3月17日
●小口泰與
薄氷やごうごうと吹く木々の風★★★★
今生を浅間仰ぎて畑打★★★
赤城より雨雲出づる揚ひばり★★★
●祝恵子
池の面を見つめて抹茶椿寺★★★
交番の地図を広げて古都の春★★★
雪残る寺にご朱印頂きぬ★★★★
雪が残る寺の寒さ、雪の白さのなかにご朱印の色が鮮やかで、一層ありがたく思える。(高橋正子)
●桑本栄太郎
春泥を避けて川べり歩みけり★★★
ゆすら咲き花に取りつくカメラマン★★★
青空も入れて撮り居り花ゆすら★★★★
ゆすらは小さく、梅にも、桜にも似た花を開く。こまごまとしているので、一つの花の印象は薄いかもしれないが、空を入れて花を生かした写真は魅力があるだろう。(高橋正子)
●黒谷光子
青空の色を零して犬ふぐり★★★
指先に香りを残し蕗の薹★★★
香と苦み楽しむ夕餉の蕗の薹★★★★
●小西 宏
紅膨れる椿蕾のつぎつぎと
【添削】紅膨れる椿の蕾つぎつぎと★★★★
「椿蕾」は言葉として不自然な感じがしますので、添削しました。椿の蕾に赤い色が見え始め、それがつぎつぎ膨らんで、今にも咲くかというところまで来た。とてもうれしい気持ちだ。(高橋正子)
梅園に入れば風凪ぎ色朧★★★
飯に焚く小さな香り桜えび★★★
3月16日
●古田敬二
馬鈴薯の種植え畝を高くする★★★
昼の陽に種芋眠る畝高し★★★★
植えつけた種芋が、高々とした畝に眠っている。春の陽が温める畝である。(高橋正子)
新築の槌音高し春の風★★★
●小口泰與
たらの芽に浮子の絡まる夕まずめ★★★
嬬恋の色なき里にいぬふぐり★★★★
嬬恋村の春は遅い。枯れ色の里にまずいぬふぐりの青い花が目を覚ます。色なき里もこれからいろんな花がさきだすであろう。(高橋正子)
春の草芝に萌え出で耘れり★★★
●多田有花
低山の春の稜線を歩く★★★
目の覚めるような菜の花畑かな★★★★
菜の花畑に行きあうと、そのまっ黄色な菜の花の色に目が覚める。一面の強烈な菜の花の色である。花のいい匂いもしてきそうだ。(高橋正子)
窓を開け春の風入れ走りけり★★★
●桑本栄太郎
夕暮れの西空蒼く春の闇★★★
菜の花のお浸し添える夕餉かな★★★★
蛸足の白きも入りぬ若布和え★★★
●河野啓一
早春賦歌声流るデイの朝★★★
花杏淡く高くと咲き初める★★★★
杏は桃の花よりも淡い。桜よりも濃いかもしれない。その杏の花が淡く高く咲きはじめるといよいよ春も本格的になり始める。(高橋正子)
雪解かな箕面の谷に水の音★★★
●川名ますみ
あたたかやアイロン台に白きもの★★★★
あたたかい日差しのなかにアイロン台の白いものは、シャツだろうか、シーツだろうか。白い色がうれしい季節が来ている。(高橋正子)
アイロンとミシンを広げ春の居間★★★
三月の母がミシンを踏むリズム★★★