■3月月例ネット句会入賞発表■

■3月月例ネット句会入賞発表■
2025年3月10日
【金賞】
29.水際の色となりつつ柳の芽/藤田洋子
春の水辺の美しい景色が詠まれている。「色となりつつ」は春の柔らかい色彩に染まってゆく柳の枝を巧みに捉えている。また、水際という静かな場に柳の芽の命が溶け込んで、心地よい静けさを感じさせてくれる。繊細で詩的な句。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
08,雪掻けど掻けど今宵の雪降りぬ/弓削和人
今年は人々が経験したことのないような豪雪であった。雪を掻いても掻いても、掻ききれない。そこに今宵の雪が降る。大変な作業であるが、「今宵の雪」と言う美しい表現でまとめ、現実を詩としてうまく一句にしている。(髙橋正子)

28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子
三月は小学生には一年のまとめとなる月であり、新学年がすぐそこに待っている月でもある。習った漢字がだんだん増えて、きちんと漢字を使って手紙がかけるという立派さは、うれしく、ほほえましいもの。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)

18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之
旅立ちはいろんな場所から。夜明けの春の港からの旅立ちは特別感がある。冷たさの中にも艶やかなうるおいを感じる春の夜明け。緊張もするが前途洋々とした気持ちがうかがえて、清々しい旅立ちである。(髙橋正子)

37.旧友の土産は庭の蕗の薹/川名ますみ
家の「庭の蕗の薹」に親しみとあたたかさがある。古くからの気心の知れた友との早春の交流がさらりと「蕗の薹」の色のように詠まれている。(髙橋正子)

【髙橋正子特選/7句】
08,雪掻けど掻けど今宵の雪降りぬ/弓削和人
この二月の豪雪、雪国のみなさまの心情を代表する一句と感じました。日に四度雪かきをしてもまだどんどん積もるとか。この雪が日本を支える貴重な水資源となると聞けば、申し訳ない気持ちです。(多田有花)

15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)

22.春の宵あかり灯りぬ須磨明石/多田有花
「源氏物語」の舞台ともなった須磨明石。春の宵の灯りが静かな華やぎを青い闇の中に浮かびあがらせてくれ、古来からの土地にまつわる物語などが思われます。 (柳原美知子)

27.雀一羽たった一羽が春の影/吉田 晃
春の日差しによって生まれた雀の影に気付かされた小さな一羽の雀の存在感。生き物への優しい眼差しが感じられます。 (柳原美知子)

35.雛あられ米屋の棚に米が無く/柳原美知子
雛あられを買いに来た米屋さん。されど棚には本来の賞品である米がなく。まさに今年の世相ですね。(高橋秀之)

37.旧友の土産は庭の蕗の薹/川名ますみ
旧友が自宅の庭から蕗の薹を摘んで遊びに来た。いかにも春らしい句。蕗の薹が効いている。 (廣田洋一)
長い付き合いの友人の心遣いや自然の恵みの豊かさとともに、春の訪れと新たな始まりを感じました。(土橋みよ)

29.水際の色となりつつ柳の芽/藤田洋子

【髙橋句美子特選/7句】
06.いち早く利根の目覚めし春の波/小口泰與
坂東太郎利根川、関東一の大河の面に波がたちます。波の音、波の姿に敏感に春を感じ取っておられます。(多田有花)

09,桟橋の静かに朽ちる春浅し/弓削和人
もう今は使われていない桟橋が浅春の波に洗われ、人知れず朽ちていっている。往時の姿が偲ばれ、愛惜の念が感じられます。 (柳原美知子)

15.梅咲いて新しき手帳買い求む/土橋みよ
春の訪れの喜びと、手帳をあたらしくする楽しい気持ちが合わさって軽やかな雰囲気です。(髙橋句美子)

