ご挨拶
地震に続き台風20号、21号と続けて四国から阪神京都へと上陸し、花冠会員の方も被害を受けられました。心よりお見舞い申し上げます。そんな中にも拘わらず、月例句会にご参加いただき、ありがとうございました。遅くなりましたが、9月14日、皆様の選とコメントを貼り終えましたので、ご確認ください。入賞の皆さまおめでとうございます。初秋の風物が俳句となって現れ、つぎつぎ災害が起こる中でも、日本の良さを思いました。明日からは敬老の日もあり、3連休。そして24日は十五夜。嬉しい日もあることでしょう。気温差がある昨日今日ですので、くれぐれもご自愛ください。来月の句会を楽しみにお待ちください。来月は、10月14日(第2日曜日)です。
(高橋正子)
9月14日(金)
★葛の花匂わすほどの風が起き 正子
葛の花は秋の七草の一つで、何処までも蔓が伸びゆくほど繁殖力が旺盛です。葉が大きく茂り、葉裏には紅紫の可愛い花を咲かせており、微かでも風が起こると葉裏の花のほのかな香りが漂いほっとこころ癒されます。(佃 康水)
○今日の俳句
韮の花浸す野川の音澄むへ/佃 康水
韮の花は新涼の季節に先駆けて咲く。摘んだ韮の花は野川に浸すと涼やかな花となる。「清ら」は主情が強いが、「澄む」は写生であっても作者の深い内面が出る。(高橋正子)
●曇り。夜雨が降ったようだ。
去年の9月14日は、<「毎日俳句αあるふぁ」の15日締め切りの「水」の原稿を送った。>
花冠は有名にはならないが、ありがたいことに、ほそぼそ途切れることなく、メディアが取り扱ってくれる。もうすぐ、「俳句四季」10月号が20日にでる。これには、花冠創立35周年の記事が載る。
栗の実を茹で入院の日を待てり 正子
年老えば葡萄ひと粒珠となす 正子
秋水を瓶に満たして雨の花 正子
★唐辛子男児(おのこご)の傷結ひて放つ 草田男
男の児は、手足に傷などよく負うものだ。 膝でも擦りむいたのだろうか、包帯をして、また遊びに行かせた。唐辛子が熟れるころは、「天高し」ころ。気候もよく、男児はことに日暮れ際までよく遊ぶ。ぴりっとした唐辛子の可愛さは、また男児の元気な可愛さに通じる。(高橋正子)
★青くても有べき物を唐辛子 芭蕉
★鬼灯を妻にもちてや唐がらし 也有
★うつくしや野分のあとのとうがらし 蕪村
★寒いぞよ軒の蜩唐がらし 一茶
★雨風にますます赤し唐辛子 子規
★赤き物少しは参れ蕃椒 漱石
★一莚唐辛子干す戸口かな 碧梧桐
★辛辣の質にて好む唐辛子 虚子
★誰も来ないとうがらし赤うなる 山頭火
★唐がらし熟れにぞ熟れし畠かな 蛇笏
★秋晴れやむらさきしたる唐辛子 夜半
★戸袋の筋にかけあり唐辛 石鼎
★庭園に不向きな赤い唐辛子 鷹女
★唐辛子干して道塞く飛鳥びと 秋櫻子
★秋の日の弱りし壁に唐辛子 みどり女
★炎ゆる間がいのち女と唐辛子 鷹女
★てのひらに時は過ぎゆく唐辛子 不死男
★唐辛子わすれてゐたるひとつかな 楸邨
熟れた唐辛子は可愛い。店で唐辛子の実を束ねて売っているので、それを買い、しばらく台所に飾って楽しんでそれから使う。信之先生は、うどんには、七味唐辛子でなく、この赤い唐辛子を細く輪切りにしたのを入れるのが習慣だ。きんぴらには、辛いというくらい入れたい。すでに輪切りにした唐辛子を売っているが、それではなく、丸のままのを買って、鋏で丹念に切る。
