■新年ネット句会入賞発表■


■2017年新年ネット句会■
■入賞発表/2017年1月2日

【金賞】
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/佃 康水
「渡船」がいい。「渡船」には、向こうの島と、こちらの岸との間に密着した生活がある。穏やかに晴れ、凪いだ湾を今年初めて渡る。宮島への初詣であろうか。晴れやかな気持ちが一句にみなぎっていて、手堅い句だ。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
ビルの谷間から見上げると、木には冬芽がついている。ビルの谷底にいる作者の視線は上へ。冬芽は小さいながら、自然のしたたかさと映る。(高橋正子)

★三山の山容違う初御空/小口泰與
作者のいうのは、上州の上毛三山、つまり、赤城山・榛名山・妙義山であろう。日々眺める三山であるが、それぞれに山容が違って、初御空に泰然と座っている。三山もそれぞれに正月を迎えた。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★松ぼっくり足してリースの注連飾り/柳原美知子
注連飾りも、最近はリースの形をとったものが多く見られる。注連飾り松ぼっくりを加えた。現代的な注連飾りで新しい時代が来るようだ。(高橋正子)

★瞬いてその座占めたり冬オリオン/古田敬二
オリオン座は、星座のなかでも、すぐに目に入る。かなたの記憶の中にも、オリオン座は瞬いている。今も、その座は確かで、瞬きはかわらない。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★発声の婿に合わせて屠蘇祝う/佃 康水
正月は家族が出来るだけ一同に集まり、新年の健康と幸せを祈って屠蘇を酌み、祝うものである。今では少なくなりつつある正月の、仕来りと賑わいが想われる一句です。 (桑本栄太郎)

★生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に/河野啓一
大阪から見る生駒山は東に位置するので、日の出は生駒を超えて上がってきます。普段は意識せずにみている光景でも、初日の出となれば、それはまた格別です。(高橋秀之)

★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/ 佃 康水
★三山の山容違う初御空/小口泰與
★松ぼっくり足してリースの注連飾り/柳原美知子
★石垣の裾に列あり初詣/高橋正子

【高橋正子特選/8句】
★初詣石段のぼれば五色幕/高橋句美子
お参りする神社を目指して石段を一歩ずつ登っていく。そして、神社にたどり着くと初詣の五色幕が広がる普段とは違う神社がそこにある。まさにお正月のひとこまという感じがします。 (高橋秀之)

★除夜の鐘湯浴みのうちに聞きにけり/桑本栄太郎
一年間の疲れを癒す大晦日の湯浴の最中、折りしも除夜の鐘が聞こえて来ました。様々な事を思い出しながらも新しい年に向けての抱負も浮かんで来たことでしょう。作者の健やかで穏やかな去年今年の暮らしぶりを見る様です。(佃 康水)

★見あぐれば冬芽と吾はビル谷間/祝恵子
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/ 佃 康水
★瞬いてその座占めたり冬オリオン/古田敬二
★三山の山容違う初御空/小口泰與
★初詣の空青あおとわが頭上に/高橋信之

【入選/6句】
★初日の出光とどけり妻を撮る/古田敬二
共に初日の出を拝す妻に清らかな光が当たり絶好のシャッターチャンスを得た。奥様を大切に思うお気持ちとともに新年を迎えられる喜びが感じられる美しい光景ですね。 (柳原美知子)

★初晴れや川の流れもきらきらと/廣田洋一
★初詣長き列なす天満宮/高橋秀之
★大年の空に雲浮き海青し/柳原美知子
★寒鯉の紅白鮮やか池の中/高橋句美子
★米寿という義兄へ元旦の挨拶/祝恵子

■選者詠/高橋信之
★初詣の空青あおとわが頭上に
初詣の空は晴れ、一年の幸福の予感が広がる。 (古田敬二)
元日の空は本当に青く澄み切っていた。それをわが頭上にと纏めた、良い句です。 (廣田洋一)

