自由な投句箱/1月1日~1月10日(2024年)

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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
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「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/1月1日~1月10日(2024年)

1月10日(2句)

★金色の夢ふくらます福寿草/廣田洋一
路地に植えた福寿草は正月を過ぎるころからようやく花を開く。地面近く花を開く福寿草は金色といってよいほどの黄色。日差しを受けて、上等な金色の夢をふくらませているようだ。(髙橋正子)

★人ひとり浜へ投石寒夕焼/弓削和人
「投石」と聞いて、なにごとかと思うが、「投石」もいろいろ。この句の投石は遊びであろう。人がひとり、寒夕焼けの広がる浜辺で石を投げている。男であろう。なにか心に思うところがあるのか、単に投げてみているのか、それはどちらでもいい。こういう景色があった事実。(髙橋正子)

1月9日(2句)

★松の内淡路へ渡る船に乗る/多田有花
松の内の小さな旅。本州を離れ、淡路島へ船で渡る。島は淑気に満ちている感じさえする。「松の内」がいい。(髙橋正子)

★松納屋根より落つる雪溜/弓削和人

松納の日、屋根よりどさりと雪の塊が落ちた。危ないことであるが、松の内は雪下ろしも休んだのであろうか。屋根に雪溜ができて、どさりと落ちたとき、正月が終わったという意味に。(髙橋正子)
1月8日(2句)

★露凝るや一画見ゆるガラス窓/桑本栄太郎
「露凝る」が美しい。窓の露の結露を言っているのではなく、ガラス窓から露凝る草の葉がある一画が見えるのである。それをガラス窓のある暖かい室内から覗き見たのだ。(髙橋正子)

★成人の日髪結ひ上げて清楚なり/廣田洋一

髪を結い上げて、清楚な印象の成人。「清楚」なりと断定して迷いがないのは、そこに「若さ」と「初々しさ」を見たからであろう。成人を寿ぎたい。(髙橋正子)
1月7日(1句)

★七草の粥の土鍋の息吹かな/桑本栄太郎
七草粥を炊く土鍋が噴いている様子を「息吹」と見た。比喩の「息吹」に嫌味がないのは、あおあおとした「七草」の命を思うからである。(髙橋正子)
1月6日(2句)

★福笑最後に笑ふ子のをりて/廣田洋一
福笑をしてみんなが笑った後に笑う子がいる。みんなが笑うのがおかしくて笑ったのかもしれないが、マイペースというか、福を招くような面白い子である。(髙橋正子)

★ともがらと火の粉を払うとんどかな /弓削和人
同輩と話ながらどんどの火を囲んでいたのだろう。燃やすものが時に爆ぜて火の粉が飛ぶ。その火の粉を払いながら、どんどを見守る。捉えてかたにうまさがある。(髙橋正子)

1月5日(1句)

★被災者の消息知りぬ五日かな/桑本栄太郎
今年の新年は元日夕方の能登半島地震に始まった。地震が起きてすぐは、情報はばらばらで、何がどうなっているのわからない。5日になって消息もほぼ知れるようになった。生活も普段にもどるころ。5日間という時の経過。(髙橋正子)
1月4日(1句)

★新春の川に魚影の豊かなり/多田有花
新春の川をのぞき込むといろんな魚影が元気に動くのが見える。「豊かなり」は、新春だからこそ思えることだろう。(髙橋正子)
1月3日(1句)

★わずかずつ盛られてうれし節料理/多田有花
有花さんは旅の宿で大晦日から新年を過ごされたようだ。その宿でのお節。わずかずつ盛られて、色とりどりで、にぎやかで、かわいくて、まず目から楽しだ。(髙橋正子)
1月2日(2句)

★初笑い静かな男のヘルパーと/川名ますみ
いつもはもの静かな男性のヘルパーだが、ちょっと冗談めいたことを言ったののだろうか、それとも反対にますみさんが言ったか。思わずそれが初笑いとなった。明るい新年となった。(髙橋正子)

