11月12日(金)

晴れ
●昨日送られて来た「少年」11月号p182に「続・京子の愛唱100句「癒し」(四十一)」欄があり、髙橋正子の句に、京子さんのエッセイがつけられている。昨年8月の月例ネット句会に投句した句で、句集にもなっていないのに、よくぞ見つけて、愛唱句にしてくださったものとありがたく思う。
それを引く。
— 
立秋の風に高々雲動く  髙橋正子

 秋になると高千穂の峰が私を呼ぶ。
 昨日までの雨が上がり、青空が覗き
始めた。この機を逃しては・・と、車に
乗り込む。日之影線を進むと標高は上
がり、足下の川や道路はまるで箱庭の
ようだ。対岸の山々は陽光を浴びて光
り、何とも言えない懐かしさで迫って
くる。
 高千穂神社の大杉は樹齢八百年。木
の周りは九メートル。その横には幹が
つながる夫婦杉が並び、境内は昼でも
暗い。静寂につつまれた境内に立つと、
時が止まったかのようだ。
高千穂の峰と、高千穂神社があるところは同じだと思っていたが、地図で確かめると違う。宮崎県の北の方にあるのが、高千穂神社、南の方の日之影線にそって上ってい行くと霧島連山の一つの高千穂の峰となっている。天孫降臨の地と伝えら得る神々しいところ。句を重ねていただき、恐縮する。
小野京子さんは、長らく大分県の小学校の校長先生を務められたようだ。私より一回り上だが、お手紙の文字は若々しい。なにごとも勉強熱心なかたとお見受けした。偶然にも句美子と一緒に俳壇のアンソロジー『2021俳句の杜』に参加しておられることを知った。私の句は、去年の句なので、間柄を知っておられたとは思えない。ご縁でしょう。
『2021俳句の杜』より、小野京子さんの句。正子抄出
辻馬車の蹄軽やか里の春
天空に光溢れて木々芽吹く
浮き桟橋かすかに揺れて鳥帰る
鳥籠は針金細工春の昼
山茱萸の花に目ざむる母の里
花柄のサンダルうれし日向水
妙法の文字男等の手に燃えて
山深く入り滴りをきいてをり
ひたすらに出番待つ子ら夏帽子
竹林を抜け出してより月冴ゆる
鈴の音の谺となりて秋遍路
小鳥来る子らからの文届くごと
雪を待つ天の小窓やクリスマス
切株に残すぬくもり冬の山
インク壺冬の運河の色湛へ
日月を埋め城址の冬ざるる
(以上16句)

11月11日(木)

快晴
●見渡すかぎりの青空。富士山が見えるかもしれないと5丁目の丘へ。丘の一番急な所の屋敷林に鵯の声に混じり、ぎゅぎゅぎゅっと鳥の鳴き声。オナガかなと立ち止まる。樫の大木の上に現れた2羽の尾が長い。横を向いてくれれば羽の色がわかるんだがと思いつつ様子を見ていた。白っぽい灰色。前見たときは水色にも見えた羽だが、きょうはうすい灰色。たしかにオナガに違いない。そのうち、数羽が飛び立った。もっといるらしい。樫のとなりに栴檀の実より少し大振りの実が生っている。これを食べているのかも。思いかげずオナガに遇った。
丘が下り坂にさしかかるところから富士山が見える。頭上の快晴をよそに、富士山の方には白い雲が寄っている。富士の山頂は霞んでいるがその形がしっかり見える。帰り、葦の真っ赤な紅葉を二本荒れた畑からもらった。
●小野京子さんと言う方から俳誌「少年」11月号が送られてきた。「少年」は、稲田眸子氏主の主宰で、眸子氏には一度俳誌協会かどこかでお会いしたことがある。

自由な投句箱/11月11日~20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月11日~20日

11月20日(1句)
★月食の後の夜明けの冬満月/多田有花
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
11月19日(1句)
★月食の東寺にかかる冬の月/桑本栄太郎
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
11月18日(1句)
★大根干す風瞭かに赤城より/小口泰與
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
11月17日(1句)
★吹き溜まる木の実踏むなり歩く音/桑本栄太郎
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日
該当句無し
11月15日(1句)
★小春日や土手に座りて暇ありぬ/廣田洋一
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
11月14日(1句)
★火の匂う焼芋割るや屏風岩/小口泰與
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
11月13日(1句)
★薪積みて消火器備へ冬構/廣田洋一
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
11月12日(1句)
★並木道見通し良きや冬構/廣田洋一
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
11月11日(1句)
★ベランダの明かりや二連の柿すだれ/桑本栄太郎
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)

