9月1日(土)

★つまみ菜を洗えば濁る水の色  正子

○今日の俳句
秋風に速き流れの雲ひとつ/高橋秀之
空を眺めていると、ひとつだけ速く流れている雲に気づく。そこにだけ風が強く吹いているのだろうか。秋の空を見に行ってみたいものだ。(高橋正子)

●今日から9月。
【最近思うのだが】著名俳人による俳句の添削は行き過ぎではないかと思う。元の俳句を改竄してしまっていて、その人らしさがなくなっている。間違いを訂正するのが、添削の意味。俳句のリズムにこそ、その人らしさがある。文体ではないにしても、その人の呼吸スタイルがある。これを壊している。外国の詩でこのようなことをしている場合はあるのだろうか。

○韮の花

[韮の花/ネットより]              [韮の花/横浜日吉本町]

★韮の花坂としもなく息あへぐ/石田波郷
★足許にゆふぐれながき韮の花/大野林火
★おもてより裏口親し韮の花/水野節子

★天日を豊かに受けて韮の花/久我達子
★韮の花秩父は土の匂いして/城内明子
★一面に韮の花咲く里暮れし/阿部スミエ
★いつ見ても韮の花に蝶せせり/高橋正子

ニラ(韮)は、百合(ゆり)科ネギ属の多年草緑黄色野菜である。学名はAllium tuberosum。Allium:ネギ属、tuberosum:塊茎のある、塊茎状の。Allium(アリウム)は「ニンニク」の古いラテン名で、「匂い」という意味が語源。夏には葉の間から30 – 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 – 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 – 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。中国西部が原産。日本では本州から九州に野生し、これを自生とする向きもあるが、疑わしい。株分けまたは種によって増やす。独特の臭気があることから「においきらう」(香嫌)、これが「にら」に変化したともいわれ、また、美味であることから「みら」(美辣)が「にら」に変化したともいわれる。この匂いのため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。

◇生活する花たち「葛の花①・葛の花②・木槿(むくげ)」(横浜日吉本町)

9月1日~10日


9月10日(4名)

小口泰與
コスモスの打ち交じりけり山の鳥★★★
秋茜訴ふることありて飛ぶ★★★
山の木のいよよ紅鵙日和★★★★

廣田洋一
通りがけ一つ捥ぎたる林檎かな★★★
デザートに林檎を剥くや朝ごはん★★★
林檎捥ぐ梯子立てかけ津軽富士★★★★

多田有花
新幹線東京の秋に滑り入る★★★★
アイスショー済んで吹かれし秋夜風★★★
秋葉原まだ閑散と秋の朝★★★

桑本栄太郎
建仁寺の土塀高きや花梨の実★★★
自然薯のありて麦飯炊くことに★★★
金山寺味噌の粥食う白露かな★★★★
瓢逸と言っていいのか、自在な心境と言っていいのか。そんな味わいのある句。今の俳人で、このような句を作れる方はそんなにいないのではないか。(高橋正子)

9月9日(4名)

古田敬二
小柄なる母の十八番の栗おこわ★★★
母遠し栗のおこわの香る時★★★★
母を思い出すのは、なんといっても母の十八番の料理であろう。栗の季節になると、栗おこわを作ってくれた。今栗おこわを目の前にして、栗の香りに母を懐かしんだ。(高橋正子)

蒸しあがる小さき背の母栗おこわ

小口泰與
青空に浮かびし語彙や秋小鳥★★★
双子山古墳へ日差し小鳥来る★★★★
古墳の膨らみに、日が差して、小鳥が渡ってくる。悠久の時が広がる思いだ。(高橋正子)
産土の舂く頃の蕎麦の花★★★

廣田洋一
朝早き草に露なき白露かな★★★
秋草刈る慌てふためく団子虫★★★
ビル谷間新涼の風渦巻きぬ★★★★

桑本栄太郎
倒木のそのままありぬ野分跡★★★
ブルーシート屋根の増え居り台風禍★★★
教会の道のすがらや白木槿★★★★

9月8日(4名)

