自由な投句箱/11月1日~11月10日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月10日
★やわらかき毛糸の嵩をおし包む    中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月9日
★枯芙蓉形くずさず枯れつくす     馬場 江都(ばば えつ)🌸
11月8日
★初冬やシャベルの先の擦り切れて   山口 誓子(やまぐち せいし)
11月7日
★冬来れば母の手織りの紺深し     細見 綾子(ほそみ あやこ)
11月6日
★風ひそひそ柿の葉落としゆく月夜   野村 朱燐洞(のむら しゅりんどう)
11月5日
★白菊を活ける長さにすぱと切る    おおにし ひろし🌸 
11月4日
★銀杏黄葉市電は丸くカーブする    髙橋 正子(たかはし 正子)🌸 
11月3日
★柿食ぶやあからさまなる灯のもとに  中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月2日
★鴨渡る鍵も小さき旅鞄        中村 草田男(なかむら くさたお)
11月1日
★一本の線で描く秋冷の町       川本 良子(かわもと よしこ)🌸

今日の秀句/11月1日~11月10日

11月10日(1句)

★初時雨傘打つ音の程もなく/廣田洋一
時雨はさっと降って上がったり、夕立のように強く降ったり、雨脚が移動するのが見えたり、趣のある雨。初時雨は傘を打つ程の音も立てなかった、というのだ。初時雨らしく、顔見世と思うような降り方だった。(髙橋正子)
11月9日(1句)

★落葉踏む音に帰宅を知りにける/小口泰與
落葉が降り積もった玄関までの路。出かけていたのは妻だろうか。落葉を踏む音がすると、「あ、帰ってきた」と帰宅を知る。足音で誰とわかるのだろう。冬の初めの家族のあたたかさが知れる。(髙橋正子)
11月8日(1句)

★底抜けに晴るるあおぞら冬日さす/桑本栄太郎
快晴の冬空を読んだ句。あまりにもよく晴れた空を「底抜けに晴るる」と言った。手放しの喜びようだ。冬の日はこんな晴がうれしい。(髙橋正子)
11月7日
該当句無し
11月6日(1句)

★陽に風に芒吹かれるばかりなる/多田有花
秋も深まる野に、陽にも風にもが芒が吹かれている。自然の静かさと明るさが感じられる句。自然そのままの芒がいい。(髙橋正子)
11月5日(2句)

★整然とひつじは風に吹かれおり/多田有花
ひつじは漢字で穭と書く。稲の刈り株から芽生えた新芽のこと。稲の株あとから芽生えた「ひつじ」は整然としている。丈低くも、整然と晩秋の風にそよぐ「ひつじ」に心を寄せた句。(髙橋正子)
 
★冷まじや湯気白々と露天の湯/廣田洋一
「冷まじ」は「すさまじ」と読み、この句では、この季語がよく効いている。晩秋、気温が急に下がると、露天風呂に湯気が白々とあがっているが、肌が知るのは「冷まじ」の感覚。(髙橋正子)
11月4日(2句)
★再びは生まれこぬ世や秋惜しむ/小口泰與
現実は、この世には再び生まれてこない。そう思うと、この秋が惜しまれる、というのだ。秋のわびしさ、もの悲しさは古来和歌に詠まれ、それが受け継がれて日本人のだれもが感じる感情となっている。そういう秋は命が惜しまれるのだ。(髙橋正子)

★豪雨止み一安心の秋夕焼/廣田洋一

最近の雨の降り方は、台風や嵐というものでなくても、豪雨となって災害を方々で起こしている。豪雨が止んで夕焼けが見られると、安心を覚え、美しい夕焼けを眺めるのである。「一安心」には実感がこもっている。(髙橋正子)
11月3日(1句)

★嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに/桑本栄太郎
激しく荒れた嵐のあとに、あおぞらが、冷ややかに静かに広がっている。清涼で深い心持になる句。(髙橋正子)
11月2日(1句)

★郵便の間に挟まり赤い羽根/上島祥子
さりげなく郵便物の間に挟まっている赤い羽根に、心にほっと灯が灯るような感じがする。詠みかたが、素直でいい。
赤い羽根共同募金は、10月1日から翌年の3月31日が募金期間で、戦後地域の社会福祉のために始まった。だれもが幸せに暮らせることを願う募金。(髙橋正子)
11月1日(2句)

★水音を間近く聞けり貴船菊/多田有花
貴船菊は、秋明菊とも呼ばれる。赤紫色の細い菊のような花びらをもつのが、もともとの貴船菊である。最近は花びらが少ない白い花が多くなっている。楚々とした姿に、水音が添うのもゆかしい。(髙橋正子)

★神在りの月の出雲や海荒るる/桑本栄太郎
出雲の神在りの月は、十月になる。「そのころの出雲は、海が荒れるのですよ。」という句意。「神在りの月」の「月」は「月の出雲」のようになり、修辞的な面白さがある。さりげないようだが、実感がこもっている。(髙橋正子)

