1月29日(水)

★あたらしき薪を傍積み暖炉燃ゆ   正子
暖炉の中の薪の炎がゆらゆらと燃え盛り、ほっこりとした優しい暖かさに包まれています。傍には新しく用意された薪も積まれ、一層何とも心豊かな安らぎを感じます。 (佃 康水)

○今日の俳句
満潮へ鴨の二陣の広く浮く/佃 康水
満ちて来る潮に向かって、二陣の鴨の群れが広がり浮かんでいる。豊かな潮と浮き広がる鴨の群れが色彩的にもよい風景である。(高橋正子)

○笑顔(はるさざんか)

[笑顔/大船フラワーセンター]

★山茶花のこゝを書斎と定めたり/正岡子規
★山茶花は咲く花よりも散つてゐる/細見綾子
★山茶花の明るき日和たまはりぬ/稲畑汀子

「笑顔」という名前に思わず頬が緩む。「春山茶花」と呼ばれるものだが、花弁がひらひら砕けて、いかにも山茶花に系を引く花らしい。ピンク色で幼子の笑顔のような花だ。言葉として「笑顔」はあまりに俗すぎるが、幼子の笑顔ならば、許されよう。

▼大人のためのツバキ情報とホームページの作り方 by SeiSuzuk「つばきノート」より:
 昔は、冬になると園芸雑誌に冬のツバキの特集があったが、現在ではツバキの記事はほとんど雑誌からなくなった。しかし、冬に大型の花が咲く花木はほとんどないので、ツバキが冬に咲く貴重な花木であることは変わりがない筈である。恐らくは、ツバキ園芸関係のオピニオン・リーダーがそうした熱意を失ったのかもしれない。
 冬のツバキといえば、カンツバキの勘次郎が有名であるが、勘次郎の花期は12月から1月初旬であり、1月下旬には終わってしまう。冬に一番花が長い品種は笑顔である。笑顔はハルサザンカである。ツバキ愛好家はサザンカをやや別種扱いするが、ハルサザンカは、サザンカとツバキの交雑種とされ、広い意味ではツバキの品種となる。ツバキの多くの品種を発表している米国のヌチオ社も、また多くのサザンカ品種を販売しており、ユーレタイドは有名な品種である。ユーレタイドは花も多く優れた品種であるが、サザンカであるので花期は初冬までである。
 庭に早春咲の花は多くは必要がないので、1本か2本あれば、冬の庭はにぎわうのである。笑顔は1月初旬から3月まで咲く、優れた品種であり、お奨めの品種である。他のハルサザンカより多花性で、大輪のピンクの鮮やかな花色は見事である。寒さで花弁が痛むことも少なく、花は咲き終わると落花するので、咲き終わった花が茶色く残ることはない。
 ハルサザンカ類は、冬季の花木として再認識されてよいと思われる品種である。
▼旅行のクチコミサイト フォートラベル「あんみつ姫さん」より:
大船フラワーセンターの椿園に行ってみました。たくさんの椿・サザンカが花開いている中、「笑顔」という名前の、可愛らしい花がたくさん咲いていました。はるさざんか「笑顔」 ピンク色した大輪の花。その名のとおり、笑顔いっぱいで迎えてくれた気がします。そのほか、藪椿・侘び助・大輪の椿など、いつもはひっそりとした椿のブースですが、この時期だけは、紅やピンク・白などの花々を咲かせ、園内を歩く人をここに招き入れているようでした。

◇生活する花たち「獅子頭(寒椿)・素心蝋梅・老鴉柿(ロウヤガキ)」(東京・小石川植物園)

1月29日-30日

1月30日

●小口泰與
山茶花のむらがりこぼる風の街★★★
盆栽の松に鋏や息白し★★★
菓子を売り有為転変の四音かな★★★

●多田有花
寒晴れに甍の波の光りおり★★★

雨降って寒の終わりの近づきぬ★★★★
このごろの天気を見ていると、たしかに一雨ごとに寒の寒さが緩んでいるようだ。その事を技巧を使わず句にした良さがある。(高橋正子)

寒の雨音楽を聴き絵を描く★★★

●桑本栄太郎
<故郷の冬の追憶>
寒凪のはるか遠きや隠岐の島★★★

海苔掻きや潮のうねりをかわしつつ★★★★ 
天然の海苔は岩についている。潮はときどき、大きなうねりを作って寄せてくるときがあるが、そのときは待ち、うねりが逃げてまた海苔を掻くことを繰り返す。「うねりをかわしつつ」がリアルで、潮の様子が見え、磯の香りがしてくるようだ。(高橋正子)

氷柱融け楽となりたる軒端かな★★★

●河野啓一
ひさかたの光かそけく寒の雨★★★
夜通しの雨や草木も雨待つ心★★★
友の顔みざるデイの日氷雨かな★★★

1月29日

●小口泰與
山風にさらさる梢(うれ)の木の葉かな★★★
利根川の威の白波や虎落笛★★★
白波の広ごる湖やおでん鍋★★★

●多田有花
晩冬や土鍋で昼の飯を炊く★★★★
「昼の飯を炊く」生活もあるのだ。日が高く昇り、朝の寒さがとれたころ、ゆっくりと土鍋で飯を炊く。土と火の生活に古代に帰ったような気持ちになるのだろうか。(高橋正子)

快晴の空を仰げば春近し★★★
春隣る空気を胸に吸い込みぬ★★★

●桑本栄太郎
炊きたての白飯にかけ寒卵★★★

探梅の空の青さよヘリコプター★★★★
探梅の青空にリコプターが一機飛んでいる。何かの目的で飛んでいるヘリコプターだが、見る側からすれば、このきれいな青空に、なぜ居るんだ、と思う。(高橋正子)

青空へつぼみふふむや春隣り★★★

●河野啓一
冬麗の空の広さよ明るさよ★★★★
冬とは言え、麗らかな日和。空の広々と、明るいのが嬉しくなる。日脚が伸びたこの頃は、春を待つ気持ちも加わって、特に嬉しくなる。(高橋正子)

青空に飛行機雲や春近し★★★
ポリポリと沢庵噛んで春隣★★★

●古田敬二
陽光の春の気配に包まれて★★★
眩しき陽高きにありて春隣★★★
森に座す落葉の下に日の温み★★★★