農家には、どこの家の畑の隅に唐辛子を植えていた。熟れると茎ごと抜いて束ね。家の軒下など日陰に吊るして乾燥させた。沢山採れる家は、筵に広げて乾燥させたのだろうが、これは、見たことがない。父も、うどんにはこの唐辛子をたっぷりと入れて食べていた。七味ではない。
唐辛子のなかでも辛くない唐辛子がある。ピーマンも、ししとうも唐辛子の仲間である。父がまだ中年のころ、辛くない唐辛子といって、近所でははじめてピーマンを植えた。子どもにも食べれた。刻んで、油炒めで醤油の味付けだったと思う。唐辛子が食べれたと子どもながら自慢であった。そのせいか、いまでもシシトウや甘唐辛子が沢山手に入ると、油炒めで醤油、鰹節で佃煮のようにして食べる。これが、我が家では、娘にも人気でご飯がすすむ。
唐辛子のことで思い出したが、長野の小諸で花冠(水煙)大会をしたとき、伊那の河野斎さんが来られ、善光寺の名物の七味唐辛子をいただいた。そのとき、善光寺名物が七味唐辛子であることを知ったが、いい香りの七味唐辛子であった。河野さんは、伊那で歯科医院を営んでおられたが、偶然にも、三男のお嫁さんが、私の郷里の福山のご出身と聞いた。縁は異なもの不思議なもの、です。河野さんは急逝されたが、ご家族に林檎の木を残されて、その年の林檎の収穫のおすそわけをいただいた。お孫さんたちが俳句を作って花冠(水煙)に投句されていたので、お孫さんと、そのお母さんのお気持ちだと知った。唐辛子からひょんなところに話がずれたが、思い出したので、書き留めておいた。
★唐辛子真っ赤に熟れしをキッチンに/高橋正子
★唐辛子もう日暮だと子を呼びに/〃
唐辛子(とうがらし、唐芥子、蕃椒)は、中南米を原産とする、ナス科トウガラシ属 (Capsicum) の果実から得られる辛味のある香辛料。栽培種だけでなく、野生種から作られることもある。トウガラシ属の代表的な種であるトウガラシにはさまざまな品種があり、ピーマン、シシトウガラシ(シシトウ)、パプリカなど辛味がないかほとんどない甘味種(甘唐辛子・あまとうがらし)も含まれる。トウガラシ属は中南米が原産地であり、メキシコでの歴史は紀元前6000年に遡るほど非常に古い。しかし、世界各国へ広がるのは15世紀になってからである。
唐辛子が日本へ伝わったのは、16世紀後半のことで、南蛮船が運んで来たと言う説から南蛮胡椒、略して南蛮または胡椒とも言う。コロンブスは、唐辛子を胡椒と勘違いしたままだったので、これが後々まで、世界中で唐辛子(red pepper)と胡椒(pepper)の名称を混乱させる要因となった。現在世界中の国で多く使われているが、アメリカ大陸以外においては歴史的に新しい物である。クリストファー・コロンブスが1493年にスペインへ最初の唐辛子を持ち帰ったが忘れられ、ブラジルで再発見をしたポルトガル人によって伝播され、各地の食文化に大きな影響を与えた。ヨーロッパでは、純輸入品の胡椒に代わる自給可能な香辛料として南欧を中心に広まった。16世紀にはインドにも伝来し、様々な料理に香辛料として用いられるようになった。バルカン半島周辺やハンガリーには、オスマン帝国を経由して16世紀に伝播した。
