10月19日(土)

★うす紙がかりんをかたちのまま包む  正子
かりんの果実は楕円形をして大型、芳しい香りがあります。うす紙をとおして香る香りとかりんの形や手触りを御句から感じます。(多田有花)

○今日の俳句
澄む水を渡りたどりて山下りぬ/多田有花
沢の流れを伝い、また橋を渡って山を下った。沢の水はどこも澄んでいる。秋の山のひんやりとした空気も合わせて感じられる。(高橋正子)

○錦木(ニシキギ)

[錦木/横浜日吉本町]

★錦木の葉と実の少し違う赤/高橋正子★

ニシキギ(錦木、学名:Euonymus alatus)とはニシキギ科ニシキギ属の落葉低木。庭木や生垣、盆栽にされることが多い。日本、中国に自生する。紅葉が見事で、モミジ・スズランノキと共に世界三大紅葉樹に数えられる。若い枝では表皮を突き破ってコルク質の2~4枚の翼(ヨク)が伸長するので識別しやすい。なお、翼が出ないもの品種もあり、コマユミ(E. alatus f. ciliatodentatus、シノニムE. alatus f. striatus他)と呼ばれる。葉は対生で細かい鋸歯があり、マユミやツリバナよりも小さい。枝葉は密に茂る。 初夏に、緑色で小さな四弁の花が多数つく。あまり目立たない。 果実は楕円形で、熟すと果皮が割れて、中から赤い仮種皮に覆われた小さい種子が露出する。これを果実食の鳥が摂食し、仮種皮を消化吸収したあと、種子を糞として排泄し、種子散布が行われる。紅葉を美しくするために西日を避けた日当たりの良い場所に植える。 剪定は落葉中に行う。よく芽をつける性質なので、生垣の場合は強く剪定してもよい。 栽培は容易。名前の由来は紅葉を錦に例えたことによる。別名ヤハズニシキギ。

◇生活する花たち「十月桜・白ほととぎす・野葡萄」(横浜・東慶寺)

10月18日-19日

10月19日

●迫田和代
お終いの皿の上なる青葡萄★★★
摘菜に上から水をザーザーと★★★

コスモスやコスモスらしく風を受け★★★★
コスモスは、いかにもコスモスらしく風を受けている。コスモスを吹く風はコスモスをコスモスらしくさせているのだ。言われて、然りだが、和代さんの真骨頂の句だと思う。(高橋正子)

●小口泰與
振り向くと利鎌の月に退さりけり★★★
夕映えや秋のちょうちょう急ぎゆく★★★
上州の風の無き日の種なすび★★★★

●多田有花
鉢植えの菊を運びし軽トラック★★★
雨あがり新高梨を買い求む★★★

十月桜雨の滴を宿し咲く★★★★
消え入りそうに咲く十月桜が、雨の滴を宿している。「滴を宿す」というが、十月桜は、滴に花が包まれている感じさえする。そんな美しさがある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
山崎の隘路にコスモス畑かな★★★
大阪駅ビルの谷間の秋日影★★★
実ざくろの赤や芦屋の家々に★★★★

●祝恵子
腰落とせアナウンスの声運動会★★★
秋苗を植えれば学童帰りゆく★★★

しりとりをしつつ帰る子秋の暮★★★★
女の子たちであろうか。秋の暮をきりもないしりとり遊びをしながら帰る子どもたちが、かわいらしく、ほほえましい。作者の子らへの眼差しがやさしい。(高橋正子)

10月18日

●小西 宏
台風の遥かに去りし波の音★★★
海暮れて紅灯す芒の穂★★★
月昇る遥かに海を広げつつ★★★★
「海を広げつつ」に、新鮮な驚きがあり、臨場感がでた。月が昇るにしたがって、遥かの海を照らしていく。海の波がはっきり見てくる。少し寂しい月の夜である。(高橋正子)

●小口泰與
実むらさき清濁流す大河かな★★★
草紅葉志賀高原の空青し★★★★
志賀高原も草紅葉に彩られるようになった。澄んだ青空と草紅葉の対比にやさしさがある。(高橋正子)
やわやわと花そばゆるる山の裾★★★

●佃 康水
渋皮煮子らへ届けむ栗を剥く★★★★ 
栗の渋皮煮は手間暇がかかる。渋皮を破らないよう丹念に鬼皮をむき、剥いた栗を重曹で渋抜きをし、さらに砂糖を入れてことこと煮、それを一晩、二晩おいて味を含ませる。子らへの思いが、ひとつひとつの栗に、また作業に込められている。(高橋正子)

傷付けず栗剥き終えて渋皮煮★★★
明けやらぬ琵琶湖へ細き秋時雨★★★

●多田有花
部屋の戸をみな閉め切って秋深し★★★
ホットケーキに蜂蜜とろり秋の暮★★★
後の月テニスコートで見上げおり★★★

●下地鉄
秋風にゆられて返す穂波かな★★★
きりもなくよせる波音浜の秋★★★
その人から名の消え行く老いの秋★★★

●桑本栄太郎
浮かれ来るごとき青空野分晴れ★★★
朝日透き線路に沿いて芒の穂★★★
秋空へ赤きクレーンや高槻駅★★★