9月11日(日)十六夜

晴れ
●9月月例ネット句会
投句
精霊バッタ飛び発ち翅のみどり透け
雹跡の疵梨剥いて野趣ふかし
名月のやすらう空の鉄色に
●「自由な投句箱」9月1日~10日の投句★印評価を操作ミスで消してしまった。句会の選をしながら、しこしこと書きこむ。原稿を作るのがいいが、手間なので直接書いている。上手くすれば元のが残ることがあるのに、今回はすっかりダメになった。
●エリザベス女王の国葬が9月19日と決まる。今日はバルモラル城からエディンバラまで6時間かけて王室旗を掛けられ、その上に花輪を置いた棺を運ぶ車の葬列をテレビでみた。車はベンツで棺がよく見えるようにガラス張り。エディンバラにあるホーリールード宮殿に安置されている。スコットランドでは、スコットランドの民族衣装のキルトをまとった兵士に棺が担がれていた。それからロンドンまで軍用機で運ばれ葬儀となるとのこと。

自由な投句箱/9月11日~9月20日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/9月11日~9月20日

9月20日(2句)
★子規庵に糸瓜を探す子規忌かな/廣田洋一
根岸の子規庵は一度訪ねたことがあるが、私もまず糸瓜棚を見た。結核を患った子規が痰を切るのによいとされた糸瓜水を採るために植えた糸瓜は、はらかずも絶筆の三句を作らせた。子規庵に糸瓜を探すのは「心のおのずから」のなせること。共感の一句。(髙橋正子)
糸瓜咲て痰のつまりし佛かな 子規
痰一斗糸瓜の水も間に合はず 〃
をとゝひのへちまの水も取らざりき  〃
★金色に稲穂稔りて空透けり/弓削和人
稲穂が金色に稔り、その間に空が透けている。金と青の対比が、エジプトの秘宝ように美しく輝いて、今現代の日本の稔の秋を伝えている。「黄金(こがね)」ではなく、稲穂に「金色」を感じたのは新しい感覚と言えるだろう。(髙橋正子)
9月19日(1句)
★雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり/小口泰與
「竹伐る」は秋の季語。用材としての竹は秋伐るのがよいとされる。春は筍に養分をとられ竹はおとろえているが、秋は竹から虫が逃げ、竹幹が充実している。降り続く雨が止んだ後、竹を伐る鋸の音や、枝を掃う音が竹藪から聞こえる。静かな音である。(髙橋正子)
9月18日(1句)
★供えらる束の野菊や辻地蔵/桑本栄太郎
「野菊の束」と言わないで、「束の野菊」と言った理由は、はっきりしている。辻地蔵に供える野菊は、辺りに咲いているものを手折って一二本というのをよく見かける。束にするほどたくさん摘んで供えた人の気持ちに、人の心の有り様が思える。(髙橋正子)
9月17日(1句)
★稲の香や夜の家並み途切れれば/多田有花
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)
9月16日(1句)
★色鳥と仄語らいし森の中/小口泰與
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)
9月15日(1句)
★青空の風に群れなす赤とんぼ/桑本栄太郎
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)
9月14日(1句)
★落日の蕊の紅さよ曼珠沙華/弓削和人
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)
9月13日(1句)
★「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ/多田有花
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)
9月12日(1句)
★蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり/弓削和人
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)
9月11日(1句)
★浅間より吹かれ来し雲鵙高音/小口泰與
空には浅間から吹かれ来た雲が伸びやかに浮かび、鵙が高鳴きする声が響いてきてくる。秋の風景が晴れ晴れと詠まれている。(髙橋正子)