日本で栽培されているのは主にトウガラシだが、沖縄や伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種の島唐辛子が栽培されている。トウガラシ属が自生している南米では、ウルピカなどの野生種も香辛料として使われる。「唐辛子」の漢字は、「唐から伝わった辛子」の意味であるが、歴史的に、この「唐」は漠然と「外国」を指す語とされる。英語では「チリ(chili)」または「チリ・ペッパー (chili pepper)」と言う。胡椒とは関係が無いにも関わらず「ペッパー」と呼ばれている理由は、ヨーロッパに唐辛子を伝来させたクリストファー・コロンブスがインドと勘違いしてアメリカ大陸に到達した際、唐辛子をインドで栽培されている胡椒の一種と見なしたためである。それ以来、トウガラシ属の実は全て「ペッパー」と呼ばれるようになった。沖縄県では島唐辛子や、それを用いた調味料をコーレーグス(コーレーグース)と呼ぶが、これは高麗胡椒の沖縄方言読みとも、「高麗薬(コーレーグスイ)」が訛ったものだともされる。唐辛子の総称として鷹の爪を使う者もいるが、「鷹の爪」はトウガラシ種の1品種である。
9月13日(木)
尾瀬
★山小屋の湯にいて秋の笹の音 正子
山小屋の湯に浸り、旅の疲れを癒す、心身ともに安らぐひととき。その快さの中で聞く笹の葉擦れの音に、いっそう澄んだ秋の夜が感じられ、尾瀬の秋に身を置く作者の喜びが伝わってまいります。(藤田洋子)
サワギキョウ(沢桔梗、学名: Lobelia sessilifolia )はキキョウ科ミゾカクシ属の多年草。美しい山野草であるが、有毒植物としても知られる。
茎の高さは50cmから100cmになり、枝分かれしない。葉は無柄で茎に互生し、形は披針形で、縁は細かい鋸歯状になる。
花期は8月から9月頃で、濃紫色の深く5裂した唇形の花を茎の上部に総状に咲かせる。花びらは上下2唇に分かれ、上唇は鳥の翼のように2裂し、下唇は3裂する。萼は鐘状で先は5裂する。キキョウと同じく雄性先熟で、雄しべから花粉を出している雄花期と、その後に雌しべの柱頭が出てくる雌花期がある。
北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の湿った草地や湿原などに自生する。普通、群生する。
○今日の俳句
窓越しの鳴き澄む虫と夜を分つ/藤田洋子
「夜を分かつ」によって、窓の外の虫音と内とが繋がって、しっとりと落ち着いた虫の夜となっている。「鳴き澄む」虫の声が透徹している。(高橋正子)
●自由な投句箱のコメント6日分をし終える。問題句が1句でもあると、溜まる。俳句は創作であり、詩であるから、文法的な問題をどうするか、難しい。作る方は特に考えないで作っているのかもしれないが。
【思うが】俳句の句境(心境)の段階を問題にする人は、総合俳誌では、いないように思う。日本の伝統芸能の「能」では完全にそうではないか。
『ゲゲゲの女房』、病院の本棚にあり、待ち時間に数べージ読みかけた。面白そう。
★数珠玉や歩いて行けば日暮あり/森澄雄
★数珠玉や家のまはりに水消えて/岸田稚魚
★じゅず玉は今も星色農馬絶ゆ/北原志満子
★数珠玉や流れの速き濁り川/天野美登里
★数珠玉の数珠の数個をポケットに/山内四郎
★数珠玉よ川にも空が映るなり/高橋正子
★数珠玉を採ってしばらく手のうちに/〃
ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)は、水辺に生育する大型のイネ科植物である。インドなどの熱帯アジア原産で、日本へは古い時代に入ったものと思われる。一年草で、背丈は1m程になる。根元で枝分かれした多数の茎が束になり、茎の先の方まで葉をつける。葉は幅が広い線形で、トウモロコシなどに似ている。花は茎の先の方の葉の付け根にそれぞれ多数つく。葉鞘から顔を出した花茎の先端に丸い雌花がつき、その先から雄花の束がのびる。雌花は熟すると、表面が非常に固くなり、黒くなって表面につやがある。熟した実は、根元から外れてそのまま落ちる。なお、ハトムギ(C. lacryma-jobi var. ma-yuen)は本種の栽培種である。全体がやや大柄であること、花序が垂れ下がること、実がそれほど固くならないことが相違点である。
