●自由な投句箱/12月1日~10日●


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今週の秀句/12月1日~10日


[12月10日]

★凛々と白木蓮の冬芽かな/谷口博望 (満天星)
白木蓮の冬芽は大きい。凛凛としている。白木蓮の冬芽に耀かな生命力を感じた。(高橋正子)

[12月9日]

★急かさるるカメラアングル冬落暉/佃 康水
落暉は様々な様相を見せる。冬落暉には燃えるような美しさがあり、刻々に沈んでゆく。カメラアングルを決めるにも急かされる。冬落暉の魅力。(高橋正子)

[12月8日]

★銀杏散り黄金の風吹き上がる/川名ますみ
銀杏落葉の黄色は、ほかの黄葉よりも透明感があって、またその量の多さも魅力だ。そんな銀杏落葉が風に吹きあがると、一瞬、「黄金の風」となる。一瞬のきらめきに、思わず歓声をあげそう。(高橋正子)

[12月7日]

★窓枠に差し初む大雪の朝日/多田有花
「大雪」を迎え、厳しい冬に入る。窓枠に差し込む眩しい朝日に厳しさを力強さが加わる。(高橋正子)

[12月6日]

★冬の雨父思い出す引揚記念館/廣田洋一
私も旧満州からの引揚者である。父は既に死亡、姉は他家に嫁いでいたので、母と兄と妹との家族4人での引揚であったが、姉家族とは偶然にも同じ引揚船であった。今思えば、父の死、終戦後の引揚、18歳の兄(代用教員)を頼りの4人家族の生活であった。(高橋信之) 

[12月5日]

★笹鳴きて鶯色の飛び発ちぬ/谷口博望 (満天星)
笹鳴きを聞いた。と、鶯色のものが飛び立った。笹鳴きの主は鶯だ。音と色の印象が新鮮で楽しい。(高橋正子)

[12月4日]

★上州の風吹かぬ日や冬柏/小口泰與
風が名物の上州にも風が吹かない日がある。今日は柏の枯れた大ぶりの葉が日を受けて輝く。正月前の穏やかな日差しに気持ちが寛ぐ。(高橋正子)

[12月3日]

★白き実の花と付きたる冬木立/桑本栄太郎
白い実を花のようにつけているのは、南京櫨だろう。冬晴の空に白い実が映えて、木立も花のように見える。松山の郊外電車が走る山沿い丘の道に、こんな白い実を見た記憶が蘇った。そこには、枳殻の実もあった。(高橋正子)

[12月2日]

★浜行けば道案内の石叩/谷口博望(満天星)
「浜行けば」が、句の情景を詩的にしている。石叩に案内されるように、そのあとについて浜辺を歩く。石叩を友に、浜辺を漫ろ楽しむ心。(高橋正子)

[12月1日]

★冬空を飛行機雲の一直線/多田有花
青い冬空には、何にもない日がある。まっすぐに飛行機雲が伸びる。それだけでいい。冬はいい。(高橋正子)

12月1日~10日


12月10日(4名)

●谷口博望 (満天星)
冬紅葉前撮りポーズ眩しくて★★★
凛々と白木蓮の冬芽かな★★★★
白木蓮の冬芽は大きい。凛凛としている。白木蓮の冬芽に耀かな生命力を感じた。(高橋正子)

梧桐の莢の背後に冴ゆる月★★★

●小口泰與
祝い日や空あおあおと寒薔薇★★★★
寒犬の訴うることありて吼ゆ★★★
寒鯛の魚拓もあるよ里の店★★★

●桑本栄太郎
剪定のリフト伸び居り冬の空★★★★
スーパーの閉店セールや十二月★★★
ちりちりと残る紅葉の下枝かな★★★

●廣田洋一
雪吊や海を遮る天橋立★★★
雪吊の縄雨雲を絞りける★★★★
木の枝を一つ揺らして落葉掻き★★★

12月9日(6名)

●谷口博望 (満天星)
菰巻かれ埴輪となりぬ大蘇鉄★★★
匂いたる縦横斜め花梨の実★★★
鵯飛んで栴檀の実金色に★★★★

●小口泰與
奥利根の峡田棚田や冬の鳶★★★
休み田へ赤城颪の吹きにけり★★★★
天津日と風に任せし掛大根★★★

●廣田洋一
新聞受け朝の寒さを測りけり★★★
湯巡りや湯と湯の間ちと寒し★★★
三日月の白き光りに寒さかな★★★

●佃 康水
くっきりと稜線青し冬茜★★★
急かさるるカメラアングル冬落暉★★★★
落暉は様々な様相を見せる。冬落暉には燃えるような美しさがあり、刻々に沈んでゆく。カメラアングルを決めるにも急かされる。冬落暉の魅力。(高橋正子)

真っ白な大き鶴折る開戦忌★★★

●桑本栄太郎
彩をなす残る紅葉の下枝かな★★★
もくれんの銀の冬芽や青空に★★★★
祖母の背のもんぺ繕う開戦忌★★★

●河野啓一
落ち葉掃く嫗に重き竹箒★★★
公孫樹黄葉敷き詰むカーペット★★★
昼下りデイの合唱ジングルベル★★★★

12月8日(5名)

