9月11日~20日


9月20日(4名)

廣田洋一
芒野の風に分け入る少女かな★★★★
秋高し孕みしお腹せりだしぬ★★★
さざ波の白く砕けて秋の声★★★

多田有花
閉め切りし窓の向こうに更待月★★★
澄む秋の空より垂れし清掃夫★★★★
南海に嵐が生まれ秋彼岸★★★

小口泰與
いわし雲朝の渓流水堅し★★★★
ぴちぴちと団栗踏むや九十九折★★★
蜻蛉のひとさし指を鷲づかみ★★★

桑本栄太郎
身に入むや梢の揺るる庭の木々★★★
昼餉摂りその後に菓子や秋渇き★★★
汀女忌の妻に代はりて南瓜切る★★★

9月19日(4名)

小口泰與
古書店に藤村詩集いわし雲★★★★
月代や利根の白波尖りける★★★
月光の篳篥に舞う能舞台★★★

廣田洋一
一人酌む酒の味はひ夜長かな★★★
日本映画選ぶ夜長の欧州便★★★★
兼題の五文字の思案夜長かな★★★

桑本栄太郎
人の世の悪を照らすやいなつるび★★★
鳩吹くや風に乗り来る香りあり★★★
夕なれば燃ゆる茜やうろこ雲★★★★

多田有花
わが町の名物ここに秋高し★★★
仲秋や城の町には城のキャラ★★★
秋の暮中庭にいるフラミンゴ★★★

9月18日(4名)

小口泰與
鈴虫のひとふり鳴きてそれっきり★★★
啄木鳥や忍び足なるカメラマン★★★
乱れ萩雀来ている雨後の庭★★★

廣田洋一
穂をはらみ見上げる程の芒かな★★★
折り取りて肩に乗せたる芒かな★★★
荒畑に風を呼び込む芒かな★★★

多田有花
診断がつき爽やかに空仰ぐ★★★
運動会練習の声日々続く★★★

鰯雲夜空いっぱい泳ぎおり★★★★
夜空にも雲の色が見えることがある。この日、鰯雲が夜空いっぱいに泳いでいた。ま昼間の続きの夜空の鰯雲。こんな光景を眺めて楽しくなる。(高橋正子)

桑本栄太郎
葛の花眼下に見たる橋の上★★★
刈り残す畦の供花とや彼岸花★★★★
畦草を刈りとるとき、彼岸花が刈り残された。畦の供花であるかのように。このように彼岸花を大切に思って詠んだ句は珍しい。(高橋正子)

底抜けの空の青さよ鳳作忌★★★

9月17日(4名)

多田有花
珈琲にひとかけのチョコ秋の朝★★★
雲いまだ生まれておらず秋高し★★★★
秋の快晴の空だけを詠んだ句。雲が生きもののように思われていて、雲への親しみがある。ひとかけらの雲があってもよさほうだが、まだ生まれていないのだ。(高橋正子)

秋晴れに芝刈る音の響きおり★★★

小口泰與
竜胆や校庭駆くる里の子等★★★
手鏡を離さぬ人や蘭の花★★★
畳替したる客間や寝待月★★★

廣田洋一
日によりて巻き上げられし秋簾★★★
簾越し友の声聞く秋の夕★★★
料亭の二階に垂れし秋簾★★★

桑本栄太郎
身に入むや哀しき夢に目覚めをり★★★
すつきりと風の抜け行く刈田かな★★★★
刈田となって、なににも邪魔されずに、田を風が抜けて行く。「すっきりと」が気持ちよい。(高橋正子)
ほんのりと嶺の茜や秋の宵★★★

9月16日(4名)

多田有花
十六夜を眺めし後にドアを閉める★★★
日は高く虫の音のみが聞こえ来る★★★
快晴に苅田増えゆく三連休★★★★

小口泰與
風に乗り田川を知らぬ飛蝗かな★★★
蟷螂の首傾げいて芝の上★★★
法師蝉碓氷峠を越え行けり★★★

廣田洋一
七十路はまだ若人や敬老の日★★★
クラス会話は尽きず月見えず★★★
逝きし人浮かび出で来る月夜かな★★★

桑本栄太郎
鳩吹くや喃語を語るバスの嬰★★★
さやけしや銀輪列の女子高生★★★★
女子高生の数人が列をなして自転車の車輪を光らせて、銀輪を光らせて、走って来る。季節も爽やかだが、青春ただなかのういういしい女子高生の姿こそが爽やかなのだ。(高橋正子)

ものの皆くつきり見ゆる秋気かな★★★

9月15日(4名)

多田有花
けんだまの玉秋光を跳ね返す★★★
丘を越え稲田の中へ下りおり★★★

十五夜の明け雲ひとつなき快晴(原句)
十五夜の明けて雲なき快晴に★★★★(正子添削)
快晴とういのは、雲が一つもない晴天の空をいうが、あえて、「雲無き」と雲を強調したところが詩の妙味。
原句は、リズムがよくないので、添削した。
きれいな十五夜が明けて、翌日は、雲のひとつもない快晴の天気に恵まれた。きのうの十五夜の続きの空が、こんなにもきれいな快晴になるとは、まだ気持ちのなかには十五夜の月が残っている。(高橋正子)

小口泰與
湖の風のあわいやちんちろりん★★★
蟋蟀の城垣のぼる声の数★★★
ひぐらしや五右衛門風呂の湯の煙★★★★

廣田洋一
熱帯夜はたと途切れし九月かな★★★★
新涼の朝日を浴びる狭庭かな★★★
新涼や堰落つる水きらきらと★★★

桑本栄太郎
阪急線の車窓に黄金や稲穂垂る★★★★
生駒嶺の低きうねりや秋日さす★★★
ゑのころや嘗て此処には知人宅★★★

9月14日(4名)

小口泰與
コスモスの露天風呂へとなだれ咲く★★★★
露天風呂の傍にコスモスが咲き、露天風呂へと雪崩れている。コスモスに囲まれた湯は柔らかい湯であろうと思う。(高橋正子)

湖へ漕ぎ出す二人荻の声★★★
秋天や像全美なる止利仏師★★★

廣田洋一
甦る学生服の九月かな★★★
花屋にも鶏頭並ぶ九月十九日★★★
九月場所一緒に落ちる行司かな★★★

多田有花
小望月雲に隠れておりにけり★★★
遠目にも鶏頭の赤際立てり★★★
まっすぐな道の両側豊の秋★★★★
稲田の中にまっすぐな道が通るのは、そこが広い田である必要がある。そのことから、広い稔り田が道の両脇に広がる風景が想像できる。豊かに稲が実り、豊の秋が肌に触れて感じられるような句だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
秋蝉や終いの朝となりぬべし★★★
小鳥来る旅の想い出歌いつつ★★★
あきつ飛ぶ陸橋渡る家路かな★★★★

9月13日(4名)