脱落した実は、乾燥させれば長くその色と形を保つので、数珠を作るのに使われたことがある。中心に花軸が通る穴が空いているので、糸を通すのも簡単である。実際に仏事に用いる数珠として使われることはまずないが、子供のおもちゃのように扱われることは多い。古来より「じゅずだま」のほか「つしだま」とも呼ばれ、花環同様にネックレスや腕輪など簡易の装飾品として庶民の女の子の遊びの一環で作られてきた。秋から冬にかけて、水辺での自然観察や、子供の野外活動では、特に女の子に喜ばれる。
イネ科植物の花は、花序が短縮して重なり合った鱗片の間に花が収まる小穂という形になる。その構造はイネ科に含まれる属によって様々であり、同じような鱗片の列に同型の花が入るような単純なものから、花数が減少したり、花が退化して鱗片だけが残ったり、まれに雄花と雌花が分化したりと多様なものがあるが、ジュズダマの花序は、中でも特に変わったもののひとつである。まず、穂の先端に雄花、基部に雌花があるが、このように雄花と雌花に分化するのは、イネ科では例が少ない。細かいところを見ると、さらに興味深い特徴がある。実は、先に“実”と標記したものは、正しくは果実ではない。黒くてつやのある楕円形のものの表面は、実は苞葉の鞘が変化したものである。つまり、花序の基部についた雌花(雌小穂)をその基部にある苞葉の鞘が包むようになり、さらにそれが硬化したものである。この苞葉鞘の先端には穴が開いており、雌花から伸び出したひも状の柱頭がそこから顔を出す。雌花は受粉して果実になると、苞葉鞘の内で成熟し、苞葉鞘ごと脱落する。一般にイネ科の果実は鱗片に包まれて脱落するが、ジュズダマの場合、鱗片に包まれた果実が、さらに苞葉鞘に包まれて脱落するわけである。実際にはこの苞葉鞘の中には1個の雌小穂のほかに、2つの棒状のものが含まれ、苞葉鞘の口からはそれら2つが頭を覗かせている。これらは退化して花をつけなくなった小穂である。したがって、包葉鞘の中には、花をつける小穂(登実小穂)1つと、その両側にある不実の小穂2つが包まれていることになる。これら雌小穂と不実の小穂の間から伸びた花軸の先には、偏平な小判型の雄小穂が数個つく。1つの雄小穂にはそれぞれに2つの花を含む。開花時には鱗片のすき間が開いて、黄色い葯が垂れ下がる。
自由な投句箱/9月11日~20日
※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之
◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
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今日の秀句/9月11日~20日
9月20日(1句)
★初紅葉源流の水ういういし/小口泰與
源流へと辿れば、源流の辺りはうっすらと紅葉している。水はういういしく流れ出している。源流の雰囲気はまた特別で、「ささやかな初めてのもの」があるのだ。(高橋正子)
9月19日(3句)
