■ご挨拶/雛祭ネット句会■

 ご挨拶(高橋正子/主宰)
 花桃の花が明るく咲き、暖かい日差しが時折届くようになりました。今年は大雪に見舞われたり、寒さも尋常ではなかったように思いますが、雛祭、桃の節句などと聞きますと、気持ちが華やいで、いち度に春が来たと感じます。その雛祭の句会に明るい早春の句をご投句いただき、ありがとうございました。入賞の皆様おめでとうございます。皆様のご投句から、日々の生活がこれほどまでに変化し、一日として同じ日はないのだと気づかされました。我が家は例年松山での雛祭と同じように月遅れで雛様を飾っています。3月3日は雛こそ飾っていませんが、部屋の灯りも春のあかりとなって、句会のおかげで雛祭の気分を楽しみました。選とコメントをありがとうございました。どの句にもコメントがつけられて、一つ一つの句が大事にされているのは、他の句会ではあまりないのでは思います。互選の集計は藤田洋子さんに、句会の管理運営は信之先生がされました。いつもありがとうございます。これで雛祭ネット句会を終わります。では、次回の句会を楽しみにお待ちください。

 ご挨拶(高橋信之/管理)
 雛祭ネット句会が多くの参加者を得て、今年も楽しく終えた。雛祭は美しく優しい。そして、句会に寄せられた句がまた美しく優しい。昨年、花冠30周年を迎え、今年の花冠31年のネット句会が新年、立春、雛祭と続いた。振り返って、花冠の俳句が「美しく優しい」ということに気付いた。花冠の仲間たちが俳句と出会って、美しく優しいのだ。花冠創刊者として、これらの俳句を残し得たことが何よりも嬉しい。そして、参加者21名の皆さんに感謝している。皆さん、ありがとうございました。

ご挨拶(藤田洋子/スタッフ)
雛祭ネット句会ご参加の皆様、お世話になりありがとうございました。三月となり、少しずつ寒さも和らいで、あきらかに春の気配が漂います。季節の明るさを皆さんのご投句に実感いたします。また、雛祭へ込められた皆さんそれぞれの思いにふれ、心あたたかく和やかな気持ちになれました。折しも、信之先生、正子先生のご長女、句美子さんのご結婚と重なり、嬉しいご慶事に、いっそう明るく華やいだ句会となりました。句美子さんのお幸せを心からお祈りしております。ご多忙の中、信之先生、正子先生には句会の開催をしていただき、心から感謝申し上げます。選句やコメントを寄せていただいた皆様、ありがとうございました。
 

3月4日(火)

★花菜の束一つが開き売られたり   正子
花菜が束にして売られていて,かわいい花先が見えている。待ちに待った春のお店での出会いです。(祝恵子)

○今日の俳句
春の日をせりだす床に坐して受け/祝 恵子  
「春の日をせり出す」は、ようやく暖かくなった春の日差しをうまく表現している。「せり出す」は、言えそうでなかなか言えない。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○2013年3月4日:
きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を刈った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

◆雛祭ネット句会入賞発表◆


■雛祭ネット句会■
■入賞発表/2014年3月4日■

【金賞】
★春暁の新しき水仏前に/高橋秀之
春の暁は、華やいだ感じはするが、空気がしんと冷えている。仏前に線香をあげ、汲みたての水をあげる。そこに充足した緊張感が生まれている。(高橋正子)

【銀賞】
★桃咲いてひときわ明るき花売り場/柳原美知子
春先の花売り場はいろいろな花の色が溢れている。そこに桃の花が咲くと、その花色にひときわ明るくなる。その明るさは雛の明るさにも通じる。(高橋正子)

【銅賞2句】
★山茱萸の開花に似合う空の青/古田敬二
山茱萸の花は、レモン色に近い黄色で、早春のひんやりとした空気感によくマッチしているが、空の青にもっとよく似合っている。黄色と青色の対比が美しい。(高橋正子)

★くっきりと石鎚霊峰梅咲ける/藤田洋子
石鎚の霊峰は、まだ雪を冠っているのだろうが、晴れた日はその独特の山容がくっきりと見える。そんな日梅が咲いてくれた。高潔な景色だ。(高橋正子)

【高橋信之特選/7句】
★雛の部屋と定め灯りをあたらしく/高橋正子
行事はもともと祈りや願いが根底にあるもの。雛人形を飾る、そこに何か厳粛なものも感じます。だから灯りを新しくします。新たな願いと祈りをそこにこめて。 (多田有花)

