10月6日(日)

★鵙猛りそれより空の真っ青に  正子
鵙の鋭い鳴き声が響き、今まで以上に秋空の澄んだ青色が際立って見えます。聴覚から視覚へと感性をはたらかせていて、奥深い句だと思いました。 (井上治代)

○今日の俳句
早朝の山懐の霧深し/井上治代
大洲盆地らしい私の好きな風景だ。早朝でなくても、松山から峠を越えるあたりから、道は流れるような霧に包まれることもあった。(高橋正子)

○藪豆(やぶまめ)

[やぶまめの花/横浜・四季の森公園]

★藪豆の花と実を見る快活に/高橋信之
★秋の茂りやぶまめの花絡みつき/高橋正子

 ヤブマメは、マメ科ヤブマメ属のツル性一年生草本で、学名は、Amphicarpaea edgeworthii var japonica。北海道から九州、朝鮮から中国に見られ、林縁や草原などに生育する。夏から秋にかけて花を咲かせ、実をつけるが、地中にも閉鎖花を付ける。茎の一部から地中に枝が伸び、土の中で果実を稔らせる。この果実の中には種子は1つしかなく、地上部に形成される種子よりも大きい。地上部の種子は有性生殖であるので多様な性質を持っており、新たな場所へと散布されることを期待している。地下に形成した種子は、単為生殖であるので自らと同じ遺伝子を持っており、まずは来年への存続を確保するという戦略である。このような戦略は、来年もヤブマメが生育可能な立地条件であることがかなりの確度で予想される場合に成り立つ。ヤブマメの生育地は、そのような、来年も一年性のツル植物が生育可能な立地である。 茎は細く,下向きの細い毛がある。葉は3小葉に分かれた複葉で,基部に托葉がある。頂小葉は広卵形または卵形で,長さ3~6cm。2型花をつける。開花する花は8~10月に葉腋(ようえき)から出る短い総状花序に2~8個がつき,紫色の蝶形花で,長さ15~20mm。閉鎖花は花弁がなく,葉腋に1個だけつく。果実は多くは閉鎖花から熟し,地上と地中とにできる。
 北海道では山菜として食され、栽培化も試みられた比較的身近な植物になっている。特にアイヌの人たち好まれ、味は”甘栗”のようで炊き込みご飯や煮物にした『アイヌ民族博物館だより』。栄養成分分析によるとカリウムが多く含まれ、ついでリン、マグネシウムほかとなっている『伝承有用植物』。アイヌの人たちがいつ頃から食用にしていたのか分からないが、万葉集(4252)では別れがたい防人の想いをノイバラに絡みつくマメの姿に重ねて歌っており、このマメはヤブマメとされ、昔からその存在は知られていたようだ。

◇生活する花たち「ノダケ・シロバナサクラタデ・ユウガギク」(東京白金台・国立自然教育園)

10月6日

●河野啓一
マスカット輝く波の山陽路★★★
古里の秋果積み上げ道の駅★★★
秋雨のそぼ降る中に古家かな★★★

●小口泰與
揺れ動く幾重の影や秋桜★★★★
秋風に揺れて、日差しの中に群れ咲くコスモスを、その影をとらえて上手く表現している。写真に見るような手法が効果的。(高橋正子)

田一枚ここのみ倒る稲穂かな★★★
緑なす赤城の肌や野分晴★★★

●高橋秀之
赤とんぼ後を追いかけ追いつかず★★★★
赤とんぼは人に親しく飛んでくるかと思えば、すっと先へ飛んで行ってしまう。追いかけるけれど、追いつけない。自由に飛ぶ赤とんぼと人のふれあいに、妙味がある。(高橋正子)

赤とんぼ目線の先をすっと飛ぶ★★★
羽ばたきもゆったりして飛ぶ秋の蝶★★★

●黒谷光子
秋草に浮きて沈みて蝶二つ★★★
縺れつつ野川を渡る秋の蝶★★★
秋蝶の黄の小さきは低く飛ぶ★★★★

●佃 康水
檀の実爆ぜて夕日へ色深む★★★
壺の中爆ぜて華やぐ檀の実★★★
稲掛けに弾む家族へ空青し★★★★

●小西 宏
柿の実の空は今年もとても広い★★★★
雨冷えの浅草あたり縄のれん★★★
澄める夜の酒や秋刀魚の一夜干★★★