2月10日(月)

★春浅し立ちたる草の鳴りづめに   正子
萌え出した草の上を風が渡っているのでしょうか。光からも音からも明るい春の景色がうかがえ、心楽しくなります。(多田有花)

○今日の俳句
沖よりも甍の光り春めけり/多田有花
海の沖を眺めると、冬の沖とは違って春めいて思えるだが、それよりも手前に眺める甍の光りの方が強く、遥かに春めいているのだ。日本の甍は、その季節、その日の光りを偽ることなく反射させる。今、春めいた陽光を反射させている。(高橋正子)

○赤花満作

[赤花満作/横浜・四季の森公園]

★満作咲く丘の麓の空晴れて/高橋信之
★満作のひらひら咲くや寒波来て/高橋正子
★森に咲く満作の枝横伸びに/高橋句美子
★作紅し森の階段森奥へ/高橋句美子

 アカバナマンサク(赤花満作、学名:Hamamelis japonica var.obtusata)は、マンサク科 マンサク属の落葉小高木。別名はベニバナマンサク(紅花満作)だが、あまり使われない。花弁が赤色のマンサクだが、外国種や交配種の赤花もアカバナマンサクという名前で表示されていたり、売られていたりする。分類的には、本来の”アカバナマンサク”は在来の”マンサクの変種のマルバマンサクの一つの品種”のことを指す。外国種や交配種には別の学名がつけられている。分布:本州の日本海側、樹高:3~8m、花期:2~3月、果期:9月
 落葉の小高木で落葉樹の多いところに生えている。マルバマンサクの品種で花弁全体が暗い赤色を帯びる。枯れ葉が枝に残っていることがある。葉は単葉で互生し、長さ5~11cm。幅3~7cm。葉の先が半円形の菱形状円形または広卵形で基部は左右の形がちがう。葉縁は先半分に波状の鋸歯があり、基部半分は全縁。果は直径1cmほどの卵状球形。熟すと2つに裂けて光沢のある黒い種子を2個はじきとばす。葉の展開に先立って花を咲かせ、花弁は4枚、煤けたような暗い赤色で、鮮やかな赤色ではない。黄色い縁取りがあり、長さ1~1.5cm。萼片も4枚ある。花は良い香りはせず、生臭い香りがかすかにする。

◇生活する花たち「さんしゅゆの花蕾・沈丁花の蕾・木瓜」(横浜日吉本町)

2月10日

●小口泰與
あけぼのの日の良く伸ぶや黄水仙★★★★
「日の良く伸ぶ」に爽やかな実感がある。黄水仙が春の訪れを感じさせて明るく、生き生きしている。(高橋正子)

春めくや和菓子芝舟届きたり★★★
大鉈を振るいし今朝や冴返る★★★

●下地鉄
丁子咲く一株もって墓参かな★★★
きりもなく干し綱ゆれる春嵐★★★
花辛夷見上げるほどに妻の顔★★★

●多田有花
残雪にぽつりぽつりと梅咲きぬ★★★
かたまりし雪でぬぐえる春の泥★★★
春の声ききし日よりの寒さかな★★★

●桑本栄太郎
嶺を越え峰を覆いて春の雪★★★
斑雪野や路面耀く朝のバス★★★
竹林の風梳き通る斑雪かな★★★★

●佃 康水
靄深き島へ微睡む春の鹿★★★
冠木松の雪解雫を眩しめり★★★

早春の野を通り過ぐ黄の列車★★★★
黄色の列車はいろんなところを走っているようだが、偶然出会ったのだろう。早春の野を走る黄色い車両は、幸せを運んでくるような印象だ。(高橋正子)

●高橋秀之
永き日の公園子らがまた明日★★★★
日が永くなり、公園では遅くまで遊ぶ子が増えた。「また明日」と言って別れる麗らかさがいい。明日もきっと楽しく遊べるだろう。(高橋正子)

春暁の大空広く薄き青★★★
春浅し妻と並んで歩く道★★★

●川名ますみ
春雪も雲も真白に空の青★★★★
青空へ雲と春雪ましろなり★★★
気懸かりを踏む春雪を踏む様に★★★

●古田敬二
春耕す我が濃き影を野に映し★★★★
春なのだ。日差し次第に強くなり、耕している自分の影が濃く映る。耕す我に、我と同じに動く影という友がいる。(高橋正子)

梢には芽吹き促す風のあり★★★★
一ミリのつぼみも持てり春の色★★★

●小西 宏
薄氷(うすらひ)の遍く白き池の面(おも)★★★★
満天星の芽のぴんと跳ね雪景色★★★
雪解けの坂光り濡れ淡き湯気★★★

2月9日

●小口泰與
春雪や小犬まろびて鼻白き★★★
春雪の尺の嵩越ゆ小犬かな★★★
春雪に鳥影映す朝かな★★★

●下地鉄
日に透きて高みにそよぐミモザかな★★★★
夕日伸びゆたりゆたりと春の海★★★
波の穂の吹かれて飛沫く春嵐★★★

●河野啓一
冴え返る列島すっぽり雪景色★★★
早春の鳥越漏れ来る木々の枝★★★
早春の歓び朝のコーヒーに★★★

●多田有花
何かしら華やぐ心地春の大雪★★★
早春の雪野を鉄路は伸びゆけり★★★★
春淡し雪の甍の連なりて★★★

●桑本栄太郎
野と空の境目見えず春の雪★★★
ほつほつと頬に降りいて風花す★★★
<故郷の追憶より>
引き潮の寄せて遠のき磯菜摘む★★★★

●古田敬二
春の花舗赤橙黄緑青藍紫★★★
春の雪米寿を祝いに行くときに★★★
春の雪大洋へゆっくり長良川★★★

●小西 宏
音消えて人ひとり行く雪の朝★★★
雪を掻く青き光をもろ共に★★★★
雪橇に子ら雪だらけ春の土手★★★

●高橋秀之
春浅し小鳥の声で目が覚める★★★
真っ白な雲を纏いて春の富士★★★

薄氷踏みしめ歩く子らの列★★★★

●川名ますみ
陽も風も去りけり春の粉雪に★★★

仰臥してカーテン越しの雪明り★★★★
室内に届く雪明りは意外と明るいもの。雪明りが届けば、仰臥にも心が弾む。(高橋正子)

室内に届く雪明りは、意外に明るいもの。

帰りには二個に増えたる雪だるま★★★