多田有花
ひとりなることが役目の案山子かな★★★
驚きぬ苅田の鳶の大きさに★★★★
高く輪を描きながら滑空する鳶はよく目にする。鎌倉あたりに行くと鳶の多さに驚き、たまに、下りてきているが、羽ばたきをしようものなら、少し怖いくらいの大きさになる。苅田に下りた鳶のまさかの大きさに驚いたことだ。(高橋正子)

昇り来る陽が照らしおり鱗雲★★★

廣田洋一
秋茄子すぐに売り切れ販売車★★★
秋茄子を焼きて加える夕餉かな★★★★
秋茄子の糠の下より光る紫紺★★★

小口泰與
秋雲や下る銀鱗限りなし★★★
丹精の葡萄の房のずっしりと★★★
城垣の崩れし址へ葛の花★★★

桑本栄太郎
錦木の早やももみづる路地を行く★★★
お互いに呼応するかに昼の虫★★★
雨雲の垂れて暮れゆく夢月かな★★★

9月12日(4名)

多田有花
秋の雷暑さを連れて去りにけり★★★
赤々と鶏頭燃えている畑★★★★
鶏頭が燃えているのが、庭や花壇ではなく、畑というのが面白い。農家では、花壇を特に作らず、畑の隅に咲かせているのをたまに見かける。鶏頭を咲かせた人の健康的な「花こころ」とでも言うものが偲ばれてゆかしい。(高橋正子)

秋耕の田に大きかりトラクター★★★

小口泰與
D51の大曲りせる秋の空★★★
紫苑咲く今朝の赤城へ雲一朶★★★
あけぼのの赤城八嶺秋の雲★★★

廣田洋一
渚にて白き石踏む秋の潮★★★★
秋はしらしらと淋しく、白がよく似合う。秋の潮が打ち返す渚を歩き、きれいに洗われた白い石を踏む。
心持も、秋潮に踏む白い石の感覚に似通う。(高橋正子)

秋潮の音を消したる洞窟かな★★★
曇り空水脈白々と秋の潮★★★

桑本栄太郎
秋冷や哀しき夢を見ていたり★★★
目覚め居て哀しき夢の厄日かな★★★
身に沁むや風の葉擦れを聞いて居り★★★★

9月11日(4名)

廣田洋一
水の秋大歩危小歩危巡る旅★★★★
大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)は、2億年の時を経て四国山地を横切る吉野川の激流によって創られた約8kmにわたる渓谷。吉野川の中流にあたるが、流れの水は、渓谷の美しさを引き立てて、「水の秋」が堪能できる。(高橋正子)

小魚の群れなし泳ぐ秋の水★★★
黄色き葉はらりと落ちる秋の水★★★

多田有花
上り月東の山の上に出て★★★
快晴にまず刈られたる田一枚★★★★
稲にいつ鎌を入れるかは、経験による判断が必要なのだろう。快晴の日、まだ葉に緑が残る田が一枚刈られた。手始めの、田が刈られ、いよいよ稲刈りの季節だ。(高橋正子)

秋耕の後をつきおる鳶の群★★★

小口泰與
青空へ水きり石や渡り鳥★★★
源流の流れも秋の色となり★★★
鉄橋を渡るD51秋の声★★★★

桑本栄太郎
四阿に座り風聴く秋の声★★★★
鴨川の風に鳶や秋すだれ★★★
秋雷の午後よりつづく夕べかな★★★

自由な投句箱/9月1日~10日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/9月1日~10日


9月10日

該当作品無し

9月9日(1句)

★鶏頭や嵐は遠き地に上陸/多田有花
鶏頭が咲くころと言えば、台風が次々に来る季節。今日も鶏頭が咲いているが、今回の台風15号は、自分の居るところではなく、遠い地の首都圏に上陸。台風の災害がどんな様子が、ニュースで知るが、災害を知る身には心配がある。(高橋正子)

9月8日(1句)

 ★まっすぐに城の高さを見る白露/多田有花

有花さんが住むのは、姫路。眩しいばかりの白鷺城がある。城の高さを意識させる堂々とした城だ。白露の今日、秋空に立つ城の高さが印象に残った。「まっすぐに」が聳える白鷺城を印象付けている。(髙橋正子)

9月7日(1句)

★噴煙の直立なるや秋気満つ/小口泰與
噴煙がまっすぐあがるのは、強い風がないとか、山の活動が穏やかであるとかなのだろう。何事もなく噴煙があがり、澄んだ秋の空気が満ちている。(高橋正子)

9月6日(1句)

★せせらぎの音に響きて虫の声/廣田洋一
せせらぎ沿いに歩くと虫がよく鳴いている。せせらぎの音にも集く虫の声にも敏くなった耳には、ふたつが響きあって聞こえる。耳も敏くなる秋だ。(高橋正子)

9月5日(1句)

★上げ潮の河口に狙ふ今年鯊/廣田洋一
河口でよく釣れる鯊は、秋になると身がしまり、一層美味となることから、秋の季語となっている。潮がたっぷりと上げてくるタイミングに、鯊を釣ろうと目を凝らしている。鯊釣りには、一生懸命であろうと、ほのぼのとしたところがある。(高橋正子)

9月4日(1句)

★栗の実や毬青々と伸びにけり/廣田洋一
栗は今、青々とした毬をつけている。枝にもたわわに栗の実がつき、うれしいばかりだ。その気持ちが「青々と伸びにけり」となった。(高橋正子)

9月3日(2句)

★露草や天よりもらいし花の色/多田有花
女性らしい句。「らしい」というと語弊をうむが文芸上の「らしい」としたい。露草の花の青は、天の青といっていい。きよらかな真青さは、天よりもらったもの。(高橋正子)

★優勝のマジック消えて子規忌かな/廣田洋一
日本に初めて野球を紹介した子規。子規の本名は正岡常規だが、幼名の處之助を小学校にあがるとき、升と変えている。この「升(のぼる)」をもじってのぼーる、野球と名付けた。上野公園にも子規を記念した野球場があり、野球の祖といえば子規となっている。優勝のマジックが消えて、ふとしたさびしさに思う、子規のこと。俳句を作っていることで、子規につながった。(高橋正子)

9月2日(2句)

★浅間嶺の星の明るき九月かな/小口泰與
九月となった。そのことを知るのは、いつも見慣れている浅間嶺の空に輝く星が明るくなったこと。爽やかに澄んだ空気が星を明るくさせる。(高橋正子)

★心地良き風をはらみぬ猫じやらし/桑本栄太郎
新涼の季節の猫じゃらしのやわらかさ、やさしさがよく詠まれている。「風をはらみぬ」がやわらかな動きを感じさせてくれている。(高橋正子)

9月1日(3句)

★熊鈴や隠れ沼の空爽やかに/小口泰與
隠れ沼に秋がはやばやとやってきた。熊除けの鈴の音もきれいに響く。空も、心も爽やかだ。(高橋正子)

