●小口泰與
甲高き二羽の鶏声冬田かな★★★★
冬田にまで聞こえる鶏声か。二羽が甲高く鳴き合っている。この甲高い鶏の声は、寒い冬を一層寒々とさせる。(高橋正子)
竹林に鳥影ありし暖炉かな★★★
うす雲を透かす落暉や枯尾花★★★
●祝恵子
庭師らは寺に冬苗運び入れ★★★★
何の苗か。正月を迎える葉牡丹などであろうか、あるいは苗木か。庭師が入って寺の庭が年末新たになる。(高橋正子)
冬芽吹く目を凝らして枝見れば★★★
風任せなれど落葉は遠くまで★★★
●多田有花
焚火囲む朝の仕事の始まりに★★★★
建築現場など早朝からの戸外の仕事は、まず、暖を取ってから。木くずなどを燃やして焚火をする光景は、昔から変わっていない。(高橋正子)
一年の長さ短さ忘年会★★★
連山の彼方に雪の降りしきる★★★
●桑本栄太郎
白き実の揺るる並木や風冴ゆる★★★
街をゆく吾を追いかけ木の葉舞う★★★
土乾き冬田ほろほろ日射しけり★★★
●古田敬二
ベートーベン落葉の公園にまみえけり★★★
石畳冷え初む夕べをオペラ座へ★★★
開演を待つ間のウイーンの夜の冷え★★★
●川名ますみ
青々と葉の付きしまま蜜柑着く★★★★
蜜柑の荷を開けると、明るいオレンジ色が目に飛び込んでうれしいものだが、それに青々とした葉がついていれば、色は一層鮮やかになる。送り主の心遣いも忍ばれる。(高橋正子)
聖樹背に笑い損ねし写真かな★★★
葉を捨てて桜にまるき冬木の芽★★★
★南天に日はうららかに暮れにけり 正子
今日一日が穏やかに暮れていく。南天に差す日もうららかである。(祝恵子)
○今日の俳句
水仙の目線にあれば香りくる/祝恵子
目線の位置から、すっと真っ直ぐ水仙のいい香りが届く。香りがたゆたわず、すっと真っ直ぐ届くところが、水仙の花らしい。(高橋正子)
○俳句同人誌「遊牧」12月号(代表・塩野谷 仁)に花冠創刊30周年記念号が紹介される。紹介記事は黒澤雅代氏。丁寧に読んで的確な書評をいただいた。的確に読んでいただけるのは大変うれしい。昨夜礼状を認めて投函した。
○梔子(くちなし)の実(山梔子/くちなし)
[梔子の実/横浜日吉本町]
★山梔子に提灯燃ゆる農奴葬/飯田蛇笏
★竜安寺道くちなしの実となりぬ/村上麓人
★山梔子の実のみ華やぐ坊の垣/貞弘 衛
★くちなしの実のつんつんと風の中/安斉君子
★くちなしの実の日に映えて黙しけり/かるがも
クチナシ(梔子、巵子、支子、学名:Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。果実が漢方薬の原料(山梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。樹高1-3 mほどの低木。葉は対生で、時に三輪生となり、長楕円形、時にやや倒卵形を帯び、長さ5-12 cm、表面に強いつやがある。筒状の托葉をもつ。花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で先は大きく6弁に分かれ、開花当初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花には強い芳香があり、学名の種名「jasminoides」は「ジャスミンのような」という意味がある。10-11月ごろに赤黄色の果実をつける。果実の先端に萼片のなごりが6本、針状についていることが特徴である。また側面にははっきりした稜が突き出る。
東アジア(中国、台湾、インドシナ半島等)に広く分布し、日本では本州の静岡県以西、四国、九州、南西諸島の森林に自生する。八潮市、湖西市および橿原市の市の花である。果実が熟しても割れないため、「口無し」という和名の由来となっている説もある。他にはクチナワナシ(クチナワ=ヘビ、ナシ=果実のなる木、つまりヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味)からクチナシに変化したという説もある。(ウィキペディア)
◇生活する花たち「茶の花・茶の実・欅黄葉」(川崎市宮前区野川・影向寺)
