1月19日(日)

★日は燦と冬芽の辛夷生かしめて  正子
陽の光りを浴びて、冬を越す辛夷の芽のいのちが生き生きと輝いています。やがて春にほころぶ辛夷を思い、未来への希望を明るく抱かせてくれる御句です。(藤田洋子)

○今日の俳句
一路澄み石鎚見ゆる寒の晴/藤田洋子
行く手の一路の道が澄んで、その先に雪を冠った石鎚山が見える。寒晴れがくれたすっきりと、晴れやかな景色。(高橋正子)

○冬桜

[冬桜/横浜日吉本町]

★冬櫻飛ぶ鳥の影当りけり 宮津昭彦
★冬桜日当りて花増えてきし/大串章
★一葉の晩年日記冬桜/深見けん二
★冬桜咲いては空を曇らしむ/有働亨
★咲きつづくほかなき白さ冬桜/山田弘子
★冬ざくら朝日しづかに射しわたる/阿部ひろし
★陵や静もる朝の冬桜/青木政江
★冬桜日差せば母と在るごとし/松田雄姿
★汲みたての水ほのめくや冬桜/三橋迪子
★この深き空の青さよ冬桜/西山美枝子

★冬桜咲きいて空の美しき/高橋信之
★冬桜風受けやすき丘に咲く/高橋信之
★冬桜見ている眼を風が過ぐ/高橋正子
★冬桜どれも高くて雲に見る/高橋正子

 冬桜は、元日桜、寒緋桜などの別名がある。桜にはめずらしく緋色をしているが、一般には、冬にさく桜を冬桜と呼んでいる。
 冬桜として印象が深いのが、鎌倉報国寺にあるもので、緋色ではなく、桜色をしたもの。外国人が、枝にほちほちと咲いた小さな桜をいとおしそうに、目を近づけて見ていた。そのあと、私も近づいて眺めたが、消え入りそうに、でも確かに咲いている。あまり多く花をつけないのが見どころであろう。背景に青い空があると、いかにも、儚く美しい。
 冬桜は、バラ科サクラ属の落葉高木で、学名は Prunus x parvifolia cv.Parvifolia。「オオシマザクラ(P. speciosa)」と「マメザクラ(P. incisa)」との種間交雑種と考えられている。江戸時代の後期から栽培され、「コバザクラ(小葉桜)」とも呼ばれている。冬桜と同様に、秋から冬にかけて咲く桜に「十月桜」がある。冬桜と同じバラ科サクラ属。秋や冬に、「季節はずれに桜が咲いてるな」というときは、この十月桜であることが多い。十月桜も含めて、秋から冬にかけて咲く桜のことを総称して「冬桜」と呼ぶこともある。

◇生活する花たち「十両(やぶこうじ)・百両(からたち)・千両」(東京白金台・国立自然教育園)

1月18日-19日

1月19日

●小口泰與
黄昏の白鳥嘴(ハシ)を胸に埋め★★★★
白鳥や遥か彼方に芙蓉峰★★★
白鳥の羽をひろげし入日かな★★★

●祝恵子
左義長の傍を子どもの登園す★★★★
左義長は、子供が中心で行うものではなかったかと思うが、その子供は左義長を横目に登校している。伝統の行事も学校の日程によって主役不在のまま行われているようだ。(高橋正子)

時々は焔を返しとんど焚く★★★
小豆粥とろんと喉をとおりすぐ★★★

●小川和子
 回想
かわたれの雪原里の灯明りかな★★★
薪ストーブ燃える円居の歌留多とり★★★★
吹雪く夜の窓打つ音よラジオ聴く★★★

●桑本栄太郎
もくれんの冬芽つやめく青き空★★★
山茶花の紅の散り敷く坂の道★★★

探梅や堅きつぼみの丘の風★★★★
梅はまだかと探す探梅行は、たとえ開いた梅に出会わなくても気持ちが明るくなるものだ。丘の風は冷たいながらも日差しは仕出しに明るくなっているのだ。(高橋正子)

●小西 宏
深深(しんしん)と晴れたる空や寒椿★★★
枯木立小鳥に空の青を見る★★★

波近き風自在なり冬鴎★★★★
鴎が波に低く飛ぶ。風は自在に波をあそばせ 鴎をあそばせている。こんな渚の風景は屈託がなく楽しい。(高橋正子)

●川名ますみ
聖堂へ冬青空とアイビーと★★★★
飯桐の落葉し空は朱ばかり★★★★
ベランダの梅の莟に指す朝陽★★★

●多田有花
いつもより静かな日曜雪の朝★★★
雪の舞う城址より河口を見下ろす★★★
 <播磨国分寺跡>
天平も天正も遠し蝋梅に★★★★

●佃 康水
 全国都道府県対抗男子駅伝
寒風を切って襷の駈け抜けり★★★★ 
走者追いヘリの近づく寒の空★★★
駅伝の果てて寒さのつのりけり★★★

●古田敬二
青空へ新たな広がり枯欅★★★
餌を探す鋭き眼冬のモズ★★★
生きている証拠よ冬芽はどの枝にも★★★★

1月18日

●小口泰與
露天湯の後の薬や寒の内★★★
探梅や諾いがたき山の風★★★
静もりて街を洗いし夜の雪★★★★

●迫田和代
わが心すっかり決めて初詣★★★★
峠より下る雪道まっすぐに★★★
島々を結ぶ舟あり冬の凪★★★

●古田敬二
子離れの時遠からず龍の玉★★★
空や海の色濃き時や竜の玉★★★
青空へ香り広げて枇杷の花★★★★

●桑本栄太郎
鉄塔の嶺の空へと寒晴るる★★★★
見詰めれば天の凍雲ゆるぎおり★★★
あおぞらへ背伸び讃歌や冬芽どち★★★

●小川和子
初日今天城連山離れんと★★★
初御空海パノラマの快晴に★★★★
航跡を曳く海を飛ぶ冬鴎★★★

●多田有花
すぐそこの海を隠して寒霞★★★

鴨雑炊峠の先は雪模様★★★★
鴨打ちのあとの鴨雑炊とでも思わせる句だ。野趣味のある鴨雑炊に峠に舞う雪を奥深いものにしている。(高橋正子)

頂の切り株白く冬深し★★★

●川名ますみ
冬の日に書類をかざす勤め人★★★
しぐるればアイビー光る聖堂に★★★

窓越しにつぼみ明々鉢の梅★★★★
窓越しに見る梅の鉢植え。蕾に明々とした色が見える。待春の明るい気持ちが快い。(高橋正子)

●河野啓一
阪神淡路震災忌はや十九年の歳月が★★★
震災忌往時を思う人の群れ★★★
震災忌菊の白さが目にしみて★★★★