■5月月例ネット句会入賞発表


■2019年5月月例ネット句会■
■入賞発表/2019年5月12日

【金賞】
★麦秋の車窓となりぬ近江富士/桑本栄太郎
詠まれた景色がすばらしい。近江富士は、三上山の愛称で、東海道新幹線の車窓からも眺められる。平野の中の独立峰は標高432mの低山。麦秋の野が広がる向こうに近江富士はなだらかな山稜をもって立っている。車窓が額縁になり、爽やかな麦秋の景色が楽しめる。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★母偲び風炉の茶を立て供へけり/廣田洋一
もの静かな立ち居振る舞いの母の姿が思われる。風炉の茶となる夏の始めの軽やかさが、却って母をじみじみと思い起こさせる。(高橋正子)

★熟れ麦の香と水音へ一歩ずつ/柳原美知子
麦が熟れる香、田水が流れる音。熟れ麦の香、水の音に近づきたくて、少し不自由な脚をゆっくりと、一歩ずつ進めて行く。麦秋の野が懐かしく詠まれている。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★一斉に変わる夏服中学生/高橋秀之
制服のある中学生。衣替えの季節になると、何月何日からと、一斉に衣替えする。それまでの黒い服から、真っ白なシャツになる。中学生の笑顔が見える見事で鮮やかな変身である。(高橋正子)

★藤の花見上げて歩くピクニック/髙橋句美子
ピクニックに出掛けた。山藤の花か。ここに見上げ、あそこに見上げて歩く。ピクニックの楽しさが、あっさりと詠まれている。(高橋正子)

【高橋信之特選/6句】
★天道虫見つけ嬉しや朝歩き/祝恵子
朝の散歩で見つけた天道虫。ただそれだけで嬉しい。日常のひとこまに生きる喜びを感じます。 (高橋秀之)

★窓若葉素焼きのカップに絵付けの黄/柳原美知子
一心に絵付けをしているところに、若葉風がそっと通り過ぎていきます。(祝恵子)

★麦秋の車窓となりぬ近江富士/桑本栄太郎
★母偲び風炉の茶を立て供へけり/廣田洋一
★裏町の花屋も母の日カーネーション/高橋正子
★36.熟れ麦の香と水音へ一歩ずつ/柳原美知子

【高橋正子特選/6句】
★手伝いの孫の背高しトマト苗/祝恵子
小学校高学年から中学生にかけてはぐんと背の伸びるときです。いつの間にかご自身の背丈を超えたお孫さんを見上げられ、その成長をたのもしくうれしく思っておられる様子がわかります。 (多田有花)

★藤の花見上げて歩くピクニック/髙橋句美子
晩春から初夏に移って行くころは藤の花が咲きそろいます。郊外へピクニックに出かければ、野生の藤が高木をよじのぼって高い枝先から藤色の花房を垂らしているのが見られます。 (多田有花)

★一斉に変わる夏服中学生/高橋秀之
私が通っていた中学校では、6月1日から夏服に変わり、色も霜降りになった。制服が少なくなった今でも、衣更えになると中学生は一斉に夏服に替える。夏到来を衣更えで表現されている。(廣田洋一)

★麦秋の車窓となりぬ近江富士/桑本栄太郎
★母偲び風炉の茶を立て供へけり/廣田洋一
★熟れ麦の香と水音へ一歩ずつ/柳原美知子

【入選14句】
★夏川をジープ疾走蒼き空
夏らしくて躍動感を感じる句です。蒼き空が清々しいです。 (髙橋句美子)

★煽らるる白き葉裏や若葉/桑本栄太郎
初夏になり、若葉が街を明るくしている。そんな時に少し気温が下がり風も強く若葉が葉裏を見せている。若葉風の季語が効いている。 (廣田洋一)

★初夏や苗並べ配置決めてゆく/祝恵子
野菜の苗を植える時、苗は等間隔に植えてゆく。間隔が狭すぎて広すぎてもうまく育たない。 (古田敬二)

★赤々とレッドロビンの若葉萌ゆ/多田有花
レッドロビンとは、ベニカナメモチとオオカナメモチの交配された園芸種である。真っ赤な燃えるような若葉が特徴であり、如何にも活力を覚える。近年生垣用として重宝され、遠くから見ればその真紅は何の花か?と思う程鮮やかである。(桑本栄太郎)

