10月月例ネット句会/入賞発表


■2019年10月月例ネット句会■
■入賞発表/2019年10月14日

【金賞】
07.秋燕や朝の光に群れて飛ぶ/多田有花
夏の間、巣を作り、子育てに忙しかった燕も秋には、大海をわたり南へと旅立つ。旅立ちの前に、集まり群れ飛ぶ姿が、朝の光に眩しい。間もなく去ってゆくことを思うと淋しい。(高橋正子)

【銀賞/2句】
10.秋日和花に触れられ触れてゆく/祝恵子
秋の日和に外を歩くと、咲き乱れる花が触れてくる。触れられれば、また、花に触れてみる。花々のやさしい触感が身に伝わる。花に触れられ、触れる優しい時間だ。(高橋正子)

25.水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ
鉢植えのコスモスに、水を一杯、まるで、人に飲ませるように、さらりと移した。「さらりと」が、さわやかで、優しい。コスモスの花がうれしくて揺れ出しそうだ。(高橋正子)

【銅賞/3句】
13.稲刈機規則正しき音一日/柳原美知子
稲刈機の規則正しい音が休みなく聞こえ、稲は刈り取られて刈田となってゆく。稲刈機の確かな音に豊かな稔りが重なる。(高橋正子)

16.虫の音が夜風と共に流れくる/高橋秀之
日ごと細くなる虫の声。涼しい夜風にのって、窓から聞こえてくるのだ。夜風に乗てくる虫の綴れる声がさびしさを誘う。(高橋正子)

21.富士山の青々そびゆ野分あと/廣田洋一
野分が塵をすっかり払い、富士山は青々として聳えている。長く裾を引く富士の優美な姿をあらためて、日本一の山と思う。私は、四国に住んでいた頃、富士山を日頃見ている人たちは富士山は彼らにどのように思える山なのであろうかと、妙な疑問をもったが、少し、疑問がとけたように思えた。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
10.秋日和花に触れられ触れてゆく/祝恵子
秋の快晴の日は空気が澄み渡って、天高くピクニックや遠足に最適で、コスモス畑でしょうか、その畑の中をコスモスに触れられ触れて歩く素敵な景ですね。(小口泰與)

07.秋燕や朝の光に群れて飛ぶ/多田有花
燕が飛ぶ綺麗な光景が目に浮かびます。(西村友宏)

16.虫の音が夜風と共に流れくる/高橋秀之
夜風にもやや寒さを覚えるころになり、虫の音を楽しめるのも後わずか。秋の深まりを感じ、その秋を愛でておられる様子が伝わってきます。(多田有花)

31.太鼓の音を空へ響かせ子供神輿/高橋正子
秋晴れの抜けるような青空へ響く太鼓の音、子供神輿の元気のよい掛け声、秋祭りならではの爽やかな心和む光景ですね。(柳原美知子)

15.拾いたての栗山の気配をいただきぬ/柳原美知子
21.富士山の青々そびゆ野分あと/廣田洋一
25.水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ

【高橋正子特選/7句】
13.稲刈機規則正しき音一日/柳原美知子
黄金に稔った稲田が次々と刈田へと姿を変えていきます。その中で一日中響いている稲刈機の音。現代的な稲刈り風景がそこにあります。 (多田有花)

04.山柿へ山の光の重なれり/小口泰與
柿のつやつやした表面に光が重なる様子がきれいです。 (高橋句美子)

07.秋燕や朝の光に群れて飛ぶ/多田有花
10.秋日和花に触れられ触れてゆく/祝恵子
16.虫の音が夜風と共に流れくる/高橋秀之
21.富士山の青々そびゆ野分あと/廣田洋一
25.水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ

【入選13句】
24.帰郷バス降車ボタンに秋夕焼/西村友宏
久しぶりの帰郷でしょうか。夕焼けてゆく中の降車ボタン、待ち人達の姿が見えてくるようです。 (祝恵子)

35.朝寒の早起きすれば太陽眩し/高橋句美子
秋になり日の出も遅くなってきましたが、それでも朝日の眩しさを感じるためには早起きが必要である。そして、早起きしてみる太陽の眩しさ爽やかな一日の始まりでもあります。 (高橋秀之)

27.幼名で耳澄まし待つ大颱風/川名ますみ
大型颱風の予報に、子供の頃の怖かったり、どきどきした記憶が呼び覚まされます。刻々と変わる風雨の音にも耳を澄まし待つ緊張感がうかがえます。 (柳原美知子)

09.秋晴れを眺めつついるベッドかな/多田有花
病院のベッドであろう。秋晴れを眺めつつ、その秋晴れの下へ外出したいという思いが伝わってきます。 (高橋秀之)

