8月13日(月)

font size=”3″ color=”black” style=”line-height:160%;”>★西瓜切ってみなの心に故郷(くに)ありぬ  正子
西瓜には、誰もが大切な夏の記憶を持っています。家族で一玉の西瓜を切り分ける時、みなの心に浮かぶ「故郷」は、どの場面でしょうか。今の家族で過ごした曾ての夏休みを語ったり、或いは、一家を構える前の実家の夏座敷をふと想ったり。時に同じで、時に夫々の故郷を思いながら、切り分けた西瓜を頂く。幸せで趣深いひとときです。(川名ますみ)

○今日の俳句
車椅子とんぼの群へ触れに入る/川名ますみ
「触れに入る」がすばらしくよい。とんぼの群れに、自ら入り、とんぼと同じように交わることに純粋な喜びがある。(高橋正子)

●8月月例ネット句会入賞発表。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

デイリー句会の溜まっていたコメント8月6日~12日分を書く。選とコメントをするには、かなりの集中力がいるので、締め切り原稿があると、溜まってしまう。

最近思うのだが、季語「鳩吹く」を「鳩吹く風」と間違えて使っているのではないかと思う句に沢山出会う。句集にまとめられた句もそうである。実際、今では、「鳩吹く」ことはほとんどないのではないか。

○藤袴

[藤袴/東京・向島百花園]

★枯れ果てしものの中なる藤袴 虚子
★藤袴白したそがれ野を出づる/三橋鷹女
★藤袴手に満ちたれど友来ずも/三橋鷹女
★藤ばかま触れてくる眸の容赦なき/稲垣きくの
★たまゆらをつつむ風呂敷藤袴/平井照敏

藤袴について、高校の古文の先生からまつわる話を聞いた。戦のとき、武士が兜の下に入れたという。頭の蒸れた匂いをその芳香で消すためと聞いた。そのときは、野原の藤袴を折り取ってそれを兜の下に入れたのだと思ったが、そのままの藤袴は匂わない。匂うのは、乾燥したものだそうだ。乾燥させると、なにか芳香の成分ができるらしい。乾燥したものを兜の下に入れたのだろう。淡い紫紅色の散房状の花は武士の花といってもいいだろう。花の形がよく似ていて、立秋ころ咲く白い花がある。これを、早合点の私は、もしや藤袴と思うことがある。そして、その花を写真にとったりして、何度も確かめて、やはり、違うようだと結論付ける。まれにしか見ない藤袴見たさのことであろう。伊勢神宮の外宮の観月祭には、きっちりと秋の七草が揃えられているそうだ。秋の七草は、ハギ、キキョウ、クズ、ナデシコ、オバナ(ススキのこと)、オミナエシ、フジバカマの七草で、山上憶良の歌に「萩の花尾花葛花なでしこが花をみなへしまた藤袴朝顔が花」 (万葉集 巻八) がある。

★藤袴山野の空の曇り来し/高橋正子
★清貧の背筋ますぐや藤袴/高橋正子

フジバカマ(藤袴、Eupatorium japonicum)とはキク科ヒヨドリバナ属の多年生植物。秋の七草の1つ。本州・四国・九州、朝鮮、中国に分布している。原産は中国ともいわれるが、万葉の昔から日本人に親しまれてきた。8-10月、散房状に淡い紫紅色の小さな花をつける。また、生草のままでは無香のフジバカマであるが、乾燥するとその茎や葉に含有されている、クマリン配糖体が加水分解されて、オルト・クマリン酸が生じるため、桜餅の葉のような芳香を放つ。中国名は蘭草、香草。英名はJoe-Pye weed;Thoroughwort;Boneset;Agueweed(ヒヨドリバナ属の花)。かつては日本各地の河原などに群生していたが、今は数を減らし、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧(NT)種に指定されている。また「フジバカマ」と称する植物が、観賞用として園芸店で入手でき庭にも好んで植えられる。しかし、ほとんどの場合は本種でなく、同属他種または本種との雑種である。

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

自由な投句箱/8月11日~20日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/8月11日~20日


8月20日(1句)

★秋蝉や目覚めて遠き少年期/桑本栄太郎
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

8月19日(2句)

★奥利根の水まろまろと蕎麦の花/小口泰與
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)

★富士暮れて港に花火始まれる/川名ますみ
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

8月18日(2句)

★朝靄の晴れて確たり稲穂垂る/桑本栄太郎
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

★参道に萩の花咲く妻の墓/廣田洋一
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

8月17日(1句)

★秋海棠赤城九峰朱に染まり/小口泰與
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

8月16日(2句)

