今日の秀句/2月1日~7日

[2月7日]
★街の灯に雪の生まれて広がり降る/小西 宏
夜の雪は、灯りに照らされたところから降ってくるように見える。雪は、「街の灯」に生まれるのだ。そして、灯りがある広がりに小止みなく降る。「街の灯に雪の生まれ」に都会の雪がよく描写されている。(高橋正子)

★花すみれ一番咲きは食卓に/河野啓一
秋に植えたのだろうか。すみれが咲いた。一番最初に咲いたすみれを食卓に飾ると、食卓に一度に春が来た。一番咲きの花、特にすみれは、可愛くてうれしい。(高橋正子)

[2月6日]
★犬ふぐり利根の瀬音の高々と/小口泰與
犬ふぐりが咲き始めると、春が来たと思う。奥山の雪解水を集め、利根川も瀬音高らかに流れている。春の輝きがある句。(高橋正子)

★芽吹き前箕面の森の水の音/河野啓一
芽吹く気配に満ちた森。耳を澄ませば、水の音がする。箕面の森の春の息吹が親しく読み取れる。(高橋正子)

[2月5日]
★手袋をぬいで歌集のページ繰る/上島祥子
外出先に歌集をもって出かけたのだろう。手袋をはめたまま歌集を読み始めたが、ページをめくるときになって、手袋を脱いだ。手袋をはずしたしなやかな指が、歌集をめくるところがクローズアップされ、気品のある場面となった。(高橋正子)

[2月4日]
★寒明けの夕影伸びし水面かな/小口泰與
水面に夕影が長く伸び、寒明けの今日は、日の永さが感じられる。夕べにも残る寒明けのほのかな明るさが春の兆しと受け止められる。(高橋正子)

[2月3日]
★二月の山遠くに海の光りおり/多田有花
二月となれば、風は冷たいものの、日の輝きが強くなる。明るさも増してくる。山に登れば、遠くの海も光っている。引き締まる空気、早春の海の眺めが快い。(高橋正子)

★居酒屋の突き出し今日は年の豆/小西 宏
たまたま寄った居酒屋であろうが、今日は節分ということで、突き出しに「年の豆」が出された。客ともども、節分を祝う気持ちで、鰯が出されるより粋。(高橋正子)

[2月2日]
★落ちるものなくして明るき冬木立/古田敬二
枯葉もすっかり落として枝だけになった冬木立。風の冷たさとは別に、日の光が降り注ぎ、明るい景色を見せている。明るい冬木立に春遠からじと思う。(高橋正子)

[2月1日]
★銀紙のチョコ割り枯れた野に座る/小西 宏
吟行に出かけた折、枯れた野原に座り、チョコレートを食べることは、たまに経験することの一つだ。「銀紙」「チョコレート」「枯れた野」の色彩のイメージが、瀟洒で、そんものの中に置かれた作者も絵になっている。(高橋正子)

2月1-7日

2月7日(6名)

●迫田和代
梅白く香り白々陽も白い★★★
梅日和香りに惹かれた車椅子★★★★
草燃える流れる水や音もなし★★★

●小西 宏
寒月に厳しき風の坂のぼる★★★
朝よりも寒さの募り雪催い★★★

街の灯に雪の生まれて広がり降る★★★★
夜の雪は、灯りに照らされたところから降ってくるように見える。雪は、「街の灯」に生まれるのだ。そして、灯りがある広がりに小止みなく降る。「街の灯に雪の生まれ」に都会の雪がよく描写されている。(高橋正子)

●小口泰與
しゃぼん玉ぴかっと光消ゆるなり★★★
青ぬたや同胞(はらから)つどう父の忌よ★★★★
扉掻く犬や朝寝のきりも無し★★★

●桑本栄太郎
料峭の枝葉さざめく丘の風★★★
さざ波の耀やき走る春の池★★★
水底の光りゆらぐや蘆の角★★★★

●河野啓一
花すみれ一番咲きは食卓に★★★★
秋に植えたのだろうか。すみれが咲いた。一番最初に咲いたすみれを食卓に飾ると、食卓に一度に春が来た。一番咲きの花は、特にすみれは、可愛くてうれしい。(高橋正子)