★風祭知らせる朝の町内放送/多田有花
「風祭」は、二百十日前後に風を鎮めるために祈る祭りで八尾の風の盆が有名だが、作者の町内も風祭が行われる。「朝の町内放送」が、風祭が、実際その地域に、そこの人々の心に根差したものであるのが意義がある。朝が爽やか。(高橋正子)

★芋の葉のこんもりとなる葉月かな/桑本栄太郎
葉月とはよく言ったもの。畑には大きな芋の葉が青々として重なり合う。こんもりとして緑の葉の圧巻。(高橋正子)

9月1日~10日


9月10日(名)

小口泰與
秋澄むや大砲岩の妙義山★★★
秋晴や岩を削るる利根の波★★★
朝晩に赤城嶺仰ぎ稲田かな★★★

廣田洋一
七輪に秋刀魚焼きたる昭和の日★★★
小さきも焼きし秋刀魚を買ひにけり★★★
気仙沼の冷凍秋刀魚売られけり★★★

桑本栄太郎
秋蝉の鳴かぬ朝に目覚めけり★★★
秋すだれ祇園の路地の二階茶屋★★★
むらさきの色は憂いか木槿咲く★★★

多田有花
梨売りの今年は姿を見ぬままに★★★
梨下げてかの家訪ねしは昔★★★
病む人にも日ごと太りし月のあり★★★

9月9日(4名)

小口泰與
湖の波白じろ猛り渡り鳥★★★★
棚田へと水の落ち行く稲田かな★★★
泳ぎつぐ夜の水槽の秋目高★★★

廣田洋一
台風や緊急警報けたたまし★★★
台風や雨戸を叩く風の音★★★
野分過ぎ植木鉢みな倒れけり★★★

多田有花
けん玉をまた始めたる白露かな★★★
秋茄子のまだ小さきが葉裏にあり★★★★

鶏頭や嵐は遠き地に上陸★★★★
鶏頭が咲くころと言えば、台風が次々に来る季節。今日も鶏頭が咲いているが、今回の台風15号は、自分の居るところではなく、遠い地の首都圏に上陸。台風の災害がどんな様子が、ニュースで知るが、災害を知る身には心配がある。(高橋正子)

桑本栄太郎
カーテンの風に頻りや涼新た★★★
カーテンに風の頻りや涼新た★★★★(正子添削)

柿の実のぬつと顔出す日差しかな★★★
陸橋の風に集うやあきつ飛ぶ★★★

9月8日(4名)

小口泰與
秋晴れや踏切音の母の里★★★★
秋ばらや奇麗ですねと声かかる★★★
虫の音や草に沈みし猫車★★★

多田有花
まっすぐに城の高さを見る白露★★★★
有花さんが住むのは、姫路。眩しいばかりの白鷺城がある。城の高さを意識させる堂々とした城だ。白露の今日、秋空に立つ城の高さが印象に残った。「まっすぐに」が聳える白鷺城を印象付けている。(髙橋正子)

食料を買い込み九月の空仰ぐ★★★
残照に弓張月の光増す★★★

廣田洋一
書を閉じてほっと一息蚯蚓鳴く★★★
あれこれと思ひめぐらし蚯蚓鳴く★★★
武士道にかけて突き押し九月場所★★★

桑本栄太郎
くつきりと飛行機雲や天高し★★★★
舞い居ても帰る家無き秋の蝶★★★
その中に花を見せ居り葛茂る★★★

9月7日(3名)

廣田洋一
祝日も悪しき日も来る九月かな★★★
夕暮れの日毎に早し九月かな★★★
色付きし葉の流れ行く九月かな★★★

小口泰與
噴煙の直立なるや秋気満つ★★★★
噴煙がまっすぐあがるのは、強い風がないとか、山の活動が穏やかであるとかなのだろう。何事もなく噴煙があがり、澄んだ秋の空気が満ちている。(高橋正子)

秀麗や日日新しき川の水★★★
山霧にバスもろともに吸い込まれ★★★

桑本栄太郎
四阿に座り風聴く秋の声★★★
鳴き声の異国語めくや小鳥来る★★★★
あきつ飛ぶ空の青さや茜雲★★★

9月6日(4名)

廣田洋一
畦道を追ひかけ来たる昼の虫★★★
虫の声歩み緩める夜道かな★★★

せせらぎと合唱しをる虫の声(原句)
せせらぎの音に響きて虫の声★★★★(正子添削)
せせらぎ沿いに歩くと虫がよく鳴いている。せせらぎの音にも集く虫の声にも敏くなった耳には、ふたつが響きあって聞こえる。耳も敏くなる秋だ。(高橋正子)

小口泰與
藤袴千キロ翔る蝶育つ★★★
吟行の人も見かけし秋まつり★★★
朝日受け炎だちたる木槿かな★★★

桑本栄太郎
嶺の端のほのと赤きや法師蝉★★★
新涼のブラス音色や夕暮れに★★★★
邯鄲の夢とは如何に夜の闇★★★

多田有花
蝉やんで静けさ来る秋の昼★★★
紅白の鶏頭咲ける花壇かな★★★
風のあるベランダに出し夕月夜★★★

9月5日(3名)

廣田洋一
鯊釣るやぎょろりと睨む大きな目★★★
堤防に釣人並ぶ鯊日和★★★
上げ潮の河口に狙ふ今年鯊★★★★
河口でよく釣れる鯊は、秋になると身がしまり、一層美味となることから、秋の季語となっている。潮がたっぷりと上げてくるタイミングに、鯊を釣ろうと目を凝らしている。鯊釣りには、一生懸命であろうと、ほのぼのとしたところがある。(高橋正子)

小口泰與
かりがねの散らばり沼を広げたり★★★★
秋気満つ志賀高原の鳥の声★★★
高原の冷ゆや茶筅を回しける★★★

桑本栄太郎
草萩の自動ゲートを飾り居り★★★★
ミンミンと今頃鳴きて秋蝉に★★★
バス路の銀杏並木やうす黄葉★★★

9月4日(4名)

小口泰與
蟷螂や土砂災害の丘の肌★★★
輪の中に外国人も秋まつり★★★
秋澄むや谷川岳の空深し★★★★

廣田洋一
紅花の黄花と揺れるコスモスかな★★★
柿の実や一つ飛び抜け赤くなり★★★

栗の実や毬青々と伸びにけり★★★★
栗は今、青々とした毬をつけている。枝にもたわわに栗の実がつき、うれしいばかりだ。その気持ちが「青々と伸びにけり」となった。(高橋正子)

多田有花
運動会日々の練習始まりぬ★★★
秋暑しもくもく並ぶ午後の雲★★★
オートバイ秋暑の光はね返し★★★★

桑本栄太郎
礼拝の人の増え居り休暇果つ★★★★
コスモスの恋に恋せし彼の日かな★★★
閃光の同時となりぬ秋の雷★★★

9月3日(4名)