11月11日~20日

11月20日(4名)
小口泰與
雪浅間正面に見し今日小春★★★
利根川へ山風流す冬の松★★★
山風の里に住みけり神無月★★★
廣田洋一
バス停にざっと降りこむ時雨かな★★★
休耕の畑打ちたる時雨かな★★★
色紙を短冊にして目貼かな★★★
多田有花
月食を見る冬浅きベランダで★★★
月食の後の夜明けの冬満月
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
朝ごとに冬の紅葉の山仰ぐ★★★
桑本栄太郎
亀虫の張り付き逃げず冬めける★★★
少年の遠き想う龍の玉★★★
踏みしだく落葉通りやプラタナス★★★
11月19日(4名)
小口泰與
丹精の冬ばらに声かかりける★★★
山風に一糸纏わぬ枯木かな★★★
突堤に迫る波なみ冬鴎★★★
廣田洋一
返り咲く白き躑躅や紅ほのか★★★
薬局の庭に咲きたる返り花★★★
宅配便受け取る朝小春かな★★★
桑本栄太郎
綿虫の想い出淡く浮かびけり★★★
小春日や天のきらめきヘリコプター★★★
月食の東寺にかかる冬の月★★★★
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
多田有花
レンジ出る緑鮮やかブロッコリ★★★
見上げれば日差しを透かす冬紅葉★★★
開山堂冬の紅葉に取り巻かれ★★★
11月18日(4名)
廣田洋一
ラリー続くテニスコートの小春かな★★★
小春日や地元の野菜売られをり★★★
帰り花思はず声をかけにけり★★★
小口泰與
語部の宿の女将や囲炉裏端★★★
夕映えの石蕗の私語風の私語★★★
大根干す風瞭かに赤城より★★★★
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
多田有花
冬菜畑紋白蝶の集いおり★★★
鯖缶の水煮を加え煮大根★★★
枯れてこそ光を放つ尾花かな(原句)
「こそ」は、理屈が勝ってるように感じます。
枯れてより光放てる尾花かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
点滅の代わる信号冬紅葉★★★★
とんからり二段の音や木の実落つ★★★
綿虫や去年(こぞ)の記憶の戻りしか★★★
11月17日(4名)
小口泰與
山裾の蒼茫とあり冬の草★★★
麦蒔や長きすそ野に安らぎぬ★★★
冬立や神樹の影を砂利に踏む★★★
多田有花
どの家の南天の実も色づいて★★★
からすうり木守のごとく枝にあり★★★
裸木となりて古巣のあきらかに★★★★
桑本栄太郎
吹きさらす風に赤きや真弓の実★★★
誰も居ぬ池を巡るや蘆枯るる★★★
吹き溜まる木の実踏みつつ散歩かな(原句)
「散歩」に工夫がいります。
吹き溜まる木の実踏むなり歩く音★★★★(正子添削)
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
印伝の鼻緒の草履今日小春 ★★★
里住みの風の上州神無月★★★
おやみなき風や上州冬の山★★★
 廣田洋一
老いてなほ高みを目指す帰り花★★★
咲くほどにはかなげな色返り花★★★
小春日にもつれ合ひたる蝶二頭 ★★★
多田有花
初冬の山は日毎に色を変え ★★★
紅の山茶花一輪角曲がる ★★★
売物件の幟ありけり実南天 ★★★
桑本栄太郎
綿虫の今年も想い出持ちしかな ★★★
冬蜂のよるべ無き身を歩みけり (原句)
「身を歩み」の「を」が文法的に不自然です。
冬蜂のよるべ無き身の歩みけり★★★(正子添削)
村上鬼城の「冬蜂の死にどろこなく歩きけり」の句が先行してしまいますね。
山茶花の高き垣根や山の里★★★
11月15日(4名)
小口泰與
沼の上深き蒼空番鴛鴦★★★
山風によたよた舞うや冬の蝶★★★
枯菊や山風私語を奪ひける★★★
廣田洋一
小春日や土手に座りて暇つぶし(原句)
「暇つぶし」が、常套的な言葉なので、俳句の言葉としては、やや問題があります。
小春日や土手に座りて暇ありぬ★★★★(正子添削)
