2月15日

●小口泰與
水玉の梢(うれ)に並ぶや春の雪★★★
春雪や畑に散りたる鴉達★★★
淡雪や淡き昔の学園祭★★★

●黒谷光子
湖辺へと過ぎる公園下萌ゆる★★★
打ち寄せる波に逆らい春の鴨★★★★
「波に逆らい」に感があってよい。。春浅い風が水面を波だたせ、その波が鴨の胸に寄せている。波に逆らいながらも浮く春の鴨に意志と健気さを感じる。(高橋正子)

波寄する湖岸に人無く残る鴨★★★

●迫田和代
青い空梅花(ばいか)白白空に映え★★★
鶯の声茜の空に高々と★★★
川土手の土柔らかく草萌える★★★★
「土柔らかく」がいい。一雨ごとに春めいてくるころ、土手の土も黒々と柔らかになってくる。柔らかな土から緑の草が萌えるのはうれしいものだ。(高橋正子)

●多田有花
その昔飢えは身近に春浅し★★★
すれ違う電車を待って余寒かな★★★
山巡る間に二度の春時雨★★★★

●桑本栄太郎
靴跡の白の行き交い春の雪★★★★
階段のなんば歩きや春の雪★★★
紀州路の南部(みなべ)七分や梅便り★★★

●河野啓一
東北に生まれて春の金メダル★★★
週末の雪山歌声響かせて★★★★
街中に雪解を集め狭き川★★★

●小西 宏
雪の朝鎖の音すバス通り★★★
ベランダに雪解けの音かろやかに★★★★
春の雨静かに屋根の雪融かす★★★

●川名ますみ
ごつごつと桜の花芽雪を載せ★★★★
立春を過ぎてからの春の大雪に二度も見舞われた今年。桜の花芽にも雪が積もり、その形が優しい桜の花に似合わず「ごつごつ」としている。
しかし、このごつごつとした強さが桜の花を一時に咲かせる力の源でもあるのだ。雪に桜の花色を置いて見たくなる句だ。(高橋正子)

春雪を冠す並木のどの枝も★★★
春雪にけぶるさくらのお壕端★★★

2月15日(土)

★菜の花に蛇行の川の青かりし   正子

○今日の俳句
春立つや空の青さに海の色/下地鉄
「春立つ」の声を聞けば、空の色、海の色に春らしい明るさを感じるのも人の心。春は空の色、海の色から始まる。(高橋正子)

○菜の花

[菜の花/伊豆河津(2011年2月22日)]   [菜の花/横浜日吉本町(2013年2月3日)]

★菜の花や月は東に日は西に/与謝蕪村
★家々や菜の花いろの灯をともし/木下夕爾
★菜の花に汐さし上る小川かな/河東碧梧桐
★菜の花の遥かに黄なり筑後川/夏目漱石
★菜の花の暮れてなほある水明り/長谷川素逝
★菜の花に汐さし上る小川かな/河東碧梧桐
★一輌の電車浮き来る菜花中/松本旭
★寝足りたる旅の朝の花菜漬/稲畑汀子
★咳こもごも流転身一つ菜種梅雨/目迫秩父
★白鷺の飛びちがへるに菜種刈る/木村蕪城
★菜殻火に刻々消ゆる高嶺かな/野見山朱鳥
★うしろから山風来るや菜種蒔く/岡本癖三酔

★まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

★菜の花へ風の切先鋭かり/高橋正子
★菜の花も河津桜も朝の岸/高橋正子
★菜の花の買われて残る箱くらし/高橋正子

 菜の花(なのはな、英語:Tenderstem broccoli)は、アブラナまたはセイヨウアブラナの別名のほか、アブラナ科アブラナ属の花を指す。食用、観賞用、修景用に用いられる。アブラナ属以外のアブラナ科の植物には白や紫の花を咲かせるものがあるが、これを指して「白い菜の花」「ダイコンの菜の花」ということもある。
 3月のこの季節、菜の花は季節の食材として店頭にも多く並ぶようになった。3月18日に家族で椿山荘で食事をしたとき、菜の花のからし酢味噌かけがあった。天もりは、芽紫蘇。若い者たちも「菜の花のからし酢味噌かけ」が一番おいしかったと答えた。味のリズムと触感と彩りと季節感があったのだろう。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・沈丁花の蕾・木瓜」(横浜日吉本町)