7月月例ネット句会/入賞発表


■2020年7月月例ネット句会■
■入賞発表/2020年7月12日

【金賞】
11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
すっきりと曇りのない快い俳句。風がよくとおる座敷は、夏には何よりも嬉しいところ。四肢を伸ばし、全身を伸ばせば、心身ともにくつろげる。自然の風にくつろげる夏座敷は、日本の良さ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ/川名ますみ
観察がユニークで端正な句。典雅な楽曲を分析したような印象を受ける。作者は今、闘病中のピアニストだが、曲を弾く前には、楽曲を分析されるのであろうか。そんなことを思った。(高橋正子)

40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子
「ふっくら焼けて」の「ふっくら」に作者らしさが見える。塩を打って焼かれた鮎は、遠火でふっくらと焼かれて、塩味がほどよく、口にすがすがしい。香魚と言われる鮎の塩焼きである。(高橋正子)

【銅賞/3句】
32.雨水の滝なす峠合歓の花/柳原美知子
合歓の花が咲くころは、梅雨も末期になり、雨水も峠に滝となって落ちる。優しい合歓の花を煽るかのような荒々しい滝が対比され、景色がリアルになった。(高橋正子)

18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
しその葉がやわらkに育つころは、梅雨の最中。自然、しそを摘む手も雨に濡れている。しそも、摘む人も濡れて、水に潤う日本の生活がよく詠まれている。(髙橋正子)

25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す/古田敬二
芳香を放つ大きな百合のカサブランカ。まっ白なカサブランカは存在感もたっぷり。朝陽は迷いもなく、白いカサブランカへ差す。カサブランカは、日本の山百合から作られた花と聞く。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
日毎に暑さが募り籐蓆を敷き、葭戸を入れ、縁側には青簾を掛け、籐椅子も置き、夏暖簾に架け替え、ようやく夏座敷を設え終えました。戸をあけ放てば風も良く通り、仰のけになって四肢を伸ばします。夏用に建てられた日本家屋の醍醐味ですね。 (桑本栄太郎)
風がよく通るだけで気持ちの良い夏の座敷。自然の素晴らしさのひとこまです。 (高橋秀之)

25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す/古田敬二
明るいカサブランカが清々しいです。 (髙橋句美子)

33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む/柳原美知子
雨上がりの朝なんでしょう。トマトを摘もうとすると雨雫も手の中に受けてしまう。朝の天気の良さとトマトの瑞々しさが合わさって伝わってきます。 (高橋秀之)

40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子
串刺しにして炭火で焼かれた鮎の香りが漂ってきそうです。熱々をそのまま頬張ればぱりっとした鮎の皮とそこに打たれた塩の味が口の中に広がります。(多田有花)
五感を豊かに働かせ見事に鮎を詠みあげていると思う。作者の清々しい日常が匂う。 (吉田晃)
夏の風物は鮎が一番。尾びれに化粧塩を付けてふっくら焼きあがった鮎。頭からかぶりつく鮎はほろ苦く何とも言えぬ味である。 (古田敬二)

15.休日の港に一艘ヨットくる/高橋秀之
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ/川名ますみ

【高橋正子特選/7句】
20.細道へ揚羽を誘う朝の風/西村友宏
細道を抜けると田や畑に出るのかも。風が誘って連れて行ってくれてるのでしょうか。 (祝恵子)

11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷/多田有花
15.休日の港に一艘ヨットくる/高橋秀之
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ/祝 恵子
32.雨水の滝なす峠合歓の花/柳原美知子
33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む/柳原美知子
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子

【入選/14句】
02.浮雲もまた旅人や心太/小口泰與
夏空に流れゆく浮雲をながめ、無心に心太を食べる旅にあるような涼し気な境地が思われます。 (柳原美知子)

07.荒梅雨や底の抜けたる天の闇/桑本栄太郎
最近の九州、岐阜、長野の豪雨を、底の抜けたる天と表現したのが上手い。(廣田洋一)

08.いさり火の隠岐の闇へと夏ともし/桑本栄太郎
故郷の海岸から沖をご覧になったら、漁火が見えたのですね。沖には壱岐があります。日本海の海の暗さと波の音、沖にきらめく漁火、大きな景色を感じます。 (多田有花)