★走り続け走れど走れども虫の闇/多田有花★★★★(正子添削)
もとの句は、「虫の闇が走り続ける」と解釈される可能性が大きいです。
夜、車やバイクで走っていると、「まあよくこんなにも虫の闇が続くものだ」と、いう経験をすることがある。野の草に集く虫の声に、深まる秋のその奥を感じさせる句だ。(高橋正子)
★秋の鯉濡れ新聞に包まるる/小口泰與
鯉は濡れ新聞で包んでおくと一日は生きているそうだ。真鯉は特に生命力の高い淡水魚で、祝い事の食事や薬効が言われたり、日本人にとって大事な魚である。濡れ新聞に包まれ、鯉はしっかりと生きている。(高橋正子)
★鰯雲広がれ我が菜園の上空に/古田敬二
鰯雲は高層圏の雲だ、秋空高く一面に広がると、心が晴れやかになる。私の菜園の上の空に広がってくれたら、どんなに嬉しいことだろうか。(高橋正子)
9月18日(1句)
★大根蒔く五寸の幅をたがわぬよう/古田敬二
大根の種蒔き。五寸、17センチほどの幅を立てて蒔く。その幅が違わないように気を付けて蒔くのだ。いい大根に育てるための最初である。勢ぞろいして芽生えた大根の双葉を想像して嬉しくなる。(高橋正子)
9月17日(句)
★稲刈機そばの流れに洗わるる/多田有花
稲田の傍に流れがある。その流れは、田に引かれて稲を育てた水である。稲を刈り終えた稲刈機は、その流れの水できれいに洗われる。さっぱりと快い句だ。(高橋正子)
9月16日(1句)
★秋の海流木一つ横たわる/廣田洋一
秋の海の青さと淋しさが、流れ着いた一本の流木によって、象徴的に表現されている。無駄のないしっかりとした句だ。(高橋正子)
9月15日(1句)
★初鵙の高き鳴声空を裂く/廣田洋一
鵙の声を聞いた。今年初めての鵙。その高い鳴き声が空を裂き、これこそが鵙と思う。(高橋正子)
9月14日(1句)
★水切りの石晴れ晴れと秋の水/小口泰與
水切りの石を飛ばす。石が水を跳ねて次々飛ぶ愉快さ。秋の水が晴れ晴れしているように感じられた。秋の
(高橋正子)
9月13日(3句)
★棚田へと水が水追い落し水/小口泰與
棚田の稲が熟れた。刈り入れに備え、田の畦口を切り、水を落とし、田圃を乾かす。「水が水追い」は、棚田の水が急かされるように次々落とされている様子か。稔りの秋も急かされるように移ろう。(高橋正子)
★秋水や堰落つる音軽きかな/廣田洋一
堰を落ちる秋の水は空を移して、青く輝いている。堰を滑らかに落ちる水の音が軽い。「秋水」という語の音の響きが軽さを際立てている。(高橋正子)
★漆箸嬉し秋刀魚をほぐしけり/古田敬二
旅の小土産に箸を求めることがある。艶やかな塗り箸を買った。それで秋の味覚の秋刀魚をほぐす。クローズアップされた塗り箸の先とあつあつの秋刀魚に嬉しさがわかる。(高橋正子)
9月12日(2句)
★澄む秋の水音のそばに停車する/多田有花
停車したところが、たまたま、水音がするところだった。水の音は、春には春の、秋には秋の、それらしい音になる。澄む秋の水の音の響きが、耳に聞こえる。(高橋正子)
★高層の団地の庭や露しぐれ/桑本栄太郎
高層の団地の庭は、その近代的な建築とは対照的に、草草が茂っているところがあったり、芝生が敷き詰められたりと、露が宿るには好条件なところがある。「露しぐれ」という美しい言葉が、その情景をよく示している。(高橋正子)
9月11日(1句)
<井の頭恩賜公園>
★神田川ここに始まり秋高し/多田有花