★元旦の空の青きその下を歩く
★元日のありがたきもの青き空

■選者詠/高橋正子
★初詣かやの木檜の木が聳え
榧(かや)の樹の寿命は1000年にも及ぶ貴重な存在とか。また檜に有っては宮殿建設用の最高の材になると言われています。神社仏閣にこれらの木々が聳え立っているとは心豊かな最高の初詣で有った事でしょう。 (佃 康水)

★石垣の裾に列あり初詣
★元日の晴れたる梢鵯が二羽

■互選高点句
●最高点(5点)
★四方晴れて湾穏やかや初渡船/佃 康水

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/高橋正子)
※コメントのない句にコメントをお願いします。

★寒鯉の紅白鮮やか池の中/高橋句美子
寒い時期には鯉は水底に潜んでいますが、池の水が澄み、紅白の鯉が色鮮やかに見えています。新年の目出度さを一層引き立てている御句です。(佃 康水)

★米寿という義兄へ元旦の挨拶/祝恵子
義兄様が今年米寿を迎えられ、年の初めに先ず義兄様にご挨拶をされました。ご家族への深い愛情と、作者の温かさが伝わって参ります。あめでとうございます。(佃 康水)

★生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に/河野啓一
大阪から見る生駒山は東に位置するので、日の出は生駒を超えて上がってきます。普段は意識せずにみている光景でも、初日の出となれば、それはまた格別です。(高橋秀之)

●新年ネット句会清記●


■新年ネット句会清記
2017年1月2日
12名36句

01.生駒山超え来て初日の東(ひんがし)に
02.四海波静かにあれと初日かな
03.初日透かし干し柿薄あかね
04.一炊の夢の果て居り年暮るる
05.除夜の鐘湯浴みのうちに聞きにけり
06.東雲の明かり寿ぐ初日かな
07.見あぐれば冬芽と吾はビル谷間
08.米寿という義兄へ元旦の挨拶
09.トランペット流れくる河原お正月
10.初写真毎年同じ場所で撮る

11.初詣長き列なす天満宮
12.正月の番組特に見るものもなく
13.四方晴れて湾穏やかや初渡船
14.今此処に来ている子らの賀状来る
15.発声の婿に合わせて屠蘇祝う
16.我は地にオリオン天に位置を決め
17.瞬いてその座占めたり冬オリオン
18.初日の出光とどけり妻を撮る
19.初晴れや川の流れもきらきたと
20.青空に紅梅咲きし初詣

21.ちらと見て若く見えしか初鏡
22.羽霧へ逆光差すや初御空
23.三山の山容違う初御空
24.露天湯の向こう側より御慶かな
25.大年の空に雲浮き海青し
26.松ぼっくり足してリースの注連飾り
27.梅の花の生麩浮かせて雑煮かな
28.新年の西日が当たり赤い木々
29.寒鯉の紅白鮮やか池の中
30.初詣石段のぼれば五色幕

31.初詣の空青あおとわが頭上に
32.元旦の空の青きその下を歩く
33.元日のありがたきもの青き空
34.初詣かやの木檜の木が聳え
35.石垣の裾に列あり初詣
36.元日の晴れたる梢鵯が二羽

※互選を開始してください。3句選をし、そのうちの一句にコメントをつけてください。

1月2日(月)

★木賊生う地より突き立つ濃き緑/高橋正子
山中の湿地に自生しているが観賞用に庭園などにも植えている。地下茎は力強く横に生え、地上茎は直立し、枝分かれせず70センチ位の高さで深緑の縦溝が新年の青空に力強く立っている素晴らしい景ですね。 (小口泰與)

○今日の俳句
大らかな雪の浅間の二日かな/小口泰與
よい天気続きの正月。二日も雪を冠った浅間山が大らかに坐っている。浅間山を「大らか」と捉えた度量がよい。(高橋正子)

●新年ネット句会
投句
初詣かやの木檜の木が聳え  正子
石垣の裾に列あり初詣    正子
元旦の晴れたる梢鵯が二羽  正子

入賞発表を終えたのは23時50分。今日は、これでパソコンを閉じて寝ることに。明日は、元家族と句美子夫婦が来る。それにあした、私は70歳になる。

今日のヒット料理は、市販のちらし寿司の素に、暮れにもらった鯛の短冊で作った鯛そぼろ、だて巻きの端の細かく切ったのを入れ、錦糸卵を飾ったちらし寿司。酢もきつさがとれ、結構おいしかった。