★牡丹咲く上野の山の晴れ渡り/廣田洋一
華やかに咲きそろった牡丹、その背後には晴れた五月の上野の山の景色があります。明るく清々しく、一点の曇りも無い素晴らしい一日の様子が浮かびます。 (多田有花)

★ランナーが逆さに走る池若葉/古田敬二
池に映る若葉の緑も美しく、水面の光に揺れるランナーの姿にも初夏の清々しさが感じられます。(柳原美知子)

★初蛙声する方に大きな沼/髙橋句美子
初蛙の鳴き声を聞きとめ、なにげなく通りすぎていた所に見つけた大きな沼。生き物への温かい視線に視界が広がっていきます。(柳原美知子)

★渓谷の空あおあおと苔清水/小口泰與
★新緑をより鮮やかに陽の光/高橋秀之
★新緑のなかに佇みオーベルジュ/多田有花
★葭切の騒ぎしあとの池静か/古田敬二
★牧水の歌碑校庭に五月来る/古田敬二
★球児らの声高鳴りて夏近し/西村友宏
★駅出れば旧知の友と初夏の風/西村友宏

■選者詠/高橋信之
★今日がありまた明日あると花蜜柑
花蜜柑の清々しい香りと可憐な白い花に出会い、初夏の明るい季節の喜びが感じられます。やがて青い実をつけ、蜜柑色のみのり、瀬戸内の海も想いだされる花蜜柑です。 (柳原美知子)

★夏朝日たしかな朝のよころびに
★くしゃみすることもわが夏の生活

■選者詠/高橋正子
★夕空の青く高かり風の薔薇
濃艶な花の姿を愛賞され、春秋に咲くもの、四季とともに咲くもの、色も形も多種多様で青空に映え、風によって甘い芳香も愛される素晴らしい花ですね。 (小口泰與)
風があってやや寒い日という印象を受けます。日が最も長い時期に入り、青空が長く残ります。その夕空の中に美しく咲いた薔薇の高貴な美しさが光ります。 (多田有花)

★裏町の花屋も母の日カーネーション
人通りの少ない裏町の花屋さんにもカーネーションの鉢や切り花が並び、母の日の華やぎに包まれて、ふと立ち寄ってみたくなります。(柳原美知子)

★路筋に薔薇のあふるる三丁目

■互選高点句
●最高点(6点)
★麦秋の車窓となりぬ近江富士/桑本栄太郎

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

5月月例ネット句会/清記


■5月月例ネット句清記
2019年5月12日
12名35句

01.毛の国の馬総立ちす日雷
02.夏川をジープ疾走蒼き空
03.渓谷の空あおあおと苔清水
04.麦秋の車窓となりぬ近江富士
05.見晴るかす車窓一望麦の秋
06.煽らるる白き葉裏や若葉寒
07.夏の大空の下カッター漕ぐ
08.一斉に変わる夏服中学生
09.新緑をより鮮やかに陽の光
10.天道虫見つけ嬉しや朝歩き

11.初夏や苗並べ配置決めてゆく
12.手伝いの孫の背高しトマト苗
13.赤々とレッドロビンの若葉萌ゆ
14.新緑のなかに佇みオーベルジュ
15.翌日は姿の消えし牡丹かな
16.葭切の騒ぎしあとの池静か
17.牧水の歌碑校庭に五月来る
18.ランナーが逆さに走る池若葉
19.球児らの声高鳴りて夏近し

21.駅出れば旧知の友と初夏の風
22.牡丹咲く上野の山の晴れ渡り
23.ユリノキの花黄色き袴着て咲きぬ
24.母偲び風炉の茶を立て供へけり
25.夕空の青く高かり風の薔薇
26.路筋に薔薇のあふるる三丁目
27.裏町の花屋も母の日カーネーション
28.今日がありまた明日あると花蜜柑
29.夏朝日たしかな朝のよころびに
30.くしゃみすることもわが夏の生活