19.白梅は空の光とまじりあい/髙橋正子
春になり日差しも眩しくなりました。白梅に差しこむその日差しの眩しさが、花と相まって幻想的な感じを醸し出してくれます。 (高橋秀之)
冬が終わり、最初に色を見せてくれるのは梅である。そして、梅に早春の光がふりかかるのであるが、色のないこの季節、白梅と空の光が浮き立って見える。桜が咲くとこの光景は桜に奪われてしまうし、夏の強い色や秋の紅葉なども、他の色を目立たなくする。早春の今以外の景色では詠めない句だと思う。この季節だからこそ、「まじり合った決して派手でない色」がはっきりと作者の目に映ったのである。・・・このように感じました。 (吉田 晃)

26.春星の窓に栞の本を置く/吉田 晃
春星とあるので星の灯りの差し込む出窓なのでしょうか。栞を挟んだ読みかけの本を置く。ほっと一息の時間ですね。(高橋秀之)

28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子
小学1年生からの手紙でしょうか。小さな子は一年で大きく成長して、学年末の三月に覚えた漢字を使っている健やかな姿が想像できます。読んで喜ばしい句ですね。(上島祥子)
四月の進級月を前にして、三月には覚えたての漢字を書けるようになった子供の成長がほほえましい。幼少時期の頃の自分の姿かもしれません。 (弓削和人)

18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之


【入選/16句】
02.振り返りふりかえりつつ流し雛/桑本栄太郎
流し雛を実際に見たことはありませんが、名残を惜しむように流れていくお雛様たちを「ふりかえりつつ」と表現され、典雅な雰囲気です。(多田有花)

10.日向なる人待ち顔の犬ふぐり/廣田洋一
春の日差しに可愛らしく青い花を開いている犬ふぐり。春真っ先に出会う野の花は毎年待ってくれているようです。「人待ち顔」がぴったりですね。 (柳原美知子)

11.枝先に一輪咲きし枝垂梅/廣田洋一
枝垂梅の枝先に見つけた一輪の開花が、嬉しい春の訪れです。やがて次々と咲く枝垂梅の美しさも目に見えるようです。(藤田洋子)

12.名を知らぬ小さき花や青き踏む/廣田洋一
歩いている途中、道端に咲く名も知らない小さな花に気づいたが草を踏みしめて歩き続ける春の静かな一場面を切り取られているように思いました。(土橋みよ)

13.寒凪に舟の生む波赤く染む/土橋みよ
寒の夕凪、静かにひろがる小舟からの波がしだいに夕陽に染まり、美しく安らかな一日の終わりが感じられます。(柳原美知子)

18.旅立ちは夜明けの春の港から/高橋秀之
少し暖かくなったかと思えば、又直ぐ寒の戻りがあり、長い間寒暖定まらぬ天候がつづきました。然し漸く春の兆しです。待ちに待った旅立ちは、夜明けのしかも「春の港」からという。心弾む大いなる喜びに溢れている。(桑本栄太郎)

23.暮れかかる溜池に春の鴨の影/多田有花
貯水のために作られた溜池は、波もなく穏やかです。ゆっくりと暮れ始める頃、未だ帰らずにいる鴨の影が、その水面に映りました。せわしい動きがない、駘蕩とした春の夕べのひとこまに心惹かれます。 (川名ますみ)

31.暖かな日差し煌めくバスの旅/西村友宏
車窓の日差しの煌めきに、心浮き立つようなバスの旅の楽しさを感じます。春の心地よい暖かさと陽気に心明るくなれます。(藤田洋子)

34.風二月丘にふくらむホルンの音/柳原美知子
モーツァルトの「ホルン協奏曲」が脳裏に浮かびました。4曲とも大好きです。豊かなホルンの響きが早春の丘を包みます。(多田有花)

36.啓蟄の土踏み浴びる鶏の声/柳原美知子
啓蟄の時期に、春の土のぬくもり感じられ、春の訪れを知らせてくれる鶏の鳴き声が聞かれる農村の風景が、自然の中のリズムとして感じられました。(土橋みよ)