神田川は、江戸―東京の発展にかかわってきた川であるが、現在では、簡単には下記のように説明される。井の頭池を水源として神田川が始まる。川の始りを見ると感慨深いものがある。それも水が澄む「秋高し」とき、川の流れの行くへに思いが重なる。(高橋正子)
<東京都三鷹市の井の頭池を水源として東流,中野区南部で善福寺川,新宿区北部で妙正寺川を合流,都心区部を流れて両国橋上手で隅田川に注ぐ川。従来,上流部を神田上水,中流部を江戸川,下流部を神田川と呼んでいたが,1965年の河川法改正により全体を神田川と総称するようになった。 (→神田上水 , 玉川上水 ) >
9月11日~20日
9月20日(4名)
小口泰與
湖へひた走りける秋桜★★★
鰯雲三山の空奪いあい★★★
初紅葉源流の水ういういし★★★★
源流へと辿れば、源流の辺りはうっすらと紅葉している。水はういういしく流れ出している。源流の雰囲気はまた特別で、「ささやかな初めてのもの」があるのだ。(高橋正子)
多田有花
秋彼岸入りは静かな雨の朝★★★
思い出したように一羽の法師蝉★★★
茸いくつも愛でつつ歩く森の道★★★★
廣田洋一
音もなく降る雨秋の彼岸入り★★★
嫁ぎたる子と墓参り秋彼岸★★★★
一枚の住民除票秋彼岸★★★
桑本栄太郎
秋冷の目覚め確たり夢見かな★★★★
こきこきと骨の軋むや朝の冷え★★★
いちじくの花は見ざれど熟しけり★★★
9月19日(6名)
多田有花
赤飯を敬老の日の母に炊く★★★
どこまでも走り続ける虫の闇(原句)
走り続け走れど走れども虫の闇★★★★(正子添削)
もとの句は、「虫の闇が走り続ける」と解釈される可能性が大きいです。
夜、車やバイクで走っていると、「まあよくこんなにも虫の闇が続くものだ」と、いう経験をすることがある。野の草に集く虫の声に、深まる秋のその奥を感じさせる句だ。(高橋正子)
播磨灘われと望みし秋の蝶(原句)
秋の蝶われと望める播磨灘★★★★(正子添削)
小口泰與
秋の鯉濡れ新聞に包まるる★★★★
鯉は濡れ新聞で包んでおくと一日は生きているそうだ。真鯉は特に生命力の高い淡水魚で、祝い事の食事や薬効が言われたり、日本人にとって大事な魚である。濡れ新聞に包まれ、鯉はしっかりと生きている。(高橋正子)
逆光の芒や利根川(とね)の青き空★★★
裏庭の葡萄鴉と競いける★★★
廣田洋一
朝寒し目覚まし止めてあと五分★★★
朝寒や熱きコーヒー香り立つ★★★
朝寒や日の当たりたる白き壁★★★★
桑本栄太郎
ゑのころの風に肯う売地かな★★★
糸瓜忌やこの頃水のつまり居り★★★
秋晴れや入日なれども青き空★★★★
古田敬二
鰯雲広がれ我が菜園の上空に★★★★
鰯雲は高層圏の雲だ、秋空高く一面に広がると、心が晴れやかになる。私の菜園の上の空に広がってくれたら、どんなに嬉しいことだろうか。(高橋正子)
種まきを休めば畔に風優し★★★
秋の庭の花を愛でつつ鹿教湯郷★★★
川名ますみ
秋日影短く切りし前髪へ★★★★
美容師と親しき人と秋日和★★★
秋の午後前髪切られ目をつむる★★★
9月18日(5名)
古田敬二
雨粒も紫の色牽牛花★★★
大根蒔く五寸の幅をたがわぬよう★★★★
大根の種蒔き。五寸、17センチほどの幅を立てて蒔く。その幅が違わないように気を付けて蒔くのだ。いい大根に育てるための最初である。勢ぞろいして芽生えた大根の双葉を想像して嬉しくなる。(高橋正子)
食べ方を講釈しつつ鮎を食う★★★
多田有花
東京の秋空映す打ち水システム★★★★
チアガール高く弾けし秋空へ★★★