廣田洋一
白桃の紅に引かれて買ひにけり★★★★
紅がうっすらと刷かれている白桃は、日本画に描きたいような瑞々しさがある。その紅に魅かれて買ったのだ。(高橋正子)

桃剥くや切れ切れの皮積み上げて★★★
湯を通しさつと剥きたる白桃かな★★★

小口泰與
水澄むや赤城九峰指呼の間に★★★★
秋雨やおっきり込みの炊き上がり★★★
ひぐらしや日日に伸びたる木木の影★★★

桑本栄太郎
秋冷や想い出遠き夢の里★★★
倒木の数多残りぬ野分跡★★★
南瓜煮る妻の夕餉やコロッケに★★★★

古田敬二
電線に木曽へ別れの帰燕かな(原句)
電線に木曽に別かるる帰燕かな★★★★(正子添削)
木曽源流渡る電線秋燕★★★
新涼や源流近き橋に立つ★★★

9月7日(3名)

小口泰與
愛犬を抱え立ち読み鉦叩★★★
ぺちゃんこになる引力よ熟柿落つ★★★
夕映えの浅間や忽と雁の棹★★★★

廣田洋一
秋草の色とりどりに土手の道★★★★
空き畑に緑の波や秋の草★★★

秋草や風吹き渡る秋の空(原句)
秋草や風吹き渡る青き空★★★(正子添削)

桑本栄太郎
秋冷の哀しき夢に哭き居たる★★★
陸橋の手に取るように銀杏の実★★★★
陸橋に上がると、並木の銀杏に手が届く。眼前に銀杏の葉がある。見れば、銀杏の実がある。見上げることしかなかったものを眼前に見ることができた、小さな驚き。銀杏も実をつけるころになった。(高橋正子)

白粉の花も実となる夕日かな★★★

9月6日(4名)

廣田洋一
夜食用野菜スープを煮込みけり★★★
野菜スープ白飯にかけ夜食かな★★★
プレゼンの資料整へ夜食かな★★★★

小口泰與
忙しげに馬追い鳴くやライン鳴る★★★
啄木鳥や覚満淵へ朝日差す★★★
色鳥やレンズ交換いたしをる(原句)
色鳥やレンズ交換しておりぬ★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
秋蝉の終に鳴かざるひと日かな★★★★
蝉は秋になれば、秋蝉と呼び変えられて、もの淋しさが加わる。気づいてみれば、今日は蝉がなかない。つに鳴かない日であった。季節はいつの間に蝉の声を消して秋が深まっている。(高橋正子)

ぎんなんの風の狼藉すべも無く★★★
<北海道道南地震>
崩れ落つ山の吞みこむ稲田かな★★★

9月5日(4名)

多田有花
絵を描きぬ野分近づく音の中★★★
運動会の練習始まる河川敷★★★★
えのころや野鳥を撮りし男座す★★★

小口泰與
ごうごうと天狗の業か台風禍★★★
朝日受けきらら稲穂の輝けり★★★
全開の窓や山家の濃竜胆★★★★
山家の窓は全開で、山の空気が満ちている。そこに竜胆が活けられて、その青い色が澄明な雰囲気を深くしている。(高橋正子)

廣田洋一
青空に切先立てしオクラの実(原句)
青空に切先立ててオクラの実★★★(正子添削)

雨上がり赤く輝く唐辛子★★★
この句で問題はありませんが、下のようにも表現できると思います。
雨上がり赤が輝く唐辛子★★★★(正子添削例)

土手覆ふ穂先波打つ猫じゃらし(原句)
土手覆ひ穂先波打つ猫じゃらし★★★(正子添削)

桑本栄太郎
むんむんと匂う田道や稲の秋★★★
自然薯の厨に置かれ妻の旅★★★★
自然薯が厨に置かれたまま。妻がいるならとろろ飯などにして食べさせてくれるだろうが、妻は旅。自分ではなんともなるぬ自然薯。妻の留守の淋しさが少し。(高橋正子)

風神の次ぎは豪雨や野分荒れ★★★

9月4日(4名)
作業中!