14.伊賀上野梅雨の晴れ間の芭蕉館/高橋秀之
鉄道に乗って出かけられるのがご趣味です。梅雨の晴れ間のお休みの一日、伊賀上野までお出かけになったのでしょう。地名がよく生きています。 (多田有花)

16.ひまわりや学童保育の子等帰る/祝 恵子
学童保育の子らが帰る様子を見守るように大きなひまわりが咲いている清々しい夏の光景が思い浮かびます。 (高橋秀之)

27.雨あとのよく伸びている草むしり/古田敬二
雨の後は草もよく伸びてくるのも自然を感じる瞬間です。そんな草むしりは大変でもあり自然に触れるひとこまでもあります。 (高橋秀之)

37.泰山木咲けばひかりの弾けたり/川名ますみ
大きな白いタイサンボクの花が弾けると、それはそのまま光が弾けたようです。ある種の驚きをもって花を見つめておられる様子がわかります。 (多田有花)

04.漁師らの喜々たる声やかつお船/吉田 晃
05.高階へ影のぼりゆく梅雨の月/吉田 晃
10.降る音に取り囲まれて梅雨深し/多田有花
13.蝉の声近くに在宅勤務の朝/高橋秀之
29.若き日の友の夢見る夏の夜/廣田洋一
30.溜池の雨音激し蓮の花/ 廣田洋一
31.波音へ昼顔ひらく白砂踏む/柳原美知子

■選者詠/高橋信之
22.鶏の朝の一声夏休み
23.夏休み窓の遠くに野が拡がり
24.六月の朝さわやかに陽が昇る

■選者詠/高橋正子
34.緑陰に水のごとくに日の斑
明るい初夏の日射しの中の緑したたる木立の陰。木陰に織りなす木漏れ日の縞が水の流れのごとくに美しい。素敵な句ですね。(小口泰與)

35.向日葵を人のごとくに風雨打つ
36.初蝉は何蝉の声短すぎ

■互選高点句
●最高点(7点)
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し/髙橋句美子

※コメントのない句にコメントをお願いいたします。

■7月月例ネット句会清記■


■7月月例ネット句会清記■
2020年7月12日
14名(42句)

01.手花火や小犬買いたし我が髪膚
02.浮雲もまた旅人や心太
03.凌霄や噴煙天を驚かす
04.漁師らの喜々たる声やかつお船
05.高階へ影のぼりゆく梅雨の月
06.夏空へ飛び発つ少女沈下橋
07.荒梅雨や底の抜けたる天の闇
08.いさり火の隠岐の闇へと夏ともし
09.掘割の高瀬舟ゆく鴎外忌
10.降る音に取り囲まれて梅雨深し

11.四肢伸ばす風よく通る夏座敷
12.絵日傘が長き陸橋渡りゆく
13.蝉の声近くに在宅勤務の朝
14.伊賀上野梅雨の晴れ間の芭蕉館
15.休日の港に一艘ヨットくる
16.ひまわりや学童保育の子等帰る
17,合歓の花ここまで歩いて3千歩
18,しそを摘む雨にぬれてる手でつまみ
19,打水に燥ぐ園児の靴光る
20.細道へ揚羽を誘う朝の風

21.ピーマンの瑞々しさに母喜々と
22.鶏の朝の一声夏休み
23.夏休み窓の遠くに野が拡がり
24.六月の朝さわやかに陽が昇る
25.カサブランカの白へまっすぐ朝陽差す
26.梅雨上がるまだ鳴っているさだまさし
27.雨あとのよく伸びている草むしり
28.垣根よりひょいと出で来し揚羽蝶
29.若き日の友の夢見る夏の夜
30.溜池の雨音激し蓮の花

31.波音へ昼顔ひらく白砂踏む
32.雨水の滝なす峠合歓の花
33.雨雫手に受け今朝のトマト摘む
34.緑陰に水のごとくに日の斑
35.向日葵を人のごとくに風雨打つ
36.初蝉は何蝉の声短すぎ
37.泰山木咲けばひかりの弾けたり
38.ひかり降り泰山木の花に散る
39.桔梗のまず縦に割れひらきそむ
40.鮎ふっくら焼けて塩味清々し

41.雷鳴の聞こえぬ夜がふけている
42.洗濯物窓にかかりて梅雨の朝

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

自由な投句箱/7月11日~20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
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今日の秀句/7月11日~20日