伴奏に合わせ歌声早春賦★★★
北国の春や歌声デイの窓★★★

●多田有花
大橋の彼方に春の入日かな★★★★
ため池がそれぞれ映す春の夕暮れ★★★
クレーン立つ春加古川の夕暮れに★★★

2月6日(5名)

●小西 宏
待春の光たゆたう伊豆の海★★★
日に輝く枯れ野を分けて快走す★★★
空大し水仙かおる海の崖★★★★

●小口泰與
犬ふぐり利根の瀬音の高々と★★★★
犬ふぐりが咲き始めると、春が来たと思う。奥山の雪解水を集め、利根川も瀬音高らかに流れている。春の輝きがある句。(高橋正子)

ちろちろと夕日に染まる芝火かな★★★
蕗味噌やたっぷり積めし魚の腹★★★

●河野啓一
陽の光ふと見つけたる蕗のとう★★★
芽吹き前箕面の森の水の音★★★★
芽吹く気配に満ちた森。耳を澄ませば、水の音がする。箕面の森の春の息吹が親しく読み取れる。(高橋正子)

春待ちて飾るパンジー食卓に★★★

●佃 康水
寒あやめ開くや朝の雨しずく★★★
女生徒の傘差しくるる春時雨★★★★
土塊に雀群れ来る春の雨★★★

●桑本栄太郎
白梅や硬きつぼみの丘の風★★★
頑なにつぼみ閉じ居り丘の梅★★★
青空を見上げひと枝梅ひらく★★★★

2月5日(4名)

●小口泰與
根無し雲映す榛名湖春浅し★★★★
永き日や利根奔流の水の嵩★★★
春遅しごうごうと吹く欅風★★★

●桑本栄太郎
<早春の桂川>
早春の中洲に光る湾処かな★★★
桂川の上流(かみ)の嶺々残雪に★★★★
菜の花の川風に揺れ河川畑★★★

●上島祥子
手袋をぬいで歌集のページ繰る★★★★
外出先に歌集をもって出かけたのだろう。手袋をはめたまま歌集を読み始めたが、ページをめくるときになって、手袋を脱いだ。手袋をはずしたしなやかな指が、歌集をめくるところがクローズアップされ、気品のある場面となった。(高橋正子)

針仕事晴れ着広げぬ冬座敷★★★
残酷なニュースで始まる二月かな★★★

●高橋信之
葉牡丹の白一色の華やぎを★★★★
一月快晴空の青さを仰ぎ見る★★★
春近きボールを小さき子らが蹴る★★★

2月4日(4名)

●小口泰與
寒明けの夕影伸びし水面かな★★★★
水面に夕影が長く伸び、寒明けの今日は、日の永さが感じられる。夕べにも残る寒明けのほのかな明るさが春の兆しと受け止められる。(高橋正子)

早春や長き裾野の雲迅き★★★
早春や硬き風吹く利根川原★★★

●桑本栄太郎
細枝の雪のしずりや京の路地★★★
礼拝の果て青空に寒紅梅★★★★
ヨルダンの砂漠寒きと想いけり★★★

●祝恵子
枯れ木によりランナーの足音を待つ★★★★
着ぶくれて声援仲間吾れもまた★★★
加湿器の湯気にかすかに揺れるラン★★★

●高橋信之
節分の余りし豆が袋に透く★★★★
東の峰を見る立春の曙よ★★★
戸を出でて今日立春と思う吾よ★★★

2月3日(7名)

●小口泰與
大寒の乾きし庭や群雀★★★★
乾びたる里の大地や水仙花★★★
あな白き浅間山(あさま)や梅の佐久平★★★

●内山富佐子
寒行の太鼓静寂にとけてゆく★★★
霰には三角四角拳固あり★★★★
節分や福は内山春よ来ひ★★★

●多田有花
二月の山遠くに海の光りおり★★★★
二月となれば、風は冷たいものの、日の輝きが強くなる。明るさも増してくる。山に登れば、遠くの海も光っている。引き締まる空気、早春の海の眺めが快い。(高橋正子)

