11月12日(土)

★水菜洗う長い時間を水流し  正子
関西では嘗ては鯨のはりはり鍋に使用され、最近では鍋物の野菜全般に使用され、良く食べています。又最近では、柔らかくて美味しいサラダの生食用に栽培された水菜が出回っております。長い時間水を流しながらの野菜洗いは、如何にも新鮮で美味しそうです。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
青空のあおに木魂す鵙の声/桑本栄太郎
「キチキチキチ」と鋭い鵙が声がするが、その正体はどこかと思うことがある。青空のあおに抜けて行く声であるが、よく聞けば「木魂」している。その声がはね返って、また耳に入るような。(高橋正子)

○八つ手の花

[八つ手の花/横浜市下田町・松の川緑道]  [八つ手の花/横浜日吉本町]

★花八つ手鶏下へ潜り入る/高橋正子
★裏庭を掃きて清まる花八つ手/高橋正子

 八つ手は、手をぱっと開いたような形をして、新しい葉はつやつやとして、梅雨どきには、蝸牛を乗せたり、雨だれを受けたりする。夏が過ぎ秋が来て冬至のころになると、球状に花火が弾けたような白い花を咲かせる。八つ手の花を見ると、冬が来たと思うのだ。瀬戸内の温暖な気候のなかで長く暮らした私は確かに冬が来たと感じてしまうのだ。
 高村光太郎の詩に「冬が来た」がある。厳しくきりもみするような冬だ。そんな冬は、八つ手の花が消えたとき来る。冬をどう感じとるかが、その人の力そのものであるような気がする。

「冬が来た」
      高村光太郎

きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒(ほうき)になった
 
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
 
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
 
しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た

◇生活する花たち「秋ばら・山茶花・楓紅葉」(東京調布・神代植物園)

●自由な投句箱/11月11日~20日●


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今週の秀句/11月11日~20日


[11月20日]

★恩師より筆のたよりや石蕗日和/谷口博望 (満天星)
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

[11月19日]

★通院の迎え紅葉の光から/川名ますみ
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

[11月18日]

★紅葉の光集めて落ちる滝/廣田洋一
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

[11月17日]

★冬菊の門辺にありぬ日差しかな/桑本栄太郎
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

[11月16日]

★軒深き母屋に白し懸大根/桑本栄太郎
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

[11月15日]

★南座にまねき上がりてしぐれ来る/桑本栄太郎
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

[11月14日]

★山茶花や花弁ごとに光りおり/廣田洋一
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

[11月13日]

★ずいと引き抜く大根の手ごたえ/多田有花
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

[11月12日]

★ランドセル赤城颪に抗しけり/小口泰與
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

[11月11日]

★冬の星歩むにつれてまた一つ/廣田洋一
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

11月11日~20日


11月20日(5名)

●谷口博望 (満天星)
恩師より筆のたよりや石蕗日和★★★★
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

ヒドリガモ寄り添いながら被爆川★★★
スキップのトイプードルや落葉道★★★

●小口泰與
笹鳴やかくも白樺並びける★★★★
一羽翔ち一斉に去る寒雀★★★
露天湯に手足伸ばせし四温かな★★★

●廣田洋一
吐く息の靄に溶け入る冬の朝★★★
冬の靄遠き街灯朧なり★★★
隣近所箒てんでに落葉掻く★★★★

●河野啓一
とき知らず浜木綿の実を結びたる秋の暮
浜木綿の実を結びたる秋の暮★★★★(正子添削)

留守居の娘のやさしさよ冬の昼下がり★★★
門に立つ見渡す坂の真っ赤な紅葉★★★

●桑本栄太郎
冬暁のビルに朝日や大阪駅★★★★
冬天のアベノハルカス靄の中★★★
<神戸六甲アイランド埠頭>
海光の揺らぎ寄せ居り冬の凪★★★

11月19日(5名)

●廣田洋一
冬日和ひたすら青き空仰ぐ★★★
水鳥の親子連れ立つ冬日和★★★
「水鳥」は冬の季語です。季重なりです。

寒晴れや心浮きたつ散歩道★★★★

●小口泰與
落葉松の枯葉時雨や鳥の声★★★★
木枯しやかくも短き落暉なり★★★
「短き落暉」の「短き」に無理があります。

峠越ゆ忽と赤城山(アカギ)と空っ風★★★

●桑本栄太郎
暁闇に点す灯りやかにかく忌★★★
小雨降り更に色濃き落葉かな★★★★
敷き積める庭の明るき夕しぐれ★★★

●谷口博望 (満天星)
兄よりの柿の絵手紙土佐遠く★★★★
桐の木はオブジェとなりぬ小六月★★★
黒々と烏群れ飛ぶ冬夕焼け★★★

●川名ますみ
通院の迎え紅葉の光から★★★★
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

青天の桜紅葉を指し出発★★★
少しずつ桜紅葉の降る家路★★★

11月18日(4名)

●小口泰與
きらきらと落葉降りけり隠沼へ★★★
黒雲の下に忽然冬浅間★★★★
アイロンを掛けたる湖や冬紅葉★★★

●河野啓一
口惜しや立ち上がれずにに窓の柿★★★
大西日瀬戸内より淀の葦へ★★★★
車いす枯野を抜けて散歩道★★★

●廣田洋一
洞窟をくぐりて光る冬の滝★★★
紅葉の光集めて落ちる滝★★★★
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

冬の夜電飾囲む千枚田★★★

●桑本栄太郎
葉の残る桜冬芽の並木かな★★★★
一ト風に木の実しぐれとなりにけり★★★
かさこそと思索つづくや落葉道★★★

11月17日(3名)