31.藤の花見上げて歩くピクニック
32.初蛙声する方に大きな沼
33.東京眼下へ鶯の歌ひびき
34.麦熟れつつけぶる令和の雨後の空
35.窓若葉素焼きのカップに絵付けの黄
36.熟れ麦の香と水音へ一歩ずつ

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。

自由な投句箱/5月11日~20日


※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/5月11日~20日


5月20日(2句)

★薔薇満開洗濯物のはためきし/廣田洋一
薔薇が満開。洗濯物をはためかす風が満開の薔薇も吹き上げる。華やかながら清潔感のある生活句。(高橋正子)

★一頻り下校児童や麦嵐/桑本栄太郎
下校の児童たちが帰る。それが一頻り続いて、麦をさわやかな風が吹く。麦嵐の中を帰る下校の児童を児童書を読むような気持で見ることができる句だ。麦嵐は、嵐とはいっても、秋の台風のような嵐ではなく、麦の収穫を祝福してくれるさわやかで心地よい風である。(高橋正子)

5月19日(2句)

★真青なる空より採りしさくらんぼ/廣田洋一
さくらんぼのかわいらしさが真青なる空で引き立てられて、シンプルな句になっている。(高橋正子)

★頂やぽっかり五月の空の下/多田有花
山の頂に座ると、五月の空がぽっかりと包んでくれる。眼下の方にも空が伸びている感じだ。こんな空に包まれてみたい。(高橋正子)

5月18日(1句)

★百合の木に百合の花咲く薄暑かな/桑本栄太郎
「百合の木に百合の花咲く」のは、なんの不思議もない。チューリップ型の百合の木の花を見上げるころは、薄暑なのだ。当たり前ながら不思議な取り合わせ。(高橋正子)

5月17日(2句)

★嬬恋の棚田へ水と水馬/小口泰與
棚田に入るのが、水だけでなく、水と水馬。ここが面白い。棚田に入る水がいきいきと弾んでいる。(高橋正子)

★桑の実や産土はるか遠くなり/桑本栄太郎
桑の実を食べた記憶ははるかになった。それと同時に産土も遠くなった。しみじみ故郷とはるかとなった少年時代を思う句。(高橋正子)

5月16日(2句)

★水槽の暁の水面へ目高かな/小口泰與
明けやすい夏の暁、目高ははやも目覚めて水面へ浮き上がってきた。すがすがしい夏の暁だ。(高橋正子)

★薫風や大樹の下に椅子一つ/廣田洋一
大樹の木陰に椅子が一つ。木陰に座って誰かが憩えるように置かれている。薫風理の木陰の至福の憩いに思いが至る。(高橋正子)

5月15日(2句)

★通り一つ渡れば神田祭かな/廣田洋一
日本三大祭りの一つ神田祭。通り一つで向こうはにぎやかな祭りの世界となる。私は、浅草の会員の方ご案内で、花冠会員の皆さんと三社祭の吟行を楽しんだが、その賑わいと祭りを離れた隅田川に祭りの余韻が届くのが印象に残っている。この句から思い出した。(高橋正子)

★森の影濃くなり初めし椎の花/多田有花
椎の花のむんむんとした強い匂いは、さしずめ、日が強くなったせいかと思わせるところがある。そのころは、森の影が濃くなり始める。光と木々の力強さを感じさせてくれる。(高橋正子)

5月14日(1句)

★新緑に囲まれている古刹かな/多田有花
古刹のものさびた様子を囲んで新緑が湧き上がる。新しい息吹と古く永く存在するものがよく溶け合っていい景色を見せている。(高橋正子)

5月13日(2句)

★乙女子のホットパンツや街薄暑/廣田洋一
気温に一番敏感なのは、若い女性たちかもしれない。気温に合わせて、洋服を選び、季節を先どり、たのしむ。薄暑を思えれば、早速ホットパンツで街を闊歩。初夏らしい溌剌とした姿が眩しい。(高橋正子)

★あめんぼの水面の空を走りけり/桑本栄太郎
水面の空には、雲のあるか。青空ばかりか。いろんな空が思い浮かぶが、空を走ってみたい思いは、人にもある。空を走ってあめんぼは、楽しいだろう。(高橋正子)

5月12日(1句)

