■11月月例ネット句会入賞発表■

■11月月例ネット句会入賞発表■
2023年11月12日

【金賞】
33.谷水を啄み鶺鴒水の上/柳原美知子
鶺鴒には、セグロセキレイ、ハクセキレイの二種類がよく見られるが、水辺を好むのは、セグロセキレイ。きれいな谷の水を餌を啄むかのように、啄んで飲んでいる。鶺鴒がいる場所は、水の上。どこまでも水に近い。それはセグロセキレイの習性であろうが、清冽な印象の句である。(髙橋正子)

【銀賞/2句】
08.雲も陽も富士へと沈む秋夕焼/川名ますみ
富士山は大いなる山。雲も陽も、富士山へと移り、富士山の向こうへ沈む。そのとき、空には大きな秋の夕焼けが広がる。雄大な景色を句に詠みとどめた手柄。(髙橋正子)

31.鰯雲下校の子の声よく聞こえ/柳原美知子
鰯雲は秋を代表する雲。秋晴れの日が続き鰯雲が広がると、空気はより澄んで、乾いてくる。下校の子供たちの楽し気な話声もよく聞こえる。何事もない晴れやかな日常が続くことは嬉しいことだ。(髙橋正子)

【銅賞/3句】
14.花野ゆれ花影やわらかくゆれる/吉田 晃
花野に風が吹くと、花野は揺れる。花影も綾に、やわらかくゆれる。やさしい景色を柔らかい言葉で詠んでいる。「花」「影」「野」「ゆれる」からは、やさしいイメージが喚起される。(髙橋正子)

21.日の落つる速さよ冬の散歩道/祝 恵子
散歩をしていると、急に日暮れが迫ってきて、日の落ちる速さに、一抹の不安さえ覚える。日常の散歩にも、自然の微妙な巡りを感じる時がある。(髙橋正子)

37.酉の市縁起熊手に手締め鳴る/髙橋句美子
酉の市はもともとは大鳥神社で行われる行事。十一月の酉の日に市が立ち縁起物の熊手が売られる。中には高額な大きな熊手もあって、商売繁盛を願う人たちの買われていく。商談成立の手締めの拍手が高らかに鳴る。歳晩らしい賑わいである。(髙橋正子)


【髙橋正子特選/7句】
12.冬立の朝も定刻電車に乗る/高橋秀之
冬の兆しが見え始める、空気がぐっと冷たくなる時期。いつもの定刻通りに電車が来ている。作者を含めた通勤通学の人びとが季節の移り変わりを感じるか否かの瞬間に立ち合っている。 (弓削和人)

15.紫蘇を引く軽き力に実のはじけ/吉田 晃
紫蘇もいよいよ枯れ、始末をしようとすっと引き抜くと思いがけず枯色の実の中から黒々とした種が弾け飛んだ。植物の生命力に感動し、育てた野菜を最後まで見守られる温かい眼差しを感じます。 (柳原美知子)

21.日の落つる速さよ冬の散歩道/祝 恵子
立冬を過ぎれば日は益々短くなり、夕暮れ時の散歩も「あれよあれよ」と云う内に暮れて来ます。歩いているうちに足下が暗くなることを実感しています。 (桑本栄太郎)

08.雲も陽も富士へと沈む秋夕焼/川名ますみ
31.鰯雲下校の子の声よく聞こえ/柳原美知子
33.谷水を啄み鶺鴒水の上/柳原美知子
37.酉の市縁起熊手に手締め鳴る/髙橋句美子

【髙橋句美子特選/7句】
03.大木へ日の退くや芋嵐/小口泰與
秋の暴風の吹く中、太陽も押されるかのように大木の向こうへ沈もうとしています。「日の退くや」が面白いですね。 (柳原美知子)

09.みずいろの朝顔空へ向き揺るる/川名ますみ
朝顔の花びらの繊細な揺れる様子が綺麗な風景です。(髙橋句美子)

14.花野ゆれ花影やわらかくゆれる/吉田 晃
柔らかな水彩画のような御句です。花野全体が穏やかな風に揺れ、それにあわせて影もゆれています。それを見つめておられるまなざしに優しい思いを感じます。 (多田有花)

23.初冬の空へ広々椋大樹/多田有花
初冬の冷や冷やとした青空へ勢いよく枝を広げる椋の大樹の存在感に心もひろびろと新たな季節への希望が感じられます。 (柳原美知子)