敬老の日や母連れて姉宅に★★★
小口泰與
軽トラに脚立据えたり松手入★★★★
人気者アンパンマンの案山子かな★★★
露浴びて醜草刈るや鳥の声★★★
廣田洋一
風けはしはかなく揺れる露草や★★★
露草の青空支ふ蕊黄色★★★
道の端露草群れて瑠璃色に★★★★
桑本栄太郎
バスの行く山陰街道うす紅葉★★★
街道の格子戸黒く萩垂るる★★★★
無残なや倒木のまま赤とんぼ★★★
9月17日(4名)
多田有花
鳴き交わし頂の木々に小鳥来る★★★
秋雨に届きぬ閉店のしらせ★★★
稲刈機そばの流れに洗いおり(原句)
もとの句は、主語が稲刈機なので、述部が「洗いおり」では、不自然です。
稲刈機そばの流れに洗わるる★★★★(正子添削)
稲田の傍に流れがある。その流れは、田に引かれて稲を育てた水である。稲を刈り終えた稲刈機は、その流れの水できれいに洗われる。さっぱりと快い句だ。(高橋正子)
小口泰與
新蕎麦や追分宿の古のれん★★★
窓辺には母のミシンや流れ星★★★★
秋扇や紋付羽織袴にて★★★
廣田洋一
色付きし木の葉沈める秋の川★★★★
草むらの闇の中なる虫の声★★★
灯り消しラジオを消して虫の声★★★
古田敬二
<戦没画学生美術館 無言館>
秋の陽の遺品に届く無言館★★★
自画像の視線が発す秋の色★★★
キャンバスの秋の光に皹割れり★★★★
9月16日(4名)
廣田洋一
秋の海流木一つ横たわる★★★★
秋の海の青さと淋しさが、流れ着いた一本の流木によって、象徴的に表現されている。無駄のないしっかりとした句だ。(高橋正子)
親子にて釣り糸垂れる秋の海★★★
秋の海第二海堡修築す★★★
小口泰與
古酒や草津節をば口ずさみ★★★
新豆腐尾瀬湿原の水清みし★★★★
むかご飯子の寄る事も稀になり★★★
桑本栄太郎
池めぐり小さな秋を探しけり★★★
水面打つ鯉の頻りや秋入日★★★
草萩の池を巡れば阻み居り★★★
9月15日(4名)
小口泰與
白萩のこぼれ一天かきくもり★★★
渓谷の支流の流れ水の秋★★★★
魚の斑の忽と反転水澄めり★★★
桑本栄太郎
登校の児の口笛や秋気澄む★★★★
コスモスの誘う風を待ちにけり★★★
ゆらゆらと野辺を彩り花野風★★★
廣田洋一
初鵙の高き鳴声空を裂く★★★★
鵙の声を聞いた。今年初めての鵙。その高い鳴き声が空を裂き、これこそが鵙と思う。(高橋正子)
裸木の枝と決まれり鵙の居所★★★
朝鵙の声の高さに子ら怯え★★★
古田敬二
木曽源流渡る電線秋燕★★★
二人して見上げる木曽の帰燕かな★★★★
一家ならむ並ぶ帰燕や木曽の空★★★
9月14日(4名)
多田有花
秋蝉の途切れ途切れを聞く朝★★★
吉祥寺商店街の秋祭り★★★★
秋雨や日本列島青く塗り★★★
廣田洋一
指差して星座確かむ星月夜★★★
星月夜人工衛星探しけり★★★★
定時にて退社のビルや星月夜★★★
小口泰與
水切りの石晴れ晴れと秋の水★★★★
水切りの石を飛ばす。石が水を跳ねて次々飛ぶ愉快さ。秋の水が晴れ晴れしているように感じられた。秋の
(高橋正子)
七輪の火の驕りたり初秋刀魚★★★
三山は靄に沈みし虫時雨(原句)
三山は靄に沈みぬ虫時雨★★★(正子添削)
桑本栄太郎
濯ぎもののありて畳めり秋すだれ★★★
雨雲のせせり昇りぬ秋の嶺★★★★
鬢の毛の白くなりにし乃木忌かな★★★
9月13日(4名)
小口泰與
燕去る我家の空の開きたり★★★
噴煙の流るる辺り花野かな★★★
棚田へと水が水追い落し水★★★★
