4月6日(日)

曇り
花冷えの水の旨きをごくごくと  正子
畳拭く花にひらきし六畳間    正子

●日曜日。床に就いたのは今朝の3時前。リルケが晩年なぜ母語でないフランス語で詩を書いたのか、ネット上の論文を探していて、気づいたらそんな時間になっていた。戸口日出夫先生の名前の論文がでてきた。信之先生が「戸口さん」と呼んでいた方だろうと思うが。リルケを研究されていたのだと知る。

●『リルケ詩集』(富士川英郎訳/新潮社)の「オルフォイスへのソネット」を読んでいて、「呼吸よ、目に見えない詩よ」に出会った。この『リルケ詩集』には、「オルフォイスへのソネット」(55篇)から11篇が選ばれているが、その9番目の詩。
リルケも、そう思ったのかと、古い知己に出会った気持になった。私も捨てた人間ではないと、ひそかに喜んだ。私の考えとぴったりで、リルケの言うことに全面的に共感する。結局、「詩は呼吸である」と私は結論付けている。ひいては、文体は呼吸なのである。17字音の俳句の文体の面白さを、俳壇の評価と関係なく、私はひとり楽しんでいる。短い俳句のなかでさえ文体があるのだ。俳句は5-7-5に音楽性があると思っているかもしれないが、もっと細かく5の中の、7の中の音節が作る音楽がある。音律と言っていいだろうが、そこに詩人の品性や本性がよく現れるのだ。
  ここで「オルフォイス」という言葉に馴染がない方に説明を加えると、「オルフォイスOrpheus」は、ふつう「オルフェウス」と言われていて、それのドイツ語読みである。「オルフォイス」はギリシャ神話に登場する伝説的な詩人で音楽家。アポロンから贈られたリラ(竪琴)を弾き、その美しい音楽で自然界のあらゆるものを魅了したと言われる。音楽や芸術の象徴と言える。「オルフォイスへ捧げる詩(ここではソネット形式の)」の意味合いなので、音楽や詩についての書かれたリルケの詩(ソネット)と判断してよい。

「呼吸よ、眼に見えない詩よ」
         R. M. リルケ
呼吸よ、眼に見えない詩よ
絶えず私自身の存在と引換えに
純粋に交換された世界空間 その中で
私がリズミカルに生まれ出る対重よ

ただ一つの波よ 私は
それが集まって海となったもの
あらゆる可能な海のうちで最も倹ましい海よ!
空間の獲得よ
(後略)

Wiping tatami mats ―
six-tatami room
opens  to the cherry blossoms.
                                              ― Masako
     I was reading the Poetry "The Sonnets to Orpheus (Die Sonnete an Orpheus) " by R.M.Rilke in Japanese traslarion. I came across "Breathing, you invisible poem! (Atmen, du unsichtbares Gedicht!) ". I was really surprised and delighted to read this poem. What the poem intends is the same as what I've been thinking of 'Breathing is poetry itself, and poetry is breathing itself. And style of writing is breathing.'

 
  Ich habe die Gedichtsammlung ,Die Sonette an Orpheus‘ von R.M. Rilke in der japanischen Übersetzung gelesen. Dabei bin ich auf ‚Atmen, du unsichtbares Gedicht!‘ gestoßen. Ich war wirklich überrascht und erfreut, dieses Gedicht zu lesen. Was das Gedicht beabsichtigt, ist genau das, was ich selbst gedacht habe: Das Atmen ist Poesie selbst, und Poesie ist das Atmen selbst. Und der Schreibstil ist das Atmen."

4月5日(土)

晴れ
遠山の桜ぬれているらしく   正子
ひとり居て遠山桜に囲まるる  正子
満開のままの桜の世をつつみ  正子

●センター南のホームセンターへ水道のホースを買いに出かけた。5mのホースと蛇口とホースをつなぐコネクター、おまけに朝顔と百日草の種も買った。
朝顔は青色で「青雲」と名前がついていた。百日草はダリヤ咲きの切り花用。上手く育ったら仏花にする。
●リルケが晩年フランス語で短い詩を書いたのは何故かという疑問がある。私がリルケの詩やあるいは散文を読んでいるのはリルケと俳句の関係を知るためにかぎって読んでいる。リルケの詩と俳句については、星野慎一・小磯仁共著『リルケ』から、特に星野慎一の導きによるものだ。続いて下に書いているのは私の個人的な考えのエッセイである。