11月1日~11月10日

11月10日(4名)
小口泰與
寒鯉の水塊と共に跳ね★★★
上空を常に意識や秋翡翠★★★
山裾の住む方遠き秋灯し★★★

多田有花
凩へ漕ぐやブランコ思いきり★★★
落葉を終えし桜の空仰ぐ★★★
風無く晴れて冬耕に良き日和★★★

桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
堰水のはるか鞍馬や小春空★★★
小春日や四条大橋人の波★★★
大橋の人の行き交う街小春★★★

廣田洋一
初時雨傘打つ音の程もなく★★★★
生垣に彩り添えて冬紅葉★★★
池渡る風に揺れたる枯れ尾花★★★
11月9日(4名)

小口泰與
秋雨や読書に迷う事もなし★★★
落葉踏む音に帰宅を知りにける★★★★
振る舞いの熱燗ぐいとコップ酒★★★

廣田洋一
教室の入口飾る冬紅葉★★★
枯色も少し混じりて冬紅葉★★★
古き友便りをくれる十一月★★★

桑本栄太郎
小春日の前かご占める小犬かな★★★
前足をさらす嬰児や小六月★★★
「前足」は嬰児の「手」のことですか。(髙橋正子)
色鳥の尾羽ひこひこ来たりけり★★★

弓削和人
信号を待ちつ足踏み今朝の冬★★★
ヒーターの埃をはらう今朝の空★★★
布団より少し顔出す夜明けかな ★★★
 
11月8日(4名)
小口泰與
見事なる立ち振る舞いや秋時雨★★★
木犀や路地裏より風の径★★★
秋目高尾を振る如く霊ふるう★★★

多田有花
秋惜しみつつ渓流の音の中★★★
閉鎖さるキャンプ場に秋暮れる★★★
ひとつひとつ片付けてゆき冬来る★★★

桑本栄太郎
点描のような紅葉やアメリカ楓★★★
火と燃ゆるどうだん躑躅の紅葉かな★★★
底抜けに晴るるあおぞら冬日さす ★★★★

廣田洋一
池の面を華やかに染め散紅葉★★★
立冬や冠雪したる富士の山★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
1月7日(4名)
小口泰與
行く秋や風の強弱あらわなる★★★
潜る度賢者になりし秋の鴨★★★
天からの賜わる雨や秋の畑★★★

廣田洋一
立冬の陽射し浴びたり庭の草★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
紅葉散り渦をなしたる木立かな★★★

多田有花
来る冬を真正面に見て不動★★★
細き滝岩を下れる暮秋かな★★★
滑滝が岩を濡らして行く秋ぞ★★★

桑本栄太郎
雲奔り風の冷たき今朝の冬★★★
朝日さす照葉もみぢの在所かな★★★
コスモスの花の仕舞いや赤き茎 ★★★

11月6日(5名)

廣田洋一
土手道を下る階段紅葉且つ散る★★★
暮れ残る空に点灯秋深し★★★
立冬やしみじみ唄うアベマリア★★★

小口泰與
天からの賜わる雨や秋の畑★★★
山の辺の沼の落葉の限りなし★★★
水槽の草の揺れ居り秋目高★★★

多田有花
渓流のそば近くあり柿紅葉★★★
鮮やかに廃墟のタイル秋深し★★★
陽に風に芒吹かれるばかりなる★★★★

桑本栄太郎
こつ然と風の冷たき今朝の空★★★
合歓の実の風に乾ぶる高さかな★★★
蘆刈られ鳥の足あと二つ三つ★★★

弓削和人
拾う葉の一枚撰りて秋闌ける(原句)
拾う葉を一枚撰りて秋闌ける(正子添削)

身に入るや襟を正して裏通り(原句)
「身に入む(みにしむ)」は、季語なので、「身に入る」は無理な使い方です「身に沁む」とも書きます。秋も闌けるころから冷たさをしみじみ感じるようになり、秋が深まれば、一層その感じは強くなってくる。そういう感じをいうときに使います。(髙橋正子)
(髙橋正子)
身に入(し)むや襟を正して裏通り(正子添削)
菊人形瞳は宙(そら)へ隣り世へ★★★
11月5日(4名)

小口泰與
毬栗の落ちたる先の子犬かな★★★
強風に降りず降らずみ葡萄棚★★★
三尺の秋水与う文化の日★★★
※三尺の秋水:冴えわたった剣のこと。三尺は剣の標準の長さ。(髙橋正子)

多田有花
整然とひつじは風に吹かれおり★★★★
 ひつじ:漢字では穭と書く。稲を刈り取ったあとの株から芽生える新芽のこと。また、その田んぼを「穭田」という。(髙橋正子)