★娘の干支の木の馬添えて雛飾る/佃 康水
吾が娘の健やかなる成長を願って飾る事が雛祭り。その上、娘の干支の木の馬をも添えて飾る事は、親心ならではの心情です。切なる愛情が想われ素敵な一句です。(桑本栄太郎)

★くっきりと石鎚霊峰梅咲ける/藤田洋子
高くそびえる石鎚山を背景に可憐な梅の花が咲いている光景は清々しく感じます。また、この句より梅の花の香りも伝わってきました。 (井上治代)

★桃の花一枝挿してひな祭り/河野啓一
ひな祭りに桃の花を一枝挿すだけで、部屋が明るくなりました。子どもたちの幼きことをことを思います。 (祝恵子)
桃の花を挿して活けると、部屋はさっと明るく春めいてくる。それもたった一枝でいいのだ。伝統の存在感。 (小西 宏)
ひな祭りを飾るわけではない、でもひな祭りを楽しみたい。そこで桃の花を一枝挿す、そうするとその一画に、その一部屋に、それを眺める心にひな祭りが訪れます。 (多田有花)

★花菜の黄揺れて香れる風の中/柳原美知子
花菜の黄色ほど春の明るさを象徴するものは他にないでしょう。それが陽光の中で揺れている。幸福感を絵にしたような情景です。 (多田有花)

★春暁の新しき水仏前に/高橋秀之
★山茱萸の開花に似合う空の青/古田敬二

【高橋正子特選/7句】
★三月の水輪つぎつぎ雨の濠/藤田洋子
濠水に一つまた一つと隣り合いながら雨の水の輪が生まれ広がる。その静けさ、三月のやわらかさ。 (小西 宏)

★春の菜の抜きしばかりをもらい来る/祝恵子
春の菜はほうれん草 春キャベツ 水菜 小松菜など沢山育って来ていますが何だろうと想像が拡がります。何方かに頂かれた抜いたばかりの春野菜は瑞々しく身体のためにも優しい食材ですので沢山食したいと思う御句です。 (佃 康水)

★雪洞(ぼんぼり)の灯影映ろう雛の顔/小西 宏
柔らかな雪洞の明りがお雛様のお顔をほんのりと照らしています。そのお優しいお姿に暫く接していたいと去り難いものが有り、心の安らぎを覚えます。 (佃 康水)

★桃咲いてひときわ明るき花売り場/柳原美知子
桃の節句のこの時期、花売り場では優しい色の桃の花が沢山用意され、その明るさに一際目を惹き付けられますね。お花屋さんでは一足先に春の訪れを知らせてくださり自然に心弾む思いが致します。 (佃 康水)

★雛あられ小箱に詰めて友見舞う/佃康水
形も色も愛らしい雛あられをお見舞の品に選ばれた作者の優しい心が伺えます。お友達もきっと喜ばれたことでしょう。(井上治代)

★紅梅や浅間の雪の新たなり/小口泰與
浅間山の真白い春雪と紅梅の色も美しく、仄かな紅梅の香の中にしばし佇む至福のひとときが思われます。清らかで希望に満ちた光景ですね。 (柳原美知子)

★春暁の新しき水仏前に/高橋秀之

【入選/13句】
★桃の日の記憶幾重も雛飾る/小川和子
幼い頃、家で飾ってもらった雛飾り、やがてお嬢さんのために飾り、そして孫娘さんのために飾る、そういう情景の重なりか、と感じられました。(多田有花)

★長き弧の浜の風紋春うらら/小西 宏
住む沖縄でもよく見かける光景で、春の浜辺を思い興します。(下地鉄)

★桃の花胸に抱えた人と会う/迫田和代
先日、私も似た景と出遇いました。紙に包まれた桃の花を胸に抱え、帰宅される近所のご婦人。花束の向こうから覗く笑顔に、優しい季節を迎えた、実感を覚えました。 (川名ますみ)

★糸電話「もしもし」「はいはい」雛の客/古賀一弘
桃の節句のお客さんはかわいいお孫さんであろう。リズムよく流れるように詠んだ句であり、ひな壇前の情景が浮かんでくる。 (古田敬二)

★薄雲のそれでも青き春の空/高橋秀之
光の強くなった春の空。薄雲に覆われていても、なお晴れた空のように青く見える。そんな気がする。春到来のうきうきした気持ちが伝わってきます。 (小西 宏)

★千代紙の雛に折られし花模様/川名ますみ
千代紙で丁寧に折られた紙雛、花模様も美しく、ほっと心灯されるような手作りの優しさとあたたかさを感じます。 (藤田洋子)

