4月23日(水)

 隅田川
★都鳥春の空より羽音させ  正子
古典に知識がなくて恥ずかしいのですが、隅田川ではよくユリカモメの浮かぶ姿を目にします。それが空に羽音をさせているのは、北へ帰る旅支度なのでしょうか。人それぞれに故郷があり、春ともなれば望郷の想いを強く感じることが多いのでしょう。(小西 宏)

○今日の俳句
朝に座し浅利味噌汁白ご飯/小西 宏
浅利の味噌汁が美味しいのは、春の小寒い朝。それに湯気のたつ白いご飯があれば、申し分なし。そして、朝食に座るという行為。すっきりとした幸せな朝の食事だ。(高橋正子)

○黄菖蒲

[黄水仙/横浜市都筑区・山田富士公園(左:2012年5月5日・右:2012年5月1日)]

★片隅に菖蒲花咲く門田哉/正岡子規
★花菖蒲夕べの川のにごりけり/桂信子
★かへり来し命虔しめ白菖蒲/石田波郷
★黄菖蒲の 黄も生き生きと 川の原/遊雀
★黄菖蒲や小川の道を辿りきて/819maker

 黄菖蒲は日本のものかと思っていたが、帰化植物ということだ。生まれたときから、生家の裏の小さい池に黄菖蒲が咲いた。生家は明治時代に建て替えられて、裏庭の西に榎があり、その下に池があった。榎は大きくなりすぎたのであろう、枝や幹は大きく切られていたので、日は差し込んでいた。池の水が淀みがちで湿気が上がるので、かなり前に埋められ、榎も切り倒されている。子どものころは、雨の日などに、裏の縁側から黄菖蒲を眺めて、黄色い色に目を止めていた。

★黄菖蒲に薄き汗かくころとなり/高橋正子

 黄菖蒲(帰化)と似たものに菖蒲、花菖蒲(栽培) 、それにアヤメ、カキツバタ、シャガ、イチハツ(帰化、栽培)アイリス、ジャーマンアイリス等があるが、見分けるのが難しい。菖蒲を除き、これらのすべては、黄菖蒲と同じアヤメ科アヤメ属の植物だが、菖蒲だけは、ショウブ科(サトイモ科に分類する体系がある)のショウブ属に属する。
 黄菖蒲(学名: Iris pseudacorus )は、アヤメ科アヤメ属の多年草。帰化植物。花茎の高さは60-100cmになる。葉は幅2-3cm、長さ60-100cm、剣形で中脈が隆起し明瞭で、縁は全縁。花期は5-6月で、アヤメやノハナショウブと同じ、外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、内花被片が小型で直立した、黄色の花を咲かせる。外花被片の中央に茶色がかった模様がある。西アジアからヨーロッパ原産の植物で、明治頃から栽培されていたものが日本全国の水辺や湿地、水田脇に野生化している。観賞用に栽培されているハナショウブには黄色系の花がないため、その貴重性から重宝されたが、湖沼や河川などへの拡散が問題となっている。環境省は「要注意外来生物」の一種として警戒を呼びかけている。

◇生活する花たち「羅生門蔓・錨草・山吹草」(東京白金台・自然教育園)

4月23日

●祝恵子
走り根を囲むタンポポ色深し★★★★
タンポポは、野原にも、こういった走り根を囲んで咲いている。「色深し」は、また春の深さを表している。(高橋正子)

雑木林山のツツジは高く咲く★★★
春雨や登山談義を聞いており★★★

●小口泰與
産土の風音しかと雪柳★★★★
夕映えの落花せかせる疾風かな★★★
尾を巻きて小犬のしざる木の芽時★★★

●河野啓一
楠若葉朝日を浴びて街並木★★★
緑なす森の辺縫いて車行く★★★★
摘むべきか摘まざるべきやチューリップ★★★

●多田有花
肉じゃがを作る夕べや春深し★★★
たんぽぽやいつも面をあげている★★★★
縁側に座して見上げる八重桜★★★

●桑本栄太郎
豌豆のボウルにひびき豆をむく★★★★
豌豆を莢からボールなどに剥くと、ポンポンと元気よく音をたてるが、元気な男の子が弾けているようなかわいさがある。(高橋正子)

部活子のおらぶ声聞く遅日かな★★★
豆飯の魚も焼き添え夕餉摂る★★★

●小西 宏
囀りに小楢の花の降るを踏む★★★★
蒲公英の綿毛半分残りあり★★★
家並ぶ向かいの丘の春の木々★★★

●黒谷光子
よく晴れて耕す人のおちこちに★★★★
一葉とて残さず畑の法蓮草★★★
二人には足る一掴み法蓮草★★★