5月19日(日)

★新緑の翳るときあり水があり  正子
森の新緑の静かなしっとりとした美しさを思い浮かべました。陽射しの輝く新緑は明るい美しさを持っていますが、陽射しの翳った新緑には、瑞々しい美しさが秘められています。近くには川の流れが見えます。緑の澄んだ大気が、とても気持ちよく感じられます。(藤田裕子)

○今日の俳句
真っ青な空押し上ぐる山若葉/藤田裕子
真っ青な空、それをぐいぐい押し上げる山の若葉。若々しく力強い句だ。(高橋正子)

○蜜柑の花

[蜜柑の花/横浜日吉本町]

★全山に蜜柑花つけ通過駅/斎藤おさむ
★花蜜柑匂ふよ沖の船あかり/武田孝子
★花蜜柑の匂い池への斜面を流れ/高橋信之

蜜柑の花の匂う季節となった。蜜柑の匂いは、やはり蜜柑どころが圧巻。蜜柑生産量日本一を愛媛が誇っているかどうか知らないが、愛媛に住んだころは、蜜柑畑の蜜柑の花の匂いに一日中包まれて暮らした。買い物に通る道も、子どもたちの通学路も蜜柑の花の匂いが漂う。家に居ても窓を開けていれば、蜜柑の花の匂いが流れてくる。夜、眠るころになるとさらに高く匂う。その匂いを惜しんで窓を閉めた。
「みかんの花咲く丘」の歌詞は、私にはまるで瀬戸内海の風景として見えるが、実際は静岡県ということだ。

みかんの花咲く丘
【作詞】加藤 省吾
【作曲】海沼 実

1.みかんの花が 咲いている
  思い出の道 丘の道
  はるかに見える 青い海
  お船がとおく かすんでる

2.黒い煙を はきながら
  お船はどこへ 行くのでしょう
  波に揺られて 島のかげ
  汽笛がぼうと 鳴りました

3.何時か来た丘 母さんと
  一緒に眺めた あの島よ
  今日もひとりで 見ていると
  やさしい母さん 思われる

◇生活する花たち「ネーブルの花・八朔の花・すだちの花」(横浜日吉本町)

5月19日(日)

●小口泰與
川風や倉庫を占めるゼリー菓子★★★
病葉やすずろに遠山眺めおり★★★
白波をかぶりし岩や橡の花★★★

●河野啓一
夏草の溢れて狭きビオトープ★★★
佇みて森の泉に憩いけり★★★
セーターの出し入れ今朝の青葉寒★★★

●多田有花
濃き蕾ほぐれあやめの紫紺かな★★★
雨近き畑に摘み取るさやえんどう★★★

はつ夏や人参間引き菜手に溢る★★★★
播いた人参は、梅雨の半ばには収穫できるほどになるが、今はちょうど間引き時。人参の間引き菜には、独特の香りがあり、また葉も細やかな刻みが匂いに反して繊細だ。油いためにして食べると、箸やすめにおいしい。はつ夏のささやかな収穫物。(高橋正子)

●桑本栄太郎
鳧鳴いて夕のしじまを破りけり★★★
木洩れ日の夕日まぶしき新樹光★★★
半地下の屋根に揺れ居りスイートピー★★★

●小西 宏
新緑の欅並木に富士残雪★★★

新緑を分けて登れば馬返★★★★
新緑を分けて登った先が「馬返」であるのが、面白い。(高橋正子)

道分けて流れる清水山葵田へ★★★★
流れ来た清水が分かれて、一つの流れが山葵田へと流れ込んでいる。清冽で涼しさがある。清水が分かれて流れるのがよい。(高橋正子)

●黒谷光子
若葉雨同窓会の案内くる★★★
芍薬の毬は競いて弾みおり★★★
芍薬の蕾まんまる雨弾く★★★

●高橋秀之
明るさと雨音の先若葉風★★★★
雨が降りながら明るい。なるほど、その明るさは向こうに若葉があるせい。若葉を吹く風がここまで届く。(高橋正子)

大空を隠す新樹に隙を見る★★★
母の炊くわずかばかりの豆ご飯★★★