○水仙

[水仙/横浜日吉本町]

★水仙やホテル住ひに隣なく/久保田万太郎
★水仙やすでに東風吹く波がしら/水原秋櫻子
★あるだけ剪りあるだけ挿して水仙花/大橋敦子
★水仙や日本の詩の潔し/瀧春一
★水仙に昃り易さの日射なる/鈴鹿野風呂
★潮の香を海に返しぬ野水仙/稲畑汀子
★水仙や潮砕け散る烏帽子岩/朝妻力
★上げ潮や水仙のよく匂ふ街/今瀬剛一
★自画像の芙美子に会へり水仙花/神蔵器
★水仙や向き合ふ暮し取り戻す/井内佳代子

★向き合えば吾に水仙のみずみずし/高橋信之
水仙の花を「古鏡」といった俳人もいたが、向き合うことができる花である。向かうと、以外にもみずみずしい花である。(高橋正子)

★水仙の枯れし終わりを折りて捨つ/高橋正子
庭に咲いているのでしょうか、可憐な水仙花、でもいのちあるものには最後があるのです。ありがとうの気持ちでしょうか。(祝恵子)

★水仙の一花二花咲き正月へ/高橋正子

 スイセン属(スイセンぞく、学名:Narcissus)は、ヒガンバナ科(クロンキスト体系ではユリ科)の属のひとつ。この属にはラッパスイセンやニホンズイセンなど色や形の異なる種や品種が多くあるが、この属に含まれるものを総称してスイセンと呼んでいる。多年草で、冬から春にかけて白や黄の花を咲かせるものが多い。狭義には学名Narcissus tazettaや、その変種であるニホンズイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)をスイセンということも多い。
 原産地は主にスペイン、ポルトガルを中心に地中海沿岸地域、アフリカ北部まで広がり、原種は30種類ほど知られている。また、園芸用に品種改良されたものが広く栽培されている。日本においては、ニホンズイセンが古くに中国を経由して渡来したといわれている。分布は、本州以南の比較的暖かい海岸近くで野生化し、群生が見られる。越前海岸の群落が有名であり、福井県の県花ともなっている。

◇生活する花たち「アッサムチヤ・グランサム椿・からたちの実」(東京・小石川植物園)
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●自由な投句箱/1月1日~10日/2017年●


※当季雑詠3句(新年の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今週の秀句/1月1日~10日


[1月10日]

★寒禽の寄りて啄ばむ木の実かな/多田有花
山に木の実が少なるなる季節。身近にやってきた寒禽は、寄り集まって木の実を啄む。寒禽たちは生きる元気に満ちている。「寄りて啄む」が見どころ。(高橋正子)

[1月9日]

★冬草や水の落ち合う本支流/小口泰與
本流へ支流が流れ込むところの「冬草」の存在感がいい。その季節感がいい。「俳句」が作者の生活にうまく取り込まれているのだ。(高橋信之)

[1月8日]

★飾納いつもの家に戻りけり/廣田洋一
結局、「いつもの家」が落ち着く。華やいで迎えた新年も、寒中となり、寒さを享受することに。「いつも」や「普段」のありがたさ。(高橋正子)

★背に日差し庫裏でいただく煮大根/多田有花
よく見かける冬の生活風景だが、季節感のある、いい句だ。下五の「煮大根」がいいのだ。(高橋信之)

[1月7日]

★少年の自我の目覚めや水仙花/谷口博望(満天星)
下五に置いた「水仙花」が季語であり、一句の季題となった。いい句だ。作者の日頃の精進の結果である。私の推薦句であり、私の好きな句である。(高橋信之)

[1月6日]

★ほつほつと蠟梅開く日本晴/谷口博望(満天星)
日本晴れの真っ青な空に蝋梅の黄色が澄んで、明るい年となったのがうれしい。晴れやかな心持にさせてくる句だ。(高橋正子)

1月5日(2名)

