自由な投句箱/5月11日~5月20日

お願い
①自由な投句箱は花冠会員が自由にいつでも投句出来る場所です。かならずしも、毎日ご投句する必要はありませんので、ご自分のペースでご投句ください。
 
②以前投句した句を再度投句するのは、お止めください。
 
③花冠では、現代仮名遣いで表記していますので、ご留意ください。
 
※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/5月11日~5月20日

5月20日(2句)

★木立抜けて出会うすっと立つあやめ/多田有花
木立の薄暗がりをぬけると、すっと立つ明るい紫色のあやめに出会った。すっと立って迎えてくれたような印象だ。(髙橋正子)
★踏まれたる種や舗道にさくらの実/桑本栄太郎
さくらの実が舗道に落ちて、誰かに踏まれ潰れて種が飛び出している。その種に注目した。そのリアルなまなざしがいい。(髙橋正子)

5月19日(1句)

★艶やかに熟れて来たるやさくらんぼ/桑本栄太郎

元の句は、「艶やかに熟れ頃来たるさくらんぼ」だったが、さくらんぼの艶やかな熟れ具合を読者に知らせるには、はやり、写生のテクニックを使うのがよいので、写生を主眼に添削した。物から目を離さないことは重要。(髙橋正子)

5月18日(3句)

★オートバイ片寄せて食う心太/小口泰與

心太屋の店にオートバイが片寄せて止めてある。ツーリング途中に心太屋に寄ったバイク好きの初老の男性が想像できる。心太を立ち寄って食べようなど、およそ年齢が知れる。(髙橋正子)

★夏初め白藤にある白さかな/多田有花
藤の花は薄暑のころの花だ。夏の初めの白藤は、純白ではなく、芝不器男の句「白藤の揺りやみしかばうすみどり」にあるように、純白ではないだろう。しかし、白なのである。言い難い白さをこのように表現した。(髙橋正子)
★一雨に気のほとばしる薔薇若葉/上島祥子
薔薇の良さを花だけでなく、薔薇のやわらかい、くれないの若葉に認めた。一雨に、薔薇は活力をみなぎらせて生き生きしているのだ。まるで作者も薔薇の若葉になったような印象を与えている。(髙橋正子)

5月17日(2句)

★翡翠を待つ間も沼の水輪かな/小口泰與
翡翠が飛んで来るのを待っている間にも、沼に水輪が生まれている。沼に魚が凍て、水輪をつくっているのか。静かで涼しそうな景色だ。(髙橋正子)
★石清水ボトルに詰めてハイキング/廣田洋一
「石清水」が清涼なイメージを広げてくれている。石清水をボトルに詰めてハイキングにでかけるときの、うきうきした気分がよく伝わる。(髙橋正子)
5月16日(3句)
★雨だれの名残や芍薬ふわり咲く/多田有花
芍薬に雨だれが落ちていたのだろう。花に雨粒が残ってふわりと咲いている。みずみずしく、やさしく美しい芍薬だ。(髙橋正子)
★アカシヤの花影湖へ浮かべけり/小口泰與
アカシヤがみずからの花影をしずかに湖に浮かべている。さざ波がその花影をゆらしているだろう。繊細で、抒情的な風景がいい。(髙橋正子)
★茅花流し帰宅の遅い父子を待ち/上島祥子
帰宅の遅い父と子を外に出てみたりしながら、待つ母親のすこし心配な心情が「茅花流し」の季語によく象徴されている。「父子」に対する心配に日本の母らしい優しさが感じられる。(髙橋正子)

5月15日

※該当句無し

5月14日(2句)

★新緑へ噴水高々とあがり/多田有花
「新緑」と「噴水」はともに夏の季語。この句の場合は、季重なりとなるが、かならずしも季重なりが悪いわけではなく、お互いに引き立て合って、句がまとまっていればよいとすべきでしょう。

新緑のなかへ噴水が水を白く噴き上げてあがっている。新緑と噴水がひきたてあって、初夏の爽やかさが表現できている。(髙橋正子)

★亡き父の腕時計をして初夏の旅/小口泰與
「亡き父の腕時計」は年古りたものの重みがしっかりと感じられる。初夏の気軽な旅であろうが、軽快な旅装に腕時計が存在感をしめしている。(髙橋正子)
5月13日(1句)