★花葛や一直線の湖の径/小口泰與
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

★送り火やしんがりを行く長男よ/廣田洋一
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

8月15日(1句)

★爽やかな朝の厨の音聞こゆ/小口泰與
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

8月14日(1句)

★盆か路傍に白き百合供え/多田有花
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

8月13日(2句)

★湖へ差す朝日強きよ秋の風/小口泰與
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

★盆の沖御魂迎えしごと晴れる/多田有花
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

8月12日(1句)

★風に乗る霧の迅しや山下る/小口泰與
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

8月11日(2句)

★赤とんぼ夕陽あたれば金色に/多田有花
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

★山すその音に目覚むや威し銃/桑本栄太郎
桑本栄太郎山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

8月11日~20日


8月20日(4名)

多田有花
豪雨跡越えて登りし秋の山★★★
影選び秋暑の道を歩きけり★★★
一歩ずつ新涼確かめつつ歩く★★★

小口泰與
里山や釣鐘人参そよと揺れ★★★
萩咲くや石段街のお土産屋★★★
鳳仙花夕日蹴りたる水面かな★★★

桑本栄太郎
秋蝉や目覚めて遠き少年期★★★★
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

産土の辻に幟や宮相撲★★★
合歓は実に手足伸びたる大姪よ★★★

廣田洋一
秋夕焼雲の一筋棚引けり★★★
秋夕焼ほつと一息山の暮★★★
秋夕焼烏飛び交ふ里の暮★★★

8月19日(5名)

多田有花
森歩く新たに涼し風の音★★★
秋晴れや六甲淡路くっきりと★★★★
秋風にはるか四国の山の影★★★

小口泰與
浅間なお秋月の出にいとまあり★★★
奥利根の水まろまろと蕎麦の花★★★★
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)
訴うるチワワの眼赤のまま★★★

廣田洋一
初秋刀魚思ひの外の小ぶりなり★★★
居酒屋の煙に混じる秋刀魚の香★★★★
秋刀魚焼く厨に満つる香りかな★★★

川名ますみ
秋風を訪問ナースに教わりぬ★★★
ヘルパーもナースも秋の空気よと★★★
富士暮れて港に花火始まれる★★★★
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

桑本栄太郎
惜しみなく鳴き尽くすかに法師蝉★★★★
仰のけの落蝉白き腹を見せ★★★
合いの手の入りて惜しめり秋の蝉★★★

8月18日(4名)

小口泰與
花芙蓉野川の波の変りおり★★★
枝豆や隣家の灯りともりける★★★★
高原や缶ドロップの音さやか★★★

廣田洋一
道の端ぽつぽつこぼる萩の花★★★
参道に萩の花咲く妻の墓★★★★
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

雨に耐え枝垂れ咲きたり萩の花★★★

桑本栄太郎
朝靄の晴れて確たり稲穂垂る★★★★
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

白鷺の番と見ゆる田中かな★★★
名乗り出でしきりに惜しむ秋の蝉★★★

古田敬二
補聴器が少しざわつく秋の風★★★
角曲がる新涼届く伊吹より(原句)
角曲がり新涼届く伊吹より★★★★(正子添削)

亡き兄へ今年は一人で経を読む★★★

8月17日(5名)

小口泰與
秋海棠赤城九峰朱に染まり★★★★
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

はみ跡や利根の落鮎いずかたへ★★★
背高泡立草田畑次つぎ治めけり★★★

多田有花
乗りあわせ驟雨の中を墓参り★★★★
西瓜囲み一年ぶりの話かな★★★
秋涼や朝の日差しの透明に★★★

桑本栄太郎
枝が鳴り窓が鳴り居り初嵐★★★★
ハイウェイの彼方に霧の峰の立つ★★★
プロペラの発電塔や秋の浜★★★

廣田洋一
門出でて清々しきゃ秋の風★★★
帰り道秋風連れてぶらぶらと★★★
シャッター街色なき風の吹き抜けし★★★

古田敬二
夕風に触れて離れて猫じゃらし★★★
かなかなの彼方にかすか夕暮れる★★★
新涼や飛騨の川面に風の道★★★

8月16日(4名)

小口泰與
おとぎり草濁りそめたる湯檜曽川★★★
きちこうや雨後の浅間の雲寄せぬ★★★
花葛や一直線の湖の径★★★★
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

廣田洋一
振り向かず手を上げて去る茄子の馬★★★
送り火消しテレビに写る五山の火★★★
送り火やしんがりを行く長男よ★★★★
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