★初春の霞が隠す城下町/多田有花
城下の霞。いい風景だ。私が育った城下町伊予大洲の霞と霧を懐かしく思い出す。(高橋信之)

★酉年の鈴の音清き破魔矢かな/谷口博望(満天星)
破魔矢の鈴音に「酉年」の実感があるのだ。その実感が俳句と成る。(高橋信之)

1月4日(2名)

★みな揃うことこそ良けれ初写真/多田有花
みな揃うことは、誰もが「良けれ」と思うのだが、それでも「良けれ」という。読めば、それでも、「良けれ」と思う。いい句だ。(高橋信之)

★仕事始新入社員加わりぬ/廣田洋一
「仕事始」に加わった「新入社員」の新鮮な姿には、誰もが快い思いを抱く。新年のうれしい風景だ。(高橋信之)

1月3日(1名)

★髭剃りの一仕事有り初鏡/廣田洋一
身近な生活感が下五の季題「初鏡」とうまく合って、いい句となった。作者の姿がありありと浮かんで、個性がある佳句だ。(高橋信之)

1月2日(3名)

★青空に雲もなかりき今朝の春/小口泰與
よく見掛ける風景だが、下五の「今朝の春」がいい。季節感がいいのだ。(高橋信之)

★元旦の青空背負う竜馬像/多田有花
高知桂浜の、昔尋ねたことがある風景。和服姿に懐手,ブーツ姿の龍馬は,はるか太平洋の彼方を見つめていた。(高橋信之)

★亡き妻の誕生日とて初墓参/廣田洋一
「初墓参」の「初」が効いた。いい句だ。「亡き妻」であるが、湿ったところを感じさせない。。(高橋信之)

1月1日(1名)

★初明り妻のエプロン真新し/小口泰與
初明かりに輝いて、真新しいエプロンに妻の新年が始まる。今年もまた、かいがいしく働いてくれる妻への感謝に、エプロンが眩しい。(高橋正子)

1月1日~10日


1月10日(5名)

●小口泰與
ラクビーの球の行方や利根河原★★★★
冬落暉昌昌として山に落つ★★★
夕暮の書肆に駆け込む時雨かな★★★

●多田有花
正月の小雨の中を宅配夫★★★
寒禽の寄りて啄ばむ木の実かな★★★★
山に木の実が少なるなる季節。身近にやってきた寒禽は、寄り集まって木の実を啄む。寒禽たちは生きる元気に満ちている。「寄りて啄む」が見どころ。(高橋正子)

鳥避けの袋をかぶり実南天★★★

●廣田洋一
成人の日昼間のプール独り占め★★★
成人式茶色のショール目立ちたる★★★
成人の日晴着溢れる改札口★★★★

●桑本栄太郎
鬼の手のような並木や寒の闇★★★
ワイパーの頻りに擦る寒の雨★★★★
宝恵籠(ほいかご)や新町芸者の粋どころ★★★

●谷口博望(満天星)
枯紅葉花鶏(あとり)しばらく遠眼鏡★★★★
花鶏(あとり)群る花の咲きたる枯紅葉★★★
一斉に飛翔の花鶏(あとり)枯紅葉★★★

1月9日(4名)

●多田有花
蝋梅の匂いし枝を松に添え★★★
わが頭上枝差し渡し寒の梅★★★★
寒ぬくし毛布一枚除き寝る★★★

●廣田洋一
展覧の初場所淡々と進めり★★★
初場所や白鵬強さ新たにす★★★
初場所や初三役を応援す★★★★

●小口泰與
冬草や水の落ち合う本支流★★★★
本流へ支流が流れ込むところの「冬草」の存在感がいい。その季節感がいい。「俳句」が作者の生活にうまく取り込まれているのだ。(高橋信之)

寒暁の噴煙南へ流れけり★★★
早梅や日の落つ山の雲一朶★★★

●桑本栄太郎
寒風や幟はためくコンビニ店★★★
もどかしく裾押さえ居り成人日★★★
寒雷や灘の闇なる伯耆国★★★★

1月8日(5名)