小口泰與
秋の朝赤城の襞の青緑★★★
秋の暮テレビ画面へ語り掛け★★★
大沼の水の堅きや秋茜★★★★

多田有花
防災の日なり備蓄を点検す★★★
露草や天よりもらいし花の色★★★★
女性らしい句。「らしい」というと語弊をうむが文芸上の「らしい」としたい。露草の花の青は、天の青といっていい。きよらかな真青さは、天よりもらったもの。(高橋正子)

ラジコンのヘリコプター飛ぶ稲田かな★★★

廣田洋一
優勝のマジック消えて子規忌かな★★★★
日本に初めて野球を紹介した子規。子規の本名は正岡常規だが、幼名の處之助を小学校にあがるとき、升と変えている。この「升(のぼる)」をもじってのぼーる、野球と名付けた。上野公園にも子規を記念した野球場があり、野球の祖といえば子規となっている。優勝のマジックが消えて、ふとしたさびしさに思う、子規のこと。俳句を作っていることで、子規につながった。(高橋正子)

獺祭てふ酒を供へる獺祭忌★★★
球場のライト点灯子規忌かな★★★

桑本栄太郎
千年の永く短しはちすの実★★★★
玄関に忘れしままや蝉の殻★★★
秋蝉のつくづく欲しき讃歌かな★★★

9月2日(3名)

小口泰與
秋の夜や史記全集を身のうちに★★★
仲秋や牧の傾斜を山羊の群★★★★
浅間嶺の星の明るき九月かな★★★★
九月となった。そのことを知るのは、いつも見慣れている浅間嶺の空に輝く星が明るくなったこと。爽やかに澄んだ空気が星を明るくさせる。(高橋正子)

廣田洋一
一房の葡萄分け合う父子かな★★★★
皮をむく手の白きかな黒葡萄★★★
葡萄狩人の少なき棚探し★★★

桑本栄太郎
朝なれば凛と白きや酔芙蓉★★★
うず波のにごり湧きたつ野分川★★★
心地良き風をはらみぬ猫じやらし★★★★
新涼の季節の猫じゃらしのやわらかさ、やさしさがよく詠まれている。「風をはらみぬ」がやわらかな動きを感じさせてくれている。(高橋正子)

9月1日(4名)

小口泰與
熊鈴や隠れ沼の空爽やかに★★★★
隠れ沼に秋がはやばやとやってきた。熊除けの鈴の音もきれいに響く。空も、心も爽やかだ。(高橋正子)

我ら皆昔学童秋の暮★★★
浅間嶺の星まばらなる秋の宵★★★

多田有花
九月来る途切れ途切れに蝉の声★★★
風祭知らせる朝の町内放送★★★★
「風祭」は、二百十日前後に風を鎮めるために祈る祭りで八尾の風の盆が有名だが、作者の町内も風祭が行われる。「朝の町内放送」が、風祭が、実際その地域に、そこの人々の心に根差したものであるのが意義がある。朝が爽やか。(高橋正子)

ひそやかに桜紅葉の始まりぬ★★★

廣田洋一
訓練のヘルメット白し震災忌★★★★
町内会纏まり避難震災忌★★★
晴上り訓練日和防災の日★★★

桑本栄太郎
せせらぎに彼岸花添う高瀬川★★★
芋の葉のこんもりとなる葉月かな★★★★
葉月とはよく言ったもの。畑には大きな芋の葉が青々として重なり合う。こんもりとして緑の葉の圧巻。(高橋正子)

おしろいの土手につづけり阪急線★★★

自由な投句箱/8月21日~31日


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今日の秀句/8月21日~31日


8月31日(1句)

★八月終わる歯ブラシを新しく/多田有花
終わるときに新しい歯ブラシを用意する。これは、心構えとして、始まりに備えて新しくしたと思える。さっぱりとした句で、さわやかな九月が迎えられそう。(高橋正子)

8月30日(1句)

★店頭に秋果とりどり並び初め/多田有花
実りの秋。店頭にいろいろ秋の果物が並び始める。林檎なら淡い色のつがる、梨、無花果、葡萄、青蜜柑など、色もとりどりに並ぶ。「並び初め」が、いかにも新涼の季節を表し、フレッシュでよい。(高橋正子)

8月29日(1句)

この辺り津波に襲われ蕎麦の花/廣田洋一
東日本大震災のときの津波は、多くの人の命を奪い、船を丘へあげてしまほど、とてつもなく大きな津波だった。その津波が襲ったあたりに、蕎麦の花が咲いている。優しい蕎麦の花に、津波の痕
とは思えなかった。しかし、確かに津波が寄せたのだ。(高橋正子)

8月28日(1句)

★こおろぎや山の冷気の殊更に/小口泰與
秋の虫のこおろぎがよく鳴く。山にいるのだ。まだ秋は深くもないのに、山の冷気はことさらに強く感じられる。そのせいで、こおろぎはよく鳴く。(高橋正子)

8月27日(2句)

★格子戸を開けて秋めく夜へ出る/多田有花
秋めく夜。格子戸を開けて外に出た。この設定に時代劇の場面を想像して愉快になった。格子戸と秋めく夜が物語を作っている。(高橋正子)

★栃の実や青きがままに膨らみぬ/廣田洋一
栃の実は、手に握れば、ちょうど手の中に納まる大きさ。今は実が太っていくときで、青いまま、膨らんでいる。大きく膨らんだ青さが魅力の新涼の季節だ。(高橋正子)

8月26日(2句)

★快晴やいつしか燕の消えし町/多田有花
今日の空は見上げれば快晴。雲一つない。そういえば、何かが消えている。いつの間にか燕が消えたさびしくなった町の空。来年の燕を待とう。(高橋正子)

★海青く浜茄子の実の赤きかな/廣田洋一
浜茄子はバラ科なので、赤い、バラのような実をつける。実の赤さは少しオレンジ色がかり、あいらしい。海の青さと赤い実のコントラストがいい。(高橋正子)

8月25日(1句)

★牧の牛草食む音や秋日澄む/小口泰與
牧場に秋の日が当たり、牧場の空気は澄んでいる。放牧の牛が草を食べる音さえ聞こえる。牧を閉じる日まで、牛たちはしっかりと草を食べる。その音なのだ。(高橋正子)

8月24日(2句)

★天の川流れ込みたる斜張橋/廣田洋一
斜張橋の美しさは言うまでもないが、そこに流れ込む天の川で景色はいっそう豊かみなった。(高橋正子)

★清流のさやかに走り芋水車/桑本栄太郎
芋水車の実物をまだ見たことがないが、水車にころころと洗われる里芋を見てみたいものだ。里芋は、水の豊かな田や畑に植えられ、清らか小川にかけられた小さい水車が収穫した里芋を洗ってくれる。清流と里芋ができる里の人々の知恵が今も生きている。(高橋正子)