11.招き猫の切手貼り付け秋便り/祝恵子
切手の図柄が招き猫なんでしょう。その縁起よさげな切手を貼りつけての秋便りは、先方への温かい思いが詰まっていそうです。 (高橋秀之)

12.萩咲けり仏日和の寺の庭/祝恵子
「仏日和」というのが秋晴れの日のお寺の庭を象徴しています。柔和な仏像の笑みのような穏やかな日和、お参りしたお寺の庭には萩が咲きそろっていました。(多田有花)

26.列車の響き次第に減りて颱風来/川名ますみ
最近では、台風の襲来に備えてあらかじめ計画運休する交通機関が増えています。台風19号に備え、首都圏でも電車が次々運休していったのでしょう。それを敏感な耳でとらえておられます。(多田有花)

02.溝蕎麦や細川(ほぞ)を流るる水の音/桑本栄太郎
澄んだ細川の水音もやさしく、秋光にきらめく雫を帯びた溝蕎麦の可憐さが眼に浮かぶようです。(柳原美知子)

08.点滴の始まりを待つ秋の朝/多田有花
14.朝空へ畦を描ける曼珠沙華/柳原美知子
22.見送りし列車のドアに赤蜻蛉/西村友宏
34.秋晴れの光眩しくガラス窓/高橋句美子
35.朝寒の早起きすれば太陽眩し/ 高橋句美子

■選者詠/高橋信之
30.今日をたのしみに秋刀魚焼く匂い
今日一日のたのしみを思われる生活、季節のたのしみを思われ、秋刀魚を焼く匂いに満足感を覚えられる充実したお暮しぶりに心惹かれます。(柳原美知子)

28.さわやかな今日の始まる朝日の部屋
29.卓上の薄が風もなく揺れる

■選者詠/高橋正子
32.子供神輿小さき街の街筋を
子供神輿は、色々と支援してくれる家を回る。故に小さき街の街筋を、と言う12文字が良く実態を表しているのが上手い。 (廣田洋一)

31.太鼓の音を空へ響かせ子供神輿
33.台風の風雨の音に林檎剥く

■互選高点句
●最高点(同点3句/4点)
10.秋日和花に触れられ触れてゆく/祝恵子
21.富士山の青々そびゆ野分あと/廣田洋一
25.水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も一点として加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

■10月月例ネット句清記


■10月月例ネット句清記
2019年10月13日
12 名36句

01.赤き実の屋根に垂れ居りからす瓜
02.溝蕎麦や細川(ほぞ)を流るる水の音
03.吟行の月の名残りや御所の庭
04.山柿へ山の光の重なれり
05.谷川の水押す風や秋の湖
06.桔梗やゲイトボールの打球音
07.秋燕や朝の光に群れて飛ぶ
08.点滴の始まりを待つ秋の朝
09.秋晴れを眺めつついるベッドかな
10.秋日和花に触れられ触れてゆく

11.招き猫の切手貼り付け秋便り
12.萩咲けり仏日和の寺の庭
13.稲刈機規則正しき音一日
14.朝空へ畦を描ける曼珠沙華
15.拾いたての栗山の気配をいただきぬ
16.虫の音が夜風と共に流れくる
17.秋晴れに神戸の海は煌めいて
18.朝晩は涼しくなりて黄葉す
19.底紅や女子高生の笑ひ声
20.このところジムに来ぬ人秋の風

21.富士山の青々そびゆ野分あと
22.見送りし列車のドアに赤蜻蛉
23.部屋干しの服連なりて台風来る
24.帰郷バス降車ボタンに秋夕焼
25.水一杯さらりと鉢のコスモスに
26.列車の響き次第に減りて颱風来
27.幼名で耳澄まし待つ大颱風
28.さわやかな今日の始まる朝日の部屋
29.卓上の薄が風もなく揺れる
30.今日をたのしみに秋刀魚焼く匂い

31.太鼓の音を空へ響かせ子供神輿
32.子供神輿小さき街の街筋を
33.台風の風雨の音に林檎剥く
34.秋晴れの光眩しくガラス窓
35.朝寒の早起きすれば太陽眩し
36.昼休みの鞄を重く栗蒸し羊羹

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

10月13日(日)


快晴。
台風一過の快晴。風が残る。台風19号は、近くでは被害もなく通り過ぎた。

太鼓の音空へ響かせ子供神輿  正子
子供神輿小さき街の街筋を   正子
台風の風雨の音に林檎剥く 正子

●10月月例ネット句会。
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d

●駒林神社の本祭り。今年はまだ、金木犀の香りを嗅いでいない。昼過ぎ、駒林神社へお参りに。境内は、祭りばやしの音楽が鳴っているだけで、受付の女性が一人。氏子らしい老人が一人いただけ。台風の直後とはいえ、里祭りが年々さびしくなっている。