●谷口博望 (満天星)
青春は遠くて近し漱石忌★★★★
万両や花魁道中傘さして★★★
棈(あべまき)の冬木となるも川鵜啼く★★★

●小口泰與
大庇隠さんばかり干大根★★★★
帰り花山は古陶の色に似て★★★
浅間嶺の白極まりて帰り花★★★

●廣田洋一
昼は冷夕は熱燗習いとす★★★
開戦日空青々と明けにけり★★★★
悴みて待ち時間見る遊園地★★★

●桑本栄太郎
中州なる風の行方や枯尾花★★★
葉牡丹の鉢を日差しに美容院★★★★
零れ咲く葉の斑入りなり石蕗の花★★★

●川名ますみ
この径の先に紅葉よ影を踏む★★★
音立てて車に落葉降りしきる★★★

銀杏散り黄金の風吹き上がる★★★★
銀杏落葉の黄色は、ほかの黄葉よりも透明感があって、またその量の多さも魅力だ。そんな銀杏落葉が風に吹きあがると、一瞬、「黄金の風」となる。一瞬のきらめきに、思わず歓声をあげそう。(高橋正子)

12月7日(6名)

●谷口博望 (満天星)
つやつやと斑入石蕗の葉年の内★★★
行く年の終の一枚カレンダー★★★
晩酌の湯割焼酎柚子しぼる★★★★

●多田有花
指で書くスマホのメモや冬の雨★★★
月冴える夜のコートに球を打つ★★★
窓枠に差し初む大雪の朝日★★★★
「大雪」を迎え、厳しい冬に入る。窓枠に差し込む眩しい朝日に厳しさを力強さが加わる。(高橋正子)

●小口泰與
渓流の落葉渦まく光かな★★★
朴落葉呑まんと渦の来ておりぬ★★★★
枯蔦をまとう洋館夕日影★★★

●桑本栄太郎
路面ぬれ光る朝やしぐれ跡★★★
中州なる風の行方や枯尾花★★★
大雪の入日大きく沈みけり★★★★

●廣田洋一
冬侍正座してをり家老屋敷★★★
朝日浴び聖樹の金具光りけり★★★★
ディズニーのジャングルに咲く山茶花かな★★★

●川名ますみ
落葉敷く径にのびやか枝の影★★★★
地は下に陽の近くから欅散る★★★
紅葉狩犬の散歩のうしろ行く★★★

12月6日(4名)

●小口泰與
冬紅葉夕餉の魚鼓の鳴りにける★★★
打ち連れて寒月仰ぐ宮参り★★★★
冬籠おりおり疼く虫歯かな★★★

●廣田洋一
城崎の六湯を巡る冬の宵★★★
苔むせし桜に出ずる冬芽かな★★★
冬の雨父思い出す引揚記念館★★★★
私も旧満州からの引揚者である。父は既に死亡、姉は他家に嫁いでいたので、母と兄と妹との家族4人での引揚であったが、姉家族とは偶然にも同じ引揚船であった。今思えば、父の死、終戦後の引揚、18歳の兄(代用教員)を頼りの4人家族の生活であった。(高橋信之) 

●桑本栄太郎
ちりちりと肌の緋色や山眠る★★★
山茶花の白き大樹や建仁寺★★★
せせらぎの彩の落葉や高瀬川★★★★

●川名ますみ
少女二人落葉を蹴って帰り道★★★★
路地裏に陽に遊びたる散紅葉★★★
土よりも陽の近くから欅散る★★★

12月5日(4名)

●小口泰與
薄氷を掬うがように湯葉掬う★★★
うたた寝の夢に浮遊や浮寝鳥★★★★
打ち返す無き畑山眠る★★★

●廣田洋一
冬うらら鳴き砂を手で鳴かせけり★★★
浜ちゃんの飛び出しそうな冬の舟屋★★★
水仙の群れなし咲ける千枚田★★★★

●桑本栄太郎
さび色の落葉の庭となりにけり★★★
冬木立樹間はるかに生駒見ゆ★★★
山里の燈ともす頃や暮早し★★★★

●谷口博望 (満天星)
笹鳴きて鶯色に飛び発ちぬ(原句)
笹鳴きて鶯色の飛び発ちぬ★★★★(正子添削)
笹鳴きを聞いた。と、鶯色のものが飛び立った。笹鳴きの主は鶯だ。音と色の印象が新鮮で楽しい。(高橋正子)

綿虫の風の隙間を通り抜け★★★
緋色眼とモヒカン刈の緋鳥鴨★★★

12月4日(5名)

●小口泰與
枇杷の花肌寄せ合いし子豚かな★★★
咲きかねて毬藻のような冬薔薇★★★

上州の風吹かぬ日や冬柏★★★★
風が名物の上州にも風が吹かない日がある。今日は柏の枯れた大ぶりの葉が日を受けて輝く。正月前の穏やかな日差しに気持ちが寛ぐ。(高橋正子)

●谷口博望(満天星)
学徒碑の鎮魂の歌枇杷の花★★★
笹鳴や広島城は人だかり★★★
堀の中エビを捕り合ひ鴨騒ぐ★★★★

●多田有花
ナビに沿い抜け道走る冬の夕★★★★
土つけしままの大根葉を揺らし★★★
寄り添って金星光る冬三日月★★★

●廣田洋一
天橋立最後に渡る冬の橋★★★★
芭蕉の句碑一字も読めず冬の雨★★★
冬景色浮かんで見える股のぞき★★★

●桑本栄太郎
バス待ちの丁度良きかな日向ぼこ★★★★
入日透く残る紅葉の彩となり★★★
嶺の端の冬日眩しく入りにけり★★★

12月3日(5名)