楓紅葉へ陽の傾きの早し★★★
冬隣る渓流に沿い歩きけり★★★

廣田洋一
朝な夕な掃き清めたり桜紅葉★★★
冷まじや湯気白々と露天の湯★★★★
  ※冷まじ(すさまじ、晩秋の季語)
窓の外光撒きつつ紅葉散る★★★

桑本栄太郎
はけ雲の空の青さや天高し★★★
乙訓は丘なる里ぞ柿すだれ★★★
せせらぎの里の辻なる石蕗の花★★★
11月4日(4名)
小口泰與
再びは生まれこぬ世や秋惜しむ★★★★
文机や秋の夜長の辞典にて★★★
堰堤を超ゆるが如し秋の雨★★★

廣田洋一
雨上がり清らに澄みし秋の空★★★
豪雨止み一安心の秋夕焼★★★★
澄みしそら木の葉舞い散る冬隣★★★

桑本栄太郎
朝冷えや午後より日差す乙訓郡★★★
代議士の選挙報告秋うらら★★★
午後よりの風の田道や冬隣り★★★

多田有花
公園に親子ふた組秋うらら★★★
青空を背負いて鳴けり尉鶲★★★
廃屋の庭に残りぬ萩の花★★★
11月3日(4名)
小口泰與
瓢箪と寝転ぶ子らや猫もじやれ★★★
絶壁の立塞がるや芋嵐★★★
稲雀逃げ去るやうに飛び立ちし★★★

桑本栄太郎
正倉院展人の賑わう文化の日★★★
嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに★★★★
どの風もなべて里へと暮の秋★★★

廣田洋一
文化の日純金入りの茶を喫す★★★
文化の日俳句手帳を新たにす★★★
身に入むや喪中挨拶受け取りぬ★★★

多田有花
橋脚を洗う濁流秋出水★★★
文化の日弾くやバッハのインヴェンション★★★
秋深し宇宙の動画を見ていたり★★★
11月2日(4名)
小口泰與
飛び出でし大砲岩より懸巣かな★★★★
点点と団栗落ちし沼の淵★★★
茸狩や腑に落ちぬ日の数多ある★★★

多田有花
澄む秋の手すりに集う雀たち★★★★
瞑想に浮かぶあれこれ夜長かな★★★
秋雨と思えぬほどの土砂降りに★★★

桑本栄太郎
冷まじや雨に明るき銀杏の樹★★★
雨風の最後のあがき野分荒れ★★★
断捨離の雨籠りとや白秋忌★★★

上島祥子
郵便の間に挟まり赤い羽根★★★★
送迎の車頼まれ白秋忌★★★
黄葉す若木の雌は雄に続き ★★★
11月1日(5名)
多田有花
珍しきEV十月の終わる★★★
水音を間近く聞けり貴船菊★★★★
親鸞像足下に咲きぬ槍鶏頭★★★

小口泰與
秋深し出荷の菓子の数数多★★★
夕暮れの沼を狭めし雁の群★★★
八方へ雑魚ひろごる秋の沼★★★

桑本栄太郎
神在りの月の出雲や海荒るる★★★★
色鳥と云うは小鳥の葉蔭かな★★★
半分はわれの手伝い栗ごはん★★★

廣田洋一
盥舟夫を引き寄せ天高し★★★★
紅葉散る枯れ池の底赤く染め★★★
錦木や向こうに見ゆる朱鷺番★★★

弓削和人
鶏頭のずしと雄々しく揺れ戻り★★★
行秋やジャズを求めて喫茶店★★★★
宵寒の土産のチョコの甘きかな ★★★

11月1日(金)

晴れのち曇り

家が建つ花野をとなりに光らせて  正子
風吹けば花野かがやく野となりぬ  正子
秋薔薇のくずれず咲けり公園墓地  正子
●句美子から角川俳句のゲラが転送されてきたので、念のため校正する。エッセイの内容と俳句があっていたので、合格。訂正はなかったので、すぐ返信。

●今日から11月。2丁目の丘へ上った。普通部のテニスコートに出て、いつもと反対に尾根の道を歩いた。それほど歩かないうちに、金髪を人形のようにカットした女性が階段を上がってきた。階段は急で、はるか下まで続いていた。家の近くへ出そうなので、そこを降りた。この階段を上がるとなれば、息が切れるだろう。階段の途中に休めるようにベンチが置いてある。階段が続くかぎり降りると、駒林小学校の近くに降りた。家まで近い。面白い路を見つけた。

●ますみさんから『音楽のしっぽ』の原稿が届く。素晴らしくいいので、編集次第で読みやすくなるはず。きのうは有花さんが「仲秋の藤ノ木公園を歩く」を送ってくれた。すっきりした文章。お陰で、「花冠」1月号はいいものになりそう。

自分の「リルケと俳句と私」が、なかなか進まない。辻褄があわなくて、進まないのだ。おそらく、記憶が飛んでいるのだ。それで、思い出すために、信之著の『比較俳句論序説』(昭和55)を読み返した。その中の信之先生と1968年から2年間出した「HAIKU SPOTLIGHT」に掲載した人の名前をリストアップした。すっかり名前を忘れていたが、リストアップするうちに思い出した。