★ほんのりと紅き生地なり柏餅/廣田洋一

柏餅は、白い餅生地か、よもぎの餅生地が多いが、ほんのりと紅色を差した生地もあるようだ。紅白にするのだろうか。粋な感じがする。(髙橋正子)

5月12日(1句)

★曇りても眼下明るき窓若葉/桑本栄太郎

「眼下明るき窓若葉」に生活の実態感がって、句が生きている。(髙橋正子)

5月11日(1句)

★舟小屋の中はひんやり卯月波/桑本栄太郎

回想の句ながら、「ひんやり」の感覚をいまもって忘れていない。その強い感覚の記憶がこの句を生かして古典的な美しい句になっている。(髙橋正子)

5月11日~5月20日

5月20日(4名)
小口泰與
峡に差す朝日煌煌夏燕
「朝日煌煌」の夜の灯りや星などが明るく強く輝く様子に使うことが多く見られます。朝日の感じとして、私個人的にはやや難を感じます。「輝く(き)」で十分いいと思います。(髙橋正子)
翡翠の一直線に水面へと★★★
峡に差す朝日赤赤代田かな★★★★
廣田洋一
ペチュニアや色の混じりてこんもりと★★★
昼顔はいつも孤独にすまし顔★★★
庭の奥白き石楠花重たげに★★★
多田有花
カトレアのとりどり初夏の温室に★★★
木立抜け出会うはすっと立つあやめ(原句)
「出会うは」の「は」説明のきらいがあります。なくていいです。(髙橋正子)
木立抜けて出会うすっと立つあやめ(正子添削)
ネモフィラの色は五月の空の色★★★
桑本栄太郎
吹き抜ける風の木蔭や姫女苑★★★
踏まれたる種の舗道にさくらの実(原句)
「種の」の「の」は主格ですが、ことによっては所有格にもとれる曖昧さがあります。「踏まれたる種」に注目して添削しました。
また、「の」は俳句では便利に使えますが、十分に気を付けて使ってください。やたら使わないように。(髙橋正子)
踏まれたる種や舗道にさくらの実(正子添削)
白鷺の堰堤に立ち動かざる★★★
5月19日(4名)
小口泰與
上州の沼を彩る若葉かな★★★
丸まると太る翡翠山の沼★★★★
雨樋にころころ並ぶ雀の子★★★
 
多田有花
ブーゲンビリア大温室へ向かう道★★★
大輪のベゴニア彩る壁一面★★★
五月の温室胡蝶蘭を愛で歩く★★★
廣田洋一
打ち揃い歌に合わせて麦を打つ★★★
葉桜や緑の雫零しおり★★★
貧乏人は麦を食いたる昭和の日(原句)
「貧乏人は麦を食いたる」が「昭和(の日)」を修飾していると思われますが、「昭和の日」は祝日を表す言葉として確立していますので、文法的に不自然に感じます。(髙橋正子)
貧乏人は麦を食いしや昭和の日(正子添削)
桑本栄太郎
気勢あげ樹上に白し山法師★★★
艶やかに熟れ頃来たるさくらんぼ(原句)
「写生」をお忘れなく。(髙橋正子)
艶やかに熟れて来たるやさくらんぼ(正子添削)
青々と木々の色濃く青しぐれ★★★
5月18日(4名)
小口泰與
咲き競う薔薇百本の楽しさよ★★★
翡翠をかって見しことありにけり★★★
心太片寄せてあるオートバイ(原句)
オートバイ片寄せて食う心太(正子添削)
 
多田有花
雲切れて風強くなり桐の花★★★
池の辺の薔薇園抜けて堤へ出る★★★
夏初め白藤にある白さかな★★★★
 
上島祥子
薔薇園や雨の上がるを待ち切れず★★★
一雨に薔薇若葉の気ほとばしる(原句)
一雨に気のほとばしる薔薇若葉(正子添削)
雨滴連ねて伸びる薔薇青枝★★★★
桑本栄太郎
  <京都四条大橋界隈散策>
せせらぎの涼風走る高瀬川★★★