7月20日(1句)
★からからと鳥除け風車青トマト/多田有花
トマト畑に鴉などのトマトを食べに来る鳥を寄せ付けないように、風車がとりつけられている。おおよそプラスティックでできているものなのであろう。風に「からから」と回っている。青トマトと、からからなる軽やかな風車が楽しいそうだ。(高橋正子)
7月19日(1句)
★かなかなの早やも哀しき茜かな/桑本栄太郎
蝉の鳴き出す順番からいえば、かなかなは一番遅れて鳴き始める。夏も盛りをすぎたころ盛んに鳴くが、早も鳴き出したかなかながいる。夕焼けにカナカナカナと鳴いてはやも「哀しき」思いをかきたてる。(高橋正子)
7月18日(1句)
★甲斐犬と走る吾子をり雲の峰/小口泰與
甲斐犬について調べると、大まかには、甲斐の山岳地方で育てられ、中型犬で、猟に向き、気性が強く、一人の主人につく習性があるということだ。雲の峰の下で、元気いっぱい甲斐犬と走る少年の姿が、すがすがしい。イメージがくっきりと浮かぶ。(高橋正子)
7月17日(2句)
★背泳ぎや水中眼鏡外したり/廣田洋一
水中眼鏡をして水の中を楽しんでいたが、飽き疲れたのだろうか、背泳ぎの姿勢をとって、水中眼鏡をはずした。顔に太陽を浴びながら、自在に泳ぐ人の姿。(高橋正子)
 
★茅舎忌の入日の空に日照雨かな/桑本栄太郎
川端茅舎の忌日は、7月17日。茅舎は、画家川端龍子の異母弟で、写生の目に徹しているが、のち病を得て、「茅舎浄土」と呼ばれるキリスト教や仏教を背景にした句を生むようになった。その句境を思いやっての句。「入日の日照り雨」は、茅舎浄土の景色。(高橋正子)
7月16日(2句)
★水遊び門前に水溢れさせ/廣田洋一
水遊びの子らが無邪気に門前に水を溢れさせて遊んでいる。通りすがりの人も巻き込みかねない元気さが想像できて、楽しい句だ。(高橋正子)
★日焼けせる腕運転席より出る/多田有花
面白い光景。運転席の窓から、運転手の日焼けした腕だけが突き出ている。日焼けした逞しい腕におおよそ運転手が想像できる。(高橋正子)
7月15日(1句)
★凌霄花砂場に遊ぶ子に落ちぬ/廣田洋一
砂場近くに咲き上っている凌霄花が、花を落とすところは子供たちが遊ぶ砂場。
子どもたちに散華のように降って、のどかな光景。砂場も凌霄花も明るいのがいい。(高橋正子)
7月14日(1句)
★戦争のあと静かなる滴かな/小口泰與
戦争のあとの澄み深むような静寂が、「滴」に象徴されている。その思いを別の言葉に言い換えようすれば、どこか違ってくる。(高橋正子)
7月13日(1句)
松葉牡丹ぱっちり一つ咲きにけり/廣田洋一
松葉牡丹は生命力旺盛ながら、くっりきとした色の可憐な花が咲く。咲きはじめ、目を覚ましたようにぱっちりと咲いた松葉牡丹に、見詰められたかのように驚いた作者。
(高橋正子)
7月12日(2句)
★アスファルトを裸足で駆ける少年ら/多田有花
今頃裸足の少年を見ることも少ない。アスファルトを裸足で駆ける少年に、アフリカの少年が重なって思えた。少年であることのさびしさ、しなやかさが感じられた。(高橋正子)

★烏賊刺しとげその煮付けの夕餉かな/桑本栄太郎

烏賊釣りのいさり火に故郷を思う作者が前提にある。今日の夕餉は、烏賊の甲の刺身に、げそは煮付けにの烏賊まるごとの夕餉。夕餉の食卓に広がる故郷へのしみじみとした思いが読める。(高橋正子)
7月11日(1句)
★高原や車より振る夏帽子/小口泰與
高原を走る車から降られる夏帽子。青春小説のひとこまのような場面が夏の高原にはあるのだ。(高橋正子)

