■5月ネット句会■
ご挨拶(高橋正子/主宰)
今月の句会は、5月の第2日曜日ですので、母の日と重なりました。ここ数日は、よいお天気が続きで今日も「風薫る」日でした。薔薇も芍薬も、そしてあやめに、かきつばた、ルピナスや矢車草など見事に花を咲かせています。本当に「風薫る」です。水辺には睡蓮も花開き、こんなにも花がたくさん咲く季節がほかにあったかしらと、改めて振り返りました。こんなよき日、入賞の皆さまおめでとうございます。また、ご投句、選とコメントをありがとうございました。最近のニュースを知れば、世の中どうなっているだろうと疑問を持たざるを得ないような出来事が起こっていますが、それに振り回されず、「よい生活がよい俳句を」を実践した句を投句いただいて、大変嬉しく思っています。
句会の管理運営は信之先生、互選の集計は藤田洋子さんにお願いいたしました。いつもありがとうございます。すっかり初夏の陽気に句会の合間、近所の花屋さんでなでしこの苗をふた株買って帰り、プランターに植えました。ベランダがすっかり夏らしく明るくなりました。来月の句会を楽しみにお待ちください。これで5月ネット句会を終わります。
■5月ネット句会入賞発表■
■5月ネット句会■
■入賞発表/2014年5月11日■
【金賞】
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
実際、朴の花はこの通りである。高く聳える木に朴の花は上を向いて咲く。仰いでもその花は下から眺めるのみで、「青空の高きへ掲ぐ」は実直な見方。それが、堂々としてよい。(高橋正子)
【銀賞】
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
水槽の水を替えられたメダカは元気よく泳ぐ。差しこむ日光にメダカの影ができるが、その影が新鮮に思える。いきいきとして、透明感のある句だ。(高橋正子)
【銅賞2句】
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
吹かれてゆくしゃぼん玉を見ると、向こうの家の屋根に消えてしまった。屋根瓦は日本らしい風景を形作るもの。その屋根瓦に淡いしゃぼん玉が消える。これは日本的抒情。(高橋正子)
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
みどりの日は5月4日。風薫る季節で、料理をするにも気持ちがさわやかである。包丁もリズムよく、軽やかに音を立てる。(高橋正子)
【高橋信之特選/7句】
★母の日の全方向に雲もなし/高橋正子
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)
★噴水の真ん中一本高く噴き/古田敬二
噴水のありのままの描写に、空へ垂直に立ち上がる噴水の勢いを感じます。水辺の清涼感、季節の明るさやみずみずしさが思われます。(藤田洋子)
★弁当をつくる幸せ風薫る/井上治代
お弁当を作るのは、元気にでかることができることの証で幸せなことです。風薫る季節のお弁当作りは、きっと楽しいひとときになったことでしょう。(高橋秀之)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
【高橋正子特選/7句】
★新緑の真っ只中を駆け抜ける/高橋秀之
厳しい冬が去り燃え上がる新緑の嬉しさに胸一杯青い空気を吸い駆け出したい気持ち 私にも判ります。真っ只中と言うのもいいですね。(迫田和代)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
目高の水を取り替えて、目高の泳ぐ姿も生き生きとして見える。作者の愉快な気持ちが伝わってきて、初夏にふさわしいすっきりとした情景です、(河野啓一)
★アイリスの似合うしょう洒な夏館/小川和子
この夏館には菖蒲でもあやめでもなく、やはりアイリスが似合うのでしょう。アイリスやバラに囲まれた夏館が目に浮かびます。洒落た感じがする句だと思いました。 (井上治代)
涼やかな夏の装いの有るお家の庭にアイリスが咲いている。色は紫?白?と涼やかでしゃれた夏館の想像が膨らみます。夏の深まりにつれ更に涼やかさを工夫されることでしょう。(佃 康水)