大橋を人の行き交う真夏日に★★★
真夏日の花見小路や人の波★★★
5月17日(4名)
小口泰與
夕暮れの庭の紅ばら浮き立ちし★★★
翡翠を待つ間も沼の水輪かな★★★★
ざわざわと木木のうねりや初夏の朝★★★
桑本栄太郎
生き生きと鉢の花咲く青しぐれ★★★
何もかも鎮めるように夏の雨★★★
樋よりの滴の音や青しぐれ★★★
廣田洋一
五月雨や樹々青々と戦ぎおり★★★★
石清水ボトルに詰めてハイキング★★★★
前日の雨の名残や夏の川★★★
多田有花
播磨国風土記の里の卯の花よ★★★★
アイリスや虹の女神のそこにあり★★★
石楠花や深山幽谷は遠し★★★
5月16日(6名)
多田有花
純白もあるべしドイツアヤメかな★★★
雨だれの名残や芍薬ふわり咲く★★★★
山若葉里若葉なり平らかに★★★
 
小口泰與
アカシヤの花影湖へ浮かべけり★★★★
夕立や流れ激しき樹幹流★★★★

一村の赤ショウビンや森の朝★★★
 
桑本栄太郎
ジャスミンや園児の歌う幼稚園★★★
すかんぽの赤き穂が伸び植込みに★★★
新緑の橡の並木やバス通り★★★
 
廣田洋一
生き生きと葉脈伸びて柏餅★★★
外壁の塗装工事や山法師★★★
艶やかに紫蘭咲きたる池の端★★★
島祥子
消灯に輝き潤む夏の月★★★
茅花流し帰宅の遅い父子を待ち★★★★
傘立に日傘の増えて講義室★★★
弓削和人
若夏の湖瑠璃を重ねけり★★★
すずらんの揺れてまた揺れ風頼り★★★
裏山へ吹きて新緑となりにけり★★★

5月15日(4名)

小口泰與
魚跳ねて沼の水面を囃しけり
季語が欲しいです。(髙橋正子)
草分けて青大将のかまを上げ★★★
青葦にとまる野鳥や沼は風(原句)
「沼は風」は下五に見られる「空は青」などとと違って、無理な表現と思います。(髙橋正子)
桑本栄太郎
山里の甍まぶしく真夏日に★★★
金網のジャスミン香る幼稚園★★★
青枇杷や正午のチャイム学び舎に★★★
廣田洋一
俳友の墓に参れり薄暑かな★★★
木下闇小さき宮に願掛けし★★★
腰越の波平らかに初夏の風★★★
多田有花
噴水を囲みルピナス色とりどり★★★
色数の数多よジャーマンアイリスは★★★
芍薬や薄紅色の影見せて
「薄紅色の影」がよくわからないのですが、説明いただけますか。(髙橋正子)
5月14日(4名)
多田有花
新緑へ噴水高々とあがり★★★★
夏料理丸重箱に入りて来る★★★
夏つばめ羽ばたき雛の口開けて★★★
小口泰與
亡き父の腕時計をして初夏の旅★★★★
とんぼうの望遠レンズにとまりける★★★
ただ一人竿出す沼や初夏の朝★★★
廣田洋一
もちもちの麦飯炊いて夕餉かな★★★
建て替えの家立ち上がり棕櫚の花★★★
園児らの砂場に集う薄暑かな★★★
桑本栄太郎
葉柳の川風重く誘い居り★★★
新緑のトンネルくぐりお使いに★★★
木蔭行き日の斑躍りぬ夏の風★★★

5月13日(6名)

小口泰與
釣人の竿に蜻蛉のとまりけり★★★
夕日射す紅白のばら微笑みし★★★
鶯の沼を覆いし高き声★★★
多田有花
鯉のぼりの下で始まるドッグショー★★★
杜若の花に残りし朝の雨★★★
午後からは晴れてくるらし山法師★★★
廣田洋一
ほんのりと紅き生地なり柏餅★★★★
金色の波のゆらゆら麦畑★★★
乳母車木陰に止めて薄暑かな(原句)
乳母車木陰に憩い薄暑かな(正子添削)
土橋みよ
春苔や塗りしばかりの北の屋根★★★
風薫るソバージュの庭絵巻かな★★★
大玉やトマトの心室21★★★
桑本栄太郎
うす紅の朝の愁いや月見草★★★
心地良き風の五月や木蔭行く★★★
ひなげしの風の悪戯耐えて居り★★★
上島祥子
昼寝子の手足は白くベビーカー★★★★
雌猫に日陰譲ってすれ違う★★★
ラベンダー香り豊かな葉の繁り★★★