38.てのひらにしっとり蕗の薹二つ/川名ますみ
てのひらを通して伝わる二つの蕗の薹のしっとりとした柔らかさ。その感触と、蕗の薹を見る作者のまなざしに春到来の喜びを実感します。(藤田洋子)

41.北窓を開いて仏間の花の揺れ/上島祥子
冬の間締め切った北窓を開けて、春の風や光を取り入れる仏間。花の揺れようがとりわけ優しく感じられ、季節を大切にされるお暮しがうかがえます。(藤田洋子)

07.囀を空耳とする湖の家/弓削和人
17.ふと見れば駅舎の中に雛飾り/高橋秀之
25.渡し舟ゆれて離岸の春帽子/吉田 晃
30.芽柳の雨こまやかに道後の灯/藤田洋子

■選者詠/髙橋正子
19.白梅は空の光とまじりあい
春になり日差しも眩しくなりました。白梅に差しこむその日差しの眩しさが、花と相まって幻想的な感じを醸し出してくれます。 (高橋秀之)
冬が終わり、最初に色を見せてくれるのは梅である。そして、梅に早春の光がふりかかるのであるが、色のないこの季節、白梅と空の光が浮き立って見える。桜が咲くとこの光景は桜に奪われてしまうし、夏の強い色や秋の紅葉なども、他の色を目立たなくする。早春の今以外の景色では詠めない句だと思う。この季節だからこそ、「まじり合った決して派手でない色」がはっきりと作者の目に映ったのである。・・・このように感じました。 (吉田 晃)

21.菜花茹で蕾の黄色ひとつある
茹でた菜の花に蕾が混ざるとひと際目立ちますね。黄色の蕾が日常に彩を与えているようです。(西村友宏)

20.降り込んで雪ともならず春の雨  

■選者詠/髙橋句美子
43.桃の節句彩り軽く淡い空/髙橋句美子
桃の節句を迎えて仰ぐ空、その淡く優しい色合いが、快い季節の訪れを伝えてくれます。冬の寒さがようやくやわらぎ、暖かな春を迎える軽やかな心情が感じ取れます。(藤田洋子)

45.伊予柑のみずみずしさを朝食に
新鮮で爽やかな味わいを持つ伊予柑が朝食の食卓にあり、一日の始まりを明るくしてくれる幸せを感じました。(土橋みよ)

44.卒業の便りが耳に風強し

互選高点句
●最高点句(6点/同点2句)
19.白梅は空の光とまじりあい/髙橋正子
28.三月の漢字の増えし児の手紙/藤田洋子

集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

3月12日(水)

霧雨のち雨

たっぷりと湯が沸くうれしさ春の雨 正子

●花冠に入会希望のO氏に電話した。入会理由を聞いていなかったので、そのために電話したのだ。彼は俳壇でそこそこ地位があって、俳壇事情に詳しいらしく、いろいろ聞かせてくれた。私は俳壇には、ちょっと指がかかっている程度が一番いいのではないかと思っているので、花冠で大丈夫かと思っている。

私は「上手」と言う価値に重きを置いていない。どれだけ、俗から離れ詩心があり、自分らしいかが一番面白い価値だと思っている。それは俳句の素材と、使う言葉、リズムなどから感じられることだ。

聖武天皇と光明皇后の娘の孝謙天皇が、2度目に称徳天皇として即位したとき、光明皇后の支配から離れ、彼女は生まれ変わって自分の考える政治を行ったようだ。そばに吉備真備や道教がいたというが。たしかに、よい導きは必要。