●小口泰與
雨粒のはねし水面や冬紅葉★★★★
草むらをすっぽり包む落葉かな★★★
お絞りにほっこり顔やおでん鍋★★★

●廣田洋一
蜘蛛の巣に搦めとられし落葉かな★★★★
木道へ覆いかぶさる紅葉かな★★★
山々の頂少し紅葉せり★★★

●桑本栄太郎
白き実の南京櫨や冬紅葉★★★
冬蝶の日向ばかりを彷徨える★★★

冬菊の門辺にありぬ日差しかな★★★★
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

11月16日(6名)

●小口泰與
天明の浅間の巌や虎落笛★★★★
枯芒靄いちめんの佐久平★★★
佐久平靄より忽と冬田かな★★★

●廣田洋一
大根の青首だけを買いにけり★★★★
大根の葉雨に打たれて広がりぬ★★★
直売所葉付大根すぐに売れ★★★

●多田有花
初冬や今夜はほぼスーパームーン★★★
十一月暖かき夜のテニスコート★★★
冬紅葉の下を通勤の車★★★★

●古田敬二
全天晴れ信濃の立冬陽のさんさん★★★★
立冬の甲斐駒ケ岳の尖りかな★★★
立冬の矢作川源流水早し★★★

●桑本栄太郎
色づきて橙垂るる土塀かな★★★
軒深き母屋に白し懸大根★★★★
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

ダルマストーブ二年B組のあの日かな★★★

●河野啓一
冬紅葉はんなりとして暖かき★★★
冬将軍一つ残れる柿を愛で★★★
丹波より熊はもう見た二度三度★★★★

11月15日(4名)

●小口泰與
カトレアや日の温みある檜塀★★★★
風どっとビルの谷間へおでん鍋★★★
寒犬の歩みを止めぬ杣の道★★★

●河野啓一
冬帝や旬日は迅く来れるや★★★★
冬艇に子支払われて起きられず★★★
行楽の道行く二人翁とおうな★★★

●廣田洋一
冬昴星の間の闇深し★★★★
ファインダーに青く光れる冬昴★★★
目をこらしも一つ探す冬昴★★★

●桑本栄太郎
鴨川の岸にカップル冬紅葉★★★
南座にまねき上がりてしぐれ来る★★★★
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

鴨川の風に乗り居りゆりかもめ★★★

11月14日(3名)

●小口泰與
川沿いのランプの宿や冬の雨★★★
とたん屋根リズム奏づや夕霰★★★
朝日差す霜のあぜ道鳥の声★★★★

●廣田洋一
地下街に聖樹飾る十一月★★★
山茶花や花弁ごとに光りおり★★★★
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

山茶花の風雪に耐へ赤く咲く★★★

●桑本栄太郎
冬空にブルーシートの遺跡かな★★★★
サントリー山崎の峰しぐれ来る★★★
見晴るかす遥か生駒や冬の霧★★★

11月13日(5名)

●小口泰與
夕闇の赤城颪に家吼ゆる★★★
電柱の鳶の吹かるる北颪★★★
二重窓閉めたる後の虎落笛★★★★

●多田有花
仕事より戻る冬陽を正面に★★★
冬の柿採れば撓みの戻りけり★★★

ずいと引き抜く大根の手ごたえ★★★★
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

●廣田洋一
冬うらら義妹の供養なな七日★★★★
裾からげ走り回れる七五三★★★
千歳飴三つに折りし幼き日★★★

●桑本栄太郎
突風の木の葉しぐれとなりにけり★★★
もとの木の近くて遠き落葉かな★★★★
日照雨(そばえ)降る梢の綺羅や冬日燦★★★

●谷口博望(満天星)
公民館まつり
踊り子の笑顔に見とれ秋まつり★★★
踊り子の流るる肢体秋まつり★★★
染み入るる詩吟の声や秋まつり★★★

11月12日(5名)

●小口泰與
草原の光の川や冬の雲★★★
あけぼのの凍雲むくと受く光★★★

ランドセル赤城颪に抗しけり★★★★
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

●谷口博望 (満天星)
書斎の烏瓜
プツプツと書斎に吊るす烏瓜★★★
許せよと命奪いし烏瓜★★★★
十字架のキリストのごと烏瓜★★★

●桑本栄太郎
チャイム鳴り校門桜の落葉かな★★★★
時雨るるや更に色濃き庭の木々★★★
見上げれば緋色透きおり冬紅葉★★★

●廣田洋一
ゆりかもめ白き線引く青き空★★★
黄ばみたる蓮の向こうに桜紅葉★★★★
ヒマラヤ杉菰を巻き付け冬構★★★

河野啓一
晩秋のうす雲流れ行くデイの朝顔★★★
小春日の空にさざめく庭雀★★★
山路行く小春の空の鳥の影★★★★

11月11日(4名)

●小口泰與
鉄橋の汽笛いくたび日向ぼこ★★★★
小春日や十七文字と格闘す★★★
遠山の雲影さだか冬の朝★★★

●廣田洋一
冬の星歩むにつれてまた一つ★★★★
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

孫なくて晴れ着まぶしき七五三★★★
ご両家の三代揃ふ七五三★★★

●川名ますみ
月の道楽器学びしその先に★★★★
音楽を続ける人へ冬の月★★★
冬紅葉桜並木の色さまざま★★★

●桑本栄太郎
冬めいて舗道濡れおり雨の跡★★★
美味しそうな山茱萸の色となりにけり★★★★
小春日の木洩れ日うれし散歩かな★★★