10月12日(水)

★りんどうに日矢が斜めに差し来たり  正子
お日さまがりんどうに当たりだし、濃青色の花を周囲に見せてくれだしました。(祝恵子)

○今日の俳句
秋夕焼け飛行機雲も包まれて/祝恵子
夕焼けの中に延びる飛行機雲。その飛行機雲までも夕焼けにすっぽり包まれて茜色に染まっている。秋夕焼けに染まる空を見れば、温かい思いになる。(高橋正子)

○柚子(ゆず)

[本柚子/横浜・四季の森公園]            [鬼柚子/横浜日吉本町]

★子籠の柚の葉にのりし匂ひ哉 其角
★柚の色に心もとりぬ魚の店 多代女
★精進日や厨きよらに柚の匂ひ 梧堂
★荒壁や柚子に梯子す武者屋敷/正岡子規
★鬼柚子をもらひそこねし手ぶらかな/川崎展宏
★柚子打の出てゐる愛宕日和かな/長谷川櫂
★柚子ジャムの煮ゆる日風の窓打つ日/川上久美
★青柚子の香りの中の夕餉かな/加藤みき
★柚子黄なり峡に朝日の射しわたり/阿部ひろし

 柚子の果汁を薄めて飲むジュースが流行った。高知発のものらしく、我が家でも高知から送られてきたことがある。デパートでも試飲を勧められた。お盆のお客と、開け広げた夏座敷で氷を入れて飲むのも映画のシーンのようでいいものだろうと、想像した。レモンに比べると、絶対、日本の香り、日本の味であると思う。日本料理には、欠かせない。愛媛の砥部焼の町の山里に、峠の途中から脇道に逸れ、別の谷に入るところがある。ちょっとしたレンガの隧道があって、すすきの穂を掻き分けてゆくと、柚子の熟れる谷がある。民家は一軒もなく、ただ柚子が熟れているだけの谷。昔話の時代に戻ったような錯覚が起きる谷だ。谷間にはあたたかい日差しが溜まる。曇れば、柚子の黄色がさびしい色あいになる。柚子の木は、田舎にゆけば家庭の庭に植えられている。夕飯の支度をしながら、必要ならばもいでくる。柚子の香りに、また果汁に、主婦は料理の腕前が少し上がったような気になるのだ。

★俎板に切り置く柚子の黄のかけら/高橋正子

 ユズ(柚子、学名:Citrus junos)は、ミカン科の常緑小高木。柑橘類の1つ。ホンユズとも呼ばれ、果実は比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。果実が小形で早熟性のハナユズ(ハナユ、一才ユズ、Citrus hanayu)とは別種である。日本では両方をユズと言い、混同している場合が多い。タネの多いものが多い。また獅子柚子(鬼柚子)は果実の形状からユズの仲間として扱われることがあるが分類上はザボンや文旦の仲間であり別品種である。
 消費・生産ともに日本が最大である。柑橘類の中では耐寒性が強く、極東でも自生出来る数少ない種である。酸味は強く香りもある。日本では東北以南で広く栽培されている常緑小高木である。花言葉は”健康美”と言われる。また、柑橘類に多いそうか病、かいよう病への耐久があるためほとんど消毒の必要がなく、他の柑橘類より手が掛からない事、無農薬栽培が比較的簡単にできる事も特徴のひとつである。なお、収穫時にその実をすべて収穫しないカキノキの「木守柿」の風習と同様に、ユズにも「木守柚」という風習がある地方もある。成長が遅いことでも知られ、「ユズの大馬鹿18年」などと呼ばれることがある。このため、栽培に当たっては種から育てる実生栽培では結実まで10数年掛かってしまうため、結実までの期間を短縮する為、カラタチに接木することにより数年で収穫可能にすることが多い。
 本ユズは、中華人民共和国中央および西域、揚子江上流の原産であると言われる。日本への伝播については直接ないし朝鮮半島を経由してきたと言われるが、どちらであるかは定かではない。日本の歴史書に飛鳥時代・奈良時代に栽培していたという記載があるのみである。花ユズは日本原産とも言われるが、詳しいことは判らない。柚子の語源は中国語の「柚(you)」である。しかしながら、現代中国語ではこの言葉は「文旦」を指してしまう。現在は「香橙(xi?ngcheng)」が柚子を指す言葉であり、なぜその語彙が変化したのかは不明である。日本で「柚」が「柚子」になったのは、古来の食酢としての利用によるところが大きいといわれる。「柚酢」が「柚子」になったと言われているが、確かなことは不明である。韓国語でも漢字表記をする場合は「柚子(yuja)」と書くが、その語源については正確な記録が一切無いため全くの不明である。
 日本国内産地としては、京都市右京区の水尾、高知県馬路村や北川村など高知県東部地方の山間部が有名である他、山梨県富士川町や栃木県茂木町、最も古い産地の埼玉県毛呂山町等、全国各地に産地がある。海外では、韓国最南部の済州島や全羅南道高興郡など、中華人民共和国の一部地域で栽培されている。