●注文していた折り畳みステッキが郵便で届く。台風で今日は無理かと思ったが、届いた。自立歩行ができない人は使うべからずとある。

●夕方句美子の家へ。目黒川が近いので、マンションの住人は自宅待機するように回覧が回ったとか。11年前の台風では、浸水したとのこと。15号の時の方が怖かったといっていた。鼓月の栗蒸し羊羹をもらって帰る。生地に葛が入っているようだ。

自由な投句箱/10月11日~20日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/10月11日~20日


10月20日(1句)

★猪の駆け去る後を歩きけり/多田有花
猪は、比較的人家に近い山にも棲息してる。人里近く住んでいるようだ。山に登り、猪が駆け去るのを目撃。そのあとを、普通に変わらず歩いて行った。山をよく知った有花さんの余裕か。(高橋正子)

10月19日(1句)

★美濃和紙のつつみし痕あり栗きんとん古田敬二
美濃和紙にやわらかくくるまれたきんとんに、絞った痕がそのままついている。絞られたままのその通りの筋痕が、きりっと美しい。栗どころ、和紙の産地ならではのお菓子に秋を思う。(高橋正子)

10月18日(1句)

★屋上に出れば秋天限りなく/多田有花
入院されているときの句。病室での治療の合間、屋上に出て見れば、秋天は限りなく広がっている。この爽やかで広々とした空への感嘆もさることながら、それが限りなく続くことを願う気持ちが大きい。(高橋正子)

10月17日(1句)

★飛行機雲幅を広げて秋の雲/廣田洋一
飛行機雲の引かれ始めは、細く真直ぐに伸びているが、次第に幅が広くなって普通の雲のようになる。飛行機雲も秋の雲なのだと気づく。(高橋正子)

10月16日(2句)

★山里や水神様へ秋茄子を/小口泰與
山里の作物を育てた水。水神を祀って水の恵みや治水を祈る。秋も深まり、採れた茄子を供えて祀った。素朴な祈りの姿がいまもある。(高橋正子)

★鋏音空に跳ねたり松手入れ/廣田洋一
松の剪定は、手間のかかること。鋏の音も弾んで、その度ごとに松の葉が落ち、松の姿が整い。空が晴れやかにみえてくる。気持ちの良いものだ。(高橋正子)

10月15日(1句)

★冬瓜の青さ残せしスープかな/廣田洋一
冬瓜は生のうちは、白いが、煮ると淡くみどりがかってくる。透きとおったスープに冬瓜の青みがのこっているのも美しい。日本的な美しさがここにある。(高橋正子

10月14日(1句)

★裏山は桜紅葉があちこちに/多田有花
病室などから、裏山を見ることがある。緑の多い山に、桜紅葉があちこちにある。それはそれで、きれいなのだが、桜紅葉に、また、春の山桜の咲く様子を思っても見ただろう。(高橋正子)

10月13日(2句)

★台風一過祭屋台の繰り出しぬ/多田有花
秋祭りが予定されているのに、台風が来る。台風一過の後の本祭り。みんな喜び勇んでいる。屋台もいろいろとぎやかに繰り出した。無事秋祭りが行えるのは、嬉しく楽しいことだ。(高橋正子)

★青空も山も色濃し野分あと/廣田洋一
野分あとは、ものがいろいろ普段とは違った風情をみせてくれる。こまごまと観察することもある。この句のように、空を見上げ、山を望みおおらかに野分のあとの晴れやかさを思うこともある。(高橋正子)

10月12日(1句)

★水一杯さらりと鉢のコスモスに/川名ますみ
身近のコップにでも水が入っていたのだろうか。鉢のコスモスにさらりと移してあげた。喉が渇いていたかのように、水をもらったコスモスは、いきいきとしてきた。(高橋正子)

10月11日(1句)

★鵙鳴けり長袖シャツに着替えたり/廣田洋一
鵙が鳴くと、急に秋が深まった感じがする。昼間は暑さを思える秋の日も、長袖シャツで心地よく過ごせるようになった。そんな季節が来たことがうれしい。(高橋正子)

10月11日~20日


10月20日(4名)