多田有花
秋燕一羽曇り空を低く飛ぶ★★★
蝉の声細くなりたる九月かな★★★
休暇果つ少年少女小麦色★★★★

廣田洋一
俯けどぱつと開きし秋海棠(原句)
「はっと開きし」のところが気になります。

俯けど花の明るき秋海棠★★★★(正子添削①)
秋海棠の花は、花柄が伸びて垂れ下がっている。俯いてはいるが、その花の色は明るく楚々として、初秋の空気にその花が印象的だ。(高橋正子)

俯けど花あかあかと秋海棠(正子添削②)

楚々としてひととこ照らす秋海棠★★★
雨に濡れ色気増したる秋海棠★★★

小口泰與
いや白く月光浴びぬ榛名富士★★★

夕暮の音色定かやきりぎりす(原句)
夕暮の鳴く音定かやきりぎりす★★★(正子添削)

貴船菊朝の鶏舎の賑わしき★★★★

桑本栄太郎
台風の予報進路や今朝の晴れ★★★
咆哮の風が樹々食む颱風裡★★★
ぱたぱたと灯火明暗颱風裡★★★

9月3日(4名)

多田有花
みんみんとつくつくぼうし重唱す★★★
八月尽河川敷の芝刈る香★★★
虫の音に取り囲まれし夜となる★★★

廣田洋一
黒葡萄歯ごたへの良き一粒かな★★★
葡萄食ぶ一粒ごとに子と語る★★★★
ワイン用葡萄連なる畑かな★★★

小口泰與
秋風や寺といえども末寺にて★★★
三山は秀を競わずや稲の秋★★★★
もろこしの刈られ眼間浅間山★★★

桑本栄太郎
草木みな透けて色づく残暑かな★★★★
山の端の奥に雲生れ秋暑し★★★★
「山の端の奥」は、山が空を触れ合うところの奥、向こう側の意味。雲はそこから生まれ、秋の雲となっているのだが、暑さはまだ続いている。いいところを見ていると思う。(高橋正子)

身に入むや遠くの友の逝去聞く★★★

9月2日(3名)

廣田洋一
白き皿ゴマを散らせる衣被★★★
その丸味舌に転がし衣被★★★
衣被つるりと剥きし曇り空★★★

小口泰與
虫の音や赤城の冷気届きける★★★
稲の香や赤城の空sの青あおと★★★★
稲の秀や五百の雀の何処より★★★

多田有花
小豆島くっきり見えて涼新た★★★★
有花さんが住んでいるのは姫路。山に登ると小豆島が見えるのだろう。暑さが少し落ち着くと、空気が澄んでくる。今日は小豆島がくっきり見え、「新涼」の空気を感じる。「涼新た」に体のスイッチも入れなおされるようだ。(高橋正子)

秋雷を避けて急ぎし山路かな★★★
九月来る朝の雷鳴とともに★★★く

9月1日(3名)

小口泰與
竜胆や降りては晴るる峠道★★★★
峠の秋は天気が変わりやすい。降っては晴れ、晴れた思うと、また降る。雨が降れば雨に、晴れれば、晴れた空に、竜胆は色を深める。(高橋正子)

老いてこそ恃むは妻よ合歓紅葉★★★
うららかや赤城は裾野長からむ★★★

廣田洋一
会席の前菜となる茸かな★★★
椎茸や衣の薄き天ぷらに★★★
しんみりと集ふ会席九月かな(原句)
じみじみと集ふ会席九月かな★★★(正子添削)

桑本栄太郎
川べりの風の茂みや葛の花(原句)
川べりの茂みに風や葛の花★★★(正子添削)

ドアを開け荷物受け取る九月かな★★★
目覚むればすでに入日や秋の冷え★★★