●小口泰與
花八つ手逢魔が時のはや過ぎし★★★
一生を家業に託し石蕗の花★★★★
眼間の赤城や朝の黄葉散る★★★

●廣田洋一
花模様朝日に浮かぶ白障子★★★★
丸障子開けたる先に池の水★★★
破れ障子直さぬままに年を経る★★★

●谷口博望 (満天星)
くろぐろと椋の実熟れて甘きこと★★★
弦月に寄り添う星や暮早し★★★
ころころとふくら雀の嘴黄色★★★★

●桑本栄太郎
満天星の地に映え冬の紅葉かな★★★
止まるたび落葉散り敷くバスの窓★★★

白き実の花と付きたる冬木立★★★★
白い実を花のようにつけているのは、南京櫨だろう。冬晴の空に白い実が映えて、木立も花のように見える。松山の郊外電車が走る山沿い丘の道に、こんな白い実を見た記憶が蘇った。そこには、枳殻の実もあった。(高橋正子)

●多田有花
いくたびも落葉の道を歩きけり★★★★
夕食はコンビニ特売のおでん★★★
もちもちともち粉の鯛焼きあつあつに★★★

12月2日(5名)

●小口泰與
鉄塔のつながる嶺嶺や冬紅葉★★★
小春日の鴉の声の長きかな★★★
浅間嶺の白極まるや里の葱★★★★

●谷口博望(満天星)
潮風に微かに揺るる野菊かな★★★

浜行けば道案内の石叩★★★★
「浜行けば」が、句の情景を詩的にしている。石叩に案内されるように、そのあとについて浜辺を歩く。石叩を友に、浜辺を漫ろ楽しむ心。(高橋正子)

軽鴨の六羽仲良く冬の瀬戸★★★

●廣田洋一
道端に柚子の転がる冬の雨★★★★
冬の雨お出かけ気分萎みけり★★★
冬の雨雪にならぬを喜べり★★★

●多田有花
冬景色の中に黄金の銀杏たつ★★★★
冬晴れを洗濯日和とする朝★★★
お歳暮に贈りし無農薬レモン★★★

●桑本栄太郎
冬ざるる南京櫨の家路かな★★★
錆色の埋もる庭の落葉かな★★★
沖やいま海鳴り止まず冬籠り★★★★

●河野啓一
街はずれ風情新し冬の宿★★★
初冬の翁の会話大き声★★★
暮れ泥む師走の空や我が家の角辺★★★★

●上島祥子
山城に雪雲送る風重し★★★
命日を越して年末事初め★★★
冬枯れの小さな庭に小鳥来る★★★★

12月1日(5名)

●谷口博望 (満天星)
フラダンスの笑顔優しや秋祭★★★★
冬桜恐竜歩く夜の森★★★
うすうすと山影寂し冬桜★★★

●小口泰與
山裾のそこのみ日矢や冬紅葉★★★★
あり得ざる輪廻転生星銀河★★★
寒鴉前山風に荒びける★★★

●廣田洋一
鮟鱇鍋一切れの肝分かち合う★★★★
寒き夕一も二もなく鮟鱇鍋★★★
簾越し隣の卓も鮟鱇鍋★★★

●多田有花
冬空を飛行機雲の一直線★★★★
青い冬空には、何にもない日がある。まっすぐに飛行機雲が伸びる。それだけでいい。冬はいい。(高橋正子)

テザリングつながりほっとする師走★★★
股関節ストレッチして日短か★★★

桑本栄太郎
小夜ふけて風の団地や虎落笛★★★★
ステップにバスの家路の落葉かな★★★
綿虫の忽と気づきし黄昏に★★★

●自由な投句箱/11月21日~30日●


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※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今週の秀句/11月21日~30日


[11月30日]

★鵯の広島城を縦横に/谷口博望 (満天星)
鵯は人家の庭にも飛んできて、花の蜜を吸ったり、木の実を食べたり、また、喧しく鳴きたる身近な鳥だ。句に詠まれた鵯は、広島城を縦横に飛び、遠慮もない。鵯の天下だ。鳥たちがいきいきとしているのは、人間にもいいことだ。(高橋正子)

[11月29日]

★大き種いくつも含む庭の柿/河野啓一
庭に柿の木があると、日本の昔からの家屋と庭と思う。庭の柿は、大きな実をつける年もあったり、小ぶりであったりするが、意外にも大きな種が埋もれている。私の実家は、瀬戸内海の沿岸の田舎にあるが、今では柿の名産地となっている。大きな甘い富有柿がたくさん生ったものだ。そして食べていると大きな種が出てくることがしばしばだった。そんなことを思い出させてくれる句だ。(高橋正子)

[11月28日]

★マフラーの結び目揃え下校の娘/上島祥子
下校してきた娘のマフラーの結び目がきちんと整っていた。それは、意外だったかもしれない。結び目を揃えたマフラーに、女子生徒らしい清潔感と少しお洒落な雰囲気があって、作者はそこにさりげない成長を見たのだろう。(高橋正子)

[11月27日]