★歩み行く恵方詣りや大原野/桑本栄太郎

恵方詣は、その年の恵方にあたる神社に詣ることだが、今もそのしきたりがあるのか。大原野は今は住宅地になって淋しさはそれほどないのだろうが、歌に詠まれてきた「大原野」のイメージは拭えない。その大原野を歩いて初詣にでかけた。「歩み行く」がいい。(髙橋正子)
1月1日(5句)

★渓流の流れ清らや年新た/小口泰與
年が新しくなってみると、いつもの渓流もいや増して清らかな流れとなっている。すがしいことだ。(髙橋正子)

★初春や早咲きの梅光りをり/廣田洋一
初春の早咲きの梅の光が小さくも凛としている。さきがけの生命力がいい。(髙橋正子)

★日はすでに高く昇りぬ初御空/桑本栄太郎
「日はすでに高く昇りぬ」は、うらうらと春のような様子。初御空に春らしさを見た。(髙橋正子)

★去年今年伊豆里山の温泉に/多田有花
伊豆の里山の温泉の去年今年。太くどっしりと年があらたまった印象がする。
(髙橋正子)

★羽後国(うごのくに)に馴染みてはやき去年今年/弓削和人

和人さんは、去年田沢湖のある市に転勤され、美しい田沢湖を巡ったり眺めたり、仕事をし、すっかり「羽後国」に住み慣れて新年を迎えられた。俳句を作ることで、土地への愛着も早く湧くのではと私は思っているが、どうであろうか。(髙橋正子)

1月1日~1月10日(2024年)

1月10日(5名)

小口泰與
声のみの挨拶みんなマスク越し★★★
高音して冬翡翠の機先かな★★★
空風や腑に落ちぬ日も数多あり★★★

廣田洋一
金色の夢ふくらます福寿草★★★★
会長に折句捧げる初句会★★★
冬ぬくし買物をする幼き子★★★

多田有花
海峡ゆく寒の空気の澄む中を★★★★
寒晴の岩屋みなとに船が入る★★★
寒晴の絵島のうしろ大橋や★★★

桑本栄太郎
雨雲の峡駆け上る寒の雨★★★
松過ぎの荒涼たりぬ山河かな★★★
登校の児童一列寒九雨★★★

弓削和人
人ひとり浜へ投石寒夕焼★★★★
看板を照らす灯に風花す★★★★
踏み入りて一語こぼるる樹氷林★★★
1月9日(6名)

小口泰與
里人は雪の峠を越えにけり★★★
ひそやかに足の指より寒さ來る★★★
忽然と仏頂面の寒犬ぞ★★★

多田有花
松の内淡路へ渡る船に乗る★★★★
寒晴の明石海峡船でゆく★★★
寒の海峡八百隻の船ゆけり★★★

弓削和人
松納屋根より落つる雪溜★★★★
御降りに傘の新たに濡れにけり★★★
白き野や鳥居も見えで寒の入★★★

廣田洋一
書斎の隅々掃きて初箒★★★
掃初めやはたきの音を軽く立て★★★★
終活を始めし友や冬薔薇★★★

桑本栄太郎
山茶花の花びら散らし鳥翔てる★★★
冬日差す車内明るきバスの中★★★
あおぞらにオブジェとなりぬ冬木立★★★
川名ますみ
あまやかに香る株あり冬菫★★★
冬菫ひときわ甘き香に気づく★★★
人日や手のひらに載る門松も ★★★
1月8日(4名)

小口泰與
水鳥の広げし羽の光ける★★★
近づくや沼の片隅二羽の鴛★★★
飛び來る影を率いて冬欅★★★

桑本栄太郎
松過ぎの初雪降りぬ我が団地★★★★
初句会ネットにしるす選句かな★★★
露凝るや一画見ゆるガラス窓★★★★

廣田洋一
成人の日髪結ひ上げて清楚なり★★★★
松過ぎて弁財天に参りけり★★★★
年新た鳶が輪を描く五つ六つ★★★

多田有花
冬の朝餌場に向かう水鳥たち★★★
風の音朝より強し寒波来る★★★★
しぐれ雲去れば寒晴れ広がりぬ★★★
1月7日(5名)

