2月7日(金)

 東山・法然院
★春寒し木を打ち人を呼び出せり   正子
暦の上では春になったとはいえ、まだ肌に感じる空気は冷たい初春に、木を打つ音が山に響いています。今まで家のなか中心に静かに暮らしていた人々が、その音を聞き外に出てみようかという気持ちになっている情景でしょうか?これから、日に日に暖かくなり人々の暮らしにも活気が出てくることでしょう。(井上治代)

○今日の俳句
早も咲ける菜の花の丈低かりし/井上治代
春も暦ばかりと思えるのに、早も菜の花が咲いて黄色い光を返している。先駆けの菜の花らしく「丈低かりし」であって、実在感がある花となっている。(高橋正子)

○芽柳

[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年1月26日)]_[芽柳/横浜・四季の森公園(2012年3月22日)]

★古川にこびて芽を張る柳かな 芭蕉
★ほつかりと黄ばみ出でたり柳の芽 暁台
★芽柳のおのれを包みはじめたる/後藤比奈夫
★芽柳や鶏飼ふ艀菜をきざむ/皆川盤水
★芽柳の色となりつゝ風と合ふ/稲畑汀子
★芽柳や傘さし上げてすれ違ふ/満田春日
★退屈なガソリンガール柳の芽/富安風生
★芽柳や声やはらかく遊びをり/遠藤千鶴羽
★東京の石神井恋し柳の芽/清水淑子

 めやなぎ(芽柳)とは、早春、芽の出始めた柳。芽吹き柳。芽張り柳。[季]春。《―の奥たのもしき風情かな/鬼貫》(三省堂 大辞林)
 ヤナギ(柳、英語: Willow)は、ヤナギ科 Salicaceae ヤナギ属 Salix の樹木の総称。世界に約350種あり、主に北半球に分布する。日本では、柳と言えば一般にシダレヤナギを指すことが多い。落葉性の木本であり、高木から低木、ごく背が低く、這うものまである。葉は互生、まれに対生。托葉を持ち、葉柄は短い。葉身は単葉で線形、披針形、卵形など変化が多い。雌雄異株で、花は尾状花序、つまり、小さい花が集まった穂になり、枯れるときには花序全体がぽろりと落ちる。冬芽は1枚のカバーのような鱗片に包まれ、これがすっぽりと取れたり、片方に割れ目を生じてはずれたりする特徴がある。これは、本来は2枚の鱗片であったものが融合したものと考えられる。果実はさく果で、種子は小さく柳絮(りゅうじょ)と呼ばれ、綿毛を持っており風に乗って散布される。 なお、中国において5月頃の風物詩となっており、古くから漢詩等によく詠み込まれる柳絮だが、日本には目立つほど綿毛を形成しない種が多い。
 日本では、柳といえば、街路樹、公園樹のシダレヤナギが代表的であるが、生け花では幹がくねったウンリュウヤナギや冬芽から顔を出す花穂が銀白色の毛で目立つネコヤナギがよく知られている。

◇生活する花たち「福寿草・菜の花・紅梅」(横浜日吉本町)

2月7日

●小口泰與
渓流の魚の魚拓や春浅し★★★
春めくや大きく動くチワワの尾★★★
春めくや榛名の嶺に雲流る★★★

●下地鉄
花椿落ちて咲きいる重さかな★★★
うっすらと濡れるほどに蕗の薹★★★

吹く風に茅花の揺れ従わず★★★★
茅花は晩春のころ花穂をつけるが、沖縄の今はそんな気候かと思いつつ読んだ。丈の低い茅花は、風の方向に靡くとも限らない。それぞれに揺れる白くふんわりした茅花が魅力だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
風花の青にゆだねる乱舞かな★★★
ものの芽の青き枝先のびにけり★★★
声そろえ部活少女や寒戻る★★★

●多田有花
森歩く早春の雪降る中を★★★
飛行機雲余寒の空へ鮮やかに★★★★
背景は若草色に冴返る★★★

●佃 康水
春雪や朱の回廊の屋根清め★★★

黄をふふみ三椏銀の蕾解く★★★★
早春の花である三椏は銀色の蕾をつけてから開くまでが長い。蕾がはじけると黄色い手毬のような可憐な花となる。今蕾にその黄色が見えた。
春の便りでもあり、うれしいことだ。(高橋正子)

抜糸終え試歩へゆく友草萌ゆる★★★

●小西 宏
竹の葉の触れ合う音や春浅し★★★★
竹の葉の触れ合う音は春寒い風の音をよく感じさせてくれる。陽射しは明るくなったものの、吹く風はまだ冷たい。春は名のみ。(高橋正子)

早春の空に張る枝鳥の声★★★
早春を走る身体を温めつつ★★★

●古田敬二
冴え返る西空に月尖りおり★★★
カレンダーに大きな赤丸今日立春★★★
ポケットから手を出し歩く今日立春★★★