29.歓声が夜空へ響く酉の市/西村友宏
これは、横浜南区にある金刀比羅大鷲神社の酉の市ですね。11月11日が一の酉、毎年10万人以上が訪れる大変大きなお祭りどか。その様子が「夜空へ響く」でよくわかります。 (多田有花)

33.谷水を啄み鶺鴒水の上/柳原美知子
日に当たり七色に変わる素晴らしい翡翠の姿を的確に捉えています。素敵な御句ですね。 (小口泰與)
※33番の句は、翡翠(かわせみ)ではなく、鶺鴒(せきれい)を詠んでいます。(髙橋正子)

08.雲も陽も富士へと沈む秋夕焼/川名ますみ

【入選/13句】
01.枝折戸を押せば隣家や青蜜柑/小口泰與
ご自宅の庭に蜜柑の木があるのですね。確か薔薇もたくさん栽培しておられました。蜜柑の木の下にある枝折戸を押せばすぐにお隣、蜜柑が甘く熟れれば採ってお隣におすそわけなどされるのでしょうか。 (多田有花)

04.女子会の妻の遠出や冬ぬくし/桑本栄太郎
「女子会」という今風の言葉が御句に楽しさを与えています。冬とは名ばかりのまだあたたかな一日奥様はお友達との「女子会」に。その間、詠者はどう過ごされたのでしょうか。しばし自由を満喫? (多田有花)

07.夕月夜世代それぞれ友二人/川名ますみ
世代が違う友人がいらっしゃるというのはいいですね。話題が広がって思いがけない情報が入ったりします。そういう人たちと過ごす夕月夜のひととき、貴重ですね。 (多田有花)

11.うっすらと色づく紅葉陽に映える/高橋秀之
詠者は大阪在住でしたね?関西では紅葉は立冬のあたりからきれいになってきます。紅葉の美しさは日差しがあってこそ。そのさまをさらりと詠んでおられます。 (多田有花)

19.冬に入る子の残したる千羽鶴/祝 恵子
快癒を祈る千羽鶴、秋に子供が持ってきてくれたものだが早いものでもう冬になる。この千羽鶴を見て元気にこの冬を乗り切ろう。(想像でしかないですが、そのように感じました。(友田修)

22.芳醇に香りぬ冬のチョコレート/多田有花
ケーキに使うチョコレートを溶かしているのだろう。温め溶かされたチョコレートが厨房のみならず、居間まで香っていて、そこに冬の暖かさが感じられる。冬の日の満ち足りた香りでもあるのだろう。 (吉田 晃)

24.木枯に少年たちの駆けてゆく/多田有花
木枯らしが吹いて冬本番がやってきた。その木枯らしに向かって少年たちは駆けてゆく。少年たちの寒さをものともしない元気の良さが伝わってきます。(高橋秀之)

27.中天へ茎まっすぐや曼珠沙華/弓削和人
曼珠沙華の茎は花が咲いている時も、枯れてからもいつもまっすぐ天をさしていて、不思議ですね。 (柳原美知子)

30.焼きたてのワッフル温し文化祭/西村友宏
子どもたちが模擬店で焼いて売っているのでしょうか。アツアツのワッフルを買い求めほおばりながらいろいろ展示を見て回るのも楽しいものです。準備、計画、実行を友人たちとわいわい言いながらやるのもいい思い出ですよね。(多田有花)

32.塀越しに物々交換甘藷・柿/柳原美知子
  塀越しの物々交換、うらやましいことです。 (祝 恵子)

05.どうだんの躑躅もみづる夕日かな/桑本栄太郎

垣根にもされる満天星躑躅は、花も可愛いが、紅葉も好まれる。夕日があたると、紅葉がてらてらと映えるのがいい。(髙橋正子)

13.室閉じて今年の甘藷(いも)を眠らせる/吉田 晃
収穫したさつま芋は、寝かせると甘みが加わる。私の知るさつま芋の保存には、気温が下がるとさつま芋は腐りやすいので、土を掘った家の床下の穴にもみ殻に入れて保存していた記憶がある。(髙橋正子)

28.幾つもの熊手連なる宮参り/西村友宏
友宏さんは大鳥神社の酉の市に行ったとのこと。酉の市には、福をかき集められるように大小の熊手が売られる。商売繁盛を願い大きな熊手を買ってゆくのは商売繁盛を願う人。参道にずらりと並んだ熊手は縁起物を飾って賑やかである。(髙橋正子)