多田有花
犬連れて枯田に遊ぶ男かな★★★
朝もやの流れゆくかな寒の入★★★
小寒やココアにマシュマロを溶かす★★★

小口泰與
令和六年一月七日
水面へ突入せしや冬翡翠★★★
目の前の日うら日おもて雪浅間★★★
冬翡翠の日影を避けて飛び込みし★★★

廣田洋一
昼食は七種祝ふ粥とせり★★★
正月七日約束したる食事会★★★
ささやかな願いを込めて福引す★★★

桑本栄太郎
まな板に七草そろへ我に見す★★★
七草の粥の土鍋の息吹かな★★★★
葉書きでは足りず鳴らすや初電話★★★

弓削和人
初春の川瀬はひそと流れけり★★★
連山は霞みたりけり年新た★★★
半島や陽光疾くと射して来よ★★★
1月6日(6名)

多田有花
散りつくす梢に来たり千代の春★★★
初晴の広がる熱海人の波★★★
初富士や三島駅北口を出れば★★★

小口泰與
思い出の山を遠見や霜の朝★★★★
山風と日を賜われる蜜柑かな★★★
遥かなる浅間すっぽり雪纏う★★★

廣田洋一
福笑最後に笑ふ子のをりて★★★★
友と二人喫茶店にて初句会★★★
読初や使ひ慣れたる電子辞書★★★

桑本栄太郎
裏白のちりちり枯るる馬日かな★★★
どんよりとしぐれ催いや峰の奥★★★
立ち昇るけぶり数多や冬の畑★★★

川名ますみ
年越や石鹸の泡光り過ぎ★★★★
初日影睫毛の毛先まで降りぬ★★★
初日影睫毛の先に降りそそぐ★★★

弓削和人
年賀状紀州の海を渡りけり★★★
恥じらいて会釈をしたり晴着の子★★★
ともがらと火の粉を払うとんどかな ★★★★
1月5日(4名)

小口泰與
三山のいまひたすらに枯れにけり★★★
初春の森の中より鳥の声★★★
空風を賜わる吾や赤城山★★★

多田有花
<伊豆急行三句>
初乗は真っ赤なキンメ電車かな★★★
はるかなる伊豆七島や初景色★★★
初凪に房総半島横たわり★★★

桑本栄太郎
いつまで正月気分や寝過ごしぬ
被災者の消息知りぬ五日かな★★★★
牛日の濯ぎも干し布団干す★★★

廣田洋一
待ちわびし賀状届きて4日かな★★★
食卓の旧に戻りて4日かな★★★
新調の革靴おろし5日かな★★★
1月4日(4名)
小口泰與
指ひしと寒さ迫りし小鮒釣★★★
雨樋に潜みて鳴くや寒雀★★★
山間に冬の夕日のひた走り★★★

多田有花
新春の川に魚影の豊かなり★★★★
初晴や竹の動けば影動き★★★
ゆったりと初湯に木々の影浮かべ★★★★

弓削和人
空澄んで沓新しく三ヶ日★★★
菜の煮込み過ぎし大鍋三ヶ日★★★
熊笹の葉筋のいのち御用始★★★★

廣田洋一
診察の前に交わせる御慶かな★★★
旗立てて初荷の届く薬局かな★★★
宛先不明戻り来たれる年賀状★★★

桑本栄太郎
羊日のエンジン高き駐車場★★★
買初めの妻いそいそと化粧かな★★★
推敲の果ての投句や初句会★★★
1月3日(4名)

