4月7日(日)

●小口泰與
渓流の音の蛇行や初わらび★★★★
「音」が蛇行するというのは、渓流の遠くの音までが微妙に違って聞こえてくること。その中にわらびが萌え出て、早春の若々しさがうれしい。(高橋正子)

あけぼのや雉の鋭声と犬の声★★★
笊下げて小川へ下りし花菜かな★★★

●河野啓一
一斉に芽吹いて街の銀杏かな★★★
欅若葉みどりは枝の先端に★★★
花韮のうすむらさきに揺れており★★★

●多田有花
嵐の夜明けて山野に木の芽の色★★★
一陣の風に放ちぬ花吹雪★★★
花屑を残し嵐の東へ去る★★★

●桑本栄太郎
花に酔ひ花の命を惜しみけり★★★
重なれば並木色濃き花の影★★★
菜種梅雨ときに嵐となることも★★★

●小西 宏
青空へまるく葉を巻き楢芽吹く★★★★
一木の下(もと)宴あり遅桜★★★
笛習う人の集うて花馬酔木★★★

●高橋秀之
嵐すぎ桜花びら真っ直ぐに★★★
石垣の上に枝垂桜咲く★★★
彦根城堀に桜と空映る★★★

●黒谷光子
朝よりの雨に煙りて花の土手★★★
たまさかに過ぎる公園花の雨★★★
近道をして春泥を避けられず★★★

●下地鉄
花園はサンバのりずむ春嵐★★★
サルビアの咲き揃いてや空の青★★★
春雲や明日帰郷する孫の顔★★★

4月7日(日)

★花淡し寺の甍がかがやけば  正子
桜の花が咲き、寺の屋根は春の陽に輝いています。「花淡し」と言いきったことで、よりいっそう桜特有の美しさが際立って伝わります。(井上治代)

○今日の俳句
楓の芽今開かんとして紅し/井上治代
楓の芽のかわいらしさと紅い色の美しさを端的に、みずみずしく詠んだ。「紅し」の言い切りが快い。(高橋正子)

○烏野豌豆(カラスノエンドウ)

[カラスノエンドウ/横浜日吉本町] 

★畦道に豆の花咲く別れかな/星野 椿
★子供よくきてからすのゑんどうある草地/川島彷徨子
★子等帰るからすのゑんどう吹きながら/照れまん
★野球ボール飛び込むからすのえんどうに/高橋正子

からすのえんどうは、小さいながらも、きっちり豆の花の形をしている。どう見ても豆の花のミニチュア版である。見るたびいつも、こう思う。

 ヤハズエンドウ(矢筈豌豆、Vicia sativa subsp. nigra[1])は、マメ科ソラマメ属の越年草。ヤハズエンドウが植物学的局面では標準的に用いられる和名だが、カラスノエンドウ(烏野豌豆)という名が一般には定着している(「野豌豆」は中国での名称)。
 本州から四国・九州・沖縄の路傍や堤防などのいたるところにごく普通に生育している。秋に発芽し、春になると高さ60 – 150cmに達する。茎には巻きひげがあり、近くのものに絡みつくこともあるが大体は直立する。茎は全体に毛があり四角柱状。花期は3 – 6月でエンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。
 原産地はオリエントから地中海にかけての地方であり、この地方での古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用された証拠が考古学的資料によって得られているが、その後栽培植物としての利用はほぼ断絶して今日では雑草とみなされている。そのため、若芽や若い豆果を食用にすることができるし、熟した豆も炒って食用にできる。また、未熟な果実の両端を切り落し、草笛にすることができる。一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。
 史記で伯夷・叔齋が山で餓死する前に食べていた「薇」(び)は、野豌豆の類ともいい、またワラビやゼンマイのことともいう。

◇生活する花たち「菜の花・片栗の花・山桜」(横浜・四季の森公園)

4月6日(土)

●迫田和代
散らばって土手の土筆を摘んでる子★★★★
「散らばって」が楽しい。土筆があちこちに生え、子たちも互いに間隔をとって土筆取りに夢中。いい写生だ。(高橋正子)

今通る桜を散らす雨と風★★★
白きもの少し混じった春の空★★★

●小口泰與
松籟や丘をいろどる黄水仙★★★
黄水仙海へ海へとなだれ咲く★★★
そよ風や下へしたへと枝垂れ梅★★★

●下地鉄
行く春の雨だれ音のひびきかな★★
春の海驟雨の中の青さかな★★★
直立し向きをそろえてグラジオラ★★★★
グラジオラスが咲きそろった感じがそのまま素直に表現されて、涼しげである。(高橋正子)

●多田有花
花やいま咲き満ちたりし一点に★★★
嵐来る前に桜を見に行かん★★★
花びらの舞い来る中を山へゆく★★★

●小西 宏
乳搾り紋白蝶の揺れ纏う★★★
丘なべて黄となり空へ菜花畑★★★
海苔粗朶の影波に立ち夕日落つ★★★

●河野啓一
柿若葉はや朝空に陽を透かし★★★★
柿若葉の緑は、空の青さに溶け込むように、光を透かしている。ほかの若葉に先駆けて若葉の美しさを見せてくれる。(高橋正子)
桜散る風強ければ宙を舞う★★★
春嵐来ぬ間のデイの花見かな★★★

●桑本栄太郎
桜桃のうすき花びらかく散りぬ★★★
連なれば鈴やみどりの土佐みづき★★★
辛夷散る丘をまあるく白く染め★★★