◇生活する花たち「いぬたで・金木犀・やぶまめの花」(四季の森公園)

●自由な投句箱/10月11日~20日●


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今週の秀句/10月11日~20日


[10月20日]

★日の温み残る冬瓜胸に受く/佃 康水
畑から採ってきたばかりであろう。大きな冬瓜をいただいた。その大きさに、胸で抱くように受け取ると、生ぬるい日の温みが残っている。「胸に受く」に、季節がより強く、また作者の人柄の暖かさが感じられる。(高橋正子)

[10月19日]

★秋耕を終えし畑や静まれり/廣田洋一
歳時記では、「秋耕」は、稲を刈ったあと鋤き起こしたり、裏作の麦や菜種を播くために耕すことをいう。澄んだ大気のもとに、耕された畑は、土の色も息遣いもしずかである。次の農作業を待って「静まれり」である。(高橋正子)

[10月18日]

★露寒し陸奥の旅寝の目覚めかな/古田敬二
ご自宅のある名古屋から陸奥への旅。旅に目覚めて、朝露に寒さを覚える。みちのくの秋は冬へと足早に進む。その実感。(高橋正子)

[10月17日]

★水鳥や狭き川辺に巣を構え/廣田洋一
偶然に、水鳥が狭い川辺に巣を構えているのを見つけた驚きと水鳥への愛おしさ。思いもかけないところで、命あるものは次の命を育て、命をつないでいる。(高橋正子)

[10月16日]

★水切りの敢無く没し水澄めり/小口泰與
水切り(みずきり)は水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる 遊び。昔は、水切りも上手だったであろうが、体がぎこちなくなっているのだろう、投げた石が敢え無く沈み、そのあとは澄んだ水面が広がる。その心境。(高橋正子)

[10月15日]

★赤き実のぱらぱら降りて小鳥来る/桑本栄太郎
赤い実がばぱらぱら降ってくるのは、小鳥のせい。大陸から渡って来た小鳥が木の実を啄む。赤い木の実がこぼれる。「小鳥」と「赤き実」はかわいらしい。(高橋正子)

[10月14日]

★川風をしきりに誘い萩は実に/桑本栄太郎
いい風景だ。「川風」に揺れ、「萩は実に」なるのだ。中七の「しきりに誘い」は作者の主情だが、それがいい。(高橋信之)

[10月13日]

★いろいろの木の実を拾う山散歩/谷口博望(満天星)
トレッキングとまではゆかなくても、秋の小山を散歩するのも楽しいことだ。荷物ももたない手持無沙汰に、落ちているいろんな木の実を拾ってみたくなる。遊び心。(高橋正子)

[10月12日]

★撮り溜むる写真の数や秋の星/小口泰與
撮り溜めた写真は、写真愛好家の泰與さんならば、かなりの量になっていると想像できる。夜長の灯の下にそれらを取り出して眺めたり、吟味したりする。灯の下で一枚一枚の写真の光沢が、秋の綺羅星と重なって思える。(高橋正子)

[10月11日]

★浄土へと釣瓶落としや当麻寺/河野啓一
当麻寺の向こうに釣瓶落としの日が沈む。その光景の静かな美しさは向こうの浄土の存在を思わせる。当麻寺の現在信仰の中心となっているのは、西方極楽浄土の様子を表した「当麻曼荼羅」。そのことを思えば、浄土へと日が沈むと強く実感されたのであろう。(高橋正子)