8月23日(1句)

★寺の門くぐりて出会ふ秋の風/廣田洋一
寺の門のうちは、広々としている。その広さを吹く風がある。風に出会う。まぎれもなく秋の風。秋風にそういう風に出会いたいものだ。(高橋正子)

8月22日(1句)

★看板は熊に注意や松虫草/小口泰與
山を、高原かもしれないが、歩くと看板が出ている。「熊に注意」と。看板のそばには可憐な松虫草が咲いている。高原にきて出会う松虫草。高原に来て身近に感じる熊の生息。自然のリアルさとうのだろう。(高橋正子)

8月21日(2句)

★爽やかに石庭の風流れけり/廣田洋一
石に吹く秋風はさびしいものだけれど、爽やかなん風となれば、すがすがしい気持ちが主となる。禅の趣のある石庭のさっぱりとした爽やかさが際立っている。(高橋正子)

★きちきちの背ナを追い立て散歩かな/桑本栄太郎
散歩で野道を歩くと、驚いたようにきちきちが飛び立って、また止まる。歩めば飛び立つ。追い立てているようで、相済まないが、きちきちと遊ぶ余裕の気持ちも。(高橋正子)

8月21日~31日


8月31日(4名)

小口泰與
のど飴を舐むや赤城の嶺さやか★★★
山襞の彫り深くして秋まひる★★★
動かざる柱時計や時計草★★★★

多田有花
八月尽風が青空渡りけり★★★
遠くよりつくつくぼうし聞こゆ昼★★★

八月終わる歯ブラシを新しく★★★★
終わるときに新しい歯ブラシを用意する。これは、心構えとして、始まりに備えて新しくしたと思える。さっぱりとした句で、さわやかな九月が迎えられそうだ。(高橋正子)

廣田洋一
庭の隅ぽつりと青き露草かな★★★
露草や晴天の色取込みぬ★★★
朝霧に小蕊の光る蛍草★★★★

桑本栄太郎
ハイウェイの出口渋滞八月果つ★★★
あきつ飛ぶ編隊の飛行の橋の上★★★★
ふるさとの梨の着きたり”新甘泉”★★★

8月30日(4名)

多田有花
鮮やかな秋夕焼をプリントす★★★
店頭に秋果とりどり並び初め★★★★
実りの秋。店頭にいろいろ秋の果物が並び始める。林檎なら淡い色のつがる、梨、無花果、葡萄、青蜜柑など、色もとりどりに並ぶ。「並び初め」が、いかにも新涼の季節を表し、フレッシュでよい。(高橋正子)

温度計秋本番を示しおり★★★

小口泰與
秋なれや名もなき沼の空の色★★★★
新そばや古城の前の古のれん★★★
秋の朝赤城のすそ野あらわなり★★★

廣田洋一
外国の言葉混じれる夜学かな★★★
勤め終へ背広のままで夜学校★★★
部活終へすれ違ひたる夜学生★★★★

桑本栄太郎
夜半忌の滝のようなる豪雨かな★★★
アリランの歌も哀しく木槿咲く★★★
哀しみの滂沱尽きたり八月尽★★★

8月29日(4名)

小口泰與
大沼小沼(おのこの)の山影さやか秋小鳥★★★
秋雲を湖に浮かばせ榛名富士★★★★
秋雲の奇岩に生えて動かざる★★★

廣田洋一
この辺り津波に襲われ蕎麦の花★★★★
東日本大震災のときの津波は、多くの人の命を奪い、船を丘へあげてしまほど、とてつもなく大きな津波だった。その津波が襲ったあたりに、蕎麦の花が咲いている。優しい蕎麦の花に、津波の痕
とは思えなかった。しかし、確かに津波が寄せたのだ。(高橋正子)

復興の進む三陸蕎麦の花★★★
北上の川風撫でる蕎麦の花★★★

多田有花
法師蝉携帯電話解約に★★★
秋の朝スマホ教室に集う人★★★
秋風やようやく真実がわかる★★★

桑本栄太郎
恩讐の彼方となりぬ底紅忌★★★
夕暮れのすずめ塒へ秋涼し★★★★
爽やかに雨後の風来る窓辺かな★★★

8月28日(4名)

小口泰與
こおろぎや山の冷気の殊更に★★★★
秋の虫のこおろぎがよく鳴く。山にいるのだ。まだ秋は深くもないのに、山の冷気はことさらに強く感じられる。そのせいで、こおろぎはよく鳴く。(高橋正子)

姦しきつくつく法師露の間に★★★
あけぼのの畦へ群なす秋津かな★★★

桑本栄太郎
今朝よりのホットコーヒー涼新た★★★★
登校の児童の列や秋霖雨★★★
秋雨の豪雨となりぬ降水帯★★★

廣田洋一
一粒降り後の続かぬ秋の雨★★★
秋雨やゲリラ豪雨となりにけり★★★
公園の松青々と秋の雨★★★★

多田有花
家島の旨き魚を食ぶ初秋★★★★
秋の田を縫って家まで走りけり★★★
秋雨にテールランプが列を成す★★★

8月27日(4名)

小口泰與
鬼やんま鬼押し出しに遊びおり★★★★
蝗炒り朝の御勤め済ましける★★★
山影に隠るる日差し螽斯★★★

桑本栄太郎
との曇る空に紅さす百日紅★★★★
うそ寒や疲れ果てたる蝉の声★★★
秋雨の午後より暗く本降りに★★★

多田有花
格子戸を開けて秋めく夜へ出る★★★★
秋めく夜。格子戸を開けて外に出た。この設定に時代劇の場面を想像して愉快になった。格子戸と秋めく夜が物語を作っている。(高橋正子)

秋雨と思いし中を出かけゆく★★★
窓すべて閉め秋涼を楽しめり★★★

廣田洋一
栃の実や青きがままに膨らみぬ★★★★
栃の実は、手に握れば、ちょうど手の中に納まる大きさ。今は実が太っていくときで、青いまま、膨らんでいる。大きく膨らんだ青さが魅力の新涼の季節だ。(高橋正子)

復興の地稲田を囲むブルドーザー★★★
青空に白々揺れる蕎麦の花★★★

8月26日(4名)

小口泰與
噴煙の流るる先や実山椒★★★★
夕映えの田川へぽちゃり蝗かな★★★
あけぼのの畷に忽と群とんぼ★★★

多田有花
秋の朝ロードレーサー駆け抜ける★★★
秋の夜やネットライブでテレビ見る★★★

快晴やいつしか燕の消えし町★★★★
今日の空は見上げれば快晴。雲一つない。そういえば、何かが消えている。いつの間にか燕が消えたさびしくなった町の空。来年の燕を待とう。(高橋正子)