★山藤や木にまきついて風まかせ/井上治代
この時期、車窓から或いは山辺に出掛けると全く同じ景色を見ることが出来ます。雑木山の大きな木々に巻き付いて垂れ下がり風の意のままに揺れています。四季の移ろいの風情を感じ取る事が出来ます。(佃 康水)
★しゃぼん玉向こうの家の屋根に消え/迫田和代
★青空の高きへ掲ぐ朴の花/佃 康水
★包丁の音軽ろやかにみどりの日/古賀一弘
【入選/13句】
★若竹にひかり透せる里の奥/小西 宏
立体感があって、広がりのある句だ。作者独自の視点がいい。(高橋信之)
★青柿よすくすく育て実りまで/河野啓一
作者の思いが直に伝わってくる。快い読後感がうれしい。いい心境の句。(高橋信之)
★窓若葉野鳥図鑑のページ繰る/藤田洋子
窓の若葉がアウトドアの世界に誘ってくれる。野鳥図鑑のページ繰れば、小鳥の囀りが聞こえてくる。楽しい世界だ。(高橋信之)
★麦秋の路線バスゆく田中かな/桑本栄太郎
麦の穂が熟れはじめたのですね。バスの窓から臨む麦畑の景が広々と思いうかびます。「路線バス」が良いです。(小川和子)
★風薫る三三五五に車椅子/矢野文彦
心地よい5月の空の散歩道、笑顔が目にうかぶようです。(渋谷洋介)
★蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す/小口泰與
「蜘蛛の子を散らすように」との言葉通り、生まれたばかりの蜘蛛の子はそれぞれ、彼方此方に向かって一気に走り出します。生まれたばかりの生命が元気よく動き回る、命が輝く今の季節を「遁走す」との措辞により、巧みに詠まれました。(桑本栄太郎)
★母の日の昼餉の支度娘と並び/藤田洋子
母の日に、我が娘と並んで食事の支度が出来るとは娘にとっても自分にとっても幸せを感じる一時です。今日は特別愛情溢れる美味しい母の日の御馳走が出来上がった事でしょう。そしてこうして母の味を受け継がれてゆくのでしょう。作者の和やかなご家庭を垣間見る思いがいたします。(佃 康水)
一緒にお住まいなのか、訪れられたのか、母の日のとても和気あいあいのいい関係の親娘ですね。(祝恵子)
★学び舎を越えて背山へ黒揚羽/佃 康水
学び舎とは、作者の母校でしょうか、それも幼い頃通った小学校。校舎の背後には見慣れた妹背の山が肩を並べ、故郷の思い出と一体になっています。黒揚羽は故郷を訪ねた今見る姿なのでしょうか、あるいは思い出の中の風景か? 黒揚羽の飛翔が印象鮮明です。(小西 宏)
★豆の花支柱の丈のまだ足らず/桑本栄太郎
支柱の丈より伸びようとする豌豆は今花盛り、収穫が楽しみですね。豆ごはんや卵とじなどまで想像がふくらみます。(黒谷光子)
★著莪の花愚直に生きし八十年/渋谷洋介
正直で勤勉に生きてきた八十年。その人生こそが宝だと思います。目立たないけれど存在感のある著莪の花との取り合わせがステキだと思いました。(井上治代)
★ルピナスや紫紺の妙義彫り深し/小口泰與
妙義彫りがどんなものか実際には知らないのですが、咲きはじめた新鮮なルピナスの花は細かく刻んだ彫刻のように見えなくもありませんね。雰囲気が出ていると思います。(河野啓一)
★急かさるる堰に崩れし花筏/渋谷洋介
水面に浮かぶ花びらが繋がり、堰へと流れてゆく花筏の美しさ。花の季節の終わりに、もうしばらくその美しさをとどめてほしい願い、花筏へのいとおしみがしみじみと伝わります。 (藤田洋子)
★いっときの声高らかに揚雲雀/黒谷光子
透きとおった美しい声で鳴く雲雀。鳴きながら空高く舞い上がった後の静寂も心地よく感じられる句だと思います。 (井上治代)
■選者詠/高橋信之
★昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
朝日は日の出とともに昇りはじめ、時間とともに昇ります。若葉に透けて若葉をくぐって朝日が昇るすがすがしい朝がそこにあります。(高橋秀之)
★朴の花咲きゆっくりとした時間
大きな白い方の花が咲いて初夏のひと時がゆっくりと過ぎて行きます。何かと世相騒がしい昨今、得難い貴重な時間と言えましょうか。こころ休まる詠みに惹かれます。 (河野啓一)