★水鳥の群舞すれども池を出ず/廣田洋一
水鳥はこの池を餌場としているのであろう。何かに驚いて水面を飛び立ったり、群舞したりするが、あくまでもその池を離れない。池と水鳥が織りなす一つの世界がここにある。(高橋正子)

[11月26日]

★冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ/多田有花
「冬浅き」が、瀬戸内の気候にはぴったりだ。青みがかった檸檬の黄色は、瀬戸の海とよく似合い、詩情があって、作者の思いが読み取れる。(高橋正子)

[11月25日]

★魁けて孤高をめざす朴冬芽/谷口博望(満天星)
高く聳える朴の木は葉を落とし、いちはやく冬芽を明らかにする。太くつやつやとした冬芽は「孤高をめざす」ようだ。(高橋正子)

[11月24日]

★霜柱添え木を深く挿しにけり/小口泰與
空っ風の上州。真冬に向かって添え木が必要となる。霜柱が一面を覆う朝、添え木をしっかりと挿し込む。
厳しい冬に向かう心構えが知れる。(高橋正子)

[11月23日]

★水色の空の鞍馬や北しぐれ/桑本栄太郎
「北しぐれ」は北から降って来るしぐれ。北にあたる鞍馬の方の空は明るい水色で日が差しているのだろう。ところがここは時雨。降ったと思うと日が差す時雨の降り様の淡い情緒がいい。(高橋正子)

[11月22日]

★人波に身を任せ行く酉の市/小口泰與
福を呼び、商売繁盛を願う酉の市の賑わい。賑わいの人波に身を任せるよりほかはない。任せることに幸運がありそうだ。(高橋正子)

[11月21日]

★スケートの絵毎日描きし日記帳/廣田洋一
スケートが大好きな子の日記帳だろう。子供は好きなことはどんどんするが、それにしても大変執心だ。(高橋正子)

11月21日~30日


11月30日(4名)

●谷口博望 (満天星)
鵯の広島城を縦横に★★★★
鵯は人家の庭にも飛んできて、花の蜜を吸ったり、木の実を食べたり、また、喧しく鳴きたる身近な鳥だ。句に詠まれた鵯は、広島城を縦横に飛び、遠慮もない。鵯の天下だ。鳥たちがいきいきとしているのは、人間にもいいことだ。(高橋正子)

黒々と薄暮の屋上寒鴉★★★
紅葉の南京櫨の実は弾け★★★

●小口泰與
すれ違う少女の息の白きかな★★★★
いつ見ても新たな赤城山(あかぎ)冬の川★★★
息白し初冠雪の赤城山★★★

●廣田洋一
塀越しに白菊光る冬の朝★★★
湯豆腐やポン酢垂らして良き香り★★★
湯豆腐や商いの話弾みたる★★★★

●桑本栄太郎
目覚めたる真夜の団地や虎落笛★★★
冬雲や海の涯なる青き空★★★
森々と十一月の果てにけり★★★★

11月29日(6名)

●谷口博望 (満天星)
アフリカの太鼓叩いて秋祭★★★★
小春日の浦々進む巨大船★★★
いつの間に宵の明星日短し★★★

●廣田洋一
枯れ初めし菊の色香を惜しみけり★★★
八重咲の山茶花白き壁のごと★★★
凛としてシングルマザーの七五三★★★★

●小口泰與
密やかに亀の首出す枯葉かな★★★★
黒雲に忽と風起ち冬さるる★★★
木枯しや熱き肉まんほっかほか★★★

●多田有花
初しぐれ空のどこかの明るくて★★★
しぐれ去る夕陽の中の山歩く★★★
冬紅葉見下ろして立つ頂に★★★★

●河野啓一
小鳥来去空に風音はや師走★★★
木枯らしや明日はショートへ初ステイ★★★

大き種いくつも含む庭の柿★★★★
庭に柿の木があると、日本の昔からの家屋と庭と思う。庭の柿は、大きな実をつける年もあったり、小ぶりであったりするが、意外にも大きな種が埋もれている。私の実家は、瀬戸内海の沿岸の田舎にあるが、今では柿の名産地となっている。大きな甘い富有柿がたくさん生ったものだ。そして食べていると大きな種が出てくることがしばしばだった。そんなことを思い出させてくれる句だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
峰膚の赤く染まりて山眠る★★★★
落葉松の錆色とどむ落葉かな★★★
橙の白き土塀に垂れにけり★★★

11月28日(7名)

●谷口博望 (満天星)
木枯や梧桐の鞘(さや)は透かし彫★★★
杭に立つ鶚(みさご)の孤影遥かなり★★★
葦鴨の緑のハット夕映えり★★★★

●「小口泰與
行く水を押し行く水や年惜しむ★★★★
日を乗せて寝転ぶ犬や冬菫★★★
我が影の田居を越えけり冬旱★★★

●「廣田洋一
手袋の片方踏みし改札口★★★
生垣に吊られしままの手袋かな★★★
手袋の温もりこもる握手せり★★★★

●上島祥子
雨上がり雀の凍えけり★★★
木枯らしに向かう自転車膝赤し★★★

マフラーの結び目揃え下校の娘★★★★
下校してきた娘のマフラーの結び目がきちんと整っていた。それは、意外だったかもしれない。結び目を揃えたマフラーに、女子生徒らしい清潔感と少しお洒落な雰囲気があって、作者はそこにさりげない成長を見たのだろう。(高橋正子)