10月11日~20日


10月20日(8名)

●満天星
二の丸の松手入して凛凛と(信之添削)★★★★
先陣の金黒羽白広島城★★★
番なる金黒羽白一番乗り★★★

●小口泰與
印伝の鼻緒の草履秋祭★★★
秋風や鴉寝に行く里の寺★★★
手を上げて歩道渡るや赤のまま★★★★

●廣田洋一
銀杏黄葉高々伸びて空青し★★★★
草の実やまあるく赤く光りをり★★★
草の実や招き寄せたる小鳥かな★★★

●古田敬二
真四角に白が揺れてるそばの花★★★
新月や子を訪ね来て酒を酌む★★★
一人ずつ客減り終着十三夜★★★★

●佃 康水
金木犀香を褒めてゆく宅急便★★★
日の温み残る冬瓜胸に受く★★★★
畑から採ってきたばかりであろう。大きな冬瓜をいただいた。その大きさに、胸で抱くように受け取ると、生ぬるい日の温みが残っている。「胸に受く」に、季節がより強く、また作者の人柄の暖かさが感じられる。(高橋正子)

谷深く流れのひびく櫨紅葉★★★

●上島祥子
木曽川を上る小舟や秋光★★★
秋小寒社は遠き森の中★★★
あさぎまだら呼べば空へと遠ざかり★★★★

●河野啓一
朝日浴び今日も元気な百日草★★★
赤と黄となお咲き続く百日草★★★
すべりひゆ淡き日のなか蔓伸ばし★★★★

●桑本栄太郎
青空を切り裂くように朝の鵙★★★
石榴熟れ今にも零れそうとなり★★★
秋蝶の黄なるが縺れ坂の風★★★★

10月19日(6名)

●小口泰與
稲刈や浅間山(あさま)の形(なり)の定かなる★★★★
あけぼのの背丈定まる秋桜★★★
秋暁の噴煙起つや鳶の声★★★

●谷口博望(満天星)
原生林抜ければ秋の潮匂う★★★★
鶺鴒のちよこちよこ前を浜の道★★★
雨模様秋の大鷭堀の中★★★

●廣田洋一
秋耕を終えし畑や静まれり★★★★
歳時記では、「秋耕」は、稲を刈ったあと鋤き起こしたり、裏作の麦や菜種を播くために耕すことをいう。澄んだ大気のもとに、耕された畑は、土の色も息遣いもしずかである。次の農作業を待って「静まれり」である。(高橋正子)

体力を測るごと飛ぶ秋の蝶★★★
並木道落葉ひらひら川に入る★★★

●桑本栄太郎
青空のはるか鞍馬や秋の声★★★
祇園抜け建仁寺へと秋の色★★★★
鴨川の堰の耀き秋澄める★★★

●川名ますみ
文庫本めくれぬほどの秋の風★★★
山茶花のつぼみ尖りて青々と★★★★
秋風に削がれし雲の青天に★★★

●古田敬二
坪庭に鈴虫啼けり旅の宿★★★
湯桶から湯を溢れさせ秋の旅★★★★
萩咲けり独り占めしている露天風呂★★★

10月18日(7名)

●小口泰與
川沿いの鄙の湯宿や花芙蓉★★★★
上野(こうずけ)の砦の名残秋桜★★★
荒れ畑の三年過ぎしうすら寒★★★

●廣田洋一
生簀にて鰤に出世すハマチかな★★★
黄の線を一本残し鰤光る★★★★
この鰤は養殖なりと鮨屋の言ひ★★★

●河野啓一
秋の野を染めて検査値良かりけり★★★
病院へ往復感謝の秋の午後★★★
柿の実を低く照らして大西日★★★★

●多田有花
新米をとりにおいでと電話あり★★★★
敗荷にぽつりぽつりと午後の雨★★★
獅子舞にのぼりが揺れる秋祭り★★★

●谷口博望(満天星)
舞妓はんの如上臈ほととぎす★★★
海岸に打ち上げられぬ秋の烏賊★★★
ころころと木通の硬き嘴の痕★★★★

●桑本栄太郎
入日落つ秋の野山や摂津峡★★★
ハイウェイに明かり点るや秋しぐれ★★★
夕闇の灯かりとなりぬ泡立草★★★★」

●古田敬二
秋の雨蹴立てて離陸旅空へ★★★
露寒し陸奥旅の目覚めかな(原句)
露寒し陸奥の旅寝の目覚めかな★★★★(正子添削)
ご自宅のある名古屋から陸奥への旅。旅に目覚めて、朝露に寒さを覚える。みちのくの秋は冬へと足早に進む。その実感。(高橋正子)