節分や太鼓の音がこだまする★★★
忘れ物思い出したり冬尽きぬ★★★

●桑本栄太郎
雪晴れの天の青さや比叡山★★★★
雪止めば四条大橋濡れ光る★★★
雪しずる京の町家でありにけり★★★

●高橋秀之
節分の我が家の食卓手巻き寿司★★★★
港から吹く風冬木の揺れる枝★★★
冬晴れて西からの波も穏やかに★★★

●小西 宏
背(せな)の子の前が見えないニット帽★★★
枯山に陽がいっぱいの黄金色★★★

居酒屋の突き出し今日は年の豆★★★★
たまたま寄った居酒屋であろうが、今日は節分ということで、突き出しに「年の豆」が出された。客ともども、節分を祝う気持ちで、鰯が出されるより粋。(高橋正子)

●古田敬二
春を待つ梢を渡る風の音★★★
枝先に紅尖る冬芽かな★★★
色々と楽しげな形冬の雲★★★★

2月2日(5名)

●小口泰與
庇よりあだに落ちたる氷柱かな★★★
山茶花や上州風の荒き国★★★
露天湯に脛を預けし日脚伸ぶ★★★★

●桑本栄太郎
救急車の音の近づく雪の朝★★★
部屋干しの竿の支度やしまき風★★★
遠き地のテレビニュースや冬座敷★★★★

●川名ますみ
梅ひとつ今年も同じ枝につき★★★★
梅一輪いつもの枝にはじまりぬ★★★
しだれ梅初めの一輪そっと咲く★★★

●福田ひろし
こたつ舟竿高々と弧を描く★★★
スマホする雪降りしきる朝なれど★★★
冬天や湯は滔々とあふれおり★★★★

●古田敬二
落ちるものなくして明るき冬木立★★★★
枯葉もすっかり落として枝だけになった冬木立。風の冷たさとは別に、日の光が降り注ぎ、明るい景色を見せている。明るい冬木立に春遠からじと思う。(高橋正子)

風の道行けば落ち葉に追い越され★★★
寒風が吹けども竹はまっすぐに★★★

2月1日(5名)

●内山富佐子
高田瞽女の門付け芸を再現するイベントにて二句
雪の町に瞽女の三味の音豊かなり★★★★
三味を弾く瞽女のうなじや六花★★★
玉葱の芽伸びやかに春を待つ★★★

●小口泰與
里山の寒紅梅の鮮らけき★★★★
日を乗せて白鳥嘴を隠しけり★★★
白鳥の映ろう水面夕日影★★★

●小西 宏
炭焼きのけむり香のする雑木山★★★
探梅や一つ見つけて香の仄か★★★

銀紙のチョコ割り枯れた野に座る★★★★
吟行に出かけた折、枯れた野原に座り、チョコレートを食べることは、たまに経験することの一つだ。「銀紙」「チョコレート」「枯れた野」の色彩のイメージが、瀟洒で、そんものの中に置かれた作者も絵になっている。(高橋正子)

●多田有花
春隣日差しと雪が交差する★★★
池の辺に人影は無し冬深し★★★
強霜や朝日を浴びて山へ行く★★★

●桑本栄太郎
天辺のはがれ欠片や雪の花★★★
風雪の傘を斜めや図書館へ★★★★
ヨルダンの砂漠哀しき寒暮かな★★★

2月7日(土)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
暦の上では春になったとはいえ、まだ肌に感じる空気は冷たい初春に、木を打つ音が山に響いています。今まで家のなか中心に静かに暮らしていた人々が、その音を聞き外に出てみようかという気持ちになっている情景でしょうか?これから、日に日に暖かくなり人々の暮らしにも活気が出てくることでしょう。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)