8月6日(火)/原爆忌

★大朝焼車一台ずつ染まる  正子
壮大な光景です。ずらっと駐車している車、マンションでしょうか。高階からそれを眺めておられると、朝焼けの茜色に車がそれぞれ染まっていきます。しばらく佇んでご覧になったのでしょう。(多田有花)

○今日の俳句
献水の竹筒青き原爆忌
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)

○鬼灯(ほおずき)

[鬼灯/横浜・四季の森公園]

★鬼灯の少し赤らむぞなつかしき/正岡子規
★鬼灯の実の大小はまだ見せず/稲畑汀子
★鬼灯を摘む袖口と襟元と/高橋将夫
★結ひ上げし髪に鬼灯さす乙女/水原春郎
★自画像に鬼灯赤く描き添へし/宮津昭彦

 生家には、築山といって庭石や灯籠や小さい池に、松、椿、紅葉といった木を配しているところがあって、そこに先祖を祀る小さい碑のようなものがあるのだが、そのわきにほおずきが植えてあった。お盆のころちょうど熟れるので、植えられたのであろうが、このほおずきは、きれいに熟れかけたと思うと、袋が虫にくわれて網目状になってしまうのが、ほどんど。中の実の皮と破らないように種を出して口に含めば、鳴るというもの。しかし、これがうまくいったことはなかった。かなりの技がいるのであろう。浅草のほおずき市に売られるような完璧なほおずきを見てみたいものと思っていた。
 東京・下町の夏の風物詩「ほおずき市」が7月9日、東京都台東区の浅草寺で始まった。本堂周辺に並んだ露店は約220軒。朱色が鮮やかな丹波ホオズキが売れ筋で、1鉢2500円。かつて薬効があるとして用いられた、緑色の千成ホオズキも人気という。9、10日は参拝すると4万6千日分の御利益があるとされる浅草寺の功徳日。ほおずき市は10日夜まで開かれ、浅草観光連盟は約60万人の人出を見込んだ。

★ほおずきの玲瓏と熟れ原爆忌/高橋正子

◇生活する花たち「あさざ・露草・うばゆり」(東京白金台・自然教育園)

8月6日(火)


●小口泰與
雲海の忽とうごめき渦巻けり
頂上やあびる大気と時鳥
ラベンダーの香のひろごれる山の駅

●古田敬二
野に立ちて齧るトマトに日の温み
先端を振り上げ伸びゆくかぼちゃ蔓
鍬先が跳ね返される夏の畑

●多田有花
蝉捕らえしばらく眺め放ちやる
街ほっと一息つくや驟雨あと
青空に雲はや立ちぬ広島忌

●藤田裕子
鐘の音の地上清めし原爆忌
いそいそと母の手を引き浴衣の児
大夕焼和太鼓ふるわす女衆

●桑本栄太郎
<鎮魂の三句>
献水の竹筒青き原爆忌
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)

炎ゆれ篤き誓いや広島忌
君逝きて早やも七年芙蓉咲く

●佃 康水
大夕立叩き跳ねたる万の椅子
原爆慰霊祭に用意された万の椅子。突然の大夕立が椅子を叩き、跳ね上がる。その夕立の水が目に見える。壮観ではなく壮絶となる。(高橋正子)

たそがれて祈りの影や夏終わる
梧桐の実やくれないの莢ひらく

●小西 宏
琉球の甍の太し夏の雲
谷戸ゆけば夏蜩の四方より
肥え膨らむ青団栗の炎天下