9月11日~9月20日

9月20日(5名)
小口泰與
竜胆や嶺嶺を離るる雲一朶★★★
並び咲く雨後の水玉曼珠沙華★★★★
強風にまどう秋蝶中天へ★★★
多田有花
眠りけり野分の音を聞きながら★★★★
嵐去り秋の彼岸に入りにけり★★★
快晴や西瓜に光る刃を入れる★★★
廣田洋一
台風の近づく朝の茜雲★★★
子規庵に糸瓜を探す子規忌かな★★★★
豆の数くっきりと見え莢隠元★★★
桑本栄太郎
ベランダの雑多整理や野分来る★★★
野分去り峰の茜の入日かな★★★
汀女忌の追ひつつ追はれ赤とんぼ★★★★
弓削和人
月草の葎に添うて咲きひかる★★★
デュランタのすみれ色した秋来る★★★★
金色の稲穂は稔り空透きて(原句)
金色に稲穂稔りて空透けり★★★★(正子添削)
9月19日(5名)
小口泰與
咲き乱れ道を塞ぎし秋桜★★★
榛名湖の桟橋打つや秋の波★★★
雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり★★★★
廣田洋一
二畝の田実り豊かに色付きぬ★★★
コスモスを揺らして遊ぶ子らの笑み★★★★
コスモスを愛でて動かぬ二人連れ★★★
多田有花
台風よりちぎれ来し雲かかりけり★★★
ゆっくりと列島を辿る台風よ★★★
ヘッドフォンで恋の歌聴く台風圏★★★
桑本栄太郎
ベランダの鉢もの室へ台風来る★★★
夢に見る父のおもかげ敬老日★★★★
子規の忌の根岸の里の豪雨かな★★★
弓削和人
生涯の現役を期する敬老日★★★
ひろびろと蕊のながしや曼珠沙華★★★
駅を降り曇りの坂の秋思かな★★★
9月18日(5名)
廣田洋一
北国の青き光や秋刀魚買ふ★★★
秋日和順番待ちの滑り台★★★
名刹はみどりに満ちて秋日和★★★
小口泰與
二千里を翔る蝶おり藤袴★★★
大様な神代の恋や秋祭★★★
岩削る波の強さや稲光★★★★
多田有花
連休は嵐の予報秋うらら★★★
台風の北上前に買い出しに★★★
台風接近窓閉め切って床に就く★★★
桑本栄太郎
青空に雲走り行く野分まえ★★★
川上へ風に抗い赤とんぼ★★★
供えらる束の野菊や辻地蔵★★★★
弓削和人
雲流れ風のぬるしや台風圏★★★
颱風やテトラポッドの切りし波(原句)
颱風やテトラポッドを切りし波★★★(正子添削)
颱風ののた打ち回り叫び過ぐ★★★
9月17日(5名)
小口泰與
黄緑の田を賑やかす曼珠沙華★★★
富草や鳶の舞いたる空の色★★★
湖の日や戯るる秋の蝶★★★★
多田有花
秋晴れへふわりと発ちぬロープウェイ★★★
十六夜の月鮮やかな家路ゆく★★★
稲の香や夜の家並み途切れれば★★★★
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)
廣田洋一
敬老の日老人どもの食事会★★★
椎の実や産土神の贈り物★★★
先生に見せる椎の実温かし★★★★
桑本栄太郎
畦ごとの仕切りと為すや曼珠沙華★★★
物憂げに鳴き出で居りぬ法師蝉★★★
新酒酌む夕餉摂りたる牧水忌★★★★
弓削和人
合唱す思い出尽きぬ敬老の日★★★
芸術祭歌手たからかに音頭する★★★
草の花遊具に並ぶ園児の帽★★★★
9月16日(5名)
小口泰與
すり足の落鮎釣師川の中★★★
ひたひたと夕闇歩む秋の雨★★★
色鳥と仄語らいし森の中★★★★
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)
多田有花
<比叡山三句>
天高しここはおみくじ発祥地★★★
秋気澄む比叡横川をそぞろ歩く★★★
色づくにはまだしばしある楓かな★★★
廣田洋一
秋の灯や歌声高く澄み渡り★★★
見上げたるビルの屋上秋灯★★★
一声のじきに止みたる名残り蝉★★★
桑本栄太郎
グランドの部活賑わう秋入日★★★★
夕暮れの畑かしましき草ひばり★★★
烏瓜熟れて垣根にしな垂るる★★★
弓削和人
網目より無花果たわわに熟しけり(原句)
網かけられ無花果たわわに熟しけり★★★(正子添削)
きりぎりす一草なりて揺れもせず(原句)
きりぎりす止まる一草揺れもせず★★★★(正子添削)
爽籟の通りや急く人立ち止まり★★★
9月15日(5名)
廣田洋一
店先に秋刀魚光らせ誘ひけり★★★
じゅうじゅうと煙鳴らして秋刀魚焼く★★★
月祀る友と二人の酒宴かな★★★★
多田有花
<比叡山三句>
堂塔の朱塗り鮮やか秋の山★★★
森渡る風爽やかに比叡山★★★
鐘楼の鐘ひとつつき秋うらら★★★★
小口泰與
背に腹に飛びかかり来る草虱★★★
赤蜻蛉火の見櫓の中段に★★★★
蓑虫や赤城の風を目の当り★★★
桑本栄太郎
朝冷えや二度寝の夢の心地良き★★★
さやけしや風に吹かれて推敲す★★★
青空の風に群れなす赤とんぼ★★★★
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)
弓削和人
開店を待つや古書店秋うらら★★★★
古書を手に水筒腰に秋日和★★★
古書買うて繰るるページに秋の香や★★★
9月14日(5名)
小口泰與
水替えて水槽の魚秋の空★★★
蟋蟀や今も我家の納戸藏★★★
打ち出しは忙しせわしと鉦叩★★★
廣田洋一
月見れば逝きし人々浮かび来る★★★
川沿ひの畦道歩む月見かな★★★★
秋灯に一人味はふ郷の酒★★★
多田有花
<比叡山三句>
爽やかに離合するなりケーブルカー★★★★
秋高しかわらけ投げの的があり★★★
秋天へぐんぐん登るロープウェイ★★★
桑本栄太郎
ぬか味噌を今朝も掻き混ぜ妻の秋★★★
西山の嶺の端うねろ秋気満つ★★★
さやけしや遊びせんとて生まれをり★★★
弓削和人
落日の蕊の紅さよ曼珠沙華★★★★
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)
案山子帽吹かれし風に怺うかな★★★
家居より眺めてひさし稲の秋★★★
9月13日(5名)
小口泰與
秋ばらのこぼるる川辺風の中★★★
底紅や昭和の御代の繁華街★★★
泡立ち草切りし切先匂い立つ★★★★
廣田洋一
細過ぎて食欲湧かぬ秋刀魚かな★★★
矢印の綺麗に残り焼秋刀魚★★★
台風の前の晴天稲穂刈る★★★★
多田有花
<比叡山三句>
「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ★★★★
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)
秋のせせらぎ渡ればケーブルカー乗り場★★★
仲秋や大悲万行と大書★★★
桑本栄太郎
秋暑し爆音立てるカーラジオ★★★
とんぼうの群れ飛びをりぬ停留所★★★★
心地良き風のベンチや秋日蔭★★★
弓削和人
ふるさとの書棚を眺め夜長し★★★★
水引の粒みなかかる夕日かな(原句)
「みなかかる」の部分がわかりにくいです。(髙橋正子)
水引の粒のどれもに夕日かな★★★★(正子添削)
秋川は小海老の血管流れたり★★★
9月12日(5句)
小口泰與
がちゃがちゃや星無き畦の真の闇(原句)
がちゃがちゃや星無き畦の真暗闇★★★★(正子添削)
蟷螂の迷い出でたる仏間かな★★★★
段畑は泡立ち草や遠の里★★★
廣田洋一
満月を見たさに出たり入ったり★★★
西天に白き満月浮かびをり★★★
園児らのお手々つなぎて秋日和★★★
弓削和人
静かなる遠くの風や二百ニ十日★★★
蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり★★★★
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)
秋草を刈るや袋に秋つもる★★★
多田有花
みな若き歳月ありて秋思う★★★
秋の朝駆け抜けてゆく少年ら★★★★
ぽつぽつと刈田が住宅地の中に★★★
桑本栄太郎
一木を占めて垂れ居り葛の花★★★
合歓の実の色づき干乾ぶ川の風★★★
青空に編隊飛行や赤とんぼ★★★★
9月11日(3名)
小口泰與
浅間より吹かれ来し雲鵙高音★★★★
夕映えの峠越え来る雁の棹★★★★
邯鄲や旧家の池の水の色★★★
桑本栄太郎
山の端の雲育ち居り秋気満つ★★★★
東屋に座り虫の音聞きにけり★★★
十六夜の今夜も嬉し在所かな★★★
弓削和人
鈴虫の音に誘われし奈良格子(原句)
「誘われし」の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形で、奈良格子に掛かります。「奈良格子が鈴虫の音に誘われた」という意味になってしまいます。(髙橋正子)
鈴虫の音に誘われて奈良格子★★★★(正子添削)
ふと目覚め厠の窓やちちろ虫★★★
秋花のひっそり咲くや隠し道★★★