●満天星
原爆の古傷露は枯梧桐★★★★
原爆に耐えて幾年枯梧桐★★★
枯梧桐被爆に耐えて子とともに★★★

●多田有花
紅梅の咲くよき日和松の内★★★
背に日差し庫裏でいただく煮大根★★★★
よく見かける冬の生活風景だが、季節感のある、いい句だ。下五の「煮大根」がいいのだ。(高橋信之)

初買の腹筋ローラー転がしぬ★★★

●小口泰與
薺粥昨日のままの夫婦仲★★★★
帰り来て乾布摩擦や薺粥★★★
料亭の食事を食むや万年青の実★★★

●廣田洋一
特賞をあげて終わりぬ初句会★★★
飾納いつもの家に戻りけり★★★★
結局、「いつもの家」が落ち着く。華やいで迎えた新年も、寒中となり、寒さを享受することに。「いつも」や「普段」のありがたさ。(高橋正子)

晴天の続きし日々や鳥総松★★★

●桑本栄太郎
鴨川の桜冬芽や堰の水★★★★
南座の大屋根光る寒の空★★★
着ぶくれの重き飛翔やすずめどち★★★

1月7日(5名)

●小口泰與
蝋梅や榛名吹雪て里は風★★★★
夕映えの山や焚火のおごるなり★★★
夢に見し胸の奥処や帰り花★★★

●多田有花
小豆一升鏡開きの善哉に★★★
門松の上を走りし鳥の影★★★★
寒の梅ぽつりぽつりと咲き初めし★★★

●満天星
水仙や昼月ほのと日本晴★★★
水仙花モンローウォーク懐しく★★★
少年の自我の目覚めや水仙花★★★★
下五に置いた「水仙花」が季語であり、一句の季題となった。いい句だ。作者の日頃の精進の結果である。私の推薦句であり、私の好きな句である。(高橋信之)

●廣田洋一
七草や一つづつ洗ひ刻みたり★★★★
朝まだき七草粥に火を点ける★★★
七草や朝帰りの子に提供す★★★

●桑本栄太郎
チチカカと尾灯点滅寒に入る★★★
手に取ればまだぬくもりや寒卵★★★
七草のひとつ大根葉の粥に★★★★

1月6日(5名)

●小口泰與
空風や猫の欠伸の猫ちぐら★★★
木枯や梢(うれ)をついばむ雀五羽★★★
二羽翔ちて三羽翔けくる枯木かな★★★★

●廣田洋一
黄色き花をつけたり冬の草★★★
休耕の畑に萌ゆる冬の草★★★★
川べりに点々と萌ゆ冬の草★★★

●多田有花
干支の絵馬買い求めたる初詣★★★
靴紐を結ぶ小寒の朝★★★
頂に今日は風あり寒の入★★★★

●桑本栄太郎
裏白の乾び来たりし馬日かな★★★★
ドッヂボールの子等中庭や寒風に★★★
冬日さす緋色垂るるやピラカンサ★★★

●谷口博望(満天星)
ほつほつと蠟梅開く日本晴★★★★
日本晴れの真っ青な空に蝋梅の黄色が澄んで、明るい年となったのがうれしい。晴れやかな心持にさせてくる句だ。(高橋正子)

寒の入日本晴れなる昼の月★★★
緋鳥鴨ピューイと鳴いて五羽が行く★★★

1月5日(4名)

●多田有花
金星と月の寄り添う二日かな★★★
初詣客の行き交う山路かな★★★
初春の霞が隠す城下町★★★★
城下の霞。いい風景だ。私が育った城下町伊予大洲の霞と霧を懐かしく思い出す。(高橋信之)

●小口泰與
すざまじき音や霰のとたん屋根★★★
湯豆腐や山懐の風の音★★★
三山の山容異なる氷柱かな★★★★

●満天星
直筆の添書嬉し年賀状★★★ 
狛犬の頭を撫でて初詣★★★
酉年の鈴の音清き破魔矢かな★★★★
破魔矢の鈴音に「酉年」の実感があるのだ。その実感が俳句と成る。(高橋信之)