廣田洋一
縄張りは棚田一枚案山子かな★★★
猫の伏す空地を囲む猫じゃらし★★★
休耕田狗尾草の豊作かな★★★

小口泰與
そぞろ寒元村長の回顧談★★★
名水の里に生まれし新豆腐★★★
秋耕や我が手足なる猫車★★★★

多田有花
退院し散歩するなり秋の山★★★
退院し湯舟に浸かる秋の夜★★★

猪の駆け去る後を歩きけり★★★★
猪は、比較的人家に近い山にも棲息してる。人里近く住んでいるようだ。山に登り、猪が駆け去るのを目撃。そのあとを、普通に変わらず歩いて行った。山をよく知った有花さんの余裕か。(高橋正子)

桑本栄太郎
畝ならびすずろに寒し蔬菜園★★★★
秋冷や駅の際まで刈られ居り★★★
秋雨や塒かしましすずめどち★★★

10月19日(5名)

多田有花
退院の前のシャワーを秋の夜★★★
背高泡立草咲く中退院す★★★★
秋曇まず保健所へ申請に★★★

小口泰與
天高し牧草ロール点点と★★★★
落陽の我が影濃きや刈田道★★★
瞬きの間合すいっと秋入日★★★

廣田洋一
秋の暮軍手二つが干されをり★★★★
楽しみの旅行中止や秋の暮★★★
山際の雲に残照秋の暮★★★

桑本栄太郎
雨降りて更に紅濃き水木の実★★★★
秋雨の更に色付く庭木かな★★★
秋冷や小雨にけぶり嶺暮るる★★★

古田敬二
美濃和紙が柔らかくつつむ栗きんとん★★★★
合唱の休憩時間の栗きんとん★★★

美濃和紙のつつむ痕あり栗きんとん(原句)
美濃和紙のつつみし痕あり栗きんとん★★★★(正子添削)
美濃和紙にやわらかくくるまれたきんとんに、絞った痕がそのままついている。絞られたままのその通りの筋痕が、きりっと美しい。栗どころ、和紙の産地ならではのお菓子に秋を思う。(高橋正子)

10月18日(4名)

廣田洋一
両腕に雀休める案山子かな★★★
一日の勤めを終へて釣瓶落としかな★★★
丹沢の山際晴れて釣瓶落とし★★★★

多田有花
裏山に始まる紅葉ななかまど★★★
紅葉する木々が見下ろす駐車場★★★

屋上に出れば秋天限りなく★★★★
入院されているときの句。病室での治療の合間、屋上に出て見れば、秋天は限りなく広がっている。この爽やかで広々とした空への感嘆もさることながら、それが限りなく続くことを願う気持ちが大きい。(高橋正子)

小口泰與
芋掘りし老いの手助け猫車★★★
秋ともし朱唇にて割る蕎麦の箸★★★
山襞の我に迫るや刈田道★★★★

桑本栄太郎
大風に仕舞いしままに秋すだれ★★★
見上ぐれば夕日にかざし柘榴笑む★★★★
歩みゆく程に暮るるや秋没日★★★

10月17日(4名)

廣田洋一
飛行機雲幅を広げて秋の雲★★★★
飛行機雲の引かれ始めは、細く真直ぐに伸びているが、次第に幅が広くなって普通の雲のようになる。飛行機雲も秋の雲なのだと気づく。(高橋正子)

夕日浴びオーロラの如秋の雲★★★
天下の嶮超えるひつじや秋の雲★★★

小口泰與
我が影の巨大となりし刈田道★★★
コスモスや鳶は山風逆らわず★★★
山風に前後左右の花すすき★★★★

多田有花
秋の陽が床頭台にあたりおり★★★
秋晴れに退院の日が決まりけり★★★
秋天を仰ぎつ屋上でリハビリ★★★

桑本栄太郎
物集女(もずめ)とう街道ありぬ柿の里★★★
池の面に枝の迫り出し木の実降る★★★
何処からか金木犀や厨の燈★★★★

10月16日(5名)

小口泰與
山里や水神様へ秋茄子を★★★★
山里の作物を育てた水。水神を祀って水の恵みや治水を祈る。秋も深まり、採れた茄子を供えて祀った。素朴な祈りの姿がいまもある。(高橋正子)

泥かぶる林檎の山や千曲川★★★
溶岩原の浅間のすそ野走り蕎麦★★★

多田有花
体育の日終わり入院の人続々★★★
さわやかや点滴留置はずれたり★★★★
同病の人が隣へ秋の昼★★★

廣田洋一
親方の掛け声弾み待つ手入れ(原句)
親方の掛け声弾み松手入れ★★★★

庭の景すっきりしたる松手入れ★★★

パチンパチン音の跳ねたる松手入れ(原句)
鋏音空に跳ねたり松手入れ★★★★(正子添削)
松の剪定は、手間のかかること。鋏の音も弾んで、その度ごとに松の葉が落ち、松の姿が整い。空が晴れやかにみえてくる。気持ちの良いものだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
夕日さす尾花の波や山陰道★★★
稲滓火(いなしび)のけむり眼下に峡の里★★★★
インターを下りて旋回泡立草★★★

