10月3日(3名)

小口泰與
鯉釣の穂先にとまる蜻蛉(あきつ)かな★★★

落人部落いまや隆盛赤蜻蛉(原句)
「隆盛」は、赤蜻蛉には強すぎる感じです。
落人部落いまや盛んに赤蜻蛉★★★★(正子添削)

雨の日におもいだすのは紅葉かな★★★

廣田洋一
淑やかにお茶のお稽古秋袷★★★
殿方も秋袷召す茶会かな★★★
結い上げしうなじに見惚れ秋袷★★★

桑本栄太郎
夕されば雲の茜や秋入日★★★
夕闇に香りただよう金木犀★★★★
街灯の点かずままなり虫の闇★★★

10月2日(4名)

多田有花
嵐去る頂の萩に蝶の来て★★★★
嵐が去ったあと、頂は萩が咲き、蝶が舞う。嵐とは打って変わって可憐な光景が見られる。この季節萩に蝶がひらひらしているのを林縁などでもよく見かける。(高橋正子)

頂の薄の彼方白鷺城★★★
市川の流れを下に薄ゆれ★★★

小口泰與
風渡るおおむね丘はすすき原★★★
母の忌の蜂の子飯の炊きあがり★★★★
秋蝶の万里を飛ぶもおおらかに★★★

廣田洋一
塀越しに揺れる毬栗はじけさう★★★★
毬栗の一つ転がる道の端★★★
残りたる栗飯詰めて弁当に★★★

桑本栄太郎
白雲や台風一過の青空に★★★
色鳥の色付く枝を選びけり★★★★
いろんな鳥がやってきて、それだけでも華やぐのに、色付く枝を選んで止まる。見ていると楽しくなる。(高橋正子)

秋愁や風に柳の枝の裂け★★★

10月1日(4名)

多田有花
雨の午後秋冷ここに始まるか★★★★
秋冷というのは、いったいどこから始まるか。小さな哲学的な思いだが、雨の午後の今から始まるのだと、感じた。(高橋正子)

嵐去り雲無き十月の空に★★★
カンナ咲く嵐が残す風の中★★★

小口泰與
ごうごうと玻璃を叩くや秋嵐★★★
落鮎や聞き覚えある利根の波
「利根の波」に聞き覚えがあるのではなくて、「利根の波音」ではないですか。

秋蝶や都会の雨に覚束な★★★

廣田洋一
あの角を曲がれば香る金木犀★★★★
香り無くあれと訝る金木犀★★★
雨風に香り取られし金木犀★★★

桑本栄太郎
堰水の怒涛となりぬ野分あと★★★
赤き実のばらばら零れ小鳥来る★★★
十月と聞けば木魂す山の風★★★★
十月になれば、秋も闌けて、風の音が侘しくなる。木魂すれば、風の音は、秋風の淋しさをまとう。(高橋正子)