■9月月例ネット句会清記■

■9月月例ネット句会清記■
2022年9月11日
42句(14名)

01.流星や気散じの歩を湖辺まで
02.市松の切子硝子や秋うらら
03.蜩や湖にひと筋光りあり
04.あぶれ蚊の親しき声の纏い付く
05.身に入むや現世哀しき事ばかり
06.ふるさとの最後のひとつ梨を剥く
07.吾が影を追い越しトンボの影も飛ぶ
08.雨粒並ぶそれぞれに秋の色
09.辻地蔵稲穂出揃う裏通り
10.鶏頭の一群風にうねるかな

11.月やさしドビュッシーを聴きながら
12.ふと目覚めすこやかならむ母の秋
13.好天に恵まれし旅新酒酌む
14.高いわねと言ひて過ぎ行く秋刀魚かな
15.秋の虹新国王の城囲む
16.旅先で大空みれば中秋の月
17.目の前を行ったり来たり秋茜
18.秋の風ふと爽やかに頬を撫で
19.燕去り風は軽さを加えたり
20.名月のいま山の端を離れたり

21.名月の名残見送る夜明けかな
22.迎え火を焚く嬉しさよ茄子の牛
23.石鎚は白露の峰となり聳え
24.峡の田を守る案山子の首手拭い
25.名月のやすらう空の鉄色に
26.精霊バッタ飛び発ち翅のみどり透く
27.雹跡の疵梨剥くも野趣ふかし
28.待宵の田わたる風に身の軽く
29.月見団子丸めていれば雨あがり
30.名月のステンドグラスとなる高窓

31.旧友と並んで歩く秋の夜
32.弧を描く打球の先に光る月
33.読み終えて栞挟めば虫の声
34.海からの秋風の吹く大通り
35.秋晴れに雲一つなし海の青
36.梨届く段ボール畳む昼下がり
37.秋桜の揺れる畑よ青き空
38.重陽の雲間に見ゆる白き月
39.夕暮れの葉陰に揺れる栗のいが
40.黒ぐろと葡萄の粒が露を噴く

41.酢橘二個ころがり二個のみどり濃く
42.十五夜の盆にいびつな梨が載り

※互選を始めてください。5句選をし、その中の一句にコメントをお書きください。
選句は<コメント欄>にお書きください。