桑本栄太郎
さやけしや朝の窓開け青き空★★★★
誕生日まえの朝や秋気澄む★★★
目覚むれば夕日となりぬ秋の蝉★★★

廣田洋一
海青く浜茄子の実の赤きかな★★★★
浜茄子はバラ科なので、赤い、バラのような実をつける。実の赤さは少しオレンジ色がかり、あいらしい。海の青さと赤い実のコントラストがいい。(高橋正子)

白岩青松浄土ヶ浜の静まる秋★★★
秋蝶の踊り合ひたる黄色き花★★★

8月25日(4名)

多田有花
夜の雨降るごと秋の進みおり★★★★
吹く風を確かに処暑と思いけり★★★
同窓会の連絡入る処暑の朝★★★

小口泰與
榛名嶺の彫り深き襞鵙の晴★★★
明け初むる畦に数多や赤とんぼ★★★
牧の牛草食む音や秋日澄む★★★★
牧場に秋の日が当たり、牧場の空気は澄んでいる。放牧の牛が草を食べる音さえ聞こえる。牧を閉じる日まで、牛たちはしっかりと草を食べる。その音なのだ。(高橋正子)

廣田洋一
秋の潮皆で唄ういつでも夢を★★★
晴天に支度を急ぐ秋祭★★★★
道の駅小刀程の秋刀魚かな★★★

桑本栄太郎
うそ寒や慌て閉じ居り朝の窓★★★
耕衣忌の厨の妻の葱に泣く★★★★
わが影の色濃くなりぬ秋の昼★★★

8月24日(4名)

小口泰與
桔梗や奇岩巨石の雨後の山★★★★
見晴るかす赤城榛名や蕎麦の花★★★
鵯の羽音一閃大樹かな★★★

廣田洋一
久しぶりに空を仰ぎぬ天の川★★★
墓苑の裏山越える天の川★★★

天の川流れ込みたる斜張橋★★★★
斜張橋の美しさは言うまでもないが、そこに流れ込む天の川で景色はいっそう豊かみなった。(高橋正子)

桑本栄太郎
清流のさやかに走り芋水車★★★★
芋水車の実物をまだ見たことがないが、水車にころころと洗われる里芋を見てみたいものだ。里芋は、水の豊かな田や畑に植えられ、清らか小川にかけられた小さい水車が収穫した里芋を洗ってくれる。清流と里芋ができる里の人々の知恵が今も生きている。(高橋正子)

雨上がる風の音さえ秋の声★★★
溝川の音の微かに田水落つ★★★

多田有花
海鮮丼食す新たな涼しさに★★★
初秋にいただくマンゴープリンかな★★★
駅までの道にありけり豊の秋★★★★

8月23日(3名)

小口泰與
廃線の軌道統むる泡立草★★★
朝顔や明治時代の庄屋址★★★★
花葛や木道のはて日照雨★★★

桑本栄太郎
新涼の窓に風吹く雨のあと★★★
水滴の触れて散り居り萩の雨★★★
秋雨の止みてまた降り夕暮るる★★★

廣田洋一
秋風や川のせせらぎ際立たせ★★★
地鎮祭の注連縄揺らす秋の風★★★

寺の門くぐりて出会ふ秋の風★★★★
寺の門のうちは、広々としている。その広さを吹く風がある。風に出会う。まぎれもなく秋の風。秋風にそういう風に出会いたいものだ。(高橋正子)

8月22日(4名)

小口泰與
看板は熊に注意や松虫草★★★★
山を、高原かもしれないが、歩くと看板が出ている。「熊に注意」と。看板のそばには可憐な松虫草が咲いている。高原にきて出会う松虫草。高原に来て身近に感じる熊の生息。自然のリアルさとうのだろう。(高橋正子)

露草や靄を刷きたる赤城山★★★
パソコンを使いこなせず赤のまま★★★

桑本栄太郎
あいさつの目玉近づく鬼やんま★★★
かまきりの孤高に耐えず鎌をあげ★★★
小さくとも坊ちゃん南瓜の甘きかな★★★

多田有花
足型をとられて残る暑さかな★★★
法師蝉今年はあまり鳴かぬなり★★★
夜の帳下りれば始まる虫の声★★★

廣田洋一
水抜かれ色づき初めし稲田かな★★★★
大原女の姿を偲ぶ吾亦紅★★★
説教に合いの手入れるつくつくし★★★

8月21日(4名)

小口泰與
四五本の草花引きて供花とせり
「草花」の季語についてお教えいただき、ありがとうございます。
季語については、特に傍題となるような季語については、主宰や歳時記の編集者によって分かれるところがあります。

桔梗や杣道を駆く川上犬★★★
みそ萩や田川に並ぶいも車★★★★

多田有花
秋曇遠くで蝉が鳴いている★★★★
秋茄子をラタトゥイユにして食べにけり★★★
夜の稲妻閉じし眼の裏で光る★★★

廣田洋一
池の緋鯉紅葉と色を競ひ蹴り★★★
爽やかに石庭の風流れけり★★★★
石に吹く秋風はさびしいものだけれど、爽やかなん風となれば、すがすがしい気持ちが主となる。禅の趣のある石庭のさっぱりとした爽やかさが際立っている。(高橋正子)

金の鳳凰飛び立ちそうな秋の空★★★

桑本栄太郎
金網を蔽う南瓜の末枯るる★★★
捨て置かれ廃車埋もる秋の草★★★
きちきちの背ナを追い立て散歩かな★★★★
散歩で野道を歩くと、驚いたようにきちきちが飛び立って、また止まる。歩めば飛び立つ。追い立てているようで、相済まないが、きちきちと遊ぶ余裕の気持ちも。(高橋正子)

自由な投句箱/8月11日~20日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
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今日の秀句/8月11日-20日


8月20日(1句)

★朝顔の青の揃いし雨の中/小口泰與
雨の中に咲く朝顔もしっとりとして情趣がある。みごと雨にそろった朝顔の青。暑さから息を吹き返したように生き生きとしている。(高椅正子)

8月19日(2句)

★枝豆を貰ふ日向の匂ひごと/廣田洋一
近所の方に枝豆をもらったのだろう。とって間もなくて、日向の温みや匂いがのこっている。うれしいいただきものだ。(高橋正子)

★午後の陽が庇をくぐる秋初め/多田有花
「庇をくぐる」は、鋭い観察で言い得て妙。気づいているかもしれない陽の傾きだが、言葉にして表現するとよくわかる。確実に太陽高度は真夏より低くなっている。初秋なのだ。(高橋正子)

8月18日(2句)

★水澄むや熊除け鈴と歩みける/小口泰與
山を歩くとき、熊除けの鈴をつけてゆかねばならない山がある。尾瀬でもそうだったが、池塘の水や沼などが澄む季節、熊除けの鈴の音がちりんちりんと響く。(高橋正子)

★流灯に沿ひて歩ける人一人/廣田洋一
灯籠を流し、流灯となって流れて行くも、別れがたいのだろう、流灯にそって歩く一人がいる。その寂しい一人に目が行った。(高橋正子)