今まで、朴の花は飛騨路そして深山に咲いているものしか知りませんでした。また薫りや実物の全景も見た事がなく、只々仰ぐばかりです。大きな葉の上に高く咲く朴の花は散ることは無いと聞きますので、「ゆっくりとした時間」の措辞はゆっくりと仰いでいる作者、そして木の上にのみ過ごす朴の花だからこそ相通じる措辞の様に思います。(佃 康水)
★若葉道青空少し見え隠れる
■選者詠/高橋正子
★母の日の全方向に雲もなし
5月の第二日曜日で、母に感謝する日に空を見上げるとあらゆる方向に雲ひとつない素晴らしい日で空に向かって母を偲び感謝の気持ちを捧げている素敵な作者ですね。 (小口泰與)
★そよぐほかならず池畔の矢車草
可愛らしい矢車草が池の畔にひっそりと咲いている。時たまのそよ風に少し揺れるだけで、いかにも平穏で好もしい風情です。 (河野啓一)
★睡蓮の流れ来るも茎があり
■互選高点句
●最高点(9点)
★水替えてメダカの影の新しき/祝恵子
※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)
※コメントのない句にコメントをお願いいたします。
■5月ネット句会清記■
■5月ネット句会■
■清記/18名54句
01.緑濃き森となりたり今日立夏
02.噴水の真ん中一本高く噴き
03.葉桜の木漏れ日揺れるブロンズ像
04.麦秋の路線バスゆく田中かな
05.豆の花支柱の丈のまだ足らず
06.ひるがえる白き葉裏や青あらし
07.風薫る三三五五に車椅子
08.直立の茎に風好しえびね蘭
09.陽を待てば風も叶いぬ鯉幟
10.アイスティー湖畔に集うサイドカー
11.ルピナスや紫紺の妙義彫り深し
12.蜘蛛の子のすでに意思持ち遁走す
13.母の日の全方向に雲もなし
14.そよぐほかならず池畔の矢車草
15.睡蓮の流れ来るも茎があり
16.昇る朝日が若葉に透けて若葉をくぐる
17.若葉道青空少し見え隠れる
18.朴の花咲きゆっくりとした時間
19.水替えてメダカの影の新しき
20.ふかしいも夏の朝餉の具となりぬ
21.地に触れる藤花日に日に伸びてゆく
22.急かさるる堰に崩れし花筏
23.著莪の花愚直に生きし八十年
24.空を飛ぶ嬰の微睡春一日
25.しゃん玉向こうの家の屋根に消え
26.水と土遠い故郷の苗代を
27.瀬戸の夜浪間に揺れる春の月
28.さわやかに風吹きぬけて鯉幟
29.青柿よすくすく育て実りまで
30.海開き水冷たくて児らはしゃぐ
31.洗いたてのカーテンそよと五月光
32.窓若葉野鳥図鑑のページ繰る
33.母の日の昼餉の支度娘と並び
34.新緑の真っ只中を駆け抜ける
35.散水の飛沫にうっすら虹かかる
36.葉を揺らし木々を吹き抜く初夏の風
37.学び舎を越えて背山へ黒揚羽
38.青空の高きへ掲ぐ朴の花
39.遠足子ジャングルジムを取り合えり
40.世界遺産ことに五月の富士の山
41.弟の仇(あだ)に兄出る子供の日
42.包丁の音軽ろやかにみどりの日
43.実桜を葉陰に風の行き来する
44.アイリスの似合うしょう洒な夏館
45.さざなみの立ちて早苗田一面に
46.青空の点となりゆく揚雲雀
47.いっときの声高らかに揚雲雀
48.山峡の村の賑わう祭かな
49.野に遊び白詰草の花飾り
50.若竹にひかり透せる里の奥
51.泥水に耀き立てり葦の青
52.山藤や木にまきついて風まかせ
53.弁当をつくる幸せ風薫る
54.思い出は香りとともに豆の飯
※互選を開始してください。
◆互選のご案内◆
①選句は、清記の中から5句を選び、その番号のみをお書きください。なお、その中の1句にコメントを付けてください。
②選句は、5月11日(日)午後6時から始め、同日(5月11日)午後10時までに済ませてください。
③選句の投稿は、下のコメント欄にご投稿ください。
※1) 入賞発表は、5月12日(月)午前10時です。
※2) 伝言・お礼等の投稿は、5月12日(月)午前10時~5月13日(火)午後6時です。
5月11日(日)
★薔薇垣と薔薇のアーチに人の住む 正子
丹精込めて手入れされた薔薇垣と薔薇のアーチなのでしょう。薔薇をこよなく愛する住人はどのような方でしょう。お住まいの方はもちろんのこと、通りすがりの人々にも、季節の豊かな彩りと喜びを分け与えてくれる薔薇の美しさ、芳しさを思います。(藤田洋子)
○今日の俳句
若葉風自転車きらり輪が廻る/藤田洋子
若葉風に吹かれ、自転車の銀輪がきらりと輝いて廻る。初夏の解放感と若々しさの溢れた句。(高橋正子)