★桃の日の花舗を占めおり桃の枝/桑本栄太郎
桃の日を祝おうと、人々は花屋さんに桃の花を買いに集まる。そこで花屋さんの店先は桃の木でいっぱいとなる。でも、花よりもまだ蕾の枝が目立つようです。桃の木の枝の風情が明るく素敵です。 (小西 宏)

★かの町のうぐいす餅を買いに出づ/小口泰與
「かの町」とは何処なのかわかりません。でも作者はよく知っている。そして読者の心のなかにも、それぞれ思い当るところのある「かの町」です。「うぐいす餅」に春が運ばれてきます。 (小西 宏)

★春霰の転がる地へと明るき陽/多田有花
春になってからの霰。地面にぶつかってコロコロと転げ走る。その時にはもう、気まぐれな春の日差しが雲の隙間から明るく照らし、地まで届いているのだ。 (小西 宏)

★梅三分雪の山路を踏みしめて/澁谷洋介
雪の中登山をされているのでしょう。途中で見つけた梅の三分咲きに、ここにも春を見つけた喜びが伝わってくるようです。 (祝恵子)
残雪に咲く梅の花はとても情緒があり美しいですね。三分咲きの枝も申し分ない。山路を行く足腰に力が入ります。 (小西 宏)

★花は咲くの歌流れてひな祭り/下地鉄
「花は咲くの歌」は「NHK東日本震災支援プロジェクト」のテーマソングであろう。昨年の選抜高校野球大会開会式の入場行進曲ともなった。「花は 花は 花は咲く」と歌う歌詞は、励ましの言葉があって優しい。「ひな祭り」であれば、「花」は桃の花で、幼い子らに優しい。「花は咲くの俳句」は、作者の日常生活から生まれ、言葉が平明で、美しく優しいのだ。(高橋信之)
東日本大震災の日から間もなくまる3年がたとうとしています。被災された方々の中にはまだまだ悲しみから抜け切れていない方、仮住まいを余儀なくされ続けている方、日々の生活にも困っておられる方々などがたくさんいるのでしょう。みなさんどんな思いでひな祭りの日を迎えられたのでしょうか。一日も早く、心から楽しいひな祭りを迎えることのできる日が来るといいですね。そんな思いに満ちた心優しい俳句です。(小西 宏)

★アロマろううそく灯して更ける雛の夜/矢野文彦
いい詩情だ。雛の夜が更けて、アロマろううそくの色と香りが快い。(高橋信之)
雛祭りの夜、アロマろうそくの炎が揺れ、芳香が立ちこめている部屋は静かに更けていきました。幻想的な感じがする俳句だと思いました。(井上治代)

★早世の姉と飾りし雛いづこ/井上治代
雛祭りの雛人形には、誰もが思い出を持つ。そして、思い出に思い出が重なる。「早世の姉」であり、「飾りし雛」である。思い出の美しい世界だ。(高橋信之)

■選者詠/高橋信之
★吾子嫁ぎゆけり今日雛祭りの日
愛娘を嫁がせる日の親の想いは嬉しさと一抹の寂しさとが絡み合い複雑な気持ちがこみ上げて参ります。今日、ひな祭りの日に嫁いでいかれた、何とも言えない夢とロマンが有ります。何年経っても雛祭りと愛娘の結婚記念日は懐かしい思い出となって決して忘れることは有りません。お嬢様のご結婚心よりお慶び申し上げます。(佃 康水)
雛祭りの度に願ってきた娘さんの健やかなご成長と幸せ。その願いがいよいよ叶い、まさに雛祭りの日に嫁がれるとはお喜びも一入のことと思います。一抹の寂しさはあるものの、今後も雛祭りの度に娘さんへの想いを新たにされることでしょう。お嬢様のご結婚おめでとうございます。 (柳原美知子)

★花好きがミモザ咲かせて西洋館
★あしび咲く今日のこの刻はなやかに

■選者詠/高橋正子
★片寄せに雪の残りて月おぼろ
道路の除雪跡なのでしょうか。地面には片寄せされた雪が残っているけれど、夜空は、もう、おぼろながらも月があらわれ、幻想的な光景が感じられる夜となりました。(高橋秀之)

★花桃の透けたる氷雨のウィンドウ
古くから桃には邪気を祓う力があるとされ、その美しさを愛でられてきた桃の花が氷雨にぬれた花屋のウィンドウ越しに美しく見える素敵なけいですね。 (小口泰與)

★雛の部屋と定め灯りをあたらしく

■互選高点句
●最高点(7点)
★吾子嫁ぎゆけり今日雛祭りの日/高橋信之

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)