8月17日(2句)

★校庭に残暑の日差しのみ溢れ/多田有花
夏休みの校庭は、だれも居ない。広い校庭には残暑の黄ばんだ日差しがあふれている。「日差しのみ溢れ」が自然の寂しさを思わせる。(高橋正子)

★灯籠流し順番待てる姉妹かな/廣田洋一
灯籠流し。流し始めるところは広くない。順番を待って手にした灯籠を水に置いて流す。佇む姉妹がかわいくも楚々としている。祖父や祖母が亡くなって間もないのだろうか。(高橋正子)

8月16日(1句)

★青空の赤城ねっこし蕎麦の花/小口泰與
青空にそびえる赤城山のその麓に一面の蕎麦の花が咲く。そんな景色に初秋のなつかしさが思われる。(高橋正子)

8月15日(1句)

★火の山を目指し馬鈴薯掘りたるよ/小口泰與
句の情景は、馬鈴薯の畑の畝が火の山の裾まで続いている。その馬鈴薯の畝を掘り進むときは、火の山を目指して、ゆくことになる。広大な馬鈴薯畑と、火の山の対比が面白い。(高橋正子)

8月14日(3句)

★小説をめくれば見ゆる夏の果/川名ますみ
夏の間、涼しい部屋で小説を楽しんだが、小説もそろそろ終わりにさしかかる。同時に夏も終わるのだ。夏と別れ、小説の世界と別れ、初秋の現実へもどるとき。(高椅正子)

★山の日の山より下りて薬草湯/多田有花
山の日は、8月11日。海の日に対してあとで制定されたが、私としては望んだことだ。山の日に山に登り薬草湯につかる。自然を楽しみに癒された一日である。(高椅正子)

★台風に先立つ波のきらきらと/廣田洋一
台風が近づいている海。台風の風が届いているのだろう。波がきらきら輝いている。それだけ見れば、台風とは思えないが、あまりにもきらきらとする波が、台風を匂わせている。台風の先触れを感じた句。(高橋正子)

8月13日(2句)

★八月の日本海へと雲流る/多田有花
山頂からの眺めだろうか。気象に詳しくないので、8月の風が日本海へと吹く場合が気象的にどうなのか知らないが、「八月」と「日本海」の取り合わせに魅力がある。初秋のかろやかさにある、しかしその中の寂しさを感じさせてくれる。(高橋正子)

★の香や渓流よりの風さやか/小口泰與
渓流にそって咲く蘭が良い香りを放っているのか、渓流に臨むところに置かれた鉢の蘭が匂うのか、情景が少しはっきりしないが、蘭の香りに渓流のさやかな風に心よりのくつろぎを感じさせてくれる句だ。(高橋正子)

8月12日(1句)

★掃苔に今日は一人で出かけてゆく/多田有花
掃苔は、墓石の苔を取り除き掃除をすることであるが、俳句で「掃苔」と言えば、盂蘭盆前の墓掃除をさしている。例年は、誰か、例えば母とかと、墓掃除に出かけたのだろうが、今年は、一人で行かねばならなくなった。「出かけてゆく」に深い心情が汲み取れる。(高橋正子)

8月11日(1句)

★梨の実の白きを並べ玻璃の皿/廣田洋一
梨の実は水気が多くてその白さは透き通るよう。切り分けてガラスの皿に並べると、すずやかな姿形となる。(高橋正子)

8月11日~20日


8月20日(4名)

多田有花
秋の暮ねぐらに戻る烏ども★★★

感嘆符秋涼はいつも突然に(原句)
秋涼はいつも突然感嘆符★★★★(正子添削)

回ったり止まったり秋の扇風機★★★

小口泰與
朝顔の青の揃いし雨の中★★★★
雨の中に咲く朝顔もしっとりとして情趣がある。みごと雨にそろった朝顔の青。暑さから息を吹き返したように生き生きとしている。(高椅正子)

めはじきや今もどっしり寺の松★★★
老犬のあくび数多や犬子草★★★

桑本栄太郎
初秋の遺跡の丘や妻木晩田(むぎばんだ)★★★★
案山子立つ遥か眼下や高速道★★★
かなかなや母の里なる峡の村★★★★

廣田洋一
吊橋を渡れる風の爽やかに★★★★
せせらぎの音と頂く秋の鮎★★★
早々と紅葉初めにし高雄かな★★★

8月19日(4名)

小口泰與
山羊の子の産まれ立ちたる葛の花★★★★
姨捨は棚田の里や秋蛙★★★
ひぐらしや明治時代の置時計★★★

廣田洋一
棚経の僧を迎へる三世代★★★
枝豆を貰ふ日向の匂ひごと★★★★
近所の方に枝豆をもらったのだろう。とって間もなくて、日向の温みや匂いがのこっている。うれしいいただきものだ。(高橋正子)

蒸し焼きの枝豆つまみ限りもなし★★★

多田有花
午後の陽が庇をくぐる秋初め★★★★
「庇をくぐる」は、鋭い観察で言い得て妙。気づいているかもしれない陽の傾きだが、言葉にして表現するとよくわかる。確実に太陽高度は真夏より低くなっている。初秋なのだ。(高橋正子)

半分に切って西瓜を冷しけり★★★
茹でられて青鮮やかなオクラかな★★★

桑本栄太郎
<台風の故郷直撃>
門庭につむじ風立ち野分来る★★★★
運休の是非なきことも台風裡★★★
避難所は保健センター台風来る★★★
ちょうどお盆に台風が直撃で、お見舞い申し上げます。たいへんでしたですね。

8月18日(4名)

多田有花
初秋やおもたき髪を切りにけり★★★

朝焼けを見上げる新涼の中で(原句)
新涼の中に朝焼け見上げけり★★★★(正子添削)

蝉死して風に転がる秋の夕★★★

小口泰與
大沼小沼(おのこの)の清らな水や秋初め★★★
水澄むや熊除け鈴と歩みける★★★★
山を歩くとき、熊除けの鈴をつけてゆかねばならない山がある。尾瀬でもそうだったが、池塘や沼の水などが澄む季節、熊除けの鈴の音がちりんちりんと響く。(高橋正子)

溶岩原を行くや数多の虫の声★★★

廣田洋一
流灯に沿ひて歩ける人一人★★★★
灯籠を流し、流灯となって流れて行くも、別れがたいのだろう、流灯にそって歩く一人がいる。その寂しい一人に目が行った。(高橋正子)

ふくよかにくびれし桃を選りけり★★★
桃食めば舌を包みし甘さかな★★★

桑本栄太郎
<盆帰省のふるさと>
ハイウェイの遥か眼下や稲穂波★★★
群青の海に白きや野分浪★★★
真青なる台風一過の峡の空★★★★

8月17日(4名)

