1月11日(土)

★寒林を行けばしんしん胸が充つ  正子
冬枯れた寒林のなかを歩きながら冬の気を胸一杯に満喫しておられる作者です。「しんしん」の表現がじつにぴったりと共感を以て読み手の胸に響いてきます。(河野啓一)

○今日の俳句
さわさわと光と影を水仙花/河野啓一
水仙に日の光りが当たると、花にも葉にも影ができる。日のあたるところはより輝いて、当たらないところは静かに深く影ができる。その光と影が「さわさわ」とした印象なのは、水仙の姿から受け取られるものであろう。(高橋正子)

○金柑

[金柑/横浜日吉本町]             [金柑/東海道53次藤沢宿]

★金かんや南天もきる紙袋 一茶
★乳児泣きつつ金柑握り匂はしむ/加藤楸邨
★金柑を煮てぬくもりし妻の頬/小林康治
★金柑のありたけ点る観音堂/高澤良一
★金柑は黄に仏塔は金色に/佐野五水
★金柑のほほ笑みを掌につつむなり/田村 實
★金柑の一樹とありし少年期/宮地玲子
★金柑の甘煮に移る日ざしかな/井上 雪

 キンカン(金柑)は、ミカン科キンカン属 (Fortunella) の常緑低木の総称。別名キンキツ(金橘)。中国の長江中流域原産で、英語などの「Kumquat」もしくは「Cumquat」は「金橘」の広東語読み「gam1gwat1 (カムクヮト)」に由来する。
 果実は果皮ごとあるいは果皮だけ生食する。皮の中果皮、つまり柑橘類の皮の白い綿状の部分に相当する部分に苦味と共に甘味がある。果肉は酸味が強い。果皮のついたまま甘く煮て、砂糖漬け、蜂蜜漬け、甘露煮にする。甘く煮てから、砂糖に漬け、ドライフルーツにすることもある。果実は民間薬として咳や、のどの痛みに効果があるとされ、金橘(きんきつ)という生薬名でいうこともある。果皮にはヘスペリジン(ビタミンP)を多く含む。観賞用として庭木として植えられることも多い。剪定に強いので生垣や鉢植え、盆栽にもできる。広東省や香港では、旧正月を迎える際に柑橘類の鉢植えを飾ることが多く、キンカンも好まれる。

◇生活する花たち「蝋梅①・蝋梅②・さんしゅゆの実」(横浜・四季の森公園)

1月11日

●小口泰與
三山も雪をかずきし風の朝★★★
枯薗に口を漱ぎて居りにけり★★★
雪焼やおりおり疼く脚の傷★★★

●祝恵子
一組は河川敷へとお正月★★★★
帰りくる学童と会う早六日★★★

ラデッシュの水を通せばなお美し★★★★
ラディッシュの紅色はそれ自体で美しいが、水に放てば、さらに紅色がみずみずしく美しくなる。小さなことだが、これも生活の楽しさ。(高橋正子)

●迫田和代
若水を唯おもいっきり流しっきり★★★★
若水を井戸から汲み上げることもなくなったが、たっぷりと新年の水を流し切って使うのも若水を故のこと。(高橋正子)

乗り初めや私の場合車椅子★★★
今年また破魔矢を差して鈴鳴らし★★★

●小西 宏
枯木立西高東低かがやく空★★★
枯蔦に覗く古家のガラス窓★★★

野っ原の裸木越せばホームラン★★★★
野っ原の向こうに裸木が立ち並ぶ。その裸木を越せばホームランとなる。愉快な気持ちになる句。(高橋正子)

●桑本栄太郎
押し切りて鏡開の汁粉かな★★★

寒晴れや梢の空のまつたきに★★★★
真っ青な寒空と梢の先の繊細さがよい詩情となっている。「梢の空のまったき」は省略がよく効いている。(高橋正子)

乙訓の風吹き払う寒の空★★★