7月11日~20日

7月20日(4名)
小口泰與
土用灸何かと妻は良く太る★★★
何事も几帳面なり心太★★★★
夏芝や淡き緑の五家宝よ★★★
廣田洋一
蝉の声競ふがごとく子らの声★★★
団扇もて飛び来る虫をはたきけり★★★
団扇絵の場所を選びて扇ぎけり★★★
多田有花
からからと鳥除け風車青トマト★★★★
トマト畑に鴉などのトマトを食べに来る鳥を寄せ付けないように、風車がとりつけられている。おおよそプラスティックでできているものなのであろう。風に「からから」と回っている。青トマトと、からからなる軽やかな風車が楽しいそうだ。(高橋正子)
入念に羽づくろいの川鵜かな★★★
風の道示す青田となりにけり★★★★

桑本栄太郎

底紅の青空見上げ積りけり★★★
こつ然蝉しぐれ止む静寂かな★★★
ふるさとの遠き想い出蠅入らず★★★★
7月19日(3名)
小口泰與
岸辺へとなだるる波や月見草★★★★
野牡丹や夕暮の山紫紺なる★★★
子より届きし冷酒なと飲みたまえ★★★
廣田洋一
採れたての茗荷の子にてすまし汁★★★
赤きつや食欲誘う茗荷の子★★★★
新じゃがの粒を揃へて売られをり★★★
桑本栄太郎
底紅の青空見上げ積りけり★★★
絡みつく金網哀しやいと花★★★
かなかなの早やも哀しき茜かな★★★★
蝉の鳴き出す順番からいえば、かなかなは一番遅れて鳴き始める。夏も盛りをすぎたころ盛んに鳴くが、早も鳴き出したかなかながいる。夕焼けにカナカナカナと鳴いてはやも「哀しき」思いをかきたてる。(高橋正子)
7月18日(4名)
小口泰與
ステテコや我が机にて畳みける★★★
夢うつつ虹の輪のなか駆け回る★★★
甲斐犬と走る吾子をり雲の峰★★★★
甲斐犬について調べると、大まかには、甲斐の山岳地方で育てられ、中型犬で、猟に向き、気性が強く、一人の主人につく習性があるということだ。雲の峰の下で、元気いっぱい甲斐犬と走る少年の姿が、すがすがしい。イメージがくっきりと浮かぶ。(高橋正子)
廣田洋一
朝の庭草々揺れて涼しけり(原句)
助動詞「けり」は、活用語の連用形に接続します。「涼し」は、シク活用なので、連用形は「涼しかり」で、「涼しかりけり」となります。
朝の庭草々揺れて涼しかり★★★★(正子添削)
アパートの解体進み涼しかり★★★
風涼し雨の切れ間の並木道★★★
多田有花
梅雨明けを近しと思う今朝の晴れ★★★★
親去れば所在なげなり燕の子★★★
翅欠けし揚羽がゆっくり飛んでいる★★★

桑本栄太郎

溝川の流れ涼しき里を行く★★★★
ぼつてりと葉柳風に連なりて★★★
<ジャズ演奏の追憶より>
白服のジャズの夕べや神戸の夜★★★
7月17日(3名)
廣田洋一
背泳ぎや水中眼鏡外したり★★★★
水中眼鏡をして水の中を楽しんでいたが、飽き疲れたのだろうか、背泳ぎの姿勢をとって、水中眼鏡をはずした。顔に太陽を浴びながら、自在に泳ぐ人の姿。(高橋正子)
 
晴天に遊泳禁止の札高し★★★
優しげな波に乗りつつ泳ぎけり★★★★
小口泰與
星涼し金平糖の淡き色★★★★
郭公や牧草ロールトラックへ★★★
奥利根の休耕田や閑古鳥★★★
桑本栄太郎
との雲る空の明るき送り梅雨★★★
宵口の月下美人を愛でにけり★★★
茅舎忌の入日の空に日照雨かな★★★★
川端茅舎の忌日は、7月17日。茅舎は、画家川端龍子の異母弟で、写生の目に徹しているが、のち病を得て、「茅舎浄土」と呼ばれるキリスト教や仏教を背景にした句を生むようになった。その句境を思いやっての句。「入日の日照り雨」は、茅舎浄土の景色。(高橋正子)
7月16日(5名)
小口泰與
水羊羹台車に積まれいざ出荷★★★★
朝なさな糠雨似合う四葩かな★★★
伝統の笹蒲鉾や冷やし酒★★★
古田敬二
浜木綿の次々天差す蕾かな★★★★
夕暮れてカサブランカの良く香る★★★
万緑の向こうに霞む高層群★★★★

