5月20日(月)

★竹藪にあまりに明るししゃがの花  正子

○今日の俳句
竹皮を脱ぐや常なる一幹に/桑本栄太郎
下五の「一幹に」がいい。今年の竹の誕生と成長を言葉の意味でも、また「イッカン」という音の響きでも。(高橋信之)

○朴の花

[朴の花/横浜都筑区ふじやとの道]

★朴散華すなはち知れぬ行方かな/川端茅舎
★朴咲く山家ラヂオ平地の声をして/中村草田男

ホオノキ(朴の木、Magnolia obovata、シノニム:M. hypoleuca)はモクレン科の落葉高木。
大きくなる木で、樹高30m、直径1m以上になるものもある。樹皮は灰白色、きめが細かく、裂け目を生じない。葉は大きく、長さ20cm以上、時に40cmにもなり、葉の大きさではトチノキに並ぶ。葉柄は3-4cmと短い。葉の形は倒卵状楕円形、やや白っぽい明るい緑で、裏面は白い粉を吹く。互生するが、枝先に束生し、輪生状に見える。花も大型で大人の掌に余る白い花が輪生状の葉の真ん中から顔を出し、真上に向かって開花する。白色または淡黄色、6月ごろ咲き芳香がある。ホオノキは花びらの数が多くらせん状に配列し、がく片と花弁の区別が明瞭ではないなど、モクレン科の植物の比較的原始的な特徴を受け継いでいる。果実は袋果で、たくさんの袋がついており、各袋に0 -2個の種子が入っている。葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司、朴葉餅などに使われる。また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌、朴葉焼きといった郷土料理の材料として利用される。葉が大きいので古くから食器代わりに食物を盛るのに用いられてきた。6世紀の王塚古墳の発掘時には、玄室の杯にホオノキの葉が敷かれていたのが見つかった。材は堅いので下駄の歯(朴歯下駄)などの細工物に使う。また、水に強く手触りが良いため、和包丁の柄やまな板に利用されたり、ヤニが少なく加工しやすい為、日本刀の鞘にも用いられる。樹皮は厚朴または和厚朴といい、生薬にする。

朴の花を見たのは、一昨年が初めて。横浜市営地下鉄北山田駅を出ると、「ふじやとの道」という緑道がある。行きあたりに池のある徳生公園があり、その公園の小高い丘にある。5月16日には、白い朴の花が咲いていた。花は真っすぐを向いて咲くので、しかも高木なので、梯子をかけてでもないと真上からの花は見えない。ところが運よく、朴の木よりも高く丘に道が付いている。その道を上り、朴の花を見ることができた。花の良い香りもする。これほどまでに匂うとは思わなかった。朴葉寿司、朴葉焼きなど山国の郷土料理であろう。朴のまな板は、台所にあったし、朴の高下駄は、兄なども新制高校だったが、戦後まもないときだったので通学に履いていた。
下駄で思い出すのだが、下駄の生産では日本一とう松永という町が、生家からバス三十分ほど行ったところにあった。塩田は廃止されたが、塩田と下駄で有名で、小さな松永湾には下駄に使う松の木を沢山浮かばせてあった。今でもそうだろう。お盆が来ると田舎の子どもたちは下駄を新調してもらった。下駄の歯がすり減ってなくなるまで履いた。大人になっても、サンダルではなく下駄を愛用したときもあった。日本の夏は、素足に履けば心地よいのは下駄である。

★朴の花栃の花見てゆたけしや/高橋正子
★朴の花わが身清めて芳しき/高橋正子

◇生活する花たち「釣鐘草・薔薇・卯の花」(横浜日吉本町)

5月20日(月)

●河野啓一
走り梅雨西の空からやってくる★★★
水ひかれ山の畑に蛙鳴く★★★
きしょうぶと並び爽やかかきつばた★★★

●小口泰與
武蔵野の丘いちめんや昇り藤★★★★
昇り藤は、ルピナスとも呼ばれる。ちなみに避雷針を発明したフランクリンが好んでポケットに種を入れて歩くところに播いたという逸話がある花だ。武蔵野の丘に一面に咲く色とりどりの花が夢見るようで美しい。(高橋正子)

業平忌星影とおき時つたえ★★★
沛然に矢車草の傾ぎけり★★★

●祝恵子
交番の横のアーチの薔薇は黄色★★★★
交番の横に薔薇のアーチができて、殺風景な交番により親しい交番になった。しかも、薔薇の色が黄色というのが、気が利いて一味違っている。(高橋正子)

花時計夏の予定は少し崩れ★★★
祈願する宮の奥より青葉風★★★

●桑本栄太郎
洗車機の泡の車中や夏きざす★★★
竹皮を脱げば天まで空に起つ★★★
買物を待ちて車中の薄暑かな★★★

●古田敬二
葉桜の下でバス待つ旅終わる★★★★
葉桜の下は、意外にも安らいだ気持ちになる。初夏の旅も終り、旅の充足感と安堵感がある。(高橋正子)

高野山
老杉を見あげる初夏の空青★★★し
石楠花の散り敷く古刹の苔湿る★★★

●小西 宏
段なして植田それぞれ空を持つ★★★★
田ごとに空が映つる植田は、目にも涼やかで美しい。早苗の緑と、空の映る田水が段をなしている棚田の風景は、日本の残したい風景。(高橋正子)

雲の間に富士雪渓の大いなる★★★
静波の網戸を通し寄せる夜★★★