棚田の稲が熟れた。刈り入れに備え、田の畦口を切り、水を落とし、田圃を乾かす。「水が水追い」は、棚田の水が急かされるように次々落とされている様子か。稔りの秋も急かされるように移ろう。(高橋正子)
廣田洋一
覗き込む白髪を写す秋の水★★★
黄色き葉ゆったり浮かぶ秋の水★★★
秋水や堰落つる音軽きかな★★★★
堰を落ちる秋の水は空を移して、青く輝いている。堰を滑らかに落ちる水の音が軽い。「秋水」という語の音の響きが軽さを際立てている。(高橋正子)
桑本栄太郎
秋あはれ目覚めて想う友の夢★★★★
秋愁の三日目となる妻の旅★★★
すすぎもの有りて取りたり秋すだれ★★★
古田敬二
新涼の木曽に求める漆箸★★★★
漆箸嬉し秋刀魚をほぐしけり★★★★
旅の小土産に箸を求めることがある。艶やかな塗り箸を買った。それで秋の味覚の秋刀魚をほぐす。クローズアップされた塗り箸の先とあつあつの秋刀魚に嬉しさがわかる。(高橋正子)
新涼や源流近き橋に立つ★★★
9月12日(3名)
小口泰與
谷間をたちまち隠す濃霧かな★★★
白萩のこぼれ鉄路の続きける★★★
電線の激しきうねり野分かな★★★★
多田有花
二百二十日防災の本を読みにけり★★★
澄む秋の水音のそばに停車する★★★★
停車したところが、たまたま、水音がするところだった。水の音は、春には春の、秋には秋の、それらしい音になる。澄む秋の水の音の響きが、耳に聞こえる。(高杯マサコ)
診断がついてすっきり天高し★★★
桑本栄太郎
山崎の柿の色付く軒端かな★★★
高層の団地の庭や露しぐれ★★★★
高層の団地の庭は、その近代的な建築とは対照的に、草草が茂っているところがあったり、芝生が敷き詰められたりと、露が宿るには好条件なところがある。「露しぐれ」という美しい言葉が、その情景をよく示している。(高橋正子)
雨降れば一雨ごとに紅葉初む★★★
9月11日(5名)
廣田洋一
新涼や上着を羽織り出勤す★★★
新涼に音コツコツとハイヒール★★★
梨食ふていざ出陣の選挙戦★★★
小口泰與
秋晴や大砲岩の妙義山★★★★
雲迅き妙義七峰秋の晴★★★
三山のそれぞれ違う秋の声★★★
多田有花
<井の頭恩賜公園三句>
池囲む木々どっしりと秋日和★★★
弁天に詣でて歩く秋の池★★★
神田川ここに始まり秋高し★★★★
神田川は、江戸―東京の発展にかかわってきた川であるが、現在では、簡単には下記のように説明される。井の頭池を水源として神田川が始まる。川の始りを見ると感慨深いものがある。それも水が澄む「秋高し」とき、川の流れの行くへに思いが重なる。(高橋正子)
<神田川は、東京都三鷹市の井の頭池を水源として東流,中野区南部で善福寺川,新宿区北部で妙正寺川を合流,都心区部を流れて両国橋上手で隅田川に注ぐ川。従来,上流部を神田上水,中流部を江戸川,下流部を神田川と呼んでいたが,1965年の河川法改正により全体を神田川と総称するようになった。 (→神田上水 , 玉川上水 ) >
古田敬二
小柄なる母の十八番の栗おこわ★★★
母遠し栗のおこわの香る時★★★★
母を思い出すのは、なんといっても母の十八番の料理であろう。栗の季節になると、栗おこわを作ってくれた。今栗おこわを目の前にして、栗の香りに母を懐かしんだ。(高橋正子)
蒸しあがる小さき背の母栗おこわ★★★
※9月9日のご投句とじ句でした。
桑本栄太郎
遠き日の夢見ばかりの秋思かな★★★★
那珂川に鯊釣りし日や秋愁う★★★
戸袋にむくろとなりぬ秋の蜂★★★