高橋信之俳句十二か月鑑賞(一月)
正月の港が動きかもめの詩碑
高橋信之
正月の港は横浜港で、その港と一体となって山
下公園があり、武内俊子の童謡歌詞「かもめの
水兵さん」が刻まれた詩碑が建っている。ハワ
イに旅行する叔父を見送るために横浜港の大さ
ん橋に行った帰途で作詞されたものとされる。
横浜港は国際貿易港として正月も休むことなく
動き、白いかもめと青い海が鮮やかな対比を見
せて、明るい港となっている。正月のうららか
な気分に、かもめが波にたのしげに揺られてい
る。「かもめの水兵さん」の歌詞を重ねて、港
の正月がある。 (高橋正子)
うす雲ひと刷け水引草真赤 喜代子
ひと刷けのうす雲に水引草の一すじの赤い色。「ひと刷け」
も軽く、水引草も軽いが、そこに「真赤」をもって引き締めた。
その真赤も強烈な赤ではなく、水引草の可憐な赤で、その取り
合わせに詩がある。
鶺鴒
高橋正子
芒の穂中洲にひらきみな若し
鴨泳ぐ速き流れに乗りつつも
秋の野の黄蝶白蝶こまごまと
秋風の鳥小屋インコの羽四色
治代さんから芋炊セット
水郷のごぼう里芋鍋に炊き
欅もみじはや夕暮れが来ておりぬ
十二夜の月にふらんす砂糖菓子
鶴見川・鳥山川
秋川の出会いの水ののびやかに
落ちそうで落ちず鶺鴒飛ぶときは
すすきより後れて葦の穂が真白
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横浜スタジアム
秋天に強靭なるものスタジアム
剥かれたる芋の白さを煮て保つ
残業の子にあたためて芋煮鍋
里芋の畑にとなり芋を売る
晩稲田の刈らるるまでをそよぎけり
晩稲田の祭りすぎたるさびしさよ
龍の口より落ちたる水の澄みていし
境内の秋澄み銀杏まだ青し
境内の崖をしばりて蔦紅葉
二丁目の丘に芒の穂の若し
酔芙蓉はれやかなるは八重であり
野ぼたんの紫あれば庭が澄み
湯上りの肌に星より来る寒さ
きょうからは色が見え出す菊蕾
ジンジャーの花の香に足る十三夜
おのこらが合唱して来る秋の坂
一鉢の小菊の色のたのしけれ
球根を植えて文化の日の晴天
秋天の青全きや指の傷
★夜は軒陰に白菜星をほしいまま 正子
大気澄む冬の夜、ひときわ輝きを増す星の光に、軒陰にある白菜がぽっと明るく白く目に浮かびます。昼は日の光、夜には星々の光を存分に浴びて旨みを増す白菜。冬夜の静けさに詩情豊かな時間が流れます。 (藤田洋子)
○今日の俳句
参道の一樹一石落葉踏む/藤田洋子
落葉の積もる参道の一樹一樹の姿を見上げ、踏む道の石一つ一つの具合を確かめつつ登る。伽藍へと導く参道がそうさせる。「落葉踏む」が手堅い。(高橋正子)
○新横浜へ下見に信之先生と。新横浜駅ビルの正面を出て横浜スタジアムに行く通りでもあるレンガ通りのスタバによって、珈琲とクッキーを摂る。レンガ通りをまっすぐ進むと、鶴見川の支流の鳥山川に架かるさんかく橋に出る。橋のたもとが新横浜駅前公園。さんかく橋の川向こうには、横浜労災病院が見える。川土手を歩き、鳥山川と鶴見川の合流点に来る。さらに川土手を歩き、新羽橋までくる。新羽橋を渡り、地下鉄新羽駅から帰路に着く。帰宅は2時前。川土手には、白鷺、鶺鴒。たまに青鷺。桜紅葉、百合の木の黄葉が一番きれいなころ。
○帰宅後、1月号の選句。今月は14日をめどに編集を終える予定だが、18日までかかるかも。
○コンテストの仕事が尾を引いて、小さい緊張が続くせいか、精神、秋晴れのようにいかず。夜中2時半ごろまで雑事の整理。