●桑本栄太郎
枯芝を歩む足裏やふうはりと★★★
こつ然と鳰かづきたる静寂かな★★★
うす暗き藪の風聞き笹子鳴く★★★★

1月4日(4名)

●多田有花
みな揃うことこそ良けれ初写真★★★★
みな揃うことは、誰もが「良けれ」と思うのだが、それでも「良けれ」という。読めば、それでも、「良けれ」と思う。いい句だ。(高橋信之)

新年の瀬戸大橋の灯を見上ぐ★★★
頂にたたずみ初東風を受ける★★★

●小口泰與
四日はや次次客の列をなし★★★
白足袋や呉須手の椀を眼間に★★★
朝日差す浅間の白や花八つ手★★★★

●廣田洋一
仕事始新入社員加わりぬ★★★★
「仕事始」に加わった「新入社員」の新鮮な姿には、誰もが快い思いを抱く。新年のうれしい風景だ。(高橋信之)

捨畑を青く覆へり冬の草★★★
日溜りの光散らせる冬の草★★★

●桑本栄太郎
四日早や句材を求め外に出る★★★
山茶花の一枝折りゆく媼かな★★★
濃き紅の枝先空へ淑気満つ★★★★

1月3日(4名)

●多田有花
元朝や誰の胸にも志★★★
路面電車新春の街をゆく★★★
初晴の水平線を望みけり★★★★

●小口泰與
眼間の長き裾野の淑気かな★★★★
露天湯を出でし広間の淑気かな★★★
愛犬に作りし服やお正月★★★

●廣田洋一
髭剃りの一仕事有り初鏡★★★★
身近な生活感が下五の季題「初鏡」とうまく合って、いい句となった。作者の姿がありありと浮かんで、個性がある佳句だ。(高橋信之)

顔のシミ広がりをらず初鏡★★★
初鏡一筆入れて別人に★★★

●桑本栄太郎
青木の実斑入りの赤の淑気かな★★★★
寝積や布団カバーの崩れ居り★★★
三日早や籠に溢れし濯ぎもの★★★

1月2日(5名)

●川名ますみ
初富士の近しと云いまた遠しとも★★★★
六つ目のピンを挿し切り初暦★★★
押しピンに傾きし癖初暦★★★

●小口泰與
青空に雲もなかりき今朝の春★★★★
よく見掛ける風景だが、下五の「今朝の春」がいい。季節感がいいのだ。(高橋信之)

旧冬の畑へ忘れし猫車★★★
娘らを駅へ迎えやおらが春★★★

●多田有花
白味噌のあん餅雑煮をいただきぬ★★★
初春の波おだやかに桂浜★★★
元旦の青空背負う竜馬像★★★★
高知桂浜の、昔尋ねたことがある風景。和服姿に懐手,ブーツ姿の龍馬は,はるか太平洋の彼方を見つめていた。(高橋信之)

●廣田洋一
亡き妻の誕生日とて初墓参★★★★
「初墓参」の「初」が効いた。いい句だ。「亡き妻」であるが、湿ったところを感じさせない。。(高橋信之)

白き雲ふわふわ浮かび二日かな★★★
寝転びて富士山望む初湯かな★★★

●桑本栄太郎
早梅の道のすがらや教会に★★★★
会堂の賛美歌充てる淑気かな★★★
たおやかな着物姿や初詣★★★

1月1日(4名)

●廣田洋一
見渡せば青青々と初御空★★★★
初富士に切り取られたる青き空★★★
青空に紅梅咲きし初詣★★★

●小口泰與
日の昇り白極まるや初浅間★★★
初浅間噴煙すくと垂直に★★★
初明り妻のエプロン真新し★★★★
初明かりに輝いて、真新しいエプロンに妻の新年が始まる。今年もまた、かいがいしく働いてくれる妻への感謝に、エプロンが眩しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
東雲の仄と茜や初明かり★★★
スマホ手に走る少女や元日に★★★★
元日の特急電車や女子運転★★★

●川名ますみ
初富士の近しと云いまた遠しとも★★★★
六つ目のピンを挿し切り初暦★★★
押しピンに傾きし癖初暦★★★