★日当たれば形新たに若楓/多田有花
若楓は、黄緑の葉が薄い層のようになって重なり、広がっている。日陰れば一塊のようなみどりになるが、日当たれば、日に透かされてその形がくっきりとする。「形新たに」は作者の「心新たに」ということでもあろう。(高橋正子)

5月11日(1句)

★若楓開山堂の甍かな/多田有花
若楓の柔らかい緑と甍の対比に日本的な美しさがある。開山堂は、辞書には、「寺院内にあって、開祖・開山の像や位牌を安置した建物。祖師堂。御影堂。」と説明されている。甍はそれだけに歳月を経た色合いと風格を備えて、目に和やかな景色となっているのがよい。(高橋正子)

5月11日~20日


5月20日(4名)

多田有花
<箱根三句>
大甕に薔薇活け箱根老舗蕎麦(原句)
大甕に薔薇活け箱根老舗蕎麦屋★★★(正子添削)

夏浅し箱根湯本に蕎麦を食ぶ★★★
芦ノ湖の遊覧船に若葉雨★★★★

小口泰與
噴水は風の意図なる容かな★★★★
広縁の母の遺せし籐寝椅子★★★
暑気払い利根の流を肴とす★★★

廣田洋一
柵の上広がり咲きし赤き薔薇★★★
マサコてふ薔薇の華やぐ令和かな★★★
薔薇満開洗濯物のはためきし★★★★
薔薇が満開。洗濯物をはためかす風が満開の薔薇も吹き上げる。華やかながら清潔感のある生活句。(高橋正子)

桑本栄太郎
青梅の葉蔭にありぬ曇り空★★★
一頻り下校児童や麦嵐★★★★
下校の児童たちが帰る。それが一頻り続いて、麦をさわやかな風が吹く。麦嵐の中を帰る下校の児童を児童書を読むような気持で見ることができる句だ。麦嵐は、嵐とはいっても、秋の台風のような嵐ではなく、麦の収穫を祝福してくれるさわやかで心地よい風である。(高橋正子)

木斛の花に風あれ風に花あれ★★★

5月19日(4名)

廣田洋一
さくらんぼ先陣切りてアメリカン産★★★
真青なる空より採りしさくらんぼ★★★★
さくらんぼのかわいらしさが真青なる空で引き立てられて、シンプルな句になっている。(高橋正子)

月山の光取り込むさくらんぼ★★★

小口泰與
星空と川音近き露台かな★★★★
赤城嶺の風の下り来る夏座敷★★★
水槽の面を突つっく目高かな★★★

多田有花
頂やぽっかり五月の空の下★★★★
山の頂に座ると、五月の空がぽっかりと包んでくれる。眼下の方にも空が伸びている感じだ。こんな空に包まれてみたい。(高橋正子)

たどり来し稜線を見る山若葉★★★
はつ夏の山には白き花あまた★★★

桑本栄太郎
せせらぎに四葩迫り出す高瀬川★★★★
古墳とは見えぬ森なり若葉風★★★
青梅の風の葉蔭やくもり来る★★★

5月18日(4名)

多田有花
谷空木咲く林道の崩落す★★★
蔓紫陽花ここから傾斜の強き道★★★
若葉風受けつつ急傾斜を登る★★★★

廣田洋一
一日を終えて一杯蝦蛄つまむ★★★
通販の蝦蛄解凍し酒を酌む★★★
店先のおが屑動く蝦蛄の箱★★★★

小口泰與
猪口ふすやさっと出でたる心太★★★
あんみつや膝を崩さぬ後ろ帯★★★
峠越え浅間すそ野の洗い鯉★★★★

桑本栄太郎
百合の木に百合の花咲く薄暑かな★★★★
「百合の木に百合の花咲く」のは、なんの不思議もない。チューリップ型の百合の木の花を見上げるころは、薄暑なのだ。当たり前ながら不思議な取り合わせ。(高橋正子)

ほんのりとはこね卯木や酔い来たる★★★
竹皮を脱ぐや亀甲露わなり★★★

5月17日(4名)