5月12日(5名)

小口泰與
鮎遡上利根源流の木木の色★★★
翡翠や利根の川音聞こえける★★★
かわほりは悪魔の使者か妖怪か★★★
廣田洋一
何事か思い巡らし花薊★★★
つんつんと白き花立て忍冬★★★
夏空に紅き花芯や車輪梅★★★
多田有花
路地裏に咲けども薔薇は薔薇なりき★★★
ログハウスの壁に吊られし石斛よ★★★
景色はいいです。(髙橋正子)
雨上がり赤き石竹一面に★★★
桑本栄太郎
白波の沖に逆巻く青葉潮★★★
曇りても眼下明るき窓若葉★★★★
水の浸く河川畑や五月川★★★
上島祥子
小鴉の母呼ぶ声や明けの空★★★★
若葉冷え猫膝上に収まりぬ★★★★
夏木立雨の余韻を残す郷★★★
「雨の余韻」と言う言葉は新鮮でよいです。読み手にどんなことを余韻と言っているのか、届きにくいです。(髙橋正子)

5月11日(3名)

多田有花
はつなつの光を浴びて城たちぬ★★★
豪華さや誰が咲かせし薔薇深紅★★★
まだ憂い無縁なるかな朴若葉★★★
ちょっと理屈が勝っているように思います。(髙橋正子)
小口泰與
沼の波初夏を奏でて居りにけり★★★
かにかくに逢えば安らぐばらの花★★★
かはたれの若葉揺れけり庭の木木★★★
桑本栄太郎
<故郷鳥取の日本海の追憶より>
舟べりを叩き追い込むハマチ漁★★★
沖合に白波走る卯波晴れ★★★
舟小屋の中はひんやり卯月波★★★★
 

■5月月例ネット句会入賞発表■

おわび
①入賞発表が一日遅れましたことをお詫びいたします。以下に入賞を発表いたします。

②また、清記において、19~21(髙橋正子の句)22~24(髙橋句美子の句)が抜けていました。理由は入賞発表の選者詠をコピーした際に切り取ってしまったようです。
さらに、15番の句が二句ありました。
15.和菓子屋でいくつ買おうか柏餅/高橋秀之
15.梳き終えてゆっくり透けてゆく田水/吉田 晃
15.梳き終えてゆっくり透けてゆく田水/吉田 晃 を
→ 25.梳き終えてゆっくり透けてゆく田水/吉田 晃 に番号を打ち換えます。
ご指摘くださった皆様、ありがとうございました。(髙橋正子)

             ★ ★ ★ ★ ★
■5月月例ネット句会入賞発表■
2025年5月13日
【金賞】
16.つるバラの開花弾けるように増え/上島祥子
つるバラが次々に咲き始める様子、溌溂と気高く詠まれているのがいい。作者の者を見る目が生き生きしている。また、口語俳句とし冗長さも、無理もないのがいい。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
33.麦秋の野の果て光る燧灘/柳原美知子
麦秋と光る海の色彩の対比が美しい。下五の「燧灘」が、特別な存在を示している。広々とした風景の美しさがよく表現されている。(髙橋正子)

39.夜が明けて緑雨の音に覚める吾子/西村友宏
緑の美しい季節に降る雨の音に、敏感に反応し、目覚めた吾子を、「緑雨」と言う季語を生かして、少し客観的に詠んでいるのがいい。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
10.花冷えのやがて暮れゆく湖畔かな/弓削和人
花冷えの湖畔であったが、それもやがて暮れていく。花時の日が暮れる湖畔が少しの寂しさをもって、情緒的に詠まれているのがいい。(髙橋正子)

28.マリア像に花捧げあり聖五月/多田有花
五月は聖母月として知られる。「花捧げあり」の表現から、敬虔な祈りを感じさられれる。静謐で清らかな雰囲気が「五月」をよく表している。(髙橋正子)

