11月22日(金)

晴れ
墓地晴れて冬木の桜つやつやと    正子
はらはらと落ちし団栗墓地への坂   正子
櫟大樹空へ黄葉をにぎわわす     正子

●墓参。朝、カレンダーに墓参と書いたことを思い出した。近所の店に花が届くのを待って、花を買って出かけた。思いがけずいい天気だった。墓地には納骨の家族と、墓苑の芝や落葉を掃除するひとがいた。今日はスプレー咲きの薔薇とカーネーションを供えた。風があるのか線香が勢いよく燃える。振り返ると、台湾椿が先月よりも増して花が咲かせている。桜の木はすっかり葉を落としてしまったが、幹が太った感じがする。お墓に祈ることもないので、「元気でいてくださいよ。そのうちいいことがありますよ。」と拝んで、バスの時間があるので線香が燃え残っていたが、墓を後にした。

バス停に着くと二人の客が待っていた。軽く挨拶すると、二人が交互に話しかけてくる。老人の男性が、「植物の霜柱を知っているか」といきなり聞いてた。名前は聞いたことがあるが、見たことはない。スマホに写真を出すと、この写真の花に間違いないという。もう一人は50代ぐらいの女性。女性も珍しがってスマホの写真をのぞき込む。男性は若い時高尾山のガイドをしていたと言って、高尾山の動植物に詳しい。今でも週2,3回が高尾山に行くそうだ。墓地のある鶴川は、小田急が八王子まで走っている。行こうと思えば思いついていける。老人は高尾山と書いた桜の木の杖を持っていた。杖は見れば桜とすぐわかるが、女性は、「どこで桜と見分けるのか」と聞く。桜の樹皮は美しいので、茶筒などに使われている。今の人はこんな茶筒を見たことがないのかな。降りるとき二人とも名残り惜しそうに挨拶した。私は「お元気で」と言った。

自由な投句箱/11月21日~24日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月24日
★われを包む冬の大気のどこまでも  脇坂 公司(わきさか こうじ)🌸
11月23日
★行く馬の背の冬日差運ばるゝ    中村 草田男(なかむら くさたお)
11月22日
★峠見ゆ十一月のむなしさに     細見 綾子(ほそみ あやこ)
11月21日
★バスこみあう中猟銃の長き直線   川本 臥風(かわもと がふう)🍁

今日の秀句/11月21日~11月24日

11月24日(1句)

★初雪や山間部落平らかに/小口泰與
山間の部落のどこにも初雪が降って、しずかに、平らかな印象になっている。
作者の心のなかにも山間のしずかな部落が広がっている。(髙橋正子)
11月23日(4句)
★帆をたたみ湘南の海冬めける/廣田洋一
湘南の海と言えばヨットやサーフィン、海水浴で賑わう光景を想像する。今、ヨットは帆をたたみ、海からはヨットの帆や波の白い煌めきが消え、冬めいている。(髙橋正子)

★馬棚つづく空や浅間に冬来たる/小口泰與
放牧の牛馬は平地に下りたのであろう。馬棚が空へと続く様に伸びている。浅間に冬が来たことを思う。(髙橋正子)

★しぐれ去りわずかな虹を残しゆく/多田有花
冷たいしぐれが去り、うれしいことに「わずかな虹」を残してくれた。(髙橋正子)

★小春日や貨物列車のどこまでも/桑本栄太郎
貨物列車が走るのを見た人は誰でも思うだろう。いったいどこまで続くのだろうと。麗らかな小春日に長い貨物列車が通り過ぎるのを見ると、小春日和の彼方へ連れていかれる気持ちになる。(髙橋正子)
11月22日(1句)

★コンテナに冬陽が当たる貨物駅/多田有花
貨物駅にコンテナが並んでいる様子は壮観なのではと思う。冬陽が当たると、コンテナにがっしりと見え、存在感が増す。(髙橋正子)
11月21日(1句)

★知らぬ間に冬木となりぬ桜かな/桑本栄太郎
桜は花の時が最も注目されるが、花が終わり赤い蕊を降らすともう葉桜のきせつになる。夏日蔭を作ってくれたと思うと、紅葉がはじまり、冷たい風と共に葉を散らす。気づくと葉がすっかり落ちて冬木となっている。月日の過ぎ去る速さに気づくときでもある。(髙橋正子)

11月21日~11月24日

11月24日(3名)
多田有花
ぶらりゆけば石蕗の花咲く旧家かな★★★
柿剥かれ冬陽の中に吊るされる★★★
冬菊を倒れぬように束ねおり★★★

小口泰與
浅間へと日の沈みけり寒牡丹★★★
妻の帰り待ちわぶ犬や霙空★★★
初雪や山間部落平らかに★★★★

桑本栄太郎
南座の大屋根とがり時雨れけり★★★
しぐるるや山の端青く晴れ来たる★★★
石垣の蔦の緋色や冬もみじ★★★
11月23日(5名)

廣田洋一
帆をたたみ湘南の海冬めける★★★★
街路樹の枝の先々冬芽立つ★★★
万両のたわわに実りめでたけれ★★★

小口泰與
動かざる枯葉に朝日沼真中★★★
水仙のラッパの調べ風の中★★★
馬棚つづく空や浅間の冬景色(原句)
馬棚つづく空や浅間に冬来たる(正子添削)
「冬景色」をご自分の思ったこと、見たこと、感じたこと、聞こえたこと、などでいうのが俳句なので、「冬景色」と言い捨てたところが惜しいですね。
添削の句は、浅間に冬が来たことを実感している句です。(髙橋正子)

多田有花
遠山は陽の中にあり時雨雲★★★★
しぐれ去りわずかな虹を残しゆく★★★★
丁寧に冬菜囲われ畑にあり★★★

桑本栄太郎
ふと気づき真夜の目覚めや虎落笛★★★
小春日や貨物列車のどこまでも★★★★
あやとりの遊びきりなく一葉忌★★★

弓削和人
小春日の記念撮影湖澄めり★★★
冬晴れて湖の藍濃し魚いずこ★★★★
短日の観光バスの湖周かな ★★★
11月22日(3名)

小口泰與
目の前を過行く汽車や雪浅間★★★★
暖かき十一月の有難き★★★
隼の獲物目掛けてまっしぐら★★★

多田有花
コンテナに冬陽が当たる貨物駅★★★★
真っ先に冬の朝日が当たる家★★★
冬晴れにぱりっとシーツ洗い上げ★★★

桑本栄太郎
知らぬ間に誰か採りたる花梨の実★★★
小春日や煙りたなびく里の田に★★★
手のひらに綿虫ふわり乗せ見たる★★★
11月21日(5名)

廣田洋一
雲水の駅頭に立つ一茶の忌★★★
一茶忌や難民保護の募金会★★★
綿虫のひとかたまりに飛び来たる★★★

多田有花
冬の海光る彼方に友ヶ島★★★
街を出て電車冬紅葉の中へ★★★
さっきまで時雨があったらしき街★★★

小口泰與
目の前を飛び去る鷹のまぎれ無し(原句)
目の前を飛び去るは鷹まぎれ無し(正子添削)
雪浅間空の青さの勝りける★★★
あけぼのの浅間の雪のまさやけし★★★

桑本栄太郎
知らぬ間に冬木となりぬ桜かな★★★★
かわたれの闇に綿虫浮かびけり★★★
ひら仮名の歌碑に酔い痴れ八一の忌★★★

弓削和人
雪囲をととのえる人ちらほらと★★★
鉛筆の文字薄かりし神の留守★★★
膝毛布朝明け待ちて筆握り★★★