風に揺れ話し合うよに犬ふぐり★★★
3月15日(4名)
小口泰與
坂東を横切る春の太郎川★★★
明るさは榛名の空や春の朝★★★★
春昼やラクビーボール飛び跳ねて★★★
廣田洋一
窓を打つ雨音消えて春の雪★★★★
雨空に淡き紅色江戸彼岸★★★
満開の彼岸桜に春の雪★★★
多田有花
春雨に午後のコーヒーの香り★★★
春の雨書類仕事を片付ける★★★
炒り卵茹でし分葱と味噌和えに★★★
桑本栄太郎
うつうつと夢のつづきや朝寝人★★★
歩みゆく程に雨雲春ならひ★★★
自転車の集結したり春休み★★★★
「集結したり」が青春らしく面白い。春休みになり、自転車をもって集まった生徒たち。これから大勢で出かけようというのだ。青春真っただ中のさわやかさがいい。(高橋正子)
3月14日(5名)
小口泰與
榛名湖の霞より出づ小舟かな★★★
浅間燃え襞黒黒と雪解かな★★★★
今なおA級活火山として噴煙をあげる浅間山は、燃える山と言えよう。雪解けに山の地熱が関係するかどうか知らないが、この句からは、山の熱が雪解けを促している印象だ。「襞黒黒」が実感。(高橋正子)
あえかなる朱きばらの芽ほどきける★★★
廣田洋一
白き枝ぱつと差し出す雪柳★★★
雪柳やはき風にも雪崩れけり★★★★
白皙の友思ひ出す雪柳★★★
桑本栄太郎
朝寝人二度寝の夢の果てしなく★★★
子供等の遊び見えざる菜種梅雨★★★
休園の塀に添いたりチューリップ★★★★
多田有花
春山路遠くで光る播磨灘★★★
春の谷囲む稜線を歩く★★★
下り来て八重紅梅に迎えられ★★★
古田敬二
じゃが芋の芽を温めて畝静か★★★★
じゃが芋を地中深く植えて、そのあとは、芽が地上に出るのを待つばかり。今は土が芽を静かに温めている時。静かな畝は生きている。(高橋正子)
春耕す分葱がこぼす土黒し★★★
引き寄せて故郷の梅の香かすかなり★★★
3月13日(4名)
古田敬二
四阿へ青きを踏んで十五段★★★★
四阿から見下ろす池に残り鴨★★★
道のべに木蓮光る昼餉時★★★
廣田洋一
白き花天を突きたる木蓮かな★★★
木蓮の反り返りたる花弁かな★★★
老舗にて馴染みし味や鶯餅★★★
小口泰與
駄菓子屋の子らの顔かおつくしんぼ★★★
遠き日の餓鬼大将や父子草★★★
茎立ちや独り暮らしの峡の家★★★★
山峡の集落。独り暮らしの家もあって食べ余した畑の菜は茎立っている。薹が立ったり花をつけたりして峡の村に春が確かに来ている。(高橋正子)
桑本栄太郎
溝川の早瀬となりぬ春の丘★★★
山里の崩れ土塀や桃の花★★★★
春なれやけぶり棚引く山の里★★★
3月12日(5名)
小口泰與
群雀翔つや裏庭諸葛菜★★★
さびき釣りに掛かる魚や華鬘草★★★
春の湖画布いっぱいの色使い★★★★
春の湖の色あいを見れば、絵心が誘われるというもの。春の湖を思い切り描いている人がいるのだろう。画布いっぱいの色使いに、春の色を見た。(高橋正子)
廣田洋一
春満月の浩々と照る曙かな★★★
手をかけて年を越したるシクラメン★★★
シクラメンワインレッドのあふれをり★★★★
古田敬二
蒲公英の丈をたがえて風に揺れ★★★★
蒲公英の丈は短くて皆同じように思えるのもあるが、野原をよく見れば、高低いろいろある。風が吹きすぎて蒲公英を揺らす。春の歌のような句。(高橋正子)
ぺんぺんと鳴らずナズナの風に揺れ★★★
夕暮れの池中央に残り鴨★★★
桑本栄太郎
追悼の祈りに合はせ春の虹★★★
白れんの今日は飛び翔つ日差しかな★★★★
白れんがほぼ満開となり、日差しを受けると花びらが開き空へ飛び翔つような姿勢になる。
「飛び翔つ日差し」に実感があって、上手。(高橋正子)
春風のあゆみ来たれば”南茶屋”★★★
多田有花
いっぱいにミモザ咲かせしカフェに入る★★★
春昼や壁一面の大時計★★★★
アーモンドトーストかりっと春の昼★★★
3月11日(4名)
廣田洋一
線路沿ひ街灯潤む町朧★★★
待ち人のなかなか見えぬ朧かな★★★★
女川の街思ひ出す朧月★★★
小口泰與
楓の芽ほぐるる刹那光りける★★★★
枸杞の芽や支流も利根も激つける★★★
楤の芽や渓流釣りの竹の魚籠★★★
多田有花
春の夕仏舎利塔より城眺む★★★
麗かや傾く陽を浴び仏舎利塔★★★
永き日の仏舎利塔に猫二匹★★★★
「永き日」がよく効いている。永き日だからこそ、二匹の猫も釈迦のほとりにいたがる。極楽にも似た雰囲気がある。(高橋正子)
桑本栄太郎
歩みゆく丘の田道や春帽子★★★★
なんでもないような句だが、「春帽子」に味わいがあっていい。春帽子をかぶるのは少々年取った男性がいい。風に寒さはあるもののあたたかい丘の田道が快い。(高橋正子)
さざ波の田面となりぬ春驟雨★★★
鳴き声の薮を占めたる初音かな★★★