廣田洋一

水遊び門前に水溢れさせ★★★★
水遊びの子らが無邪気に門前に水を溢れさせて遊んでいる。通りすがりの人も巻き込みかねない元気さが想像できて、楽しい句だ。(高橋正子)
通りがけ水鉄砲の流れ弾★★★
父親を追ひ回す子の水鉄砲★★★
多田有花
日焼けせる腕運転席より出る★★★★
面白い光景。運転席の窓から、運転手の日焼けした腕だけが突き出ている。日焼けした逞しい腕におおよそ運転手が想像できる。(高橋正子)
梅雨晴や傘カラフルに並びおり★★★
夏の朝車線変更して前へ★★★

桑本栄太郎

木洩れ日の影のまだらや木下闇★★★
青空のヘリコプターや梅雨晴間★★★★
園児らの輪になり愛でる梅雨きのこ★★★
7月15日(4名)
小口泰與
D51の坂道駆くや雲の峰★★★★
習慣の踵落しや網戸にて★★★
訳ありの菓子に集まる日の盛り★★★
廣田洋一
凌霄花アーチをなして咲き進む★★★
凌霄花縋る梅木の花やげり★★★
凌霄花砂場に遊ぶ子に落ちぬ★★★★
砂場近くに咲き上っている凌霄花が、花を落とすところは子供たちが遊ぶ砂場。
子どもたちに散華のように降って、のどかな光景。砂場も凌霄花も明るいのがいい。(高橋正子)
多田有花
楠の緑陰続く下をゆく★★★★
楠の緑陰ひたと続くなり(正子添削例)
「緑陰」に対して感じたことが表現されれば、一層いい句になります。「下をゆく」も気になるところです。
継続は力なりとて百日草★★★
雨あがる藪萱草に夕日さす★★★

桑本栄太郎

起きてすぐ窓を開ければ梅雨寒し★★★
梅雨冷えのコーヒー熱き朝餉かな★★★★
下校児の声に目覚むや梅雨晴間★★★
7月14日(4名)
小口泰與
夏の夜の夢に魘さる焼夷弾★★★
戦争のあと静かなる滴かな★★★★
戦争のあとの澄み深むような静寂が、「滴」に象徴されている。その思いを別の言葉に言い換えようすれば、どこか違ってくる。(高橋正子)
混乱の戦後豊原木下闇★★★
(豊原=サハリンの日本統治時代の呼び名)
廣田洋一
パリ祭の屋台賑やか丸の内★★★★
香り良きワイン片手に巴里祭★★★
フォションの紅茶を入れて巴里祭★★★
多田有花
目覚めれば今朝も雨音梅雨長し★★★
病院の中庭に咲き金糸梅★★★
梅雨晴間テイクアウトの幟揺れ★★★

桑本栄太郎

嵐止み峰の茜や蝉の声★★★
風止みてひと日終わりぬ梅雨の冷え★★★
風落つや夕日に映ゆる木槿咲く(原句)
 ※一句に動詞が多すぎてイメージが散漫になっています。
風落つや夕日に映ゆる花槿★★★★(正子添削)
7月13日(3名)
小口泰與
夕立や通せん坊のグレートデン★★★
赤腹や鬼押し出しへ溶岩の道★★★
いたどりや鎖樋より水荒ぶ★★★★
廣田洋一
松葉牡丹ぱっちり一つ咲きにけり★★★★
松葉牡丹は生命力旺盛ながら、くっりきとした色の可憐な花が咲く。咲きはじめ、目を覚ましたようにぱっちりと咲いた松葉牡丹に、見詰められたかのように驚いた作者。
(高橋正子)
日射し濃き庭を濃く染め松葉牡丹★★★
サウナ出てかぶりつきたるアイスクリーム★★★
桑本栄太郎
長梅雨や会話無くなる老二人★★★
物言えば憂き世の事は黴だらけ★★★
深梅雨の黙のままなる夕餉かな★★★
7月12日(4名)
小口泰與
鷺草や紙飛行機の宙に飛ぶ★★★
山翡翠やテンカラ釣りの糸の先★★★★
風鈴や母の遺せし鯨尺★★★
廣田洋一
すいと舞ひ屋根をすれすれ夏燕★★★
貯水池の日を照り返す夏燕★★★★
夏掛けを掛け直したる夜明けかな★★★
多田有花
救急車二台連なり梅雨の街★★★
バナナ食ぶそぼ降る雨を眺めつつ★★★
アスファルトを裸足で駆ける少年ら★★★★
今頃裸足の少年を見ることも少ない。アスファルトを裸足で駆ける少年に、アフリカの少年が重なって思えた。少年であることのさびしさ、しなやかさが感じられた。(高橋正子)

