■6月月例ネット句会入賞発表

■2018年6月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年6月11日

【金賞】
★稜線の高さを飛びぬ夏燕/多田有花
山の稜線の高さまで燕が来ていることは驚きだ。稜線の上を飛ぶ夏燕の姿がさっそうとして爽快だ。有花さんたちと富士登山の前哨登山で登った山から河口湖が見えたが、そこを自在に、大きく飛ぶ燕の姿を思い出した。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★植田村明けゆく月のみずみずし/柳原美知子
田が植わった村の水田の静けさ。明けてゆく月もまた水を含んでいるようにみずみずしい。月と植田の美しい日本の風景。(高橋正子)

★トマト苗葉にも花にも今朝の風/藤田洋子
「今朝の風」がいきいきとしている。植えたばかりのトマトの苗の葉にも黄色い花にも、今朝の風が吹いている。苗はまちがいなく根付きはじめている。夏の朝の安堵した爽やかな気持ち。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★友と来て列待つ子らのかき氷/祝恵子
暑さに負けず元気に遊ぶ子らが、かき氷を求めて列を作る。かき氷を待っている間も、友達とわいわいにぎやかだ。「友と来て」こそかき氷を食べる楽しみなのだ。祭り気分の子どもたちが眩しい。(高橋正子)

★遠雷に重なり響く泣き声よ/高橋成哉
遠雷の鳴る街。その街の子どもの泣き声。庶民の暮らしがそこに見えるようだ。遠雷と泣き声を二つ聞き届けたのは、静かで、ひろい心。(高橋正子)

★幼子の指の彼方に小鳥来る/河野啓一
「小鳥来る」の季語が当季ではないのが、6月句会としは残念だが、大変いい句だ。幼子は目敏い。彼方の鳥も見つけて指さす。「彼方に」によって、句が深まった。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】 
★紫陽花を左右に眺め山門へ/高橋秀之
何処の紫陽花の有名な寺であろうか?紫陽花見学に出かけ、先ずお詣りの後と思い、山門に向います。早速左右には色とりどりの紫陽花が迎えて呉れています。 (桑本栄太郎)

★植田村明けゆく月のみずみずし/柳原美知子
田が植わる一村と明け方の月の、美しく豊かな情景。夜明けの静けさの中、季節のみずみずしさがいっそう感じとれます。 (藤田洋子)
田植えが終わったばかりの村に有明の月がかかっています。田は月を映しているでしょう。夜明けは早く、清々しい情景です。(多田有花)

★トマト苗葉にも花にも今朝の風/藤田洋子
植え付けたばかりのトマト苗でしょうか。葉も花も朝のそよ風に揺らいでこれからの成長と稔りが期待されます。家庭園芸のささやかな愉しみ。(河野啓一)

★田の植わりはるか石鎚青澄める/柳原美知子
★稜線の高さを飛びぬ夏燕/多田有花
★遠雷に重なり響く泣き声よ/高橋成哉
★幼子の指の彼方に小鳥来る/河野啓一

【高橋正子特選/7句】
★友と来て列待つ子らのかき氷/祝恵子
★遠雷に重なり響く泣き声よ/高橋成哉
★植田村明けゆく月のみずみずし/柳原美知子
★田の植わりはるか石鎚青澄める/柳原美知子
★揚羽飛ぶ自由よ庭の出入りに/高橋信之
★稜線の高さを飛びぬ夏燕/多田有花
★トマト苗葉にも花にも今朝の風/藤田洋子

【入選/14句】
★娶らざる吾子の四十路や浮いて来い/桑本栄太郎
お子様でしょうか。四十路になってもまだ妻を娶らぬお子様の事を心配している親心を浮人形に託した二物衝撃の素晴らしい句ですね。 (小口泰與)

★雨を得て白く輝く七変化/河野啓一
雨と紫陽花は陰と陽の様な関係で、雨が降ると紫陽花の色は本当にあでやかになる。白い花も一層輝く。 (廣田洋一)
久しぶりの雨を浴びることができて、正に白く輝く紫陽花は七変化の名にふさわしい瑞々しさが感じられます。 (高橋秀之)