■選者詠/髙橋正子
6.霧のなか啄木鳥ここよと木を叩く
霧に覆われて姿がはっきりしない中、啄木鳥があたかも自分の居場所を教えていうように木を叩く様は何とも可愛らしいです。(西村友宏)

18.枇杷の花日本アルプス遥かにす
咲き始めた枇杷の凛とした白い花の先に、遥かに雄大な日本アルプスが影をなし、しんしんと身の引き締まるような感動を覚えます。冬の到来が感じられ、新たな季節への勇気が湧いてくるようです。(柳原美知子)

17.小学校の桜の幹にけらつつき

自解:5丁目の丘の突き当りにある小学校の50年は経っているだろう桜の幹に啄木鳥が木を叩いていた。独特のドラミングに、びっくりしてみると二羽いた。コゲラだと思う。(髙橋正子)

■選者詠/髙橋句美子
39.老夫婦に手に取る柿の重すぎる/髙橋句美子
干し柿用の袋入りの柿でしょうか。日常生活の中で、ふと目にされる高齢者への温かい眼差し、優しさが感じられます。 (柳原美知子)

37.酉の市縁起熊手に手締め鳴る
38.街の色木枯し吹いて変わりゆく

互選高点句
●最高点句(同点3句/5点)
08.雲も陽も富士へと沈む秋夕焼/川名ますみ
21.日の落つる速さよ冬の散歩道/祝 恵子
37.酉の市縁起熊手に手締め鳴る/髙橋句美子

集計:髙橋正子
※コメントのない句にコメントをよろしくお願いします。思ったこと、感じたこと、ご自由にお書きください。

自由な投句箱/11月11日~11月20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/11月11日~11月20日

11月20日(1句)

★透かし見る木の間の野鳥森の冬/小口泰與
森の木々を見ていると、木々の間を野鳥がしきりに枝移りするのが見える。里に近い冬の森では小鳥が元気に鳴いたり、実を啄んだり、小鳥の観察もたのしいものだ。(髙橋正子)
11月19日(1句)

★鴨川の堰水光る冬日かな/桑本栄太郎
幾多の川に出合い、別れ、また合流し、京都市を代表する鴨川は、北から南へと流れる淀川水系の河川。護岸工事がされ、堰が作られている。堰を流れ落ちる水は、水の美しさを見せている。冬日が当たるときも、堰を落ちる水音とともに、より輝いていると想像できる。(髙橋正子)
11月18日(1句)

★しぐれ去り夕刻の虹おいてゆく/多田有花
「虹おいてゆく」がいい。しぐれが止み、暗い夕刻に光明のように虹が空にかかる。その虹をしぐれが置いていってくれたというとらえ方。それがいい。(髙橋正子)
11月17日(1句)

★二つ三つ水輪弾ける沼の冬/小口泰與
沼は湖よりも水深が浅いものを言うが、周囲の枯れが進むと、沼も蕭条としてくる。平らな沼の水に、ときどき水輪が弾けるように生まれている。小さな虫が水を弾いているのかも知れないが、沼は静かにも生きている。(髙橋正子)
11月16日(1句)
★暮早き空を惜しみて子ら遊ぶ/多田有花
子供たちはいつまでも外で遊びたい。遊びに夢中ながらも、空の暮れ具合が気になる。「暮れ早き空」を惜しむ気持ちは子供ながら、大人びた感じ。ここがいい。(髙橋正子)

11月15日(2句)

★日を求め急ぎ舞い居り冬の蝶/桑本栄太郎
冬の蝶が日当たりを求めている姿が目に見える。日向を見つければ、急いで舞い降りる。弱弱しいと思われがちな冬の蝶にも生きる力は十分ある。(髙橋正子)

★にぎわいて根深多めの汁の湯気 /弓削和人
根深が旬を迎えた、みんなが集まる食堂にも根深が多めの汁が用意され、あつあつの根深汁から立つ湯気に誰もが満足の食事時だ。(髙橋正子)
11月14日(1句)

★我が庭の蜜柑に朝日差しにけり/小口泰與
庭に植えてある蜜柑は、庭は景色でもあるが、少しばかり食べる楽しみもある。庭の蜜柑に朝日がさして、蜜柑の匂いまでしそうだ。清々しい句。(髙橋正子)
11月13日(1句)