桑本栄太郎
おもい<鳥取へ盆帰省>
初秋の白兎海岸白き波★★★★
谷間に赤瓦屋根見ゆ盆帰省★★★
盆波や墓参の丘に入日見る★★★

川名ますみ
隣国の海苔の香散らす秋夕べ★★★
たのしさは秋の夕餉に載る土産★★★★
揚花火ビルの隙間の三角に★★★

8月15日(3名)

多田有花
夕映えが残暑の雲を照らしたり★★★
宵の風盆三日月に心地よく★★★
秋口の川に小舟が魚釣る★★★

小口泰與
爽やかな朝の厨の音聞こゆ★★★★
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

いずかたへ行くや落鮎定めなき★★★
今朝の利根いとど濁りて帰燕かな★★★

廣田洋一
亡き父のラーゲの記録終戦の日★★★
終戦日新聞閉じて黙祷す★★★★
見送りし兵士の笑顔終戦忌★★★

8月14日(3名)

小口泰與
瑕瑾無き葡萄や鴉声高き★★★
裂帛の空手の気合稲の殿★★★
巨大なる白雲立ちて野分晴★★★★

多田有花
新盆か路傍に白き百合供え★★★★
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

板金屋バーベキューする盆休み★★★
まだ雲の吹き上がりたる残暑かな★★★

廣田洋一
隣近所ワイン持ち寄り鰯焼く★★★
美しや鰯の群の流線形★★★
焼きたての鰯を配る夕餉かな★★★★

8月13日(3名)

小口泰與
湖へ差す朝日強きよ秋の風★★★★
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

三山の容讃えて秋うらら★★★
わらべ等の指差す彼方秋の虹★★★

多田有花
盆の沖御魂迎えしごと晴れる★★★★
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

虫の音の聞こえ初めにし夜となる★★★
校庭に人無く静か盆休み★★★

廣田洋一
足下に轟音届く秋の雷★★★
用水路水の溢れて秋の雷★★★★
秋の雷向こうのビルに落ちたるか★★★

8月12日(3名)

小口泰與
いまだなお湖の朝日や秋の風★★★
風に乗る霧の迅しや山下る★★★★
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

三山の容それぞれ秋うらら★★★

多田有花
盆近し車溢るる高速路★★★
遠方のナンバー増えし盆の入★★★
盆花をカートにレジに並びおり★★★★

廣田洋一
故郷の日々甦る走馬灯★★★★
年月の一瞬にすぎ走馬灯★★★
灯を点し仏と話す走馬灯★★★

8月11日(4名)

小口泰與
秋めくや魚の斑ぐいと反転す★★★
初秋や旧家の庭の草の丈★★★
あけぼのの野川の流れ秋めけり★★★★

多田有花
赤とんぼ夕陽あたれば金色に★★★★
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

新涼や希少なチケット手に入れる★★★
秋口の部屋に野鳥が迷い込む★★★

廣田洋一
花カンナそれぞれ色を自己主張★★★
老ひてなほ高き目標花カンナ★★★★
しつこしと思ふこと有りカンナの緋★★★

桑本栄太郎
山すその音に目覚むや威し銃★★★★
故郷へ帰省の句であろう。山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

滞在のくすり数えり盆用意★★★
京なれや竹林よしと法師蝉★★★

■8月月例ネット句会/入賞発表


■2018年8月月例ネット句会■
■入賞発表/2018年8月13日

【金賞】
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
「海をひき寄せて」が圧倒的だ。海岸線を走る列車の窓に、大暑の海が引き寄せられる。暑さの中の涼しい海。作者の存在感が強い。(高橋正子)

【銀賞/2句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子は泉州の名産。柔らかで瑞々しい水茄子は、漬け上がりの色も美しい。硝子の皿に盛られ、食卓を涼やかにしている。(高橋正子)

32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
月影の露天風呂。月夜の露天風呂の静けさ。そこをあえて乱して入るのだ。「乱して」がいい。(高橋正子)

【銅賞/3句】
02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
稲の花は、白くちらちらとして、儚げである。それを「うすき白さ」といった。「香り立つ」が、稔りの秋を予感させる。(高橋正子)

08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花
さっぱりとくっきりとした句だ。いつも見る前の山に朝日が差した。立秋となって、朝日が爽やかなった。一日のことで変わる。(高橋正子)

33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
病窓から見えるものは空。今日の空は深々と青く、秋の空である。心境が思える句だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
水茄子だけでも、みずみずしく感じるが、更にガラスの皿の冷たさが伝わってくる。(髙橋句美子)

28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
列車窓大暑の海をひき寄せて海岸線を走る列車の窓いっぱいに7月23日頃の赤々とした夏の暑さの頂上にある太陽をひき寄せている、真夏の景が素晴らしいですね。(小口泰與)