多田有花
谷空木に迎えられつつ山に入る★★★
新緑のなかに小さきチャペルあり★★★
谷空木渓流の音に咲きそろう★★★★

廣田洋一
店先の人を惹きつけラベンダー★★★
ラベンダー紫の香に安らげし★★★
紫に野を染め上げしラベンダー★★★

小口泰與
水源は何処や山家の冷奴★★★
嬬恋の棚田へ水と水馬★★★★
棚田に入るのが、水だけでなく、水と水馬。ここが面白い。棚田に入る水がいきいきと弾んでいる。(高橋正子)

泡盛や黒人霊歌聞こゆなり★★★

桑本栄太郎
かたつむり片目瞑りて嫁を娶れ★★★
片蔭や電信柱に身を寄する★★★
桑の実や産土はるか遠くなり★★★★
桑の実を食べた記憶ははるかになった。それと同時に産土も遠くなった。しみじみ故郷とはるかとなった少年時代を思う句。(高橋正子)

5月16日(4名)

多田有花
賜りし五月の快晴を仰ぐ★★★
今週は快晴続きしゃがの花★★★
静けさや山の古刹のしゃがの花★★★★

小口泰與
杣道のみち教えとは覚束無★★★
水槽の暁の水面へ目高かな★★★★
明けやすい夏の暁、目高ははやも目覚めて水面へ浮き上がってきた。すがすがしい夏の暁だ。(高橋正子)

客の来て筍飯を持て成せり★★★

廣田洋一
幼子や裸で跳ねる泥田かな★★★
薫風や大樹の下に椅子一つ★★★★
大樹の木陰に椅子が一つ。木陰に座って誰かが憩えるように置かれている。薫風理の木陰の至福の憩いに思いが至る。(高橋正子)

若葉風老鶯の声晴れやかに(原句)
老鶯の声晴れやかに若葉風★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
どくだみの花やこの世の悪を消せ★★★
木洩れ日の青葉若葉や風を呼ぶ★★★
仕立てられ支柱に咲きぬ花南瓜★★★★

5月15日(4名)

小口泰與
かなたへもたゆたう水母蒼き空★★★
風薫る保渡田古墳の埴輪かな★★★★
筍の美味し料理や余命伸び★★★

廣田洋一
駅出口祭囃子の賑やかに★★★
通り一つ渡れば神田祭かな★★★★
日本三大祭りの一つ神田祭。通り一つで向こうはにぎやかな祭りの世界となる。私は、浅草の会員の方ご案内で、花冠会員の皆さんと三社祭の吟行を楽しんだが、その賑わいと祭りを離れた隅田川に祭りの余韻が届くのが印象に残っている。この句から思い出した。(高橋正子)

句座中断神輿に声を掛けにけり★★★

桑本栄太郎
かしましき軒端となりぬ燕の子★★★
歩みゆくとべら並木や風清し★★★★
午後の日の定家かずらや甘き風★★★

多田有花
森の影濃くなり初めし椎の花★★★★
椎の花のむんむんとした強い匂いは、さしずめ、日が強くなったせいかと思わせるところがある。そのころは、森の影が濃くなり始める。光と木々の力強さを感じさせてくれる。(高橋正子)

青梅のラグビーボールの形かな★★★
青空に雲無し湧き出る椎の花★★★

5月14日(4名)

廣田洋一
あでやかなピンクを連ね手毬花★★★
小手毬やぽんと投げたし空の青★★★
道の端こんもり茂る手毬花★★★

小口泰與
渓流の巌にほのぼの杜鵑花かな★★★
青柳や舟より投網打ちにける★★★
松籟に光育てて柿若葉★★★★

桑本栄太郎
うす紅のプロペラありぬ若楓★★★★
グランドの少年野球や花槐★★★
サングラス年甲斐もなきやんちゃかな★★★

多田有花
新緑に囲まれている古刹かな★★★★
古刹のものさびた様子を囲んで新緑が湧き上がる。新しい息吹と古く永く存在するものがよく溶け合っていい景色を見せている。(高橋正子)

まだ青き小さき枇杷を仰ぎけり★★★
椎の花雲のごとくに盛り上がり★★★

5月13日(4名)