★登校の児童一列寒波来る/桑本栄太郎
寒波が来ると小学生も体がこわばるのか、登校する列も乱れず、一列を保って言葉もなく歩いている。(髙橋正子)

11月12日(2句)

★干柿に初冬の薄き光あり/多田有花
初冬の光は、「薄い」と印象。干柿もまだ吊るされ間もないので、干柿の薄い光の色として感じられる。(髙橋正子)

★大橋を渡り南座しぐれ降る/桑本栄太郎

大橋を渡るとすぐ南座となる。大橋を渡ると天気の具合少し変わるのか、しぐれが降る。変わりやすいしぐれの降りようが見える。(髙橋正子)

11月11日
※ 該当句無し

11月11日~11月20日

11月20日(3名)

小口泰與
炬燵にて読みつかれしや指栞★★★
冬ばらのしおれて堅き朝かな★★★
透かし見る木の間の野鳥森の冬★★★★

桑本栄太郎
妻に背を急き立てられて障子貼る★★★
奈良の地のひらがな句碑や八一の忌★★★
紅燈の祇園小路やかにかく忌★★★

廣田洋一
十一月の杖をつきつきクラス会★★★
酒呑みて居眠りしたる小春日和★★★
アラーの神ユダと争い神無月★★★

11月19日(3名)

廣田洋一
木守柿一際赤く熟れにけり★★★
木守柿見上げる空の青きかな★★★
青空にすいと浮かびし冬の雲★★★★

多田有花
凩強し干し物は屋内に★★★
凩が正午の窓を揺らしおり★★★
三日月や凩やみし夕空に★★★★

桑本栄太郎
(京都四条大橋界隈)
せせらぎの落葉散り敷く高瀬川★★★
鴨川の堰水光る冬日かな★★★★
カップルの正月めける着物かな★★★

11月18日(5名)

多田有花
時雨くる空に向かいて走りけり★★★
しぐれ去り夕刻の虹おいてゆく★★★★
冬の虹そろって下校の小学生★★★

小口泰與
水鳥や釣人来ても逃げもせず★★★
流木に乗る冬翡翠の覚束無★★★
白妙の雪の衣の浅間山★★★

桑本栄太郎
うつうつと蕾ふくらむ枇杷の花★★★
マフラーを遂に巻き居り散髪後★★★
うす暗き植込みなりぬ花八つ手★★★

廣田洋一
焼鳥の煙流れて冬めけり★★★
冬めきて水澄み透る町の川★★★★
のんびりと休む木椅子に木の葉降る★★★

弓削和人
ひさかたや家族のつつく冬の鍋★★★
石蕗花のにこにこ黄色庭の垣★★★★
裸木のほそぼそと立ちにけり★★★

11月17日(3名)

小口泰與
二つ三つ水輪弾ける沼の冬★★★★
雨樋に枯葉詰まりし山の風★★★
平らなる水面に忽と冬の鯉★★★

桑本栄太郎
降る音に起きる気のせず冬の雨★★★
うつうつと夢を見て居り冬の雨★★★
人はみな夢に生きたり冬の雨★★★

多田有花
質問の答えを求め小六月★★★
足元にヒーター点けて瞑想す★★★
夜を通し降り続くなり冬の雨★★★

11月16日(3名)

小口泰與
しんしんと足より寒さ来たりけり★★★★
延々と冬翡翠を待ちにけり★★★
枯蘆に小魚の群集いけり★★★

多田有花
暮早き空を惜しみて子ら遊ぶ★★★★
冬浅しフロントガラスに露満ちて★★★
唐突に寒さの進む昨日今日★★★

桑本栄太郎
石垣に垂れる真紅や櫨もみじ★★★
冬日さす日差し明るきバスの中★★★★
青き葉の残り剪られる銀杏黄葉★★★

11月15日(5名)