せっかく、独りになっているのだから、自分の考え通りにさせてもらいたい、と思いながら電話を聞いていた。世に名が知れていないのは、自由であるという大きなメリットがある。彼は察したのか、私の考えで選をしてくれてよい、と返事をくれたので、電話を切った。そして、また「続けてくださいよ。」と言ってくれた。
●英訳俳句を印刷して見直した。今日は3月9日、10日に貼り付けてある、春の句と、夏の句を差し替えた。オリジナルの英語俳句や翻訳英語俳句に見られる多くのパターンに、文として自立していない弱点があるのではと思う。下手をすると片言ではないのかと思うことがある。日本は日本、アメリカはアメリカでいいのだが。個人的には、「文法的に文として成り立つように、それでいて、省略して、詩として成り立つよう」にすることは必須と思う。その観点で英訳を見直す。
<Thirteen Winter Haiku>
    two haiku, on Kashima Island in Seto Inland Sea
even ocean spray 
splashes on the leopard plants
on the cliff.
   Ho?jo?,-Kashima,  ni-ku
gake ni saku tsuwa nimo chireru nami-sibuki
         北条鹿島 二句
崖に咲く石蕗にも散れる波しぶき
————-
the smell of beasts
inhabiting the island,
―early winter. 
Hatsu-fuyu no shima ni kemono no sumu nioi
初冬の島に獣の棲む匂い
————-
        at our new condo in Matsuyama
living by the pond,
at night
I hear a wild duck quack.
         Matsuyama no shinkyo
ike chikaku sumeba yo-gamo no naku koe wo
         松山の新居
池近く住めば夜鴨の鳴く声を
————-
   at Shimonada, overlooking the Seto Inland Sea
the waving slopes
of narcissi
lead to the fishing port.
   Shimonada
Suisen no hana no kifuku no gyoko? made
   下灘
水仙の花の起伏の漁港まで
————-
             two haiku, on the Shinano Railway 
leaving a bicycle,
no one around
in the winter fields.
  
        Shinano Tetsudo?,  ni-ku
jitensha wo okite fuyuta ni daremo izu
            しなの鉄道 二句
自転車を置きて冬田に誰もいず
————-
vibrant Mt.  Asama
for its volcanic plume,
clear winter sky.
fun’en ni Asama no ikite fuyu haruru
噴煙に浅間の活きて冬晴るる
————-
        On the Seto Inland Sea
carrying
one winter star,
the sail of the ocean. 

    Setonaikai
Fuyu-boshi wo hitotsu tsureyuku umi no ko?
          瀬戸内海
冬星を一つ連れゆく海の航
————-
        at H?ryu-ji Temple
my white breath
breathing on the glass 
of the Hidden Buddha.
   H?ryu-ji
waga shroiki hibutsu no hari ni kakari keri
       法隆寺
わが白息秘仏の玻璃にかかりけり
————-
sprouting fountain ―
the winter sun makes it
a pillar.
funsui no fukeba hashira to naru fuyu-hi 
噴水の噴けば柱となる冬日
————-
           at Northern Lake Biwa
the beginning of winter,
I face the flat water
of the Lake.
    Kohoku
tairakana kosui ni mukite fuyu Hajime
       Kohoku
平らかな湖水に向きて冬はじめ
————-
        with Nobuyuki-sensei after the Suien Festival in Nara
in the heated train,
we open and spread
the leaf-wrapped sushi.
           Suien taikai wo oe Nobuyuki sensei to
danb? no shachu? ni hirogu kaki-no-ha zushi
           水煙大会を終え、信之先生と
暖房の車中に広ぐ柿の葉寿司
————-
            walking trip from Totsuka to Fujisawa, the Old Tokaido-path
The Yugy?-ji Slope,
endlessly falling, 
and piling leaves.
 
         Totsuka yori Fujisawa e Kyu?-Tokaid? wo aruku
Yugyo-ji zaka ochiba tamaru mo kiri mo nashi
    戸塚より藤沢へ旧東海道を歩く
遊行寺坂落葉たまるもきりもな
————-
       Nobuyuki sensei
always at his computer,
in quilted clothing,
with a Literati pattern.
    Nobuyuki sensei
Bunjin-gara no wataire itsumo pasokon su
         信之先生
文人柄の綿入れいつもパソコンす