●多田有花
語らいて囲炉裏にひとつ炭を足す★★★
埋火としてのち全員床に就く(原句)
埋火を残して全員床に就く★★★★(正子添削)
布団一枚床暖房の上に寝て★★★

●河野啓一
阿波の柿剥いて干すとて娘と妻が★★★★
柿干して小雨気になる軒端かな★★★
落ち葉舞う姿正しく色綾に★★★

●桑本栄太郎
顔見世のまねき今年は歌舞練場★★★
茄子枯れて打ち捨てられし畦の上★★★
様々な香り立ち居り落葉踏む★★★★

11月27日(5名)

●谷口博望(満天星)
小春日の「禎子の鐘」が鳴りやまず★★★★
敗荷やサリーの二人鐘を撞く★★★
緋鳥鴨ピューイと鳴けば海白く★★★

●小口泰與
枯尾花風に押されし入日影★★★★
我が咳や扉破りし如くにて★★★
白波を操る湖や冬ざるる★★★

●多田有花
冬紅葉黄金に染めし入り日かな★★★
猪鍋を囲み小さな同窓会★★★★
古民家から山茶花に降る雨を見る★★★

●廣田洋一
参道の冬の芽揃ふ小枝かな★★★
挙式祝ひ鳶の二羽舞ふ冬の空★★★

水鳥の群舞すれども池を出ず★★★★
水鳥はこの池を餌場としているのであろう。何かに驚いて水面を飛び立ったり、群舞したりするが、あくまでもその池を離れない。池と水鳥が織りなす一つの世界がここにある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
掃除機の唸り居りけり冬深む★★★
剪定の瘤にとどまる冬木かな★★★
枯蔓の高きフェンスやグランドに★★★★

11月26日(6名)

●谷口博望(満天星)
百合鴎見たくてそこは厳島★★★★
百合鴎赤鮮やかに頭上かな★★★
海遠く鶚(みさご)の頭杭に立つ★★★

●多田有花
冬菊や今治タオル美術館★★★
皇帝ダリアあちこちに咲く伊予路★★★
冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ★★★★
「冬浅き」が、瀬戸内の気候にはぴったりだ。青みがかった檸檬の黄色は、瀬戸の海とよく似合い、詩情があって、作者の思いが読み取れる。(高橋正子)

●小口泰與
騒立ちて傘に付たる落葉かな★★★
石畳楓落葉の降りかくす★★★★
冬の蜂後部座席と格闘ぞ★★★

●廣田洋一
赤カンナ黒く萎みて冬ざるる★★★
冬ざれや空地の草木刈り取られ★★★★
冬ざれや倒れしままの名家の墓★★★

●桑本栄太郎
橙の土塀に垂るる明かりかな★★★
彩となる残る紅葉や桜の木★★★
敷き詰める銀杏落葉やバス通り★★★★

●佃 康水
未明より煮しめ炊きゆく報恩講★★★  
冬天へ皇帝ダリア聳え咲く★★★
赤屋根の友の家軒に掛け大根★★★★ 

11月25日(6名)

●谷口博望(満天星)
木枯に実だけとなりぬ唐楓★★★
魁けて孤高をめざす朴冬芽★★★★
高く聳える朴の木は葉を落とし、いちはやく冬芽を明らかにする。太くつやつやとした冬芽は「孤高をめざす」ようだ。(高橋正子)

枯芙蓉ラケットを手に老夫婦★★★

●古田敬二
固き蕾残して手入れ姫椿★★★
遠空に甲斐駒ケ岳(かいこま)尖り柿をもぐ★★★★
花枇杷に座りて老爺の農談義★★★

●小口泰與
上州の風や冬山凛とあり★★★
笹鳴や秩父連山鮮明に★★★★
たそがれの川瀬響むや雪冠★★★

●多田有花
東から戻れば西は冬の雨★★★
雨あがる来島海峡冬はじめ★★★
豚しゃぶの肉花びらのごと並ぶ★★★★

●桑本栄太郎
刀身のみねに打粉や憂国忌★★★
踏みしだき坂の襤褸や落葉道★★★
石垣を伝う緋色や冬紅葉★★★★

●廣田洋一
線路際枯菊すべて刈られけり★★★
枯菊や捨つるは惜しき色残す★★★★
枯菊や他の供花と捨てられし★★★

11月24日(5名)

●満天星
小春空「禎子の鶴」の鐘鳴らす★★★★
敗荷や世界平和の鐘が鳴る★★★
鐘の音や黄心樹(おがたま)の実の弾けをり★★★

●多田有花
ランドマークタワー影となりたり日短か★★★★
露天風呂に冬の汽笛をひとり聞く★★★
冬麗の浜離宮園を見下ろす★★★

●小口泰與
綿虫や川沿い走る足尾線★★★
霜柱添え木を深く挿しにけり★★★★
空っ風の上州。真冬に向かって添え木が必要となる。霜柱が一面を覆う朝、添え木をしっかりと挿し込む。
厳しい冬に向かう心構えが知れる。(高橋正子)

その事に触れず語らずおでん鍋★★★

●廣田洋一
初雪やぼたぼた降りてすぐ溶けぬ★★★
風花や生まれはどちら空青し★★★
風花や店先に積む牡蠣の殻★★★★

●桑本栄太郎
鮮やかな終いとなりぬ冬紅葉★★★
木枯や想い出つのる空の青★★★
風呂敷に書を入れ通う一葉忌★★★

11月23日(5名)

