4月18日(木)

●小口泰與
夕映えを清流に乗せ花筏★★★
見下ろすや池をおおいし花の雲★★★
雄雉の忽と咫尺を飛びにけり★★★

●古田敬二
陽が落ちる芽吹きの梢に陽を残し★★★★
芽吹きの梢に夕陽が最後まで残って静かなかがやきとなっている。芽吹きの梢の細やかさが一日の最後まで美しい。(高橋正子)
葉桜となりて森の落ち着きぬ★★★
カラタチの花咲くその奥夕暮れて★★★

●河野啓一
夏近しシャツ一枚でペダル漕ぐ★★★
春は行く野山を青く染めあげて★★★
わらび餅購い帰る鄙の里★★★

●多田有花
野のみどり山のみどりや春暑し★★★
山吹も揺れることなし山の午後★★★
ゆっくりと躑躅咲く坂母とゆく★★★

●桑本栄太郎
用水の花菜明かりの中洲かな★★★
医科大の樟の大樹や新芽立つ★★★
花水木こころの痛むことばかり★★★

●黒谷光子
長閑さに訪ねる江戸の長屋門★★★
名園を巡り椿の八重一重★★★
乗り降りに傾く春の屋形船★★★
屋形舟は、花見の舟か。また新緑を楽しみながら下る川下りの舟か。乗り降りに傾いて危ういが、それも屋形舟の興趣。(高橋正子)

●小西 宏
鶯の鍵盤右へふと左へ★★★
空襲に斃れし人の竹の秋★★★
タンポポの綿毛競える夕明かり★★★

●佃 康水
 宮島桃花祭御神能祭
太郎冠者のらりくらりに山笑う★★★
春風を袖に孕みて能舞えり★★★★
厳島神社の能舞台は特別なもの。海を渡ってきた春風が能舞台を吹く。能衣装の袖に孕む風が風雅に動きのある新鮮さを呼んでいる。(高橋正子)

能笛の漏るる参道緑立つ★★★

4月18日(木)

★春ほのぼの棚にあげたる書の紙も  正子
晩春ともなれば山笑い野の花も咲き始めて大気に陽気がみなぎってまいります。日頃の暮らしの中にも次第にほのぼのと心の暖かさを感じます。棚にあげている書の紙にも春ほのぼのを感じられた作者は俳句を詠むことと同じ様に書も大切にしていらっしゃる気持ちが良く伝わってまいります。 (佃 康水)

○今日の俳句
春筍の先のみどりや土を割り/佃 康水
一見瑣末なことを述べているようであるが、そうではない。桜が咲き、散るか散らないうちに、竹やぶに筍の切っ先のみどりが土を割る。その「みどりの尖り」の強さ、みずみずしさが新鮮だ。(高橋正子)

○苧環(おだまき)

[おだまき/横浜日吉本町] 

★おだまきや旅愁はや湧く旅のまへ/水原秋桜子

 オダマキ属(オダマキぞく)は、キンポウゲ科の属の一つ。ラテン名のアキレギアやアクイレギア(Aquilegia)ということもある。本属の植物の総称がオダマキ(苧環)である。苧環は元来は機織りの際に麻糸をまいたもののことで、花の形からの連想である。日本、アジア、ヨーロッパに約70種くらい自生し、日本のものは山野草として愛好される一方、外国産のものには品種改良が行われ、園芸植物として広く市場に出回っているものがある。日本にはヤマオダマキ、ミヤマオダマキの2種が山地から高山にかけて分布する。ミヤマオダマキはむしろ山野草として栽培される。
 花の外側の花弁のようなものは、じつは花弁ではなく萼である。花弁はその内側にあって、ややまとまって筒状になる。花弁の基部からは角状の距が伸び、萼の間から突き出る。根出葉は普通2回三出複葉で細かく分かれ、先端には丸っこい小葉がつく。茎が高く伸びるものでは、やや小型の茎葉が出る。全草が有毒。

◇生活する花たち「三葉躑躅(みつばつつじ)・葱坊主・繁縷(はこべ)」(横浜日吉本町)