4月16日(火)

●小口泰與
風荒き郷にほぐれし牡丹の芽★★★
種袋振るや鳥達高く鳴く★★★
野ざらしの猫車あり鳥帰る★★★★
猫車はもう使われなくなったのか、野ざらしにされている。野畑には、若草が萌え出ているだろう。空高く鳥が帰ってゆく。さびしさの中にも、野は春の明るさを秘めている。(高橋正子)

●黒谷光子
購いて流しに小鮎跳ねさせる★★★★
獲れたばかりの小鮎を買う。流しに置くとまだぴんぴん跳ねる。山椒の葉や実と飴煮されるのだろうか。湖のほとりの暮らしが鄙びていながら風雅。(高橋正子)

飴色に煮ても小鮎の耀ける★★★
小鮎煮て明日の客へのもてなしに★★★

●多田有花
左右より来て春の川合流す★★★
九十九折れ木の芽の山の麓まで★★★
春筍鶴嘴を手に掘りにゆく★★★

●河野啓一
人の波牡丹桜のその下に★★★
重そうな色して牡丹桜かな★★★
散り初めと云えど嬉しき八重桜★★★

●桑本栄太郎
静もれる路地の狭庭や花蘇芳★★★
生垣の赤き芽吹きや古民家の★★★
乙訓の嶺から里へ花菜風★★★

●小西 宏
麗しきもの移りゆく春愁★★★
花蘂敷く道濃く淡く蝶の影★★★
薄日差す紫重し藤の棚★★★

4月16日(火)

★岩に滾る水にかがやく猫柳  正子

○今日の俳句
散らばって土手の土筆を摘んでる子/迫田和代
「散らばって」が楽しい。土筆があちこちに生え、子たちも互いに間隔をとって土筆取りに夢中。いい写生だ。(高橋正子)

○クレマチス(鉄線花)

[鉄線花/横浜日吉本町] 

★鉄線を活けて有馬の筆作り/大坪景章
★クレマチス咲く中年は美しき/永井潮
★鉄線花みな平らかに空を向く/高橋正子

 クレマチスはつる性植物の女王といわれるに相応しく、美しい大輪の花を咲かせる。しかも蔓は枯れることなく、毎年新しい枝を伸ばしては、その先に花を咲かせ続け、数年たつうちには、たくましく成長して大きな株になり、夥しい花を咲かせる。
 クレマチスというと外来の花のようにも思われるが、今我々が普通に眼にしてい るものは、日本に自生していたものをベースにしている。日本人はそれを鉄線といって長い間愛でてきた。今日でもクレマチスの総称として、鉄線という言葉を使う人は多い。
 詳しく言うと、日本のクレマチスには、鉄線と風車とがあった。鉄線は花びらが6枚で、風車のほうは8枚だから、容易区別できる。もっとも花弁に見えるものは、萼が発達したもので、本来の花弁は退化して存在しない。
 風車の名は、その形状から来ている。八方に広がった羽のような花びらの形があたかも風車を思わせるのだ。一方鉄線は丈夫な蔓が鉄線のようだからだろう。こちらは中国伝来のものである。
 クレマチスは北半球に広く分布している。欧米のものは花が小さい。そこで日本のように鉢仕立ては余り行われず、修景用に用いられることが多い。最近は日本のものとヨーロッパのものを掛け合わせて、多彩なクレマチスが作られている。
 花言葉は美しさや高潔に関連したものが多い。花の持つ優雅さの現われだろう。

◇生活する花たち「あおいすみれ・錨草・山吹草」(東京白金台・自然教育園)