●谷口博望(満天星)
バスからのドリミネーション冬至の日★★★
銀杏散る平和の園に鐘の音★★★
碧空や銀杏の黄金翻る★★★★

●小口泰與
噴煙の西に流るる神の留守★★★
冬の滝しぶきて人を寄せつけず★★★★
巌を打つ波を眼下に懐手★★★

●多田有花
飛び立ちて眼下に冬の神戸港★★★★
小春日の横浜港をそぞろ歩く★★★
冬ぬくし大さん橋の汽笛かな★★★

●廣田洋一
ピンク色混じるつつじの返り花★★★★
紅葉せし枝の下には緑の葉★★★
緑の中一際赤き紅葉かな★★★

●桑本栄太郎
風呂敷に書を入れ通う一葉忌★★★
花八手門扉閉ざさる売物件★★★
水色の空の鞍馬や北しぐれ★★★★
「北しぐれ」は北から降って来るしぐれ。北にあたる鞍馬の方の空は明るい水色で日が差しているのだろう。ところがここは時雨。降ったと思うと日が差す時雨の降り様の淡い情緒がいい。(高橋正子)

11月22日(5名)

●廣田洋一
映画館ずらりと並ぶマスクの盾★★★
大きな目際立たせたるマスクかな★★★★
鍋焼きの匂いかぐわしマスク取る★★★

●多田有花
冬服を乗せて電車の走り去る★★★★
冬紅葉戴く山を見渡せる★★★
電車来て小春のホーム空っぽに★★★

●小口泰與
シャッターを押すたび増る陣の鴨★★★
人波に身を任せ行く酉の市★★★★
福を呼び、商売繁盛を願う酉の市の賑わい。賑わいの人波に身を任せるよりほかはない。任せることに幸運がありそうだ。(高橋正子)

赤城山(あかぎ)とは我の産土龍の玉★★★

●谷口博望 (満天星)
鳩の眼に冬至の赤い日が光る★★★
冬至の日被爆川行く遊覧船★★★★
破蓮サリーの人が鐘を撞く★★★

●桑本栄太郎
カサコソとカ行つづけり落葉道★★★
ひつそりと闇のとばりや日短★★★
波郷忌の灯火に映ゆるプラタナス★★★★

11月21日(4名)

●小口泰與
梵鐘を幼子打つや神の留守★★★
足元を雲駆け行けり冬紅葉★★★★
帰り花追伸に足す風のこと★★★

●廣田洋一
スケートの四回転は男のあかし★★★
手をつなぎそろそろ浮き浮きスケート場★★★
スケートの絵毎日描きし日記帳★★★★

●桑本栄太郎
芦屋なる坂に沿い居り冬紅葉★★★
冬凪のアベノハルカス靄に浮く★★★
金色の光る運河や冬夕焼★★★★

●谷口博望 (満天星)
みせばやの俯く葉うら紅に染む★★★
みせばややぺちゃくちゃ言つてランドセル★★★
みせばやの花を揺らして猫通る★★★★

●自由な投句箱/11月11日~20日●


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今週の秀句/11月11日~20日


[11月20日]

★恩師より筆のたよりや石蕗日和/谷口博望 (満天星)
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

[11月19日]

★通院の迎え紅葉の光から/川名ますみ
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

[11月18日]

★紅葉の光集めて落ちる滝/廣田洋一
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

[11月17日]

★冬菊の門辺にありぬ日差しかな/桑本栄太郎
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

[11月16日]

★軒深き母屋に白し懸大根/桑本栄太郎
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

[11月15日]

★南座にまねき上がりてしぐれ来る/桑本栄太郎
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

[11月14日]

★山茶花や花弁ごとに光りおり/廣田洋一
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

[11月13日]

★ずいと引き抜く大根の手ごたえ/多田有花
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

[11月12日]

★ランドセル赤城颪に抗しけり/小口泰與
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

[11月11日]

★冬の星歩むにつれてまた一つ/廣田洋一
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

11月11日~20日


11月20日(5名)

●谷口博望 (満天星)
恩師より筆のたよりや石蕗日和★★★★
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

ヒドリガモ寄り添いながら被爆川★★★
スキップのトイプードルや落葉道★★★

●小口泰與
笹鳴やかくも白樺並びける★★★★
一羽翔ち一斉に去る寒雀★★★
露天湯に手足伸ばせし四温かな★★★

●廣田洋一
吐く息の靄に溶け入る冬の朝★★★
冬の靄遠き街灯朧なり★★★
隣近所箒てんでに落葉掻く★★★★

●河野啓一
とき知らず浜木綿の実を結びたる秋の暮
浜木綿の実を結びたる秋の暮★★★★(正子添削)

留守居の娘のやさしさよ冬の昼下がり★★★
門に立つ見渡す坂の真っ赤な紅葉★★★

●桑本栄太郎
冬暁のビルに朝日や大阪駅★★★★
冬天のアベノハルカス靄の中★★★
<神戸六甲アイランド埠頭>
海光の揺らぎ寄せ居り冬の凪★★★

11月19日(5名)