小口泰與
三日はや浅間くつきり青空へ★★★
初春や柾目ただしき桐箪笥★★★
三日はやほかほかしたる風の中★★★★

多田有花
わずかずつ盛られてうれし節料理★★★★
注連飾に今年の朝日さしてくる★★★
一点の雲なく晴れし初御空★★★

廣田洋一
長髪をきっちり束ね初詣★★★
朱の椀に三つ葉を添へて雑煮餅★★★
黒豆にちょろぎを乗せて節料理★★★

桑本栄太郎
親族へ掛け回り居り初電話★★★
三日早やパンとコーヒー朝餉摂る★★★
注連縄のゆずり葉広ぐ団地ドア★★★
1月2日(5名)

川名ますみ
雨晴れて大つごもりの日暮れなり★★★
初笑い静かな男のヘルパーと★★★★
雑煮椀鉢の三つ葉を少し摘み★★★

小口泰與
念念の時の流れや年守る
白白と浅間暁行く二日かな★★★
晴れ渡り噴煙も無き二日かな★★★★

多田有花
海の幸山の幸あり年を越す★★★
年の夜の風の音きく露天の湯★★★★
湯上りに年越蕎麦をいただきぬ★★★

桑本栄太郎
初夢の懐かしき人見たりけり★★★
二日早や濯ぎもの干す団地かな★★★
歩み行く恵方詣りや大原野★★★★

廣田洋一
元日や大地震える辰の年★★★
神殿の玉砂利白く淑気満つ★★★
墓道を紅く染めたり山茶花かな(原句)
墓道を山茶花紅く染めいたり(正子添削)
1月1日(5名)

小口泰與
大歳の二年詣りや山の径★★★
渓流の流れ清らや年新た★★★★
元旦の雀色時浅間山★★★

廣田洋一
初富士や白き光を放ちをり★★★
ご神木の赤き実光る初詣★★★
初春や早咲きの梅光りをり★★★★

桑本栄太郎
日はすでに高く昇りぬ初御空★★★★
御降のありしや路面濡れ光る★★★
日の本は地震(ない)の国とや元旦に★★★

多田有花

去年今年伊豆里山の温泉に★★★★
元朝にはや蝋梅の香りおり★★★★
快晴や富士を仰げるお元日★★★

弓削和人
羽後国(うごのくに)馴染みてはやき去年ことし(原句)
羽後国に馴染みてはやき去年今年(正子添削)★★★★

窓透きて眩しき湖面や初御空(原句)
「初御空」を切れ字の「や」でくっつける手法はいけません。「切れ字」は、繋がっているものを切るのが働きです。(髙橋正子)

食積の加減どうかと厨より★★★

1月1日(月)2024年

喪中につき 新年のご挨拶をご遠慮申し上げます。
昨年5月花冠の創刊者で夫の高橋信之が亡くなりました。喪中につき
新年のご挨拶をご遠慮申し上げます。
髙橋正子の俳句日記をお読みくださっている皆様、今年も髙橋正子の俳句日記をよろしくお願いいたします。皆様の幸せをお祈りいたします。
2024年1月1日
髙橋正子
今朝咲いて二花の水仙すがしかり 正子
水仙と小菊を仏にまず供え    正子
好物の餅を重ねて供えけり    正子
●明日子供たちが来るので、野菜を洗ったり、下茹でしたり、いろいろ準備。準備が終わって炬燵に入ると、能登半島で地震がおき、大津波の警報出たニュース。夜7時からのウィーンフィルのニューイヤーコンサートを楽しみにしていたのに、それどころではなくなった。元日の夜の最も楽しい時間を地震と津波に奪われた人たちは、また大変なことになった。原発は大丈夫か。東日本大震災をもろに思い出す。
●夜、自由な投句箱の選とコメント。5名投句。新年とあって、みんないい句をそろえている。秀句として5名5句を挙げる。

今年もよろしくお願いします


花冠発行所は昨年五月の花冠創刊者の髙橋信之先生の死去にともない、喪中ですので、新年のご挨拶をご遠慮申し上げます。
皆様には良い年をお迎えのことと思います。今年一年もまた素晴らしい年でありますよう、祈念いたします。
2024年1月1日
花冠発行所 代表 髙橋正子