★朝刊のことりと音す五月晴/小口泰與
早朝の晴れた日の静けさが際立つ様子があらわれています。 (髙橋句美子)

★新緑が映る水面の鮮やかさ/高橋秀之
綺麗な景色が思い浮かびます。 (西村友宏)

★脇芽摘む朝のトマトの青匂う/藤田洋子
菜園のトマトの花が咲き、いよいよ青い実をつけるようになり、脇芽も次々とでるようになりました。心地よい夏の朝風に吹かれて、収穫を楽しみに、季節の作物を育てる喜びが伝わってきます。 (柳原美知子)

★雲厚き空なり栗の花匂う/多田有花
雨のパラパラと降ってきそうな空模様の中、白い栗の花が豊かに咲き、風に吹かれて強い匂いを放つと梅雨の季節が実感されます。 (柳原美知子)

★水一面のまるい葉にあさざの黄/高橋句美子
池の水一面を埋め尽くすあさざの丸い葉とそこから伸びる黄色い花。初夏のさわやかさを感じます。 (高橋秀之)

★晴れの日は背を伸ばし咲く花菖蒲/高橋句美子
雨に咲くしっとりとした風合いと違う晴れの日の花菖蒲。明るい空の下、真っ直ぐな葉と茎がより強調され、ひときわ凛と鮮やかな花菖蒲です。 (藤田洋子)

★燦々と陽に佇んでやまぼうし/西村友宏
降り注ぐ陽光に、やまぼうしの四片の大きな白い苞が眩しいかぎりです。梅雨に入るも、陽ざしの中のやまぼうしに自ずと心明るくなれます。 (藤田洋子)

★積上げし本を抜き取り梅雨最中/廣田洋一
梅雨の真っ最中は雨で外出も憚られます。そんなひととき、部屋に積みあがっている本を一冊抜き取って読むのもこの時期ならではの時間の過ごし方なのでしょう。 (高橋秀之)

★牧水の名付けし峠緑雨かな/小口泰與
★夏の潮豊かなるかな河内灘/ 河野啓一
★水満ちて山と玉苗写す今朝/柳原美知子
★石段を登りて涼し大山寺/廣田洋一

■選者詠/高橋信之
★揚羽飛ぶ自由よ庭の出入りに
庭の緑を縫い、美しい翅をひろげて高く低く飛ぶ揚羽蝶に心遊ばせるひととき。心地よい夏の風が心身を吹き抜けるようです。 (柳原美知子)

★今日晴れて空の自由を得し揚羽
★万両の花びらを反らして白し

■選者詠/高橋正子
★青草に水音立ちて蛍棲む
せせらぎにそっと近づき蛍火を眺めたのはいつの日だったことでしょうか。蛍、懐かしいひびきです。(祝恵子)

★茎水漬くほど水あって菖蒲園
菖蒲の茎へひたひたと寄せる清らかな水とひかり、水面にも空にもとりどりの菖蒲が映える静かで美しい情景が目に浮かびます。 (柳原美知子)

★菖★蒲田の遠目の花は明るかり

■互選高点句
●最高点(7点)
★植田村明けゆく月のみずみずし/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

6月11日(月)

★バスの後ろ揺らし入りゆく青山河  正子
九十九折の山道を懸命に登っていくバスの姿と青葉若葉が生い茂る初夏の素晴らしい山の景色との素晴らしい対比。上り詰めたバスも青葉若葉の中でほっと一息つけることでしょう。(小口泰與)

○今日の俳句
伽羅蕗や子供ら帰省する事稀に/小口泰與
子供たちもそれぞれ家庭をもって、日常に忙しく、帰省も稀になった。みんなで囲む色どり豊かな食卓から、夫婦二人の食卓に。質素で、味わい深い伽羅蕗がそんなことを思わせる。(高橋正子)

▼過去(2016.6.11)
●四季の森公園
四季の森の菖蒲田を信之先生と見に行く。中山駅近くのオリジン弁当を買って、公園で食事。菖蒲はちょうど満開で見ごろ。中に花首が折れいているものがあちこちにある。一番花の花柄を摘んでいる職員の方がいて聞くと、花が重くなりすぎて花首が折れたのだそうだ。風雨ではないとのこと。