●廣田洋一
冬日和ひたすら青き空仰ぐ★★★
水鳥の親子連れ立つ冬日和★★★
「水鳥」は冬の季語です。季重なりです。

寒晴れや心浮きたつ散歩道★★★★

●小口泰與
落葉松の枯葉時雨や鳥の声★★★★
木枯しやかくも短き落暉なり★★★
「短き落暉」の「短き」に無理があります。

峠越ゆ忽と赤城山(アカギ)と空っ風★★★

●桑本栄太郎
暁闇に点す灯りやかにかく忌★★★
小雨降り更に色濃き落葉かな★★★★
敷き積める庭の明るき夕しぐれ★★★

●谷口博望 (満天星)
兄よりの柿の絵手紙土佐遠く★★★★
桐の木はオブジェとなりぬ小六月★★★
黒々と烏群れ飛ぶ冬夕焼け★★★

●川名ますみ
通院の迎え紅葉の光から★★★★
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

青天の桜紅葉を指し出発★★★
少しずつ桜紅葉の降る家路★★★

11月18日(4名)

●小口泰與
きらきらと落葉降りけり隠沼へ★★★
黒雲の下に忽然冬浅間★★★★
アイロンを掛けたる湖や冬紅葉★★★

●河野啓一
口惜しや立ち上がれずにに窓の柿★★★
大西日瀬戸内より淀の葦へ★★★★
車いす枯野を抜けて散歩道★★★

●廣田洋一
洞窟をくぐりて光る冬の滝★★★
紅葉の光集めて落ちる滝★★★★
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

冬の夜電飾囲む千枚田★★★

●桑本栄太郎
葉の残る桜冬芽の並木かな★★★★
一ト風に木の実しぐれとなりにけり★★★
かさこそと思索つづくや落葉道★★★

11月17日(3名)

●小口泰與
雨粒のはねし水面や冬紅葉★★★★
草むらをすっぽり包む落葉かな★★★
お絞りにほっこり顔やおでん鍋★★★

●廣田洋一
蜘蛛の巣に搦めとられし落葉かな★★★★
木道へ覆いかぶさる紅葉かな★★★
山々の頂少し紅葉せり★★★

●桑本栄太郎
白き実の南京櫨や冬紅葉★★★
冬蝶の日向ばかりを彷徨える★★★

冬菊の門辺にありぬ日差しかな★★★★
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

11月16日(6名)

●小口泰與
天明の浅間の巌や虎落笛★★★★
枯芒靄いちめんの佐久平★★★
佐久平靄より忽と冬田かな★★★

●廣田洋一
大根の青首だけを買いにけり★★★★
大根の葉雨に打たれて広がりぬ★★★
直売所葉付大根すぐに売れ★★★

●多田有花
初冬や今夜はほぼスーパームーン★★★
十一月暖かき夜のテニスコート★★★
冬紅葉の下を通勤の車★★★★

●古田敬二
全天晴れ信濃の立冬陽のさんさん★★★★
立冬の甲斐駒ケ岳の尖りかな★★★
立冬の矢作川源流水早し★★★

●桑本栄太郎
色づきて橙垂るる土塀かな★★★
軒深き母屋に白し懸大根★★★★
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

ダルマストーブ二年B組のあの日かな★★★

●河野啓一
冬紅葉はんなりとして暖かき★★★
冬将軍一つ残れる柿を愛で★★★
丹波より熊はもう見た二度三度★★★★

11月15日(4名)

●小口泰與
カトレアや日の温みある檜塀★★★★
風どっとビルの谷間へおでん鍋★★★
寒犬の歩みを止めぬ杣の道★★★

●河野啓一
冬帝や旬日は迅く来れるや★★★★
冬艇に子支払われて起きられず★★★
行楽の道行く二人翁とおうな★★★

●廣田洋一
冬昴星の間の闇深し★★★★
ファインダーに青く光れる冬昴★★★
目をこらしも一つ探す冬昴★★★

●桑本栄太郎
鴨川の岸にカップル冬紅葉★★★
南座にまねき上がりてしぐれ来る★★★★
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

鴨川の風に乗り居りゆりかもめ★★★

11月14日(3名)

●小口泰與
川沿いのランプの宿や冬の雨★★★
とたん屋根リズム奏づや夕霰★★★
朝日差す霜のあぜ道鳥の声★★★★

●廣田洋一
地下街に聖樹飾る十一月★★★
山茶花や花弁ごとに光りおり★★★★
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

山茶花の風雪に耐へ赤く咲く★★★

●桑本栄太郎
冬空にブルーシートの遺跡かな★★★★
サントリー山崎の峰しぐれ来る★★★
見晴るかす遥か生駒や冬の霧★★★

11月13日(5名)

●小口泰與
夕闇の赤城颪に家吼ゆる★★★
電柱の鳶の吹かるる北颪★★★
二重窓閉めたる後の虎落笛★★★★

●多田有花
仕事より戻る冬陽を正面に★★★
冬の柿採れば撓みの戻りけり★★★

ずいと引き抜く大根の手ごたえ★★★★
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

●廣田洋一
冬うらら義妹の供養なな七日★★★★
裾からげ走り回れる七五三★★★
千歳飴三つに折りし幼き日★★★

●桑本栄太郎
突風の木の葉しぐれとなりにけり★★★
もとの木の近くて遠き落葉かな★★★★
日照雨(そばえ)降る梢の綺羅や冬日燦★★★

●谷口博望(満天星)
公民館まつり
踊り子の笑顔に見とれ秋まつり★★★
踊り子の流るる肢体秋まつり★★★
染み入るる詩吟の声や秋まつり★★★

11月12日(5名)