名刹のひさし落ちる秋の雨(原句)
名刹のひさしを落ちる秋の雨★★★(正子添削)

10月17日(4名)

●谷口博望 (満天星)
ジンの香の微かに匂う辛夷の実★★★★
辛夷の実真っ赤に熟れて露わなる★★★
池の鯉並んで来たり杜鵑草★★★

●小口泰與
天霧らう赤城の嶺嶺や木守柿★★★
金木犀散りくる香り浴みにける(原句)
金木犀の散りくる香り浴みにける★★★(正子添削)
枡酒の木の香を含み新走★★★

●廣田洋一
鴨の群二羽連れ立ちてこぼれ行く★★★
水鳥の水尾の立たせる小さき波★★★

水鳥や狭き川辺に巣を構え★★★★
偶然に、水鳥が狭い川辺に巣を構えているのを見つけた驚きと水鳥への愛おしさ。思いもかけないところで、命あるものは次の命を育て、命をつないでいる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
稲株の白く列為し刈田晴れ★★★★
カップルの鴨川べりや秋の色★★★
大橋のはるか鞍馬や秋澄める★★★

10月16日(4名)

●谷口博望 (満天星)
藤の実の垂るるベンチで一句かな★★★
瀬戸遥か金銀揺るる花薄★★★★
わが半生清濁飲めず秋薊★★★

●小口泰與
コスモスのあふるる丘や鳥の声★★★
水切りの敢無く没し水澄めり★★★★
水切り(みずきり)は水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる 遊び。昔は、水切りも上手だったであろうが、体がぎこちなくなっているのだろう、投げた石が敢え無く沈み、そのあとは澄んだ水面が広がる。その心境。(高橋正子)

赤城山より風の煽つや金木犀★★★

●廣田洋一
声揃え論語の素読秋の風★★★

小屋の前薪を積み上げ冬支度(原句)
小屋の前薪積み上げ冬支度★★★★(正子添削)

鯉ほどに大きくなりし鮒の秋★★★

●桑本栄太郎
川風の土手に灯かりや泡立草★★★
錦木の緋色哀しき入日かな★★★
祇園抜け建仁寺へと新松子★★★★

10月15日(5名)

●小口泰與
見晴るかす山野錦や赤蜻蛉★★★
曼殊沙華茎のみ残るあわれさよ★★★
金木犀逢魔が時の温泉街★★★★

●廣田洋一
庭の土篩に掛けて冬支度★★★★
街路樹に電球飾る冬支度★★★
新居の建築急ぐ冬支度★★★

●谷口博望 (満天星)
恨みごと忘るるべしや貴船菊★★★
筧打つ栗の実落ちて沼の中★★★
朝刊を取れば鵯鳴き騒々し★★★★

●多田有花
いくすじも煙があがる秋の野に★★★
晩秋やこんがりバナナホットケーキ★★★
ストレッチして心地よき秋晴れに★★★★

●桑本栄太郎
朝鵙の高き梢や里の森★★★
赤き実のぱらぱら降りて小鳥来る★★★★
赤い実がばぱらぱら降ってくるのは、小鳥のせい。大陸から渡って来た小鳥が木の実を啄む。赤い木の実がこぼれる。「小鳥」と「赤き実」はかわいらしい。(高橋正子)

金色の穂風となりぬ猫じやらし★★★

10月14日(4名)

●満天星
薄雲のベールにほのと後の月★★★
晴れ晴れと赤ヘル通り十三夜★★★
天心へ消え入りそうな後の月★★★★

●河野啓一
朝寒やセーター出して重ね着し★★★
山裾に真っ赤な桜紅葉かな★★★★
小道行く娘温そうなストールを★★★

●小口泰與
これはこれは志賀の紅葉賑わしき★★★
糠雨や道のべの木は金木犀★★★★
爺ばばの勇みて山へ五倍子採取★★★

●桑本栄太郎
竹林の節に途切れし蔦紅葉★★★
お転婆の証や一人いのこずち★★★
川風をしきりに誘い萩は実に★★★★
いい風景だ。「川風」に揺れ、「萩は実に」なるのだ。中七の「しきりに誘い」は作者の主情だが、それがいい。(高橋信之)