小口泰與
鴛二つ樹上に居り動かざる★★★
仰ぎ見る初冠雪の浅間山★★★
鳴きながら冬翡翠の飛びにける★★★

廣田洋一
カーテンの厚き布地や冬構★★★
園丁の二人で終へし冬構★★★★
冬の空忽ち雲に覆はれし★★★

多田有花
木枯やふわりふとんにくるまりぬ★★★★
朝ごとのバターコーヒー冬めくや★★★
闘病の知らせ受け取る冬めく日★★★

桑本栄太郎
ワクチンを夫婦揃いて冬ざるる★★★
天辺のすでに裸や銀杏散る★★★
日を求め急ぎ舞い居り冬の蝶★★★★

弓削和人
枯尾花日差しわずかに透けにけり★★★
急く帰路に立ち止まりたる冬紅葉★★★
にぎわいて根深多めの汁の湯気 ★★★★

11月14日(5名)

小口泰與
我が庭の蜜柑に朝日差しにけり★★★★
枯蘆を揺らして居りぬ野鳥かな★★★
餌台へ一斉に來る冬雀★★★

多田有花
巨樹並ぶ十一月の神社かな★★★
川べりの道の黄色や石葺の花★★★
水彩や古民家喫茶の冬はじめ★★★

桑本栄太郎
天辺のすでに裸や銀杏散る★★★
垣根よりはみ出し居りぬ石蕗の花★★★
緋の色を透いてさくらの照葉かな★★★

廣田洋一
小春日や小町通りの人力車★★★
小春日和ゆったりと茶を啜りけり★★★
駅伝のたすきつながり蜜柑剥く★★★

弓削和人
あえなくも帰り支度や小夜時雨★★★
雪あられ阿吽に日差しさしにけり★★★★
朝まだき夜半の雑炊火にかけて★★★
(注)「朝まだき」は、「夜が明けきらないとき。早朝。」の意味。「夜半」は、「一般的には午後11時頃から午前2時頃のこと。」(髙橋正子)

11月13日(4名)

小口泰與
お茶に飽き酒を所望の秋の夜★★★
行く秋の速き流れの白白し★★★
鍋割山(なべわり)を彼方に秋の両毛線★★★

廣田洋一
道端を一際赤く柿落葉★★★
大綿や吹雪の如く舞ひてをり★★★
十月桜十一月の青き空★★★

多田有花
軒下に水彩飾り十一月★★★
短日やコーヒー豆を挽き淹れる★★★
洗濯す冬の紅葉を眺めつつ★★★

桑本栄太郎
寝過ごして起きる能わず冬一番★★★
登校の児童一列寒波来る★★★★
うつうつと居眠りしたり暮早し★★★

11月12日(3名)

小露寒や餌台に来る雀どち★★★
風も無き静寂の中へ枯葉かな★★★
山鹿や所詮里へと近付きし★★★

多田有花
冬の雨夜明けをさらに遅くする★★★
干柿に初冬の薄き光あり★★★★
三毛猫と落葉の杜で出会いけり★★★

桑本栄太郎
水底にさくら紅葉や高瀬川★★★
大橋を渡り南座しぐれ降る★★★★
外つ人の着物すがたや冬ざるる★★★

11月11日(3名)

 小口泰與
秋の沼水面へ映す木木の影★★★
裏戸より隣家へ行くや下り鮎★★★
柿赤し暁より鳥の騒ぎけり★★★

廣田洋一
背広替え十一月の祝賀会★★★
川べりに黄金の色や蜜柑熟れ★★★
白鳥の帰還したるや波しぶき★★★

桑本栄太郎
わらわらと紅葉且つ散る今朝の風★★★
青空を画布となり居り銀杏散る(原句)
青空を画布となし居り銀杏散る(正子添削)
山茱萸の実の真紅なる川辺かな★★★

11月13日(月)

曇り
●11月月例ネット句会入賞発表
●『水の色』(河内静魚著/朝日新聞出版)が送られてくる。令和2年まで「俳句界」の編集長だった人。第7句集とのこと。
印象に残った句。15句
羽子つくやたえず空ある嬉しさに
まだ水の色のままなる初氷
近づけば冬木と冬木離れけり
秋すでに深山の上の八ヶ岳
一枚として重ならぬ青田かな
しづけさの寒さにかはるまで椅子に
病みし子と夜を共にし年越せり
冬木の芽色持ち上げてゐたりけり
生きることまた輝かす囀りは
 あゆ子逝く
一落花風をつかまへ舞ひ上がる
川霧をのがれし水の流れくる
白鳥来空気真白に染めながら
家陰に暮しの匂ふ鳳仙花
水音や田植濁りの飛鳥川
みじか夜や時計に音のありしころ