32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
旅先のくつろぎのひとときでしょうか。 空の月と地の湯。そこはかとない旅情を感じます。(河野啓一)

33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一
立秋の日。病院の窓から見上げた空は良く晴れ上がり、秋の到来を告げていた。快癒に向かう気配も感じられ心軽やかな気分にさせてくる青空だった。 (古田敬二)

35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ/高橋正子
咲いたばかりの清楚な蓮の花が仄かに香り、薄緑の茎とともに風に吹かれている水辺。一陣の涼風が心身を吹き抜けるようです。(柳原美知子)

02.香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花 

【高橋正子特選/7句】
24.新涼と思えば故郷山と川/古田敬二
暑さの中にふと涼しさが混じり始めるころです。季節の変化を受けて、幼い頃に駆け回られた山や川の情景が浮かんできます。 (多田有花)

08.立秋の朝日が差しぬ前山に/多田有花 
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
20.夏休み目の中輝く小学生/高橋成哉
28.列車窓大暑の海をひき寄せて/柳原美知子
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一
33.病窓の青深々と秋の空/廣田洋一

【入選/15句】
01.祈る事数多ありたる八月に/桑本栄太郎
8月は、原爆忌、お盆、日航機墜落忌と冥福を祈る日が多い。その事を、数多ありたる、と簡潔に詠んだのが上手い。 (廣田洋一)
同感です。広島と長崎の原爆忌、今日は日航機墜落事故から33年。お盆に終戦記念日、偶然とはいえ、慰霊と鎮魂の月です。(多田有花)

15.秋立ちて幼子庭を二歩三歩/河野啓一
今年は連日全国的な猛暑日が続き、熱中症の危険より命を守る為、不要不急の外出は避けてるよう言われて殆どの老人子供達は家で過ごす事が多かったようである。そのような状況下、立秋を迎え急激に涼しくなり、幼子も戸外を歩き始めました。猛暑の間でも成長を続ける命があり、涼しくなった喜びも溢れている。 (桑本栄太郎)

17.畑より前籠に西瓜押してくる/祝 恵子
畑から取りたての西瓜を自転車の前籠に入れ、傷つけないように汗をかきながらゆっくりと押して持ってきてくれた友。瑞々しい西瓜の輝きと温かい絆に、元気をいただきます。 (柳原美知子)

22.供花ならむ右手に鬼灯左杖/古田敬二
情景が見えてきます。傍にはお孫さんがご一緒かも。(祝恵子)

04.一瞬の黙や花火の打ち上がり/小口泰與
夏祭りにつき物の華やかな大輪の打ち上げ花火。その中に一瞬の黙を聞かれたところが素敵です。 (多田有花)

05.とんぼうや乱れて薄き山の雲/小口泰與
蜻蛉の飛ぶ空となり、山の雲にも秋の到来が実感されます。しんとした山の空気まで感じられるようです。(柳原美知子)

18.立秋や島へと土産大空へ/祝 恵子
ご主人がたしか離島のご出身とうかがっています。その島へお土産をたくさん持って帰郷されるところ。飛行機が離陸した瞬間を詠まれていますね。 (多田有花)

37.交差点浴衣の人人すれ違う/髙橋句美子
夏祭り、夜店など浴衣の人々がすれ違う交差点は、非日常の華やいだ雰囲気です。ひとときの日本の夏の風物詩に心やすらぐ思いです。(柳原美知子)

03.長子とう吾に家なき草田男忌/桑本栄太郎
09.秋立つ日燕の姿探しけり/多田有花
10.不揃いの合奏鈴虫鳴き始め/高橋秀之
21.ビジネス街隙間に見える夏夜空/高橋成哉
30.五穀米炊いて仏に秋暑し/柳原美知子
31.秋立ちぬ靴音高く追ひ抜かれ/廣田洋一
39.夏晴れて紅茶を淹れる昼下がり/髙橋句美子

■選者詠/高橋信之
27.日が昇る妻が育てし帚木に
奥様が育てられた帚木、こんもりと生長した帚木に日が昇り、柔らかい緑に染まると、一日の始まりが喜びをもって感じられます。共に歩まれた日々が思われます。(柳原美知子)

25.日が昇る今日の始り帚木に
26.帚木をやさしく包む朝の陽よ

■選者詠/高橋正子
34.蓮は実に金魚ついっと泳ぎ出づ
35.蓮の花抽き出て風に吹かるるよ
36.寺の道青いちぢくの青匂い

■互選高点句
●最高点(5点/同点2句)
12.透き通る硝子の皿に水茄子漬け/高橋秀之
32.月影を乱して入れり露天風呂/廣田洋一

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。