多田有花
盆過の風に驚く朝かな★★★
秋燕となりたり帰る日も近く★★★
校庭に残暑の日差しのみ溢れ★★★★
夏休みの校庭は、だれも居ない。広い校庭には残暑の黄ばんだ日差しがあふれている。「日差しのみ溢れ」が自然の寂しさを思わせる。(高橋正子)

廣田洋一
棚経の僧バイクにて来たりけり★★★

子供らもかしこみ座る棚経かな(原句)
棚経に子らもかしこみ座りけり★★★(正子添削)

灯籠流し順番待ちの姉妹かな(原句)
灯籠流し順番待てる姉妹かな★★★★(正子添削)
灯籠流し。流し始めるところは広くない。順番を待って手にした灯籠を水に置いて流す。佇む姉妹がかわいくも楚々としている。祖父や祖母が亡くなって間もないのだろうか。(高橋正子)

小口泰與
火の山へ攻め込みたるや泡立ち草★★★
浅間嶺へ連なる星や秋はじめ★★★
初秋や生まれし子犬白まだら★★★★

桑本栄太郎
<ふるさとへ盆帰省>
群青の水平線や盆の海★★★★
大山の頂き雲に台風来る★★★★
稜線の紺色なすや秋の嶺★★★

8月16日(3名)

多田有花
嵐来るしばし残暑を落ち着かせ★★★★
終戦の日暮れて風雨の強まりぬ★★★
台風の余りの風が残る朝★★★

廣田洋一
車椅子手をしなわせて踊りけり★★★
城下町鳴子を振りて踊りけり★★★
赤児抱き手のしなやかに踊りたる(原句)
赤児抱き手をしなやかに踊りたる★★★★(正子添削)

小口泰與
青空の赤城ねっこし蕎麦の花★★★★
青空にそびえる赤城山のその麓に一面の蕎麦の花が咲く。そんな景色に初秋のなつかしさが思われる。(高橋正子)

草の秀や羽音爆破の群雀★★★
噴煙の千曲へ流る荻の声★★★

8月15日(4名)

小口泰與
畑隅の葉陰の中の西瓜かな★★★
火の山を目指し馬鈴薯掘りたるよ★★★★
句の情景は、馬鈴薯の畑の畝が火の山の裾まで続いている。その馬鈴薯の畝を掘り進むときは、火の山を目指して、ゆくことになる。広大な馬鈴薯畑と、火の山の対比が面白い。(高橋正子)

早稲の香や湖渡りくる風あらまほし★★★

多田有花
朝の町盆台風の来るを待つ★★★★
台風の近づく前に買出しへ★★★
雨やめばすぐに秋蝉鳴き始め★★★

廣田洋一
土砂降りの雨となりたる終戦の日★★★★
甦るラジオの声や終戦日★★★
読み返す抑留記録敗戦の日★★★

8月14日(4名)

川名ますみ
夏掛けを膝まで上げて読書せり★★★
小説をめくれば見ゆる夏の果★★★★
夏の間、涼しい部屋で小説を楽しんだが、小説もそろそろ終わりにさしかかる。同時に夏も終わるのだ。夏と別れ、小説の世界と別れ、初秋の現実へもどるとき。(高椅正子)

夏休み借りし小説じき終わる★★★

多田有花
山の日の山より下りて薬草湯★★★★
山の日は、8月11日。海の日に対してあとで制定されたが、私としては望んだことだ。山の日に山に登り薬草湯につかる。自然を楽しみに癒された一日である。(高椅正子)

八月の早朝にあり極楽は★★★
八重むくげを揺らす嵐の前触れが★★★

小口泰與
秋蘭や利根源流の清らなる★★★★
幅跳びの距離をのばすや鳳仙花★★★
衣食住妻にまかせし断腸花★★★

廣田洋一
台風に先立つ波のきらきらと★★★★
台風が近づいている海。台風の風が届いているのだろう。波がきらきら輝いている。それだけ見れば、台風とは思えないが、あまりにもきらきらとする波が、台風を匂わせている。台風の先触れを感じた句。(高橋正子)

島間を大河の如く秋の海★★★
秋天に白く聳ゆる橋の塔★★★★

8月13日(3名)

多田有花
秋の初風稜線の樹間より★★★
静かなる残暑の山を登りけり★★★
八月の日本海へと雲流る★★★★
山頂からの眺めだろうか。気象に詳しくないので、8月の風が日本海へと吹く場合が気象的にどうなのか知らないが、「八月」と「日本海」の取り合わせに魅力がある。初秋のかろやかさにある、しかしその中の寂しさを感じさせてくれる。(高橋正子)

小口泰與
蘭の香や渓流よりの風さやか★★★★
渓流にそって咲く蘭が良い香りを放っているのか、渓流に臨むところに置かれた鉢の蘭が匂うのか、情景が少しはっきりしないが、蘭の香りに渓流のさやかな風に心よりのくつろぎを感じさせてくれる句だ。(高橋正子)

朝顔や赤城のすそ野明らけし★★★
鬼灯を鳴らすや過去のよみがえる★★★

廣田洋一
笠の下白き歯見ゆる阿波踊り★★★
沢山の黒猫跳ねる阿波踊り★★★
ひらひらと団扇を捌く阿波踊り★★★

8月12日(4名)

多田有花
盆花がどっと並びしホームセンター★★★
掃苔に今日は一人で出かけてゆく★★★★
掃苔は、墓石の苔を取り除き掃除をすることであるが、俳句で「掃苔」と言えば、盂蘭盆前の墓掃除をさしている。例年は、誰か、例えば母とかと、墓掃除に出かけたのだろうが、今年は、一人で行かねばならなくなった。「出かけてゆく」に深い心情が汲み取れる。(高橋正子)

初秋の府県境の山に登る★★★

小口泰與
御巣鷹の空深海や野紺菊★★★
秋桑や土器の出でたる畦十路★★★
カンナ咲くかの日の夜行列車かな★★★

桑本栄太郎
孫帰る日の早くあり夏の果て★★★
子供等の土産は箱に蝉の殻★★★
黒雲のつぎつぎ集い野分来る★★★

廣田洋一
野分前高波白き桂浜★★★
波しぶき浴びつつ舐めるアイスクリン★★★
殿は幼子締めるよさこい踊り★★★

8月11日(3名)

廣田洋一
梨の皮切れずに剥けてほくそ笑む★★
梨の実の白きを並べ玻璃の皿★★★★
梨の実は水気が多くてその白さは透き通るよう。切り分けてガラスの皿に並べると、すずやかな姿形となる。(高橋正子)

洋梨の鎮座ましたる冷蔵庫★★★

小口泰與
子の積み木幾度崩れし青蜜柑★★★
かの時の名前刻みし椿の実★★★
枝に来る鳥の鳴き声秋珊瑚★★★

桑本栄太郎
盆帰省の準備間のなき孫来たる★★★
外つ人の裸族のような残暑かな★★★
初秋や入日のさまも哀しかり★★★