俳句は短いということがまず第一の特徴として挙げられるから、俳句を知ったリルケの晩年の「短いフランス語の詩」には特に関心を持つ。「果樹園」がそれにあたるが、現在のところ「果樹園」の詩を2篇読めただけだ。「白鳥」と「窓」。なぜ、母語でないフランス語で書くのか理由があるのだろう。
これを知るためには、論文で確証を得なければいけないらしい。ほんとにリルケは恐ろしい。それでもあえて挙げれは、簡単には4つ理由があるようだ。

①長年フランス文学や詩の影響を受け、またフランス文化とフランス語に深い愛着を持っていた。
②リルケは晩年イタリア国境に近いスイスの小さい村のミュゾー(ミュゾットの館)に滞在していたが、ここは、フランス語を使う環境だった。
③詩人として常に新しい表現方法を探求し続け、フランス語を使うことでドイツ語では得られない新たな響きや感性を追求し、異なるリズムや美意識を試すための手段として使い、彼の創作意欲の刺激をえた。
④晩年の健康の衰えや孤独の中で過ごしたことから、フランス語の詩を書くことで、個人的な慰めや芸術的な癒しの一環となった可能性がある。小さな詩を通じて、言葉の純粋な美しさを追求し、自分自身との静かな対話を続けていたのではないか。

このようなことを知ると、特に④の事情を知ると、リルケが短いフランス語の詩を書いた心情は、なにかしら、老齢になり、孤独のうちに静かに慰めに俳句を作る心情に似ているような気がする。「果樹園」のなかの「白鳥」や「窓」のように、対象を一点に絞って深く詠む手法は、俳句的とも思えるのだ。リルケはずっと対象を深く追求し詠んできたのではあるが、全く個人的な感想では、それらとはすこし違った印象を私は持つ。何かを抜け出た印象をもつのだ。「小さな詩を通じて、言葉の純粋な美しさを追求し、自分自身との静かな対話を続けていたのではないか」と言うことかもしれない。

また、私が、フランス語の原詩で「白鳥」と「窓」を読もうとして、まずフランス語をグーグルの翻訳の自動音声で聞いた。何度か繰り返し聞き、自分でも発音をまねた。詩は12行からなるが、その1行1行が一息で読める。俳句の5-7-5の5音や7音にあたるくらいの長さなのだ。そして、フランス語の方が、ドイツ語で表現するより、短く表現できているのではと思った。 下に「白鳥」の詩を挙げる。

Vergers, 40(白鳥)
Un cygne avance sur l'eau
tout entouré de lui-même,
comme un glissant tableau;
ainsi à certains instants
un être que l'on aime
est tout un espace mouvant.
Il se rapproche, doublé,
comme ce cygne qui nage,
sur notre âme troublée…
qui à cet être ajoute
la tremblante image
de bonheur et de doute.

40「白鳥」
彌生書房、山崎栄治訳
一羽の白鳥が水のうえを
かれ自身にとりまかれて、
まるですべる一幅の絵のようにすすんでくる。
ちょうどあのように
わたしたちの愛する人もどうかすると、そのまま
動くひとつの空間にみえることがある。
愛する人は近よってくる、
水に浮くあの白鳥のように、わたしたちの
かきみだされた心のうえで二重になって……
心はそのこいびとに
幸福と疑惑との
ふるえわななく映像をつけくわえる。
In the distant mountains,
cherry blossoms
seem to get wet.
                            ― Masako         
     I went shopping at Center Minami. Near the station, there is a home center where I'm planning to buy a hose for a baby's bath. While there, I also bought seeds for morning glories and zinnias, as well as the hose. The name of the morning glory was 'Seiun,' which means 'blue clouds.'  If zinnias grow well, I will cut some of them as flowers for a buddhist altar. I plan to sow the seeds during Golden Week.

     Ich war einkaufen in Center Minami. In der Nähe des Bahnhofs gibt es ein Heimwerkerzentrum, in dem ich vorhabe, einen Schlauch für das Babybad zu kaufen. Dort habe ich auch Samen für Prunkwinden und Zinnien sowie den Schlauch gekauft. Der Name der Prunkwinde war „Seiun“, was „blaue Wolken“ bedeutet. Wenn die Zinnien gut wachsen, werde ich einige davon als Blumen für einen buddhistischen Altar schneiden. Ich plane, die Samen während der Golden Week zu säen.