桑本栄太郎

初蝉のしぐれとならず消え失せり★★★
梅雨冷えや明日の予報も雨模様★★★
烏賊刺しとげその煮付けの夕餉かな★★★★
烏賊釣りのいさり火に故郷を思う作者が前提にある。今日の夕餉は、烏賊の甲の刺身に、げそは煮付けにの烏賊まるごとの夕餉。夕餉の食卓に広がる故郷へのしみじみとした思いが読める。(高橋正子)
7月11日(3名)
小口泰與
一瞬の命ふるわす油蝉★★★
山間の落人部落揚羽蝶★★★
高原や車より振る夏帽子★★★★
高原を走る車から降られる夏帽子。青春小説のひとこまのような場面が夏の高原にはあるのだ。(高橋正子)
廣田洋一
水羊羹冷たき皿に切り分けぬ★★★
災いを乗り越えたるや水羊羹★★★
昼日中静まる家の水羊羹★★★★
桑本栄太郎
雨の止み窓を開ければ風涼し★★★
雨止みて一時明るき梅雨晴間★★★
初蝉の何処に行くや今朝の雨★★★★

7月12日(日)


雲り。薄日が差す。

●7月月例ネット句会。
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d

●「俳壇8月号」が昨日届いた。P187に私の5句「夏休み」が掲載される。題名について、「遠花火」になぜしなかったかと、信之先生。生活詠がお題なので、よくわからないけど、なにかを意識したかもと返事。詠みたいように詠めたので、出版社には悪いが、巧拙、評価はいまさら気にしない。

●昨日買った『菜根譚』に「拙の極意」の文がある。
「文は拙をもって進み、道は拙をもって成る。一(いつ)の拙字に無限の意味あり。桃源に犬吠え、桑間に鶏鳴くごときは、何等の淳?(じゅんぽう)ぞ。寒潭(かんたん)の月、古木の鴉(あ)に至っては、工巧の中(うち)、すなわち衰颯の気象あるを覚ゆ。」

単に拙であるのとはちがうのだろうが、俳句は拙の文学であろうと思う。「拙の奥深さ」を評価すべき。

7月11日(土)


曇りときどき小雨。

●午前、整体院へ。待合の本棚になぜか『ノルウェーの森』(上・下)がある。取り出して読む。わが家にもあるが、村上春樹は読み進みつれて退屈なので、途中で止める状態だが、暇つぶしに読む。主人公がフィッジェラルドの『グレート・ギャッツビー』を絶賛している。この『グレート・ギャッツビー』は、読んだことがないが、こちらを読みたくなった。私が学生のころ、フィッジェラルドは教授の口からも、学生仲間の口からもきいたことがなかった。ところが、今、たまたま手にする本に、フィッジェラルドがよく出てくる。中には、20世紀最高の文学とまでいう批評に会う。

●午後、お中元の手配のついでに本屋へ。本屋のカウンターで女性店員に『グレート・ギャッツビー』を検索してくださいというと、傍の50代くらいの男性店員がだまって書棚の方へ急いだ。そして、新潮社の『グレート・ギャッツビー』をあっという間にもって来てくれた。すぐさま「ありがとうございます」と言って手に持った。すぐ持って来られた不思議と、あまりにもあっけない瞬間に、しばらく本屋をうろついた。『菜根譚』(角川ソフィア)と『俳句のための基礎用語事典』(角川ソフィア)を入れて3冊を買った。後で考えれば、『菜根譚』と『俳句のための・・』は買わなくてよかった。ま、いいか。