12月26日

●小口泰與
釣竿を磨きながむや日脚伸ぶ★★★
空風や番茶と飴を卓上に★★★★
空風の吹く寒い日、テーブルには番茶と飴が置かれている。寒い日は飴を一つほおばって、お茶でも暖を取りたくなる。(高橋正子)

米を炊く水のやわしや冬落暉★★★

●祝恵子
浮かべ入れ香りと遊ぶ柚子の風呂★★★★
「香りと遊ぶ」がいい。湯に浮かんだ柚子wあちこちやりながら、その香りをたのしむ。楽しむより香りで遊ぶ。きれいな柚子風呂。(高橋正子)

クリスマス久しぶりに聞く子らの声★★★
冬野菜漬物講座の掲示板★★★

●桑本栄太郎
冬ざれの竹林透かし風抜ける★★★
夕暮れの絮の灯かりや枯尾花★★★★
夕暮れの枯尾花が、ほうっと灯りが点ったように浮き上がって見える。幻想的な風景。(高橋正子)

行く年のつなぐ縁(えにし)や賀状書く★★★

●多田有花
椿咲き初め快晴のクリスマス★★★★
快晴の空の下に、椿がくっきりと咲き始めた。折しもクリスマス。日本のクリスマスは椿の咲き始めで迎えられることも。(高橋正子)

ばりばりと壁より剥がす古暦★★★
数え日の河原を濡らす静かな雨★★★

12月25日

●小口泰與
朝霜や畑を横切る孕み犬★★★
冬草や伊香保の街は磴の街★★★
白波をあやつる風や切炬燵★★★

●高橋秀之
ネクタイを締める指先悴んで★★★
息白し目覚めて初めの深呼吸★★★
冬木立空の青さが見え隠れ★★★

●多田有花
青空は冬六甲の上にあり★★★
泉州も阿波も一望冬の晴れ★★★

門松の松採り戻る人と会う★★★★
門松用に青々とした松を採って帰る人に会うと、現実正月がすぐそこに来ていることを知らされる。松の勢いに正月を迎える気持ちも昂る。(高橋正子)

●桑本栄太郎
医科大の構内めぐる冬木かな★★★★
医科大学をしんと取り囲む冬木である。冬木のりんとした力強さをさっぱりと詠んでいる。(高橋正子)

<桂川・鴨川・木津川>
三川の集う中洲や枯野原★★★
それぞれの顔としぐさや賀状書く★★★

●小西 宏
冬すずめ庭の小さな水に触れ★★★

杜深き神楽の笛も年用意★★★★
杜の奥から聞こえる神楽の笛。耳をそばだてれば、これも神社の年用意の一つと納得する。正月もそこまで来ている。(高橋正子)

枯枝と木の葉色なす日の残り★★★

●古田敬二
(ボヘミヤ平原をバスで)
ボヘミヤの森赤々と冬落輝★★★★
ボヘミアの森に落ちる夕日が赤々と燃える景色に、力強く温かな抒情がある。「ボヘミアの森」が効いている。(高橋正子)

白樺の幹を照らして冬落輝★★★
ボヘミヤの夕暮れ池に薄氷★★★

12月26日(木)

★水仙の香を吸いながら活けており  正子
花を活ける折は、いつもその香りをききますが ―― こと水仙の香は、花の少ない季節に、清楚な佇まいから立ちのぼるゆえでしょうか、小さな驚きを誘います。うららかな冬の日、水仙を活ける歓びに、ご一緒させて頂いたようです。正子先生のブログに教わりました「水仙の糊」の香りも、想像の内にひろがってまいります。(川名ますみ)

○今日の俳句
冬晴れて登ることなき山のぞむ/川名ますみ
冬晴れに高い山が望める。その山に自分は決して登ることはできないが、その山の姿のすばらしさに、登ることはかなわないが、せめて心だけでも登ってみたい思いや憧れがある。(高橋正子)

○きちじょうそうの実

[きちじょうそうの実/東京白金台・自然教育園]_[きちじょうそうの実と花/東京白金台・自然教育園]

★解夏草を持ちて僧来る海女の家/石原八束
★吉祥草咲き出でて世をおそるるや/青柳志解樹
★吉祥草日暮は早くなりにけり/佐久間耕

キチジョウソウ(吉祥草、学名:Reineckea carnea)は、百合(ゆり)科キチジョウソウ属の常緑多年草。日本国内では関東から九州、また中国の林内に自生し、栽培されることもある。地下茎が長くのびて広がり、細長い葉が根元から出る。花は11月頃に咲く。ヤブランにやや似た穂状花序で茎は紫色、花は白い花被が基部で合生し筒状となっている。果実は赤紫色の液果。花が咲くことが少なく、たまに花が咲くときにはよいこと(吉事)があると言われたため、吉祥草の名が付いた。実際には毎年秋に花を咲かせるのだが、生い茂った葉に隠され、葉をかき分けなければ目に付かないことが原因のようだ。解夏草はキチジョウソウの別称。

◇生活する花たち「冬椿①・冬椿②・山帰来の紅葉」(横浜・綱島)