白菖蒲白といういろたっぷりと     正子
山陰の菖蒲田なれど花ゆたか      正子
満目の菖蒲白とむらさきと       正子
菖蒲田のまぶしさ目に入れ飲むサイダー 正子
菖蒲田に渡る木道かぎ字なり      正子
花首の折れし菖蒲を摘まずおく     正子

野萱草みどりの草浮く赤さ       正子
野萱草せせらぎの水流れ来る      正子

やさしきものハルジオンとタチアオイ  正子
梅雨晴れに山の小鳥の名を知らず    正子    

○青梅

[青梅/横浜緑区寺山町]_[青梅/横浜日吉本町]

★青梅に眉あつめたる美人哉/与謝野蕪村
★青梅に手をかけて寝る蛙かな/小林一茶
★溝またぎ飛び越えもして梅落とす/高浜虚子
★青梅をかむ時牙を感じけり/松根東洋城
★青梅や空しき籠に雨の糸/夏目漱石
★青梅や小房ながら清浄に/大谷句佛
★青梅を洗ひ上げたり何の安堵/細見綾子
★明け烏実梅ごろごろ落ちていて/寺井谷子
★青梅を齧る子に道たづねけり/大串章
★青梅の青の充実日が冥し/岡本眸
★庭師去りしあと青梅のころころと/林翔
★青梅の育ち盛りの児のごとし/村越化石

 店頭にも青梅が並ぶ季節になった。梅酒用の瓶と、氷砂糖と、ホワイトリカーと店頭に並べてあると、今年も梅酒を作りたくなる。毎年わが家では梅酒を作っている。多量に飲まないから、ひと瓶でいいのだが、一か月ほど前から去年のものを飲み始めた。青梅1キロに、ホワイトリカー一升(教わった時の習慣で一升と覚えている)、氷砂糖を800グラム入れている。甘いかなと思うが、普通氷砂糖は1キロなので、8割としている。私は風邪をひくと熱が下がるに従って咳が出始めなかなか止まらなくなる。最近、偶然なにかの本で読んで、梅酒は咳にも効くとあったので、寝る前薄めて飲んだら、たまたまなのか、咳き込むような咳が翌朝には止まった。本当に助かった。
 梅干しは紀州から取り寄せたものを毎年お中元、お歳暮と長らく頂いて過ごしていたので、作らなくなって、今は買うばかりである。私が作ったのはこれまでで一度だけ。生家では、梅干しを買うことなど考えられなかった。梅干し用に摘んだ梅が土間の籠に入れられて、昼夜いい香りを放って食べたいほどであったが、根拠は知らないが、これは、ひどい腹痛を起こすので食べてはいけないと言われていた。先日97歳で亡くなった母は結構大量に梅干しを甕につけていた。茶色い釉に、たらりと黒い釉を模様に垂らした例の甕である。だれがあれほどの梅干しを食べていたのかと今は思うのだが。梅雨が明けると、土用干しと言って梅干しを筵に広げて日に当てて、それから紫蘇と漬けこまれた。赤紫蘇ももちろん畑で育てていて、子どもは紫蘇の葉をむしる手伝いをした。赤紫蘇が出来るのを待って入れているような気もした。梅干し、味噌、たくあん作りは、年中行事のようでもあった。

★青梅の土間に昼夜を匂いけり/高橋正子
★青梅の瓶にしずまる夜の青さ/高橋正子
★青梅のなかの熟れたる梅匂う/高橋正子

 梅干し(うめぼし)とは、ウメの果実を塩漬けした後に日干しにしたもので、漬物の一種である。日本ではおにぎりや弁当に使われるなど身近な食品である。なお、梅干しがシソで赤く着色されるようになったのは江戸時代になってからとされる。梅干しは健康食品としても知られる。
 酒(うめしゅ)は、一般的に6月頃に収穫される青梅を、蒸留酒(ホワイトリカー、焼酎が一般的)に漬け込むことで作られる混成酒(アルコール飲料)である。家庭でも作れることから、古来より民間で健康に良い酒として親しまれており、近年では食前酒としても飲まれている。日本では、果実酒である事から酒税法によって、日本酒やみりんなどのアルコール度数が20度未満の酒で作る事は違法であり禁止されている。

◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)