40.届くより香る花籠母の日に/藤田洋子
母の日に贈られる花籠の香りが、届くとすぐに広がる様子が詠まれ、視覚よりも嗅覚を先行させることで、花の存在感や贈り物の温かさを伝わってくる。母への感謝を受け止めた美しく優しい句である。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
01.帰る鳥白き浅間を越え行けり/小口泰與
越冬した鳥たちが、いよいよ北方へ帰る時が来たようだ。まだ雪の残る浅間山をはるかに越えて帰って行く鳥たちに名残りを惜しみ、新たな季節の到来を思いながら、無事を祈る作者の優しい眼差しが感じられます。(柳原美知子)

10.花冷えのやがて暮れゆく湖畔かな/弓削和人
桜の咲く時期の肌寒さと夕暮れの寂しさが漂う湖畔のの様子が時間の経過とともに郷愁を誘うように感じました。(土橋みよ)

16.つるバラの開花弾けるように増え/上島祥子
次々と咲くつるバラが目に浮かび心明るくなれます。明るい季節の到来も感じさせてくれます。 (藤田洋子)

33.麦秋の野の果て光る燧灘/柳原美知子
良く実った麦畑の広がる先に燧灘が光っている。大きく豊かな景色が良く見える。(廣田洋一)

39.夜が明けて緑雨の音に覚める吾子/西村友宏
夜明けにふと目が覚める吾子に気づき、力付の5月を感じ入る。眠っているあいだに、季節が移り変わる様子をあらわしている。(弓削和人)

40.届くより香る花籠母の日に/藤田洋子
花はその色、姿も素晴らしいですが、最も印象に残るのが香りだったりします。花籠に盛られていたのはカーネーション、薔薇、百合などでしょうか?(多田有花)

22.朝顔の小さき双葉に朝の風/髙橋句美子
28.マリア像に花捧げあり聖五月/多田有花

【入選/19句】
03.風も無き沼に水輪やあめんぼう/小口泰與
動かない水面だからこそあめんぼうがいて 長閑な景色が浮かびます。(上島祥子)

05.竹皮を脱ぐや早くも天を衝く/桑本栄太郎
筍が成長し次々と皮を脱いだと思うと、早くも天を衝くほどの立派な若竹になっている。その勢いに驚くとともに、光を放つ美しい竹に新たな季節の到来を感じます。(柳原美知子)

07.丹沢の山青々と麦の秋/廣田洋一
 雪解けから若葉の山へ。山の青と金色に光る麦が丹沢に夏が来たことを教えてくれる。一句にいくつもの色が入っていて、豊かな初夏の山が浮かんでくる。すっきりしていて力強い句ですね。(吉田 晃)
麦が熟れてくるその向こうに青い丹沢の山々が見えます。故郷の風景とはこういうものかと思われます。(多田有花)

08.中空をひらり回転燕の子/廣田洋一
燕の子が早くも飛べるようになり、生き生きと中空を回転する様子に喝采される作者。燕が巣をつくってからずっと燕の子を見守られてきた温かい眼差しを感じます。(柳原美知子)

12.うつりゆく空彩りて木の芽雨/弓削和人
美しい木の芽時に降る雨は水彩画のように空を彩ってくれ、心やすらぎます。(柳原美知子)

14.歓迎の国旗と並ぶ鯉のぼり/高橋秀之
大阪万博の情景でしょうか。鯉のぼりという日本の文化の象徴と異国の象徴である国旗が並ぶ多文化共生社会の景色の面白さが感じられました。国旗は上部が固定され静かに掲げられているのに対して、自由に空を泳ぐ鯉のぼりが見事です。(土橋みよ)

15.和菓子屋でいくつ買おうか柏餅/高橋秀之
つやつやとした柏餅がずらりと並ぶ店頭のケース棚。思わず迷ってしまわれる心境がわかります。(多田有花)

17.薔薇薫る夜半の雨が残る朝/上島祥子
夜に雨が降りその雨滴がまだ薔薇の花びらに残っている朝です。薔薇の咲く庭に出られたらその香りが一層際立って感じられました。香りだけからでも薔薇の姿が目に浮かぶような御句です。(多田有花)

18.夏木立雨の余韻を残しけり/上島祥子
雨後の雫をこぼし光をこぼし、静かに佇む夏木立に涼しい風が渡る林。「雨の余韻」が詩的で、心惹かれます。(柳原美知子)