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
小春日や二人は無事に旅立ちぬ★★★
空き家にも返り咲きたるつつじかな★★★
多田有花
枯すすき後ろは遠き淡路島★★★
冬紅葉やさしき色もありにけり★★★
続々と開くよここの山茶花は★★★
桑本栄太郎
ベランダに紅の溢れや冬の薔薇(原句)
ベランダに紅の溢るや冬の薔薇★★★★(正子添削)
山茶花の白にうす紅混じりけり★★★
双葉菜の畝の筋目やどこまでも★★★
11月14日(4名)
廣田洋一
小春日和鉢から鉢へ蜆蝶★★★
風に乗り吾が庭染める落葉かな★★★
銀杏落葉キャンパスの道埋め尽くし★★★★
小口泰與
火の匂う焼芋割るや屏風岩★★★★
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
滔滔の利根の川原や三十三才★★★
寒月と一番星と見合いせり★★★
多田有花
午後の陽が海はや光らせ日短か★★★★
小春空横切っていくヘリコプター★★★
青空になお赤々と冬紅葉★★★
桑本栄太郎
生垣の香りつづくや金木犀★★★
落葉松の大木凛と黄葉せる★★★★
あおぞらを見上げ銀杏の黄葉かな★★★
11月13日(4名)
小口泰與
おやみなき枯葉の音や夕明かり★★★★
遥かなる歳月過ぎし石蕗の花★★★
とも綱へとまりし鳥や散黄葉★★★
廣田洋一
冬構へ終えたる庭に客招く★★★
藁筵日に乾かして冬囲い★★★
薪積みて消火器備へ冬構★★★★
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
小春日や土塀崩るる山の里★★★
嶺上の雲の茜や冬の宵★★★
山里の早も灯点り冬めける★★★★
多田有花
冬の蝶日差しに翅を広げおり★★★
庭石の出自はいずこ石蕗の花★★★
石蕗咲いて日向へ差し出す黄色かな★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
炉明りに眉雪集いし大広間★★★
山風に鳶の輪二つ花八手★★★
白鳥を待つ大沼の静けさよ★★★★
多田有花
遠く見ゆ嘴広鴨と思いけり★★★
白壁が囲みし庭や石蕗の花★★★★
大鷺の群れて立つなり冬の川★★★
桑本栄太郎
冬ざれや赤き実集うピラカンサ★★★
穭穂の刈り取る頃となりぬべし★★★
水禽の水脈きらめくや今着水★★★★
廣田洋一
並木道見通し良きや冬構★★★★
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
破れたる障子直せし風の夜★★★
幸運を掻き寄せたきや酉の市★★★
11月11日(4名)
廣田洋一
冬構へ縄を垂らして寺の庭★★★
町中を電飾照らし冬構★★★
納屋の前薪積み上げて冬構★★★
多田有花
木枯しや沖の島まで吹いてゆく★★★
夕陽鮮やか木枯しの去りし後(原句)
句の趣向はいいです。5-7-5にまとめると、下のようになります。これをもとに、力強さやリズム感を工夫なさってください。
木枯らしの去りて夕陽の鮮やかに★★★★(正子添削)
(髙橋正子)
冬の菊群れ咲くところ日差しあり★★★
小口泰與
山巓の冬綺羅星や文机(原句)
句の趣向は★4つですが、文机が取って付けたことなって、句意が通らないのが残念です。(髙橋正子)
山巓の冬綺羅星を文机(ふづくえ)に★★★★(正子添削)
「山巓の冬綺羅星を文机にひき寄せて見る。」の句意にしました。
夕暮の眉雪集まる囲炉裏かな★★★
天窓へ朝日集めし冬の梅★★★
桑本栄太郎
二連とてベランダ明りや柿すだれ(原句)
「とて」が理屈です。ズバリ言うのがいいので、無い方が良いと思います。(髙橋正子)
ベランダの明かりや二連の柿すだれ★★★★(正子添削)
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)
吹きさらす天の息吹や木の葉舞う★★★
木々の枝の色濃くなりぬ冬もみじ★★★