●小口泰與
草原の光の川や冬の雲★★★
あけぼのの凍雲むくと受く光★★★

ランドセル赤城颪に抗しけり★★★★
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

●谷口博望 (満天星)
書斎の烏瓜
プツプツと書斎に吊るす烏瓜★★★
許せよと命奪いし烏瓜★★★★
十字架のキリストのごと烏瓜★★★

●桑本栄太郎
チャイム鳴り校門桜の落葉かな★★★★
時雨るるや更に色濃き庭の木々★★★
見上げれば緋色透きおり冬紅葉★★★

●廣田洋一
ゆりかもめ白き線引く青き空★★★
黄ばみたる蓮の向こうに桜紅葉★★★★
ヒマラヤ杉菰を巻き付け冬構★★★

河野啓一
晩秋のうす雲流れ行くデイの朝顔★★★
小春日の空にさざめく庭雀★★★
山路行く小春の空の鳥の影★★★★

11月11日(4名)

●小口泰與
鉄橋の汽笛いくたび日向ぼこ★★★★
小春日や十七文字と格闘す★★★
遠山の雲影さだか冬の朝★★★

●廣田洋一
冬の星歩むにつれてまた一つ★★★★
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

孫なくて晴れ着まぶしき七五三★★★
ご両家の三代揃ふ七五三★★★

●川名ますみ
月の道楽器学びしその先に★★★★
音楽を続ける人へ冬の月★★★
冬紅葉桜並木の色さまざま★★★

●桑本栄太郎
冬めいて舗道濡れおり雨の跡★★★
美味しそうな山茱萸の色となりにけり★★★★
小春日の木洩れ日うれし散歩かな★★★

今日の秀句/11月1日~10日


[11月10日]

★猪が二頭駆け去る森の道/多田有花
森の道で、二頭の猪が駆け去るのを目撃。私なら驚いて肝を冷やすだろうが、山の経験豊富な作者は猪に出会うこともあったのか、ニ頭の様子を面白がっている。森の道での出来事、森の生活者との遭遇に秋深さを感じる。(高橋正子)

[11月9日]

★銀杏落葉掬つては撒く子の笑顔/廣田洋一
散り重なった落葉を踏んだり、撒いたり。子供はこんな遊びをするのが好きだ。落葉を掬っては撒き散らす。ルールのある遊びではないが、「遊び」の心が可愛らしい。ふと思ったが、外国人の子どもはこんな遊びをするのだろうか。(高橋正子)

[11月8日]

★上州のだんべい言葉空っ風/小口泰與
上州の冬と言えば空っ風。空っ風の吹く中で、「だんべい」を語尾につけて白い息と共に話すのだろうが、上州言葉がほっこりとしている。上州人の冬の生活が偲ばれる。(高橋正子)

[11月7日]

★飛んだかも鬼の子姿消しにけり/谷口博望(満天星)
「鬼の子」は蓑虫のこと。枕草子の41段の『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば』に由来する。枝にぶら下がっていた蓑虫が秋風が吹くままに、いつの間にか消えている。あわれで、さびしい風情の蓑虫であるが、蓑虫を「鬼の子」と言い、鬼の子ならば、元気に「飛んだかも」と想像するのは作者の個性。蓑を着た者は、異界からの使者、つまり鬼とされていた。(高橋正子)

[11月6日]

★ひしひしと気の伝わりぬ返り花/佃 康水
小春日和によく咲いている返り花。躑躅なのだろうか。季節外れに凛と咲く花に「ひしひしとした気」を感じた。作者にひしひしとした「気」があればこそ。(高橋正子)

[11月5日]

★嘴の赤さいとおし百合鴎/谷口博望 (満天星)
冬鳥として渡って来た百合鴎は、枯れ進む景色のなかで、嘴の赤さ、脚の赤さが印象的。都鳥の名もあるように、華やかな赤さが目立つ。白い羽に赤い嘴が可愛らしい。(高橋正子)

[11月4日]

★秋天の水底と見ゆ深さかな/桑本栄太郎
秋の天を見あげ、目をとどめれば、あまりの青さに、そこに水底を見ているような錯覚になる。水底の青の恐ろしさも脳裏をよぎる。(高橋正子)

[11月3日]

★ジューサーからぱっと柚子の香りたつ/多田有花
ジューサーに柚子を入れ、ジューサーが動き出すとすぐさま柚子の香りが、ぱっと拡がる。驚くべき柚子の香りだ。(高橋正子)

[11月2日]

★鍬を振る頭上に広がる鰯雲/古田敬二
鍬を振り、畑を土をたがやす日は快く晴れた日が嬉しい。高い空に鰯雲が広がり、その下で鍬を振るう。力も自然に入ることだろう。働くことの爽快さ。(高橋正子)

[11月1日]

★発車待つバスの車窓や水木の実/桑本栄太郎
発車を待っているいる間、バスの窓から小さな景色が楽しめる。水木の実が熟れているのもありありと見える。水木の紫紺の実を、小鳥たちが好んで食べている様子が重ねて思い浮かぶ。(高橋正子)