15→25.鋤き終えてゆっくり透けてゆく田水/吉田 晃
田植えのために梳かれた田に張られた水が、時間が経つにつれて澄み、日を透かせ、山々や空を映して美しい。農作業を終えて新たな季節を迎える喜びと充実感が思われます。(柳原美知子)
田に水が入り鋤いていけばしばらく田は濁ります。それが時間経過とともに土が沈殿し再び水が澄んできます。着実な詠者の観察の目が感じられます。(多田有花)


30.楠若葉お城まつりの近づきぬ/多田有花
初夏、むくむくと湧き上がる緑の楠若葉に、恒例のお城まつりを迎えられるのですね。お城に映える楠若葉がひときわ美しく鮮やかです。 (藤田洋子)
34.鱗取る音も春らし地場祭/土橋みよ
正岡子規の句に「俎板に鱗ちりしく桜鯛」があります。 鱗掻きに散る鯛の鱗が春の陽に艶々して、春の明るさ、楽しさを感じます。作者の元気な姿を想像します。(吉田晃)

36.柿若葉弾く雨音の軽やかに/土橋みよ
柿若葉は初夏らしく明るい萌黄色で、つやがあり柔らかである。その若葉に初夏の雨音が吸い込まれていく素敵な景ですね。(小口泰與)
柿若葉の鮮やかな緑に、降る雨がいっそうみずみずしさを感じさせてくれます。軽やかな雨音に明るい季節の到来を思います。 (藤田洋子)

37.新生児検診終えて夏初め/西村友宏
春に生まれた子が問題無く夏を迎えるその嬉しさ安堵感が「新生児検診終えて」から伝わってきました。(上島祥子)

38.人形と並んでバシャリ初節句/西村友宏
赤ちゃんは男の子ですね。初節句の五月人形を傍らに新米パパが何枚も撮影されている様子が微笑ましいです。それとも本格的に写真館での一枚でしょうか。(多田有花)

41.クレヨンの画紙にバラ咲く母の日に/藤田洋子
折りしも今日5月11日は「母の日」です。幼子が画用紙にクレヨンで薔薇を描き、「ママ見て見て!お花のプレゼントだよ!!。」(桑本栄太郎)
母の日のきっと一番うれしいプレゼントでしょう。どんなバラであっても素敵な思い出になりますね。(高橋秀之)
母の日のプレゼントは何を貰っても嬉しいものです。思いのこもったクレヨン画はわずか期間しか貰うことが出来ないので嬉しさひとしおですね。
幸せな気持ちになる句です。 (上島祥子)

42.父と子のボール飛び交う柿若葉/藤田洋子
柿若葉を透かす光の中で、父と子の笑顔弾けるボール遊びのひととき。明るく心触れ合うかけがえのない初夏のひとときです。(柳原美知子)

02.行く春や山語らえば川答う/小口泰與
13.目の前をひらりと右へ蝶が舞う/高橋秀之

■選者詠/髙橋正子
21.桑の実をもぎて手濡らす雨雫
雨の中にたたずむ桑の木、その葉から漂うほんのりとした香り、実をもいだときに雨の雫に触れたひんやりした感覚と柔らかい触感、そして桑の実の甘酸っぱさまで想像され、その静かな時間が経過する情景に詩的な美しさを感じました。(土橋みよ)

19.朝顔の双葉土付け芽生えたり
20.みどり児の頬がぷっくり夏近し
■選者詠/髙橋句美子
22.朝顔の小さき双葉に朝の風
発芽してまもなくの朝顔の双葉。その小さな命の輝きを優しく愛おしむ眼差しを思います。清々しい朝の風に心地よい季節感も感じ取れます。
 (藤田洋子)

24.次々と薔薇咲く淡い花の色
薔薇の花は華やかで咲き誇るという通俗的なイメージを持っておりましたので、「次々と淡い色に咲く薔薇の開花」の様子に最初はびっくりしました。しかし、薔薇は淡い色も魅力的です。華美になりすぎず繊細な色合いの薔薇が時間とともに次々に咲いていく穏やかな情景を穏やかな心持で感じられる幸せを想いました。(土橋みよ)
23.母の日に昔を想い贈り物

互選高点句
●最高点句(6点)
39.夜が明けて緑雨の音に覚める吾子/西村友宏
集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。