10月13日(5名)

●河野啓一
友の呉れし菊苗挿せし頃のこと★★★
背の高き小菊の苗を購いぬ★★★
菊の香に葦簀囲いの公民館★★★★

●谷口博望(満天星)
蘭草のアサギマダラと遊びけり★★★
いろいろの木の実を拾う山散歩★★★★
トレッキングとまではゆかなくても、秋の小山を散歩するのも楽しいことだ。荷物ももたない手持無沙汰に、落ちているいろんな木の実を拾ってみたくなる。遊び心。(高橋正子)

早々とスズランの木の紅葉す★★★

●小口泰與
雨後の朝逆光浴びる稲田かな★★★
今朝の秋水面の蒼の深きこと★★★★
牧とじて山のあわひに夕日かな★★★

●廣田洋一
烏瓜垂れし垣根の無くなりぬ★★★
烏瓜緑の中に一つ浮く★★★★
青き実の立て縞消えて烏瓜★★★

●桑本栄太郎
淀川の向こうは槇島秋澄める★★★★
裏返る芋の葉白き日差しかな★★★
雲つどい何処にあらん後の月★★★

10月12日(6名)

●谷口博望(満天星)
森のカフェ屋根に立ちたる泡立ち草★★★
帚木の色づき初めぬカスケード★★★★
藤袴蝶の如くに鼻つけて★★★

●小口泰與
撮り溜むる写真の数や秋の星★★★★
撮り溜めた写真は、写真愛好家の泰與さんならば、かなりの量になっていると想像できる。夜長の灯の下にそれらを取り出して眺めたり、吟味したりする。灯の下で一枚一枚の写真の光沢が、秋の綺羅星と重なって思える。(高橋正子)

赤城山(あかぎ)の風を孕みたる稲穂かな★★★
山巓の一寸見ゆるや木守柿★★★

●廣田洋一
朝焼けや初冠雪の富士染める★★★★
秋朝焼け雲の隙間を染め出せり★★★
雨上がり薄き朝焼け秋の空★★★

●桑本栄太郎
秋天の土塀高きや建仁寺★★★★
駅前のビルの間や稲穂垂る★★★
暗くとも己が光や泡立草★★★

●河野啓一
友の呉れし菊苗挿せし頃のこと★★★
背の高き小菊の苗を購いぬ★★★
菊の香に葦簀囲いの公民館★★★★

10月11日(6名)

●上島祥子
半月の夜待ちきれずあらわるる★★★
バケツ稲小さな実りに期待大★★★
朝霧の晴れる気配や鳥の声★★★★

●河野啓一
デイの帰途釣瓶落としの日暮かな★★★
庭帽子脱ぐ間もなくて釣瓶落つ★★★

浄土へと釣瓶落としや当麻寺★★★★
当麻寺の向こうに釣瓶落としの日が沈む。その光景の静かな美しさは向こうの浄土の存在を思わせる。当麻寺の現在信仰の中心となっているのは、西方極楽浄土の様子を表した「当麻曼荼羅」。そのことを思えば、浄土へと日が沈むと強く実感されたのであろう。(高橋正子)

●小口泰與
コスモスの茎に雨粒琳瑯と★★★★
虫の音や小犬は我に歩を合わせ★★★
あなにやし今朝の利根川水澄めり★★★

●廣田洋一
丹波の友黒枝豆を送り来る★★★★
引っこ抜く子らの喚声落花生★★★
子育ては地中でなせり落花生★★★

●多田有花
<国立西洋美術館>
ヘラクレス像に秋陽のあたりおり★★★★
<上野東照宮>
十月の光燦燦金色殿★★★
西郷像より秋のスカイツリーを望む★★★

●桑本栄太郎
秋驟雨夜半の音に目覚めけり★★★
せせらぎの怒涛となりぬ野分川★★★★
友垣の訃報のありぬ秋の暮れ★★★