古田敬二
焼き魚搾る酢橘のみずみずし★★★★
指先を酢橘で濡らし喰う魚★★★
大文字草大瀬の滝の風に咲く★★★

10月15日(4名)

小口泰與
一献や利根上流の鮎うるか★★★
菊膾八十路になりて産土へ★★★
子供らも顔を見せぬや零余子飯★★★★

多田有花
秋晴れや静かに点滴の続く★★★★
秋の昼見舞いの人と談笑す★★★
秋祭終わり病院に戻る★★★

廣田洋一
別嬪のセーラー服や案山子かな★★★
冬瓜の青さ残せしスープかな★★★★
冬瓜は生のうちは、白いが、煮ると淡くみどりがかってくる。透きとおったスープに冬瓜の青みがのこっているのも美しい。日本的な美しさがここにある。(高橋正子)

冬瓜や白き腹見せ切られけり★★★

桑本栄太郎
ハイウェイのはるか眼下に刈田かな★★★
高速のインターを降りて泡立草★★★
松籟やみな傾ぎ居り秋の浜★★★★

10月14日(3名)

多田有花
静かなり秋連休の昼下がり★★★
屋上から秋の姫路城を望む★★★
裏山は桜紅葉があちこちに★★★★
病室などから、裏山を見ることがある。緑の多い山に、桜紅葉があちこちにある。それはそれで、きれいなのだが、桜紅葉に、また、春の山桜の咲く様子を思っても見ただろう。

小口泰與
湖風に晒されたりし新走り★★★
枝豆によく手の伸びて赤提灯★★★
待ち望むメール届きし今年酒★★★

廣田洋一
腰かけて田んぼを見やる案山子かな★★★
役終えて十の字に寝る案山子かな★★★
この顔はムンクの叫びや案山子立つ★★★

10月13日(3名)

小口泰與
秋の川利根本流へずいと入る★★★
端正の赤城のすそ野秋桜★★★
産土にどかっと座り温め酒★★★

多田有花
点滴続く台風の余波の雨続く★★★
同室の人は外泊秋祭★★★
台風一過祭屋台の繰り出しぬ★★★★
秋祭りが予定されているのに、台風が来る。台風一過の後の本祭り。みんな喜び勇んでいる。屋台もいろいろとぎやかに繰り出した。無事秋祭りが行えるのは、嬉しく楽しいことだ。(高橋正子)

廣田洋一
台風後水に浸りし休耕田★★★
青空も山も色濃し野分あと★★★★
野分あとは、ものがいろいろ普段とは違った風情をみせてくれる。こまごまと観察することもある。この句のように、空を見上げ、山を望みおおらかに野分のあとの晴れやかさを思うこともある。(高橋正子)

野分後の白く波立つ尾花かな★★★★

10月12日(4名)

小口泰與
山風や刈田を荒らす夕烏★★★
高原の挙措それぞれ秋桜★★★★
夕暮れの雀刈田を囃しけり★★★

多田有花
十三夜の月はどっちに出ているか★★★
接近する嵐の雲間十三夜★★★★
病室の窓より後の月見かな★★★

廣田洋一
このところ欠席の人秋の風★★★
停電に備えし電池台風来★★★
台風に吹き飛ばされし旅程かな★★★

川名ますみ
水一杯さらりと鉢のコスモスに★★★★
身近のコップにでも水が入っていたのだろうか。鉢のコスモスにさらりと移してあげた。喉が渇いていたかのように、水をもらったコスモスは、いきいきとしてきた。(高橋正子)

列車の響き次第に減りて颱風来★★★★
幼名で耳澄まし待つ大颱風★★★

10月11日(3名)

小口泰與
老いてこそ恃むは妻よ秋なすび★★★
恐竜の如きお山も装える★★★
みせばやや飲めぬ酒おば飲みくだす★★★

廣田洋一
思ひがけず今日聞こえけり鵙の声★★★
雨空に突き刺さりたる鵙の声★★★

鵙鳴けり長袖シャツに着替えたり★★★★
鵙が鳴くと、急に秋が深まった感じがする。昼間は暑さを思える秋の日も、長袖シャツで心地よく過ごせるようになった。そんな季節が来たことがうれしい。(高橋正子)

多田有花)
紅葉初む下を救急車が帰る★★★★
病室で味覚の秋を楽しめり★★★
点滴を替えつつ台風の話★★★