多田有花
号令を受けたる如し歯朶若葉★★★
夏鴨の水辺に静かただ一羽★★★
見上げれば高きを覆い若楓★★★

小口泰與
脇役に小川置きけり大牡丹★★★
杣道の獣の臭い滴れり★★★★
南風や浅間の襞の黒黒と★★★

廣田洋一
アスファルト白く乾きて薄暑かな★★★
乙女子のホットパンツや街薄暑★★★★
気温に一番敏感なのは、若い女性たちかもしれない。気温に合わせて、洋服を選び、季節を先どり、たのしむ。薄暑を思えれば、早速ホットパンツで街を闊歩。初夏らしい溌剌とした姿が眩しい。(高橋正子)

雑草のまた伸びてきて庭薄暑★★★

桑本栄太郎
入口に薔薇の花咲く珈琲館★★★
ぎらぎらと木洩れ日ありぬ若楓★★★
あめんぼの水面の空を走りけり★★★★
水面の空には、雲のあるか。青空ばかりか。いろんな空が思い浮かぶが、空を走ってみたい思いは、人にもある。空を走ってあめんぼは、楽しいだろう。(高橋正子)

5月12日(5名)

小口泰與
雨粒の一つ二つや大夕立★★★
忽然と一の倉沢夏の霧★★★★
毛の国を一跨ぎせり虹の橋★★★

古田敬二
葭切の騒ぎしあとの池静か★★★
牧水の歌碑校庭に五月来る★★★
ランナーが逆さに走る池若葉★★★

廣田洋一
母の日や遺影に飾るカーネーション★★★★
母の日や母似の子らと食事せり★★★
日曜日今日は母の日位牌拭く★★★

桑本栄太郎
母の日と云えど母無く母想う★★★
まくなぎを払い巡れり池の淵★★★
アカシヤの白房見上げ散歩かな★★★★

多田有花
日当たれば形新たに若楓★★★★
薔薇咲けば一隅もっとも麗しき★★★
ピクニックの歓声近く皐月咲く★★★

5月11日(4名)

小口泰與
木道の覚満淵や風薫る★★★
大沼(おの)小沼(この)と赤城の沼や青嵐★★★
溶岩原へいっとき程の夏の雨★★★★

廣田洋一
子ら休む野の空高し朴の花★★★★
朴の花一弁ほぐれ蕊赤し★★★
臥竜のごと地を這ひ上がる朴の花★★★

多田有花
若楓開山堂の甍かな★★★★
ドライブウェイ尽きるところに水木咲く★★★
がまずみの花が五月の池の辺に★★★

桑本栄太郎
あめんぼの水面跳びはね逃げゆけり(原句)
原句は、景色のよくて、間違いはありませんが、そのまますぎるので、もう少し観察が欲しい句です。
あめんぼの跳びはね逃ぐも水の上★★★★(正子添削)

ジャスミンの花の垣根や園の庭★★★
まくなぎや顔の辺りを払い居り★★★

5月12日(日)


晴れ。
●5月月例ネット句会。

●信之先生は、早朝外に出掛けたよう。が、15分で帰宅。

●河野啓一さんの奥さんから、5日手紙をいただいている。啓一さんが1月4日に肺炎で亡くなられたと。

12月月例ネット句会に次の3句を投句されたのが最後。
  赤穂御崎一泊
冬の瀬戸さざ波青く空に溶け
大西日島々すべて茜色
朝ぼらけ漁火迅くも舟と化し

{銅賞】冬の瀬戸さざ波青く空に溶け/河野啓一
青い海が青い空に同化する様子が目に浮かびます。(高橋句美子)
互選最高点句。
これに対して11日には、元気なご様子でお礼が書き込まれている。

そのあとのことだ。12月26日に緊急入院。1月4日死亡。86歳。あと一か月で87歳なのに。
静かすぎると思えば友死す松の花  正子

●今日の朝日朝刊の俳壇・歌壇ページのコラム「うたをよむ」を読む。

「笹井賞のあとで」の題で、永井 祐という笹井賞の選考委員の方の文。笹井賞を逃した、まだ食べられるおいしい句を紹介している。気にするほどではないが、意味が分からない。最近の傾向と思えるが、意味が分からないところがいい、あるらしい意味をもっていい、それが新しさ、それが今の普通であることの歌。落選した短歌を一般人が読む新聞と言うマスコミでわざわざ公開する意味はなにか。要は、ここが問題かな。新聞は明日には、古紙になるが。