○句美子と大船フラワーセンターへ吟行に行った。日吉駅で10時半に待ち合わせ。句美子はフラワーセンターは初めてなので、私が案内。園内は薔薇としゃくやくが咲き誇り、馥郁たる香り。この二つに加え、睡蓮、黄菖蒲がよく咲いていた。ルピナス、矢車草、おだまきなど百花繚乱。アカシヤの花、石楠花、藤がすでに終わっていた。句美子が温室を見たいというので温室に入った。思いがけず、睡蓮の花がとりどり咲いて、ロンドンのキューガーデンを句美子と見学したことを思い出した。睡蓮が咲いていたこと、オーストラリアやその他熱帯の植物があったことなど。赤バナナが成熟中であった。キューガーデンとは、もちろん、規模が全然違うのだけれど、フラワーセンターの意気込みも感じられた。 昼食は持参の助六すしと柏餅などで済ませた。帰りは、大船駅のドトールでアイスティーとミルフィーユで小憩。句美子は翌日、28句作ってメールで送ってくれた。
○睡蓮
[睡蓮/神奈川県立大船植物園] [睡蓮/横浜都筑・ふじやとのみち]
★睡蓮の花沈み今日のこと終へず/臼田亜浪
★睡蓮に日影とて見ぬ尼一人/飯田蛇笏
★睡蓮や鬢に手をあてて水鏡/杉田久女
★睡蓮の明暗たつきのピアノ打つ/中村草田男
★睡蓮に雨意あり胸の釦嵌む/中村草田男
★睡蓮の汀に睫長き子よ/星野立子
★睡蓮やまづ暮のいろ石にあり/加藤楸邨
★睡蓮のひかりを絵の具盛り描く/宮津昭彦
睡蓮(学名:Nymphaea)は、スイレン目スイレン属の植物の一つで、水生多年草。単にスイレン(睡蓮)と呼ぶことが多い。日本にはヒツジグサ(未草)の1種類のみ自生する。日本全国の池や沼に広く分布している。白い花を午後、未の刻ごろに咲かせる事からその名が付いたと言われる。水位が安定している池などに生息し、地下茎から長い茎を伸ばし、水面に葉や花を浮かべる。葉は円形から広楕円形で円の中心付近に葉柄が着き、その部分に深い切れ込みが入る。葉の表面に強い撥水性はない。多くの植物では気孔は葉の裏側にあるが、スイレンでは葉の表側に分布する。根茎から直接伸びる花柄の先端に直径5-10cmほどの花をつける。産地で大まかに分けると、熱帯産と温帯産に分けられる。温帯産は水面のすぐ上に花を付けるが、熱帯産は水面から高く突き出た茎の先端に花をつけるので、区別は容易である。また、熱帯産には夜や早朝にしか花を咲かせない種もある。
5月10日(土)
★初夏の夜の電車傾きつつ曲がる 正子
○今日の俳句
蒲公英の種ふと浮び空の詩/河野啓一
野原の蒲公英の絮が、風が来て、ふっと空に浮かんだ。これから広い空を飛んでゆく、蒲公英の種子の旅がはじまる。その心は、「詩」と言える。蒲公英の種子の飛行は、「空の詩」であり、「空の歌」なのだ。(高橋正子)
○杜若(かきつばた)
[かきつばた/東京白金台・自然教育園(左:2013年5月2日・右:2012年5月10日)]
★宵々の雨に音なし杜若/与謝蕪村
★杜若けふふる雨に莟見ゆ/山口青屯
★森に池あり杜若濃き青に/高橋信之
カキツバタ(燕子花、杜若、Iris laevigata)はアヤメ科アヤメ属の植物で、湿地に群生し、5月から6月にかけて紫色の花を付ける。内花被片が細く直立し,外花被片(前面に垂れ下がった花びら)の中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどを特徴とする。愛知県の県花でもあり、三河国八橋(現在の知立市八橋)が『伊勢物語』で在原業平がカキツバタの歌を詠った場所とされることに由来している。在原業平が詠んだ歌は「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ」江戸時代の前半にはすでに多くの品種が成立しており、古典園芸植物の一つでもあるが、江戸時代後半には花菖蒲が非常に発展して、杜若はあまり注目されなかった。現代では再び品種改良が進められている。日本三大カキツバタ自生地は、愛知県刈谷市井ヶ谷町にある「小堤西池」、京都府京都市北区にある「大田の沢」、鳥取県岩美町唐川にある「唐川湿原」で、カキツバタの自生地として有名である。なお、「いずれがアヤメかカキツバタ」という慣用句がある。どれも素晴らしく優劣は付け難いという意味であるが、見分けがつきがたいという意味にも用いられる。