●河野啓一
紫陽花の軒端に雨水たっぷりと★★★★
紫陽花が咲く軒端に雨水がたっぷりと溜まっている。たっぷり溜まった雨水がゆたかで涼しい。(高橋正子)
梅雨寒の庭に雨傘挿して出る★★★
雨受けて葉蔭に育つ青柿一つ★★★
●小口泰與
あけぼのの赤城を映す植田かな★★★
青空の足尾銅山茂りかな★★★
万緑や明智平のロープウェーイ★★★
●藤田裕子
刈り込まれ青葉の輝き街筋を★★★
雨に咲く紫陽花の青無垢の青★★★
視野を越え小さき夏蝶木々に消ゆ★★★
●桑本栄太郎
大阪府三島郡とや青田波★★★
青梅雨や駅のホームの島本町★★★
サントリー大山崎の青嶺かな★★★
★ほうたるの火が飛ぶ風が吹き起こり 正子
○今日の俳句
新緑の重なる先に飛行雲/高橋秀之
新緑のつややかな緑と、空に真っ白に描かれた飛行機雲の色彩的な対比がみずみずしい。(高橋正子)
○雪ノ下

[雪ノ下/横浜日吉本町]
★何代の灯篭の苔に雪ノ下/正岡子規
★長き根に秋風を待つ鴨足草/高浜虚子
★夕焼けは映らず白くゆきのした/渡辺水巴
★ゆれそめて雨となりけり鴨足草/今井つる女
ユキノシタ(雪の下、学名:Saxifraga stolonifera)はユキノシタ科ユキノシタ属の植物。本州、四国、九州及び中国に分布し、湿った半日陰地の岩場などに自生する常緑の多年草である。人家の日陰に栽培されることも多い。葉は円形に近く(腎円形)、裏は赤みを帯びる。根本から匍匐枝を出して繁殖する。開花期は5-7月頃で、高さ20-50 cmの花茎を出し、多数の花をつける。花は5弁で、上の3枚が小さく濃紅色の斑点があり基部に濃黄色の斑点があり、下の2枚は白色で細長い。花弁の上3枚は約3-4 mm、下2枚は約15-20 mmである。本種の変種または品種とされるホシザキユキノシタには、こうした特徴は現れず、下2枚の長さは上3枚と同じくらいとなる。開花後、長さ約4 mmほどの卵形の果(さくか)を実らせる。雪が上につもっても、その下に緑の葉があることから「雪の下」と名付けられた。また、白い花を雪(雪虫)に見立て、その下に緑の葉があることからとする説がある。このほか、葉の白い斑を雪に見立てたとする説もある。
◇生活する花たち「あさざ・山紫陽花・コアジサイ」(東京白金台・自然教育園)

●小口泰與
じゃがいもの花や赤城は靄の中★★★★
雄々しい赤城の山も靄の中に消え、薄紫のじゃがいもの花が優しく咲く。じゃがいもの花が咲く頃は、雨の後など靄がかかりやすい。季節がよく捉えられている。(高橋正子)
夕映えに包まる雲や桐の花★★★
驟雨にも列を乱さず蟻の列★★★
●祝恵子
厨にはまだ濡れ輝いてミニトマト★★★
風のでて布袋草かすかに揺れる★★★
親来れば子つばめ口となる三羽★★★
●河野啓一
長雨に雨水湛えて合歓の花★★★
百合白く行列したるデイの庭★★★
ようやくにいつものような梅雨となり★★★
●多田有花
梅雨の蚊にしたたか喰われ目覚めけり★★★
雨濡らす梅雨の緑のいきいきと★★★
低山の頂隠し梅雨の雲★★★
●桑本栄太郎
明日ありと希む高さや立葵★★★★
立葵はまっすぐ茎が立って花が咲き昇る。空に咲き昇る花の光景は、「明日がある」と希望をもたせてくれる。(高橋雅子)
雨乞いの滋賀の山並み遠きかな★★★
草叢の被う流れや夏の川★★★
●小西 宏
子らの畑に茄子の実太くぶら下がる★★★
梅雨晴に玉蜀黍の花盛ん★★★
病院の裏手に夏の野の花々★★★
●高橋秀之
店内に立ち込む鮑焼く香り★★★
通勤の鞄が重し梅雨の朝★★★
葉桜の雨に打たれて色映える★★★
●小口泰與
石竹や髪をなびかす女学生★★★
青空へとけて声のみ夏ひばり★★★
夕さりや畔の十字の余り苗★★★
●桑本栄太郎
風が吼え木が吼え朝の青嵐★★★
西山の隠れ見えざる白雨かな★★★
坂道をつたい小路の夏出水★★★
●河野啓一
荒梅雨も天の恵みと受け止める★★★
福祉士の笑顔嬉しき梅雨の朝★★★
青簾茂るを夢見てゴーヤ植う★★★
●小西 宏
ベランダの手摺一列燕の子★★★
親鳥に急かされ空へ燕の子★★★
梅雨空に揺れて清しき寒枯藺(かんがれい)★★★
●佃 康水
浴衣着の少女ら駅に待ち合えり★★★★
少女たちは駅で待ち合わせ、夏祭りに出かけるのだろう。浴衣をすがすがしく着て友達が来るのを待っている。楽しそうなこと。(高橋正子)
緑陰の葉擦れの音へ将棋指す★★★
田の隅へ固まりそよぐ余り苗★★★
●川名ますみ
青梅雨を語るひと日よ伯父の来て★★★
葉も枝も裏を見せたる青嵐★★★
青あらし世界の回る音がする★★★