自由な投句箱/1月11日~1月20日(2023年)

※当季雑詠3句(新年・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
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※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/1月11日~1月20日

1月20日(1句)
★冬枯を静かに流る昼の川/多田有花
「昼」と時を特定された川は、朝や夕べの川と何が違うのだろうか。姿を良く見せて明らかに、急がず緩まず流れる。冬枯には昼の川を一本通したい。枯れの静かさがいい。(髙橋正子)
1月19日(1句)
★日に光るビニールハウス春隣り/桑本栄太郎
日に光るビニールハウスを見ると春が近いと感じてします。ふんだんに差す明るい日の光は春なればこそのもの。(髙橋正子)
1月18日(1句)
★葱提げて妙義の風を纏いけり/小口泰與
上毛三山の一つ妙義山の麓下仁田は葱の産地で有名。丈が短く太い下仁田葱は煮ると甘くとろけるようになり美味。葱を提げ、土産にして誰かを訪ねるところか。畑から抜いて帰るところか。それはわからないが、妙義山からの寒風をまとい葱を提げるのは、この地の生活であろう。(髙橋正子)
1月17日(1句)
★明けやらぬ刻や阪神震災忌/桑本栄太郎
阪神・淡路大震災が起こったのは、1月17日の未明。明けやらぬ刻。そのとき私たちは松山に住んでいたが、揺れに起こされ、テレビをつけると死者のニュースや、新幹線の橋脚が倒れ、道路が曲がっている映像。死者もはじめ500人になるのではと思っていたが、時間が経つにつれ、大変な災害になっているとわかった。死者は5000人を超え始め、近所の娘さんも一日経って遺体となって松山への実家へ帰られた。その「明けやらぬ刻」が記憶されるべき追悼の時となった。(髙橋正子)
1月16日(2句)
★寒風の竹林大きくゆらぎけり/桑本栄太郎
寒風に竹林がゆらぐ。こきざみではなく、大きくゆらぐ。竹のしなやかさ、寒風の力強さが思われる。(髙橋正子)
★初風呂や新たな湯気を胸いっぱい/弓削和人
新年初めて風呂に入った。新年の風呂の湯気は、新しく、ぬくぬくと湯船から立ち上がる。その湯気をためらわず胸いっぱい吸った。気持ちのよい大らかな句。(髙橋正子)
1月15日(2句)
★寒中の快晴水音軽やかに/多田有花
寒中の瀬戸内は快晴が続いた。雨も降らないので、流れる水の音は軽やかに鳴っている。寒中の清潔さのなかの水音がきれいだ。(髙橋正子)
★夜来の雨止みたる空にどんどの火/廣田洋一
夜来の雨があがったばかりの空は、塵が洗われてうるんだような感じ。その空へどんどの火が大きく燃え上がる。正月の飾りを焼くどんど火がきよらかだ。(髙橋正子)
1月14日(1句)
★先んずる鴨の鋭声や沼真中/小口泰與
先を行く鴨が鋭い声を発している。何かを警戒する声か。沼の真ん中というのも気になるが、状況が真に迫って読み取れる。(髙橋正子)
1月13日(句)
★新海苔の香り立ちたる握飯/廣田洋一
新海苔と聞けば、どこか粋な印象を私はもつ。握飯に巻けばいい香りが立ち食欲がそそられる。単刀直入な表現があっさりしていて内容にふさわしい。(髙橋正子)
1月12日(2句)
★存分に日差しを浴びる刈田かな/多田有花
存分に日差しを浴びる刈田がおだやか。瀬戸内沿岸の刈田の風景を思い起こす。日差しはその地方地方の気候の特徴をよく表しているように思う。日差しがよく観察された句。(髙橋正子)
★獣ゆく足跡のほか雪ばかり/弓削和人
降り積もった雪を歩いて行ったのは獣だけ。残されているのはその獣の足跡。
それ以外は何もない世界のさびしさ。少し気持ちを離してみれば、メルヘンの世界のようである。(髙橋正子)
1月11日(1句)
★寒梅や澄みたる空に伸びる枝/廣田洋一
寒梅の若枝がすっと空に伸びている。伸びた枝が寒空の青さを印象付けて、余分のないすっきりした句になっている。(髙橋正子)

1月11日~1月20日

1月20日(4名)
小口泰與
日脚伸ぶさして卒寿も遠からず★★★
玲瓏と浅間の朝や鴛鴦の沓★★★
夕暮の色定まりぬ雪浅間★★★
多田有花
コンビニのひとつ閉店寒の内★★★
冬枯を静かに流る昼の川★★★★
寒未明始発列車の音聞こゆ★★★
廣田洋一
正月も二十日過ぎたる吟行会★★★
大寒の空を仰ぎて外出す★★★
墓原のぱっと華やぐ寒紅梅★★★★
桑本栄太郎
大寒の鉄塔ならぶ嶺の青★★★
川に沿い桜冬芽の坂下る★★★
寒鯉の緋色なれども動きなし★★★
1月19日(4名)
小口泰與
先頭の鴨の高音のさざめかす(原句)
「さざめかす」は、他動詞なので目的語(何を)がいります。(髙橋正子)
先頭の鴨の高音のさざめけり★★★(正子添削)
鳥声の枝さしかわし枯木山(原句)
「鳥声が枝をさしかわす」は意味としてどうでしょうか。(髙橋正子)
鳥声や枝さしかわす枯木山★★★(正子添削)
鎖樋風にさざめき寒雀★★★
多田有花
椪柑や豊後の国より届きけり★★★
陽の明るし寒風は強けれど★★★
「けれど」が気になります。(髙橋正子)
まだ暗き中へ起きだす寒の朝★★★
廣田洋一
あの話聞けなくなりぬ龍の玉★★★
掻き分けて声を出したり龍の玉★★★
星冴ゆる不忍池の恋の歌★★★
桑本栄太郎
早梅やかつて庄屋の屋敷跡★★★
寒晴れや日差しそびらに吾の影★★★
日に光るビニールハウス春隣り★★★★
1月18日(4名)
小口泰與
葱提げて妙義の風を纏いけり★★★★
北風や赤城の空の蒼あをと★★★
赤城嶺の支えし空や北颪★★★
多田有花
県警に半旗阪神震災忌★★★
この寒は暖かき日の続きけり★★★
寒卵三つでオムレツを作る★★★
桑本栄太郎
みずいろの峰の奥より寒波来る★★★
山茶花の散り敷き襤褸の歩道かな★★★
ぷかぷかと波に乗り居り浮寝鳥★★★
弓削和人
びゅうびゅうと闇の奥なる雪入道★★★
遠くより闇に伴う寒波かな★★★
底冷えに耐えし靴下厚くなれ★★★
1月17日(4名)
小口泰與
一羽消え数多飛び去る寒雀★★★
山風のさきがけ浴びし枯木かな★★★
先んずる白波迫り鴛鴦の沓★★★
廣田洋一
足先に懐炉はりつけ受験せり★★★
温石を抱きたる僧や忌を修す★★★
訃報受く窓打つ風の冴ゆるかな★★★
多田有花
あのときのことを話して阪神忌★★★
日脚伸ぶ瓢箪あまた吊るされて★★★
寒鴉陽の明るさを示しおり★★★
桑本栄太郎
明けやらぬ刻や阪神震災忌★★★★
地道行く川に沿い居り葦枯るる★★★
早梅や古民家ありぬ街の中★★★
1月16日(5名)
廣田洋一
パチリパチンどんどの竹の撥ねる音★★★
大相撲定時に終わり日脚伸ぶ★★★
雨空に色くすみたる蠟梅かな★★★
小口泰與
手のひらの餌へふわりと冬の鳥★★★★
暖簾出す女将の髪へ牡丹雪★★★
墨痕の和紙の目覚めや冬木の芽★★★
多田有花
講演を終えて寒九の雨のなか★★★
身ひとつで膨れておりぬ寒雀★★★★
小正月今年の目標あらたにす★★★
桑本栄太郎
陸橋を越えてバスへと寒の風★★★
すすり泣くように聞こゆや虎落笛★★★
寒風の竹林大きくゆらぎけり★★★★
弓削和人
閉ざされし冬を耐えけり灯のぬくし★★★
郵便のポストや近し冬暖★★★
初風呂や新たな湯気を胸いっぱい★★★★
1月15日(4名)
小口泰與
冬蜂の草にささめく朝かな★★★
町会の古老の話し冬蕨★★★
老いらくの椿の花へ野鳥かな★★★
多田有花
遠山の姿を隠す寒霞★★★
寒中の快晴水音軽やかに★★★★
寒ぬくし修理されたる車待つ★★★
廣田洋一
夜来の雨止みたる空にどんどの火★★★★
消防団火掻棒持ちどんど守★★★
左義長の団子分け合ふ親子かな★★★
桑本栄太郎
女正月わすれ寝過ごす夫の我★★★
どんど火の妻は徒歩にて神社へと★★★
木々の枝の色づき始め日脚伸ぶ★★★
1月14日(5名)
弓削和人
虎落笛ふけたる夜に鳴きにけり★★★
白鳥のふわり降りてや湖面揺れ★★★★
銭湯の簾や寒さ遠くなり★★★
小口泰與
先んずる鴨の鋭声や沼真中★★★★
麦の芽や赤城の空のささ濁り★★★
さざめかせ餌台占むる寒雀★★★
廣田洋一
寒九の雨畑の土を黒々と★★★
起きしなに一杯飲みし寒の水★★★
並木道冬芽見上げつ通りけり★★★
多田有花
暖かき雨音を聞く寒八日★★★
どんど焼を知らせる放送雨の朝★★★
山々をけむらせ続く寒九の雨★★★
桑本栄太郎
水仙の雨の滴や下を向く★★★
午後よりのZOOM句会やしぐれ降る★★★
午後四時のはやも暮れたり寒の雨★★★
1月13日(名)
小口泰與
餌やりの時や賢しき寒雀★★★
空風に逆らう事はせざりけり★★★
離れ行く時は追わずや鴛鴦の沓★★★
廣田洋一
冬菫色鮮やかに庭を占め★★★
日当たり良き道に膨らむ冬木の芽★★★
新海苔の香り立ちたる握飯★★★★
多田有花
細道で道を譲りぬ枇杷の花★★★
仏の座枯田彩り咲きにけり★★★
寒中の枝に残れる柿数多★★★
桑本栄太郎
早梅やかつて庄屋の屋敷跡★★★
山茶花の散り敷き襤褸春近し★★★
腰高のもんぺ作業や冬菜畑★★★
1月12日(5名)
小口泰與
上州の風のさがなる玉子酒★★★
曙のさても賢き笹子かな★★★
山風に逆らう鳶や大根畑★★★
廣田洋一
納めたる松の小枝の青々と★★★★
鏡割小さき欠片を汁粉にす★★★
帰省せる子の注文やおでん鍋★★★
多田有花
存分に日差しを浴びる刈田かな★★★★
強霜の朝はよき日を約束す★★★
葱太くありけり畑の真ん中に★★★
桑本栄太郎
日差し受く吾のそびらや冬温し★★★
焼芋の小腹空くとき虫養い★★★
自転車の下校の列や日脚伸ぶ★★★
=注=・・「虫養い」、関西の方言、小腹の空いた時に食べるおやつ
弓削和人
獣ゆく足跡のほか雪ばかり★★★★
みちのくの道はさびしや雪霰★★★★
しんしんと夜の街灯吹雪けり★★★

1月11日(5名)
小口泰與
餌台へ五羽の雀や寒の朝★★★
凍雲やねっとり絡む京言葉★★★
口ずさむ酒宴の校歌新走り★★★
多田有花
懐かしき郵便ポストも日向ぼこ★★★
大根の打ち捨てられている畑★★★
白菜や丁寧に葉をくくられて★★★
廣田洋一
主無き庭に落ちたる寒椿★★★
寒梅や澄みたる空に伸びる枝★★★★
冬木の芽赤く膨らみ日を浴びる★★★
桑本栄太郎
玄関のさびしくなりぬ鏡割★★★
さざ波の光りきらめき日脚伸ぶ★★★
生きて在るこの世哀しく鳰潜く★★★
弓削和人
透き通る湖面や鶴をちらと見ゆ★★★
囀りや雪覆いたる待合所
「囀り」は春の季語で、「繁殖期の鳥の雄の縄張りと雌への呼びかけを兼ねた鳴き声をさす。」となっていますから、このことを先ずは抑えておきましょう。鳥の繁殖期のころも雪が待合所を覆っている情景となります。(